葬儀は故人と顔を合わせる最後の時間であり、非常に大切な儀式でもあります。大切な時間を後悔せずに過ごすためには、良い葬儀社を選ぶ必要があります。
そもそも良い葬儀社とはどのような葬儀社なのでしょうか?葬儀社選びで後悔しないポイントについて、失敗例とともに解説します。
葬儀社の種類と特徴
104万件以上の企業情報データベースを公開しているBaseconnectによると、葬儀業界の企業は2024年4月時点で7,800社以上のデータが搭載されています。仏壇販売業者も含まれているうえに、掲載されていない企業もあるため純粋な葬儀社の数ではありませんが、それでも国内には何千もの葬儀社があることは確実です。
数多くの葬儀社から故人や遺族の意向に合った葬儀社を選ぶためには、どのような種類があるのか知るところから始めるとよいでしょう。葬儀社の種類について、それぞれの特徴を解説します。
葬儀専門業者
葬儀社と聞いて一般的にイメージされやすいのは葬儀専門業者です。葬儀に関するあらゆるサービスを提供しており、自社斎場を保有していたり、打ち合わせから葬儀当日の進行、アフターフォローまで行っていたりします。
また、葬儀専門業者は会食等を提供する仕出し業者や、返礼品を用意するギフト会社、霊柩車の企業などと提携しており、葬儀に関する全ての窓口となっています。
互助会
互助会とは「冠婚葬祭互助会」の略称で、会員が毎月一定額を積み立てていき、冠婚葬祭の際に積立金を利用できるサービスのことです。積立金だけでは葬儀費用を全額賄うことはできないものの、突然の出費に備えることができるメリットがあります。
互助会の積立金は冠婚葬祭で利用できるため、葬儀だけでなく結婚式などの費用としても活用できます。なお、互助会は葬儀専門業者ではないため、実際に葬儀を行う際は提携先の式場で行うことになります。
協同組合
生活協同組合(生協)や農業協同組合(農協)などの協同組合では、会員向けサービスの一環として葬祭事業を提供しています。協同組合での葬祭サービスを利用するためには、組合員であることが条件ですが、故人や家族の中に1人でも組合員がいれば利用可能です。
なお、葬儀自体は葬儀専門業者と提携して行う場合が多いですが、組合自体が独立した葬儀社を持っている場合もあります。
葬儀仲介サービス業者
葬儀仲介サービス業者とは全国の葬儀社と提携し、故人や遺族の意向に合った葬儀社を探せる業者のことです。あくまでも仲介サービスのため、葬儀自体は提携している葬儀専門業者などが行います。
一度に複数の葬儀社を比較できるうえに、葬儀仲介サービス業者側でも全国で一律のサービス・料金で利用できるプランを販売しているため、価格やサービスの差が気になる人におすすめです。
良い葬儀社とは?
良い葬儀社とは、誠実で丁寧な対応をしてくれる葬儀社です。
- 不要なトラブルを起こさない
- 料金の内訳を詳細に提示し不透明な部分がない
- サービス料金が適切な価格である
- 故人や遺族の希望に合わせて柔軟に対応できる
- スタッフの対応が丁寧で遺族に配慮できる
- 実績が豊富で信頼できる
人によって良し悪しの判断は異なりますが、後悔のない葬儀ができる葬儀社こそ良い葬儀社と言えるのではないでしょうか。
葬儀社選びで後悔しない10つのポイント
葬儀は故人と最後の時間を過ごす大切な儀式です。告別式が終わると火葬され、ご遺体は遺骨となって骨壺に納まります。悔いのないお別れができるようにするためには、より良い葬儀社を選ばなくてはなりません。葬儀社選びで後悔しないために抑えておきたい10つのポイントをご紹介します。
1.サービス内容と品質の確認ができるか
まずは提供しているサービスの内容についてです。どんなプランを提供しているかの確認は簡単ですが、大切なのはサービスの詳細についてです。お通夜を省いて告別式だけを行う「一日葬」という葬儀がありますが、同じ一日葬でも葬儀社によってサービス内容は異なります。一日葬プランならばどのようなサービスが提供されているのか、内容をよく確認しましょう。
また、書面での価格やサービス内容がよくても、実際の品質は思っていたより残念な場合もあります。口コミサイトやマップサービスなどから、客観的に品質を判断できる口コミや評判を、予め確認しておくこともおすすめです。
2.信頼できる実績があるか
故人の顔を見て言葉をかけられる最後の時間だからこそ、葬儀は信頼できる葬儀社を選びましょう。葬儀社の実績は信頼を計る判断材料になります。
- 地元で長く営業している老舗
- 長年の実績があり地元から信頼されている
- 実績や経験豊富なスタッフが在籍している
自分で簡単に調べることができてわかりやすいのは営業している年数です。長く営業しているということは、経営が成り立つだけの依頼があり多くの実績を重ねている葬儀社であると言えるでしょう。
3.料金プランの透明性が確保されているか
最初に提示されていた金額と実際に請求された金額に大きな差異が出るケースはよくあります。多少の差額ではなく大きく差異が出ている場合は、高額な追加料金が加算されている可能性が高いです。
あとから高額な追加料金が加算されないためにも、料金プランの透明性が確保されているかはしっかり確認しておくべきポイントになります。
- 必要最低限の基本的なプランと、有料オプションが明確に区別され、料金も提示されているか
- 大雑把なプラン費用ではなく、全費用を細かく見積書に記載しているか
上記の2点を重点的に確認し、不明な場合は問い合わせて細かな内容を提示してもらいましょう。対応してもらえない場合は、追加料金などでトラブルが起きる可能性があるため避けた方が無難です。
4.丁寧で柔軟な対応ができるか
葬儀自体は多くのスタッフが携わるものの、実際に打ち合わせなどの大筋の部分で喪主と関わるスタッフは1〜2名程度です。担当のスタッフが丁寧で柔軟な対応ができるかどうかで、後悔のないお別れの時間を過ごせるかが決まります。
- 家族の要望に耳を傾けてくれる(祖母は桃色の花が好きだったのでたくさん用意してほしいなど、赤ちゃんがいるのでベビーカーを置きたいなど)
- 細かい配慮をしてくれる(売上優先ではなく家族に合ったプランを提案してくれるなど)
- 規模の小さな葬儀にも対応してくれる
- 突発的な変更にも対応してくれる(副葬品として故人が好きだった飲み物を紙コップに入れてくれるなど)
口コミや評判では、担当スタッフのことが記載されている場合が多いため、予め確認しておくと丁寧で柔軟な対応をしてくれるかどうかを把握できるでしょう。
5.資質の高いスタッフが在籍しているか
人生で何度も喪主を経験する人は少なく、初めて喪主となる人が多いです。そのため、葬儀に関してわからないことや不安も多いでしょう。だからこそ、丁寧で誠実なのはもちろん、細かな質問にもわかりやすく回答してくれる経験や知識が豊富なスタッフが在籍しているかは大切なポイントになります。
経験や知識が乏しいスタッフしかいない場合は、火葬場や提携企業との連絡に相違があったり、質問に対して間違った対応をされてしまう可能性があるので注意しましょう。
6.宗教・文化への対応ができるか
葬儀社によって対応できるサービスが異なるため、故人が特定の宗教に入信していたり、特殊な文化的背景がある場合は、対応できるサービスを提供している葬儀社を選びましょう。例えば、日本ではほとんどが仏教式に則った葬儀を行いますが、同じ仏教でも宗派によって葬儀の形式が異なる場合があります。
仏教式の葬儀を提供している葬儀社であっても、宗派によって儀式の内容を変えられない場合もあるので、予め調べておくことをおすすめします。ホームページなどで特定の宗教や文化に特化したサービスを提供しているか確認できない場合は、実際に問い合わせてみるとよいでしょう。
7.施設と環境が良好か
お別れする場所だからこそ暗いイメージをもたれやすいですが、式場によって雰囲気に違いはあります。外観や内装などを見て、式場の雰囲気が好みに合うかは確認しておくべきポイントです。
また、以下の点も確認しておくと失敗しにくいでしょう。
- バリアフリーか(車椅子利用者がいる場合などは確認必須)
- アクセスしやすい場所にあるか(駅近、車で行きやすいなど)
- 葬儀の規模と式場の広さ、収容人数は適切か(十分な座席を用意できるかなど)
8.立地がよいか
アクセスのしやすさだけでなく、参列者の住まいやご遺体の搬送に関して考慮するならば立地の良さも確認するべきポイントです。
- 駐車場の規模はどれくらいか
- 周辺に駐車場はあるか(自家用車での参列者が多い場合は確認必須)
- 周囲に宿泊施設はあるか(遠方からの参列者がいる場合は確認)
- 公共交通機関の利便性はいいか(ターミナル駅からのアクセスの良さや路線バスの有無など)
- ご遺体を円滑に搬送できるか(病院から式場、式場から火葬場までスムーズに搬送できるか)
立地が悪いと参列者の集まりが悪かったり、迷って遅刻をしてしまう人が出たりする場合があるので、必要に応じて立地の良さも確認しましょう。
9.関連サービスとの提携があるか
葬儀は式場で行われるものですが、実際には外部のサービスを利用しなければならない部分も多々あります。
- 僧侶や神父を呼ぶ
- 返礼品を用意する
- 会食を用意する
- 火葬する
- 火葬場へ移動、ご遺体を搬送する
- 埋葬する
ひとつひとつを喪主が手配すると大きな負担になるので、一括で手配できるかを確認しておきましょう。また、余分な費用を抑えたいならば、不要な手配を省けるかどうかも確認しておくとよいでしょう。
10.しっかりとしたアフターフォローができるか
葬儀が終了しても故人周りの手続きなどがしばらく続きます。期限が短い手続きもあるため、葬儀後の各種手続きにおいてサポートしてくれるかも確認しましょう。
また、納骨や法要など長期的な相談も受け付けている葬儀社ならば、スムーズに話を進められるので、希望ならばしっかりとしたアフターフォローをしてくれる葬儀社を選びましょう。
葬儀社選びでよくある失敗例
葬儀社はいわゆるサービス業なので、サービスを受ける側としては不快な思いをすることなく葬儀を終えたいところです。しかし、残念ながら葬儀社選びで失敗してしまうことは珍しくないのが現実です。どのような失敗があるのか、葬儀社選びでよくある失敗例をご紹介します。
見積もりと請求額が違う
実際の見積もりは予算の範囲内だったのに、実際の請求額は予算を大きく上回る金額だったケースは珍しくありません。見積もりと請求額が大きく違う理由は、事前に有料オプションの明示がなく気付かずに利用したり、基本的なプランの細かな内容がわからなかったりなど、不透明な部分が多いことが主な原因だと考えられます。
事前の見積書の確認はもちろんですが、大雑把なプラン料金ではなく、プランに含まれるサービスの内容まで、細かな内訳を提示してもらいましょう。
契約内容と違うサービスを提供される
近年では僧侶を呼ばない、告別式だけを行うなど、宗教色の薄い葬儀も増えています。このような宗教色の薄い葬儀を希望しているのにも関わらず宗教色が強い葬儀を提供されてしまうことも。
また、僧侶を呼ばないのに呼ぶことになっていたり、仏壇も一括で購入することになっていたりなど、過剰なサービスが勝手に追加され、予算を大きく上回るケースもあります。過剰なサービスの追加は、葬儀社側ではなく喪主以外の家族が勝手に追加してしまうケースもあるようです。
契約内容と違うサービスを提供されないためには、きちんと家族間で希望の葬儀内容を共有することと、契約書の内容を細かく確認することが大切です。契約書に覚えのないサービスが記載されていたら、サインをする前に担当者へ確認してください。
トラブル発生時の対応が悪い
何事もなく葬儀が終わるに越したことはありませんが、参列者のお子さんがぶつかって遺影を落として割ってしまったなど、想定外のトラブルが起きてしまうことは誰にでもあります。
しかし、トラブルが起きたときの対応が悪く、不満が残るケースも少なくありません。トラブルを起こさないように担当者としっかり話し合うことも大切ですが、トラブルが起きたときの対応についても確認しておくことをおすすめします。確認が難しい場合は、口コミや評判をチェックすることで、ある程度の対応力が把握できるでしょう。
打ち合わせが面倒で比較検討しなかった
「病院で息を引き取ったあと、深夜であるのにも関わらずすぐに安置室へ移動させたいから葬儀社を決めてほしいと言われ、比較することなく対応してくれた1社だけで決めてしまった」というケースは少なくありません。
急いで決めた1社が良い葬儀社ならば問題ありませんが、小さな規模の葬儀に対応していない、適切な価格やサービスではない葬儀社であるケースも珍しくありません。限られた時間で比較検討することは難しいですが、1社ですぐに決めてしまうのは失敗する大きな原因になるため、複数の葬儀社と打ち合わせをしておくことをおすすめします。
もしも病院側から「いつなにが起こるかわからない」と宣告されているならば、すぐに対応できるように予めいくつかの葬儀社を比較しておくこともおすすめです。
信頼できる葬儀担当者の見分け方
葬儀自体は葬儀社のスタッフ含め、多くの人が携わりますが、喪主と密接に関わる担当者は1〜2名程度となります。担当者が信頼できる人かどうかは、後悔しない葬儀を行うためには重要なポイントです。信頼できる葬儀担当者の見分け方について解説します。
丁寧な対応と気配りができるか
葬儀の打ち合わせは、家族が亡くなって最も傷心している中で行われます。信頼できる葬儀担当者は遺族の気持ちを思いやり、物腰柔らかな話し方と丁寧な言葉遣いができる人です。長く葬儀担当に携わっているスタッフはビジネス的な話し方ではなく、言葉の節々に配慮が見られます。
反対にビジネス的な話し方をするスタッフは、経験が少ない可能性は高いので不安ならば担当者を増やしてもらうことも検討しましょう。
専門知識が豊富か
初めて葬儀の喪主を担当する人が多いため、初めてでも問題なく葬儀を執り行えるようにしっかりサポートしてくれる担当者は信頼できます。葬儀に関する幅広い知識がある人は、遺族からの質問に対しても的確なアドバイスをしてくれたり、わかりやすく答えてくれたりします。
葬儀社によっては葬儀関連の保有資格を提示している場合もあるので、資格を確認してから担当者を指名するのもよいでしょう。
誠実な姿勢と高い倫理観があるか
誠実な姿勢であることはもちろんですが、やはり高い倫理感を持っている人は信頼できます。
- 特定の宗教に対して宗教的な配慮ができる
- 故人や遺族の意向を尊重してくれる
- 営利目的ではなく料金に関係なく公正な対応をしてくれる
- 追加サービスの勧誘が控えめ(希望に沿った適切な追加サービスを提案する程度)
倫理観の低い葬儀担当者は、いくら誠実な姿勢でいてもボロが出てしまい、遺族や参列者に不満を与えてしまうこともあるので注意しましょう。
葬儀社の選び方にまつわるQ&A
葬儀社の選び方についての疑問をいくつか答えとともに簡単にご紹介します。
葬儀社とは?
葬儀社とは葬儀に関するあらゆるサービスを提供している事業者です。全国で数千もの葬儀社があり、各社でそれぞれ提供しているサービスや利用料金が異なります。
葬儀社はいつ決める?
一般的に葬儀社を決めるタイミングは死亡確認が行われ死亡診断書(死体検案書)が発行された後です。病院でご遺体を安置できるのは半日程度のため、基本的には半日以内に葬儀社を決定します。
なお、故人が生前に葬儀社とプラン内容を決める生前契約も可能です。葬儀社の中には事前割引を受けられることもあるため、終活の一環として自身で葬儀社を決める人も増えています。
葬儀社選びの前に準備すべきことは?
葬儀社を選ぶ前に準備するべきことは、主に3つあります。
予算を決める
小さな規模の葬儀でも数十万円は費用がかかるため、予算は葬儀社を決める重要な部分になります。どのくらいの予算を用意できるのか、葬儀社を決める前に把握・決定しておきましょう。
希望する葬儀形式を決める
葬儀の形式は主に4種類あります。
- 一般葬:お通夜から告別式まで2日に渡って行う従来の葬儀
- 家族葬:家族や親族のみで行う小規模な葬儀
- 一日葬:お通夜は行わず1日で告別式から火葬までを行う葬儀
- 直葬:火葬式のみを行う葬儀
ほかにも音楽葬や宇宙葬などの変わった葬儀もあります。葬儀社によって対応できる形式が異なるため、葬儀社を決定する前に希望する葬儀形式を決めましょう。
複数の葬儀社から見積もりを取る
予算と希望の葬儀形式が決まったら、対応可能な複数の葬儀社から見積もりを取りましょう。複数の葬儀社を比較することで、より希望に沿った葬儀社を見つけることができます。
まとめ
多くの葬儀社は丁寧な対応をしてくれますが、中にはトラブルに発展したり、遺族や参列者に大きな不満を残したりと、対応が残念な葬儀社もあります。良い葬儀社かどうかの判断は個人による部分もありますが、やはり遺族に対して配慮ができ、希望を優先してくれる葬儀社は失敗しにくいと言えるでしょう。
葬儀は故人が主役となる最後の儀式であり、顔を合わせて声をかけられるのも最後の機会となります。大切な時間だからこそ、後悔のないように希望に沿って対応してくれる良い葬儀社を選びましょう。