市民葬・区民葬のメリット・デメリットとは?費用や申し込み方法を解説

投稿:2024-10-17
市民葬・区民葬のメリット・デメリットとは?費用や申し込み方法を解説


近年、経済状況の悪化が社会問題となる中、多くの自治体が導入している市民葬・区民葬が注目を集めています。市民葬・区民葬制度は、低価格で簡素な葬儀を提供することで、経済的負担を軽減し、誰もが尊厳ある最期を迎えられるようサポートするものです。

この記事では、市民葬・区民葬の特徴やメリット・デメリット、利用条件、申し込み方法、費用などを詳しく解説します。

また、一般葬や直葬、家族葬といった代替選択肢との比較も行い、それぞれの状況に応じた最適な葬儀形式の選び方についてもご紹介します。

市民葬・区民葬とは

市民葬・区民葬は、自治体が住民サービスの一環として提供する低価格の葬儀プランです。地域住民の経済的負担を軽減し、誰もが尊厳ある葬儀を行えるようにすることを目的としています。

市民葬・区民葬の主な特徴
・自治体と提携した葬儀社が執り行う
・標準的な葬儀サービスを低価格で提供
・葬儀の内容は簡素で必要最低限

市民葬・区民葬が導入された経緯には、高齢化社会の進展と葬儀費用の高騰があります。

1990年代後半から2000年代にかけて、葬儀費用の高騰が社会問題となり、低所得者や高齢者世帯にとって大きな負担となっていました。そこで、多くの自治体が住民の福祉向上と経済的負担の軽減を目的として、市民葬・区民葬制度を導入しました。

市民葬・区民葬制度により、経済的な理由で葬儀を行えない事態を防ぎ、すべての住民が尊厳ある最期を迎えられるようサポートされるようになりました。

この制度は、経済的に費用の負担が難しい方や簡素な葬儀を希望する方、急な葬儀で時間がない場合などに利用されるケースが多いです。

市民葬・区民葬のメリット

市民葬・区民葬のメリット

市民葬・区民葬は、自治体と葬儀業者が連携して行う葬儀で、一般の葬儀に比べて費用を抑えられることが大きな特徴です。

費用が安い

市民葬・区民葬の最大のメリットは、通常の葬儀と比べて費用を大幅に抑えられることです。

自治体と葬儀社が協定を結び、標準的なサービスを低価格で提供しているため、以下のような経済的な負担の軽減に繋がっています。

  • 祭壇や棺などの葬具が定価より安く提供される
  • 火葬料金が減免されることがある
  • 霊柩車の利用料金が割引される
  • 基本的な葬儀サービスがパッケージ化されている

例えば一般的な葬儀では100万円以上かかるケースが多いですが、市民葬・区民葬ならば50万円以内で執り行えることも少なくありません。

ただし、具体的な金額は自治体によって異なるため、予め確認しておく必要があります。

手続きが簡単

市民葬・区民葬は、自治体が窓口となって手続きを行うため遺族の負担が軽減されます。通常の葬儀では、葬儀社の選定やさまざまな手配を遺族が行う必要がありますが、市民葬・区民葬では多くの部分を自治体が代行してくれます。

例えば自治体と提携した葬儀社が対応するため葬儀社の選定が不要になったり、火葬場の予約を代行してくれます。もちろん、必要書類の準備について自治体にサポートしてもらえます。

葬儀は経済的な負担だけでなく、さまざまな手続きにおける負担も大きいです。そのため、手続きが簡単な市民葬・区民葬は、遺族の負担を減らす点でもメリットが大きいでしょう。

質素な葬儀を希望する場合に最適

近年は従来のような大規模な葬儀ではなく、簡素な葬儀を希望するケースが増えています。

市民葬・区民葬は、必要最低限の内容で執り行われるため、華美な葬儀を望まない方に最適です。

自治体のサポートを受けられる

自治体の葬儀に関する豊富な知識と経験により、遺族に寄り添ったサポートを提供してくれます。

必要な行政手続きのガイダンスはもちろん、福祉サービスの案内やトラブル時の対応・仲介も任せられます。

市民葬・区民葬のデメリット

市民葬・区民葬は、費用を抑えられるという大きなメリットがある一方で、市民葬・区民葬には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。

葬儀社や斎場が限られる

市民葬・区民葬を利用する場合、自治体と提携している葬儀社や斎場を使用することが条件となります。費用を抑えるために自治体と業者が協定を結んでいるため、希望の葬儀社へ依頼することはできません。

故人や遺族が特定の葬儀社や斎場を希望している場合、市民葬・区民葬では希望に沿えない可能性があります。

また、提携業者の数が少ない場合、予約が集中して希望の日程で葬儀を行えないこともあるため注意が必要です。

葬儀の内容が限定的

市民葬・区民葬は費用を抑えるために、必要最低限の内容で提供されています。そのため、葬儀の内容や使用する備品などにも制限があります。

市民葬・区民葬で制限があるもの
・祭壇の種類や大きさ(通常は簡素な白木祭壇)
・生花の量や種類
・棺の種類
・追加のオプションサービス

制限があることによって、故人や遺族の希望通りの葬儀を行えない可能性があるため注意してください。

追加費用がかかる場合がある

市民葬・区民葬の基本プランは低価格に設定されていますが、追加のサービスや品物を希望する場合は別途費用がかかります。

追加費用がかかる項目
・基本プラン以外の祭壇や棺の選択
・追加の生花や供花
・会葬礼状や返礼品
・式場使用料(寺院や指定場所以外で行う場合)
・僧侶への謝礼

追加費用は、通常の料金で請求されることが多いため、結果的に一般の葬儀とあまり変わらない金額になってしまうこともあります。

追加費用によって、当初の予算を大幅に超えてしまう可能性も考慮して、事前に必要なサービスと費用を確認し、予算管理をしっかり行いましょう。

市民葬・区民葬の利用条件と申し込み方法

市民葬・区民葬の利用条件と申し込み方法

市民葬・区民葬を利用するには、一定の条件を満たし、適切な申し込み手続きを行う必要があります。

市民葬・区民葬の利用条件と申し込み方法、必要書類について解説します。

利用条件

市民葬・区民葬の利用条件は自治体によって異なりますが、一般的には以下のような条件があります。

  • 故人が当該自治体の住民であること
  • 喪主が当該自治体の住民であること
  • 一定の所得基準を満たしていること
  • 生活保護受給者でないこと(生活保護受給者には別の制度がある場合が多い)

所得基準がある場合は、前年の所得証明書などの提出が求められることもあります。

なお、市民葬・区民葬の対象とならない場合でも、自治体が他の支援制度を用意していることがあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

申し込み方法

市民葬・区民葬の申し込み方法を解説します。

  1. 自治体の担当窓口(福祉課や市民課など)に連絡する
  2. 利用条件を満たしているか確認する
  3. 必要書類を準備し、提出する
  4. 自治体から提携葬儀社の紹介を受ける
  5. 葬儀社と具体的な内容を相談し、契約を結ぶ

申し込みは原則として故人の死亡後、速やかに行う必要があります。休日や夜間の場合は自治体の宿直窓口や、委託先の葬儀社に連絡することになります。

なお、市民葬・区民葬は、全ての自治体で実施されているわけではありません。提供されるプランや内容も自治体によって異なります。市民葬の有無や内容については、具体的な地域の役所や市役所に問い合わせて確認しましょう。

必要書類

市民葬・区民葬の申し込みに必要な書類は、自治体によって異なります。市民葬・区民葬の申し込みで必要書類としてよく挙げられている書類等をご紹介します。

  • 死亡診断書または死体検案書(コピー可)
  • 申請者(喪主)の身分証明書
  • 故人の住民票(除票)
  • 申請者と故人の関係を証明する書類(戸籍謄本など)
  • 所得証明書(所得基準がある場合)
  • 印鑑

必要書類は自治体によって異なるため、事前に確認しておきましょう。

すべての書類を揃えることが難しい場合は、すぐに自治体へ相談をして、後日提出などの対応ができないか確認しましょう。

生活保護受給者の場合は、別の制度を利用できるケースもあるため、受給証明書が要求されることもあるので事前に準備をしておきましょう。

市民葬・区民葬の費用

市民葬・区民葬の費用は、通常の葬儀と比べて安く設定されています。ただし、具体的な金額は自治体によって異なるうえに、追加費用によって想定より高額になるケースもあります。

もしも市民葬・区民葬を利用する場合の一般的な価格帯と、費用に含まれる内容について解説します。

一般的な市民葬・区民葬の価格帯
最小限のプラン15万円〜30万円程度
標準的なプラン30万円〜50万円程度

市民葬・区民葬の費用には基本的に、以下の項目が含まれるケースが多いです。

  • 祭壇(白木祭壇が一般的)
  • 納棺用品(死装束、位牌など)
  • 火葬料金
  • 霊柩車料金
  • 葬儀社の基本サービス料

基本的なパッケージに入っていない項目に関しては、別途追加費用がかかります。

市民葬・区民葬の費用は、通常の葬儀と比較して安価に設定されていますが、家計に大きな影響を与える可能性は十分にあるため、事前に詳細な見積もりを取りましょう。

市民葬・区民葬を利用する際の注意点

市民葬・区民葬を利用する際の注意点

市民葬・区民葬を利用する際には、いくつかの重要な注意点があります。市民葬・区民葬を利用する際に注意するべき点を解説します。

自由度が低い

市民葬・区民葬では価格を抑えるためにいくつかの制限が設定されています。そのため、通常の葬儀と比較すると自由度が低くなります。

  • 祭壇の種類や大きさが限定される
  • 棺の選択肢が少ない
  • 生花の量や種類が制限される
  • 式次第が標準化されているなど

このような制限によって故人や遺族が希望する葬儀と、方向性が合わなくなるケースもあります。例えば、大規模な葬儀や特別な演出を希望する場合は、市民葬・区民葬では対応できません。

事前に提供されるサービスの内容を詳しく確認し、重要な要素については追加料金で対応可能か相談してみましょう。

追加費用がかかる場合がある

基本プランには含まれていないサービスや品物を希望する場合、追加費用が発生します。追加費用によって、当初の予算を大幅に超過してしまう可能性があることを考慮しましょう。

予算を大きく上回り、家計に大きな負担がかかってしまう前に、契約前の詳細な見積もりと必要項目、費用をよく確認してください。

自治体によって内容が異なる

市民葬・区民葬の内容や条件は、自治体によって大きく異なります。そのため、他の地域の事例をそのまま適用できない場合も多いです。

自治体によって異なる可能性がある項目
・利用条件(所得制限など)
・提供されるサービスの内容
・基本料金
・申し込み方法や必要書類
・提携している葬儀社や斎場の規模・環境

市民葬・区民葬以外の選択肢

市民葬・区民葬が故人や遺族の希望に合わない場合は、他の葬儀形式を検討することが重要です。

市民葬や区民葬以外にも、故人の意向や遺族の状況に応じたさまざまな形式があります。それぞれの特徴や違いを理解し、最適な形式を選ぶためには、各葬儀形式のメリット・デメリットを比較することが大切です。

次に、市民葬・区民葬以外の主な選択肢を表でまとめていますので、参考にしてみてください。

【比較】市民葬・区民葬以外の選択肢
葬儀形式メリットデメリットこんな方におすすめ
一般葬・多くの参列者を招ける・親族の納得を得やすい・準備や対応の負担が大きい・費用が高額になりやすい・故人の交友関係が広い場合・故人が社会的地位のある役職に就いていた場合
直葬(火葬式)・葬儀費用を抑えられる・体力・精神的負担が少ない・抵抗感を感じられやすい・菩薩寺に納骨を断られることもある・とにかく葬儀費用を抑えたい方・宗教儀式を重視しない方
家族葬・葬儀費用を抑えられる・故人との時間をゆっくり過ごせる・香典が少ない・葬儀後の弔問対応が発生する・葬儀費用を抑えたい方・身内だけで故人を見送りたい方

この表を参考に、市民葬・区民葬以外の選択肢があなたやご家族に適しているかどうかを検討してみてください。それでは、次に各葬儀形式についてさらに詳しく解説していきます。

一般葬

一般葬とは親族から友人知人、同級生、職場の同僚など幅広い関係者を招き、お通夜から告別式まで2日間に渡り行われる葬儀のことです。

自由度が高く、葬儀社が全面的にサポートをしてくれます。

市民葬・区民葬との違い
・費用が高い(平均100万円〜200万円程度)
・葬儀内容の自由度が高い
・参列者数に制限がない

故人の社会的地位が高く多くの弔問客が予想される場合や、伝統的な葬儀スタイルを希望する場合、予算に余裕がある場合に適した葬儀です。

直葬(火葬式)

直葬は、通夜や告別式を行わず、火葬のみを行う最も簡素な葬儀形式です。

最小限の儀式で完結し、所要時間も半日程度と短く、最も予算を抑えられる選択肢でもあります。

市民葬・区民葬との違い
・さらに費用が安い(平均10万円〜40万円程度)
・儀式がほとんどない
・参列者は極めて少数(家族のみなど)

故人が生前に簡素な葬儀を希望していた場合や、経済的な理由で葬儀費用を最小限に抑えたい場合などに適した葬儀です。

家族葬

家族葬は、近親者やごく親しい友人などの身内のみで行う小規模な葬儀形式です。

通夜を省略するなど簡略化されたプランも多く、故人との思い出を共有する時間を重視する傾向にあります。

市民葬・区民葬との違い
・費用は中程度(平均100万円程度)
・葬儀内容のカスタマイズが可能
・参列者を自由に選べる

故人や遺族が小規模な葬儀を希望する場合やプライバシーを重視したい場合、一般葬ほどの費用はかけられないが、ある程度の予算は確保できる場合に適した葬儀です。

まとめ

市民葬・区民葬は、経済的負担を軽減し、簡素ながらも尊厳ある葬儀を提供する点で、多くの人にとって有益な選択肢となっています。

費用面はもちろんですが、手続きが簡単に行えるなど、準備にかかる負担を軽減できる点も市民葬・区民葬の大きなメリットです。

ただし、市民葬・区民葬を利用するには一定の条件を満たしたうえで、適切な方法で申し込む必要があります。

自治体によって利用条件や必要書類、葬儀のプラン内容、利用料金が大きく異なるため、事前によく確認しておくことをおすすめします。

著者:葬儀のデスク編集部
葬儀のデスク編集部
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