さまざまな葬儀形式が増え、従来の儀式も簡素化されることが多くなっています。しかし火葬は、葬儀の形式が変化しても必ず行われます。
では、人が亡くなった際に必ず行われる火葬では、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?
火葬費用について、公営・民営の違いや内訳、費用を抑える方法を詳しく解説します。
もくじ
火葬とは?
火葬とは、ご遺体を火で焼いて骨にする葬送方法です。日本では、古くから火葬が一般的な葬送方法として定着しています。
火葬のみを行う際の費用相場
葬儀をしないで火葬のみを行う「直葬」と呼ばれる形式が近年増加しています。
直葬の場合、一般葬や家族葬と比べて費用を大幅に抑えることができますが、公営と民営で費用が大きく変わります。
公営と民営の火葬場ごとに費用相場をご紹介します。
自治体の公営火葬場を利用する場合
公営の火葬場とは、各自治体が運営する火葬施設のことです。公営火葬場の費用相場は以下の通りです。
・市内在住者:0〜3万円程度
・市外在住者:5〜10万円程度
公営火葬場の料金は自治体によって大きく異なり、無料もあれば数万円かかる自治体もあります。また多くの自治体では、市内在住者と市外在住者で料金が異なり、市内在住者の方が安価に設定されています。
メリット | 低価格 | 民営と比べて一般的に安価 |
料金の透明性 | 料金体系が明確で追加料金が発生しにくい | |
地域密着 | 地域の実情に合わせたサービスを提供 | |
デメリット | 予約が取れない | 人気の時間帯は予約が取りづらい場合がある |
設備 | 民営と比べて設備が古い場合がある | |
サービスの制限 | オプションサービスが限られている場合がある |
民営の火葬場を利用する場合
民営の火葬場とは、葬儀社などの民間業者が運営する火葬施設のことです。民営火葬場の費用相場は以下の通りです。
・5〜15万円程度
民営の火葬場は、公営と比べて料金が高めに設定されていますが、サービスの質や設備の充実度が高い傾向にあります。
また、民営の火葬場では、施設にランクが設けられていることが多く、選択するランクによって費用が変わります。
メリット | 充実した設備 | 最新の設備を導入している場合が多い |
柔軟なサービス | 顧客のニーズに合わせた多様なサービスを提供 | |
予約の取りやすさ | 公営と比べて比較的予約が取りやすい | |
デメリット | 高価格 | 公営と比べて一般的に高価 |
追加料金の可能性 | オプションサービスによっては追加料金が発生する場合がある | |
地域による格差 | 地域によってサービスの質や価格に差がある場合がある |
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火葬費用の内訳
火葬費用の主な内訳について詳しくご紹介します。
棺の料金
棺は、ご遺体を安置し火葬の際に使用される容器です。材質や装飾によって価格が異なります。
棺の相場価格 | 100,000〜500,000円程度 |
支払い先 | 葬儀社または火葬場 |
棺の種類は、故人の希望やご遺族の意向、予算などを考慮して決定します。直葬の場合は、比較的シンプルで安価な棺が選ばれることが多いです。
霊安室の使用料
霊安室は火葬までの間、ご遺体を安置しておく部屋です。使用期間や冷蔵設備の有無によって料金が変動します。
霊安室の相場価格 | 1日あたり5,000〜30,000円程度 |
支払い先 | 葬儀社または火葬場 |
ご遺体の搬送料
ご遺体を病院や自宅から火葬場まで搬送する費用です。距離や時間帯によって料金が変動します。深夜や早朝、遠距離の場合は割増料金が発生することもあるので注意が必要です。
ご遺体搬送の相場価格 | 10,000〜30,000円程度 |
支払い先 | 葬儀社 |
なお、ご遺体の搬送には専用の車両(霊柩車)が使用されます。
火葬場の使用料
火葬場の施設を使用するための料金です。公営と民営で使用料が大きく異なります。なお火葬場の使用料には、火葬炉の使用料、火葬作業員の人件費などが含まれます。
火葬場の使用料は、火葬費用の中で最も大きな割合を占める項目の一つです。公営と民営で大きな差があるため、選択の際は慎重に検討する必要があります。
公営火葬場の相場価格 | 0〜100,000円程度 |
民営火葬場の相場価格 | 50,000~150,000円程度 |
支払い先 | 火葬場 |
骨壺の料金
骨壺は遺骨を納める容器のことです。材質やデザインによって価格が異なります。
骨壺の相場価格 | 5,000〜30,000円程度 |
支払い先 | 葬儀社または火葬場 |
骨壺は、故人を偲ぶ大切な品となります。予算や好みに応じて選択しましょう。
待合室使用料
火葬中にご遺族が待機する部屋の使用料です。
火葬場によっては火葬料金に含まれる場合もあり、使用時間や部屋の広さによって料金が変動します。
待合室使用の相場価格 | 0〜20,000円程度 |
支払い先 | 火葬場 |
また、火葬場によってはフリードリンクとなっており、待合室の使用料に飲み物の料金が含まれる場合もあります。
火葬費用を安く抑える方法
火葬費用を抑えるための主な方法をいくつかご紹介します。
自治体の公営火葬場を利用する
公営の火葬場は民営と比べて料金が安く設定されているため、費用を抑えるならば民営よりも公営の火葬場を選びましょう。
特に市内在住者の場合、大幅に費用を抑えられる可能性が期待できます。ただし、予約が取りにくい場合もあるので、早めに予約状況を確認することをおすすめします。
公営火葬場を利用する際のポイント |
・居住地の自治体の火葬場を確認する ・予約方法と空き状況を事前に確認する ・必要書類(火葬許可証など)を準備する ・利用可能なサービスや設備を確認する |
複数の葬儀社から見積もりを取って比較する
葬儀社によって料金体系が異なるため、複数の葬儀社から見積もりを取り、比較検討しましょう。最低でも3社程度は比較することをおすすめします。
見積もりのチェックポイント |
・葬儀の種類 ・基本的なプランの内容と含まれているオプション ・費用の内訳と合計金額 ・支払い方法 |
なお、見積もりを出してもらったら内容を詳細に確認し、不明点はきちんと質問してください。特に、追加料金の有無と見積もり有効期限はしっかり確認しましょう。
時間に余裕があれば口コミや評判も参考にすることをおすすめします。
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オプションのランクを下げる
火葬場や葬儀社からの見積もりに含まれる項目の中には、オプションのランクを落とすことで金額を抑えられる可能性があります。
ランクを下げられるオプションは以下のとおりです。
・祭壇:簡素なものを選択する
・棺:シンプルな素材や設計のものを選ぶ
・返礼品:必要最小限のものにする、または省略する
・料理:簡素なものにする、または省略する
・供花:数を減らす、または省略する
ランクを下げればその分簡素なものになるため、故人や他のご遺族の希望を尊重しつつ予算とランクのバランスを取りましょう。
自治体などの補助制度を利用する
自治体や各種保険制度には、次のような火葬費用に関する補助制度があります。
自治体独自の補助金制度 | 地域によって内容が異なる。一般的に、低所得者や高齢者を対象とした制度が多い。 |
葬祭扶助制度 | 故人または喪主が生活保護受給者であった場合に利用可能。葬儀や火葬に必要な最低限の費用が支給される。事前に福祉事務所に相談し、申請手続きを行う必要がある。 |
葬祭費補助金制度 | 故人が75歳以上で、国民健康保険や後期高齢者医療保険制度に加入していた場合に利用できる。 |
補助制度を利用することで、火葬代が戻ってくる可能性があります。ただし、制度によって申請期限や条件が異なるため、早めに確認して適切に手続きを行いましょう。
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火葬の費用関連でよくある質問
火葬費用に関してよくある質問と回答をご紹介します。
火葬場で心づけを渡す場合、費用相場や封筒の使い方は?
火葬場のスタッフへ心づけを渡す場合は、以下のポイントを押さえるとよいでしょう。
・費用相場は5,000円程度、最大でも10,000円まで
・白い無地の封筒やポチ袋に入れる
・心づけを渡すのは民営場合のみ(公営は公務員のため渡せない)
・当日の混乱を避けるため、事前に準備しておくこと
・目立たないように渡すこと
・感謝の言葉を添えること
なお、葬儀社への心づけは葬儀にかかる費用一式の中に、担当者への心付けも含まれていると考えてよいため不要です。
火葬費用の支払いは分割できる?
火葬費用の分割払いの対応は、公営・民営によって異なります。
公営の対応 | 分割払いは対応していない。基本的に一括払いのみ。 |
民営の対応 | 葬儀社によっては分割払いに対応している場合がある。 |
分割払いを希望する場合は、事前に葬儀社や火葬場に相談することをおすすめします。分割払いが可能な場合でも、回数と期間や金利、手数料などが葬儀社によって異なるため、しっかり確認をしておきましょう。
経済的に火葬費用の支払いが困難な場合は、自治体の福祉課や社会福祉協議会に相談することも視野にいれましょう。場合によっては、低利子または無利子の貸付制度を利用できる可能性があります。
火葬のみでもお布施は必要?
火葬のみの場合でも、宗教的な儀式を行う場合はお布施が必要となることがあります。
ただし、完全に宗教的な要素を省いた直葬の場合はお布施を用意する必要はありません。
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まとめ
火葬費用は、公営と民営の火葬場で大きく異なり、また地域によっても差があります。一般的に、公営の火葬場の方が費用を抑えられますが、予約が取りにくい場合もあります。
なお、火葬のみの直葬を選択する場合でも、一連の手配は葬儀社に依頼することがおすすめです。
宗教的儀式を行わない場合でも、ご遺体の安置場所の確保、搬送、火葬場の手配など、さまざまな対応が必要となるため、葬儀社に任せることでご遺族の負担を減らし、葬儀をスムーズに進行させることができます。
また、火葬費用の用意が難しい場合でも、補助金制度などを利用することで負担を減らすことができます。火葬は人が亡くなったら必ず行わなければならない儀式なので、予算とのバランスを見て、無理のない範囲で内容を決めましょう。