かつては、祖父母と同居する家庭が一般的だったことやご近所付き合いでお葬式に参列することも珍しくなく、子供ながらに「人が亡くなること」や「葬儀マナー」に触れる機会が多かったと言えます。
「火葬場から帰る時は行きと同じ道を通ってはいけない」や「香典は薄墨で書く」など、親や親族から自然と言い聞かされてお葬式のマナーが身についた人も多いでしょう。
近年は近所付き合いの希薄化やコロナ禍により親族が集まる機会が減少し、お葬式に呼ばれる機会も減っていると言われています。では現代の若年層は、お葬式に参列する機会が減って常識やマナーも知らない人が増えているのでしょうか。
そこで、現代の若者がお葬式の常識をどれくらい知っているのかアンケートを行いました。
20歳未満の若者120名にインターネット調査を行った結果を発表します。
もくじ
「香典袋には故人の名前を書く」という勘違いが約4割
Q. 香典袋の表には誰の名前を書きますか?
香典袋には「自分の名前」を書くのが常識ですが、約4割が「故人の名前を書く」と回答しました。
故人の名前が書かれた香典が受付にずらりと並んでいる光景・・・。想像するだけでも混乱しそうですね。
香典に関しては、「なぜ綺麗な新札を使ってはいけないのか謎」という意見もありました。基本的なマナーは知っていても、「なぜそうしなければいけないのか」という意味まで理解している若者は少ないようです。
「お葬式にお坊さんがいないと成仏しない」と約4割が回答
Q. お葬式にはお坊さんを呼ばないと故人は成仏しないと思いますか?
一般的に若者は宗教や信仰への関心が薄いと言われているにも関わらず、「お坊さんがいないと成仏しないと思う」という回答が35%にものぼりました。お葬式にお坊さんがくるのは当たり前であり、故人の成仏に関係する「重要な役割」だと考えているようです。
実際に故人が成仏したのか、していないのか、亡くなった後のことはわかりません。ただしお坊さんがお勤めをしてくれることは、ご遺族の安心感や手厚く弔ってあげることができたという満足度の一部を担っているケースも多いでしょう。
若者も旧来の価値観を受け継ぎ、「故人を手厚く弔ってあげるべきだ」という意識が見えた回答でした。
「人が死んだら”必ず”お葬式とお通夜をしなければいけない」と半数が回答
Q. 人が亡くなった時に「必ず」しなければいけないことを全て選んでください。
実際にこの中で必ずしなければならないことは、「死亡届の提出」と「火葬」です。(土葬の地域もまだあるようですが、日本では99%以上火葬で弔います)
「お葬式・告別式」や「お通夜」は必ずしなければいけないものではありませんが、約半数の若者が「必ずしなければいけない」と回答しています。若年層ですら、古いしきたりが身に染み付いていることがわかりました。
現代の若年層も人の死を悼み偲ぶ場をつくることは、残された家族の義務だと考える傾向があるのだと感じます。
また、約3割が人が亡くなったら必ず「黙祷」を行わなければいけないと回答しています。「黙祷」とは「死者に対し弔いの意をこめて祈りを捧げること」。多くの若者が死者に敬意を払い、故人を悼んでいることがわかりました。
実際には約8割が「お葬式を経験している」
Q. お葬式に参列したことはありますか?
昨今の家族葬や直葬などのコロナ禍対応のお葬式の形式はあるものの、若者がお葬式に参列する機会そのものはそれほど減っていないようです。ただし今後、家族葬や直葬が増え続ければ人の死に触れることなく大人になる若者が増えていくかも知れません。
この調査を始めるにあたって、編集部スタッフは「若年層はお葬式に参列する機会が減って、あまり重要視もしてないのでは?」と考えていました。
しかし、実際にアンケートを実施すると、お葬式に参列したことない若者はわずか2割。また、驚くことに若者は「死」を偲ぶ気持ちを重要視しており、お葬式に対して宗教的な存在の価値を認めた旧来の価値観を受け継いでいることがわかりました。
ただし、香典の表書きの名前を勘違いしている人が多いことからもわかるように、お葬式は必要だと感じているにも関わらず正しい知識を持っている若者が少ないのが実情です。
現代は、インターネットで知らないことや知りたいことをいつでも検索できる時代になりましたが、お葬式に関する知識を調べる機会は少なかったようです。
昨今、宗教儀式をおこなわない直葬など、葬送形式の選択肢は増えたものの、弔い方のありようを決めるのは故人であり遺族です。
約4割が「お坊さんがいないと故人が成仏しない」と回答したことから、全体としてみれば、若者の心のありようはそれほど変化していないとみることができます。