香典の表書きに「薄墨」を使うのは、通夜と告別式、初七日法要の時に限ります。これは諸説ありますが、急な知らせを受けて急いで駆けつけたため、十分な濃さの墨を用意できなかったという理由がひとつです。
繊細な人の心情が反映されたマナーのため、守るように心がけましょう。
一方、四十九日法要以降は事前に準備することができるので、薄墨ではなく濃墨を使用します。
香典の表書きは通夜や葬儀では「御霊前」、四十九日法要以降は「御仏前」と書くのがマナーです。四十九日法要以降は薄墨は使わないため、「御仏前は濃墨で書く」と覚えておくと良いでしょう。
薄墨と濃墨を使いわける理由と、簡単にわかる使い分け方をわかりやすく解説します。
もくじ
香典の表書きは「薄墨」と「濃墨」を使い分ける
香典の表書きは常に同じではなく、書く言葉から墨の濃さまで時期によって変わるので注意が必要です。
では、どのように使い分ければ良いでしょうか。
通夜や告別式と四十九日の法要で異なる表書きの決まり事と、書く際の墨の選び方を解説します。
お通夜と葬儀・告別式、初七日法要の表書きは「御霊前」
表書きの書き方は、通夜や葬儀と四十九日法要で異なります。一般的には通夜と葬儀・告別式、初七日法要までが「御霊前」。四十九日法要以降は「御仏前」です。
初七日法要まで「御霊前」と書くのは、仏教では四十九日までに来世の行き先が決まると考えられているためです。四十九日が過ぎると、故人は無事に成仏し「仏」となるため「御仏前」を使います。
ただし浄土真宗では「御霊前」は使いません。何故なら、人は亡くなると閻魔大王の裁きを経ずに成仏し、そのまま仏になると考えられているからです。浄土真宗の方に香典を渡す際は常に「御仏前」と書きます。
どの宗派が分からず通夜や告別式に参列する際は、「御香料」か「御香典」にしておくのもよいでしょう。どういった場合でも使える汎用性の高い表書きです。
四十九日法要からは香典の表書きは「御仏前」
四十九日法要以降は「御霊前」は使わず、「御仏前」と書きます。
不祝儀袋は双銀や黒白の結び切りか、もしくはあわじ結びのものを用意しましょう。
四十九日法要より前は「薄墨」を使用する2つの理由
「御霊前」や「御仏前」などの表書きは不祝儀袋に印刷されていることもあります。しかし、自分の氏名については必ず自分で書く必要があるため、筆ペンは常に用意しておくようにしましょう。
そのときに注意することは薄墨か濃墨か、どちらにするかです。四十九日の法要よりも前、通夜やお葬式、初七日法要の香典袋は「薄墨」で書くのがふさわしいとされています。
薄墨にする理由は諸説ありますが、以下のふたつが有名です。
1. 故人を亡くした悲しみによる涙によって濃墨が薄まった
現在では表書きを書く際、ほとんどの方が筆ペンを使いますが、元々は硯で墨をすってから文字を書いていました。その際、悲しみの涙が硯に入り、墨が薄まった様を表現しているというわけです。
2. 急な訃報で急いでいたため、濃墨を用意できなかった
濃墨の場合、十分時間をかけてすった感じとなりますが、墨が薄い場合は、急いで用意した印象になります。
通夜や告別式では、前もって「香典」を用意していたことをアピールしてはいけません。不吉なことですし、相手に対して大変失礼なことになるからです。薄墨にすることによって、「取り急ぎ持ってきた」ことを表現できます。
香典に新札を使ってはいけない理由と似ていますね。
ちなみに、香典袋の中袋に金額を書きますが、それは薄墨であっても、普通のペンで書いてもどちらでも大丈夫です。
なお、京都のとある地域では常に濃墨を使い、逆に薄墨はマナー違反です。地域によって変わるマナーもあるので、その地域の風習が分からない場合は、年配の方など詳しい人に事前に尋ねておくのも良いでしょう。
四十九日法要以降は「濃墨」を使うのは事前に日程が決まっているため
四十九日法要以降は、「薄墨」は使いません。四十九日法要や初盆、一周忌、三回忌法要の香典は「濃墨」で表書きを書きます。
薄墨ではなく、濃墨で書くことにも理由があります。
四十九日の法要は亡くなってから1カ月以上経って行われるため、法要に参列する際はきちんと準備したうえで参列するのが当たり前です。四十九日の法要は故人が無事成仏したことを仏様に感謝する仏事なので、悲しみを表現するというのもふさわしくありません。
そのため、濃墨で書くほうがマナーとして正しいのです。
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