お葬式はさまざまな人が動いてくれるからこそ、スムーズに営むことができます。中には何度感謝の気持ちを述べても足りないほど、心からお礼を伝えたい関係者もいるでしょう。
そのようなときに、感謝の気持ちを簡単に表すことができるのが心付けです。しかし心付けは不要なケースが多く、渡さないことが一般的になりつつあるようです。
そもそも葬儀で心付けは渡すべきなのでしょうか?
心付けを渡す判断基準と、渡す場合の相場について封筒の作法を交えて解説します。
もくじ
お葬式(葬儀)の心付けを渡すかの判断基準
葬儀がスムーズに営むことができるのは、さまざまな人が動いて滞りなく進むように手配されているからです。葬儀関係者の中には、特別お世話になる人もいるでしょう。
葬儀では、特にお世話になった人に心付けを渡す風習がありますが、はたして本当に渡す必要があるのでしょうか?
葬儀で心付けが必要になる判断基準について解説します。
「心付け」は葬儀費用とは別にお礼の気持ちで渡すお金
「心付け」とは、冠婚葬祭などでお礼の気持ちとしてお世話になった関係者にわたすお金のことです。欧米などでよく見られる「チップ」と同じような意味であり、必ず渡さなければならないお金ではありません。
ちなみに、心付けは葬儀費用とは別であり、基本的に葬儀当日に関わった人に渡します。主に心付け渡す対象となる方は以下の通りです。
- 霊柩車やマイクロバスなどの運転手
- 葬儀の案内係、台所係など
- 火葬場のスタッフ(公営の場合は心付けの受け取りが禁止されているので注意)
- 葬儀社の担当者
- 葬儀を手伝ってくれた友人や親戚など
なお、僧侶へのお布施やお車代などは、心付けとは別なのできちんと渡しましょう。
心付けは基本的に渡す必要はない
心付けは渡さなければならない義務はありません。
心付けの風習自体は日本に古くからありますが、近年では葬儀社が会社規定で受け取りを禁止しているケースも増えています。中には心付けを受け取ると、解雇になるほど厳しく取り締まっているケースもあるため注意が必要です。
また、心付け費用を予め計上して見積りを出している葬儀社もあります。予め計上されている場合も、別途渡す必要はないので用意しなくても良いでしょう。
このように、心付けは葬儀社などによって対応が変わるため、渡したい場合はルールやマナーに合わせる必要があります。
心から感謝をしている場合や友人などに手伝ってもらった場合は渡す
心付けは義務ではないうえに、渡す場合でも葬儀当日の関係者全員に渡す必要はありません。
渡す判断基準は「心から感謝したいかどうか」です。例えば、遺族に代わって葬儀の準備を進めてくれた世話役の人や、最後まで心に寄り添ってくれた担当者など、特に感謝の気持ちを伝えたいと思った人に渡すとよいでしょう。
また、葬儀当日に親戚や友人、近所の人に手伝ってもらった場合は、心付けを用意したほうが無難です。
葬儀の心付けの相場と封筒の作法を解説
葬儀の心付けは義務ではありませんが、渡したいと思った場合はルールやマナーに合わせて渡してください。
では、葬儀での心付けはどのくらい渡したらいいのか、心付けの相場と封筒のお作法を解説します。
心付けの相場は2,000~10,000円程度で地域や業種によって異なる
葬儀の心付けの相場は、だいたい2,000~10,000円程度で、地域や業種によって異なります。たとえば、遺族の友人として葬儀を手伝った場合、地方では2,000~3,000円ほどが主流ですが、都市部では10,000円以上渡すケースもあります。
なお、業種による心付けの相場は以下の通りです。
- 霊柩車の運転手:3,000円~5,000円
- ハイヤーやマイクロバスなどの運転手:2,000円~3,000円
- 寝台車の運転手:2,000円~5,000円(長距離なら多めに渡すとよい)
- 葬儀の案内係、台所係など:2,000円~3,000円
- 火葬場のスタッフ:3,000円~5,000円
- 葬儀社の担当者や世話役:5,000円〜10,000円
- 友人などのお手伝い係:2,000円〜3,000円
あくまで相場なので、金額が多少上下しても問題ありません。そもそも心付けは義務ではないので、ほんの気持ち程度の金額を包むくらいでも良いです。
心付けの受け取りが禁止されている場合は、無理に渡してはいけません。
一括でではなく個々人に切りのいいタイミングで直接渡す
心付けが予め見積もりに計上されていない場合は、一括で渡すのではなく、渡したい人に個々人で切りのいいタイミングを見計らって直接渡します。
切りのいいタイミングは、基本的に役割やひとつの過程が終了したときです。
- 霊柩車の運転手:葬議場に到着したとき
- ハイヤーやマイクロバスなどの運転手:降車するときもしくは火葬後に式場に戻ったとき
- 寝台車の運転手:安置場所や式場に到着したとき
- 葬儀の案内係、台所係など:葬儀や食事が終了したとき
- 火葬場のスタッフ:棺を火葬炉に入れるまでのタイミング
- 葬儀社の担当者や世話役:葬儀の翌日もしくは翌々日
- 友人などのお手伝い係:葬儀終了後もしくは葬儀翌日以降
渡すタイミングがバラバラで難しいので、喪主ではなく遺族や世話役が代わりに渡しても問題ありません。
葬儀社によっては、予め心付けを預かっておいて、キリのいいタイミングで渡せるように声をかけてくれることもあります。心付けを渡すタイミングに不安がある場合は、葬儀社に相談してみるとよいでしょう。
封筒には「志」「寸志」と書き、小さい不祝儀袋か白い無地の封筒を使う
心付けは僧侶へのお布施同様に不祝儀なので、無地の白い封筒か不祝儀袋に入れて渡しましょう。水引きが印刷されている場合は、白色と黒色の組み合わせが一般的です。なお、一部の地域では黄色と白色の組み合わせを使っているところもあります。
金額が少ない場合は、お年玉を渡すときに使うような小さいポチ袋を使用しても問題ありません。ただし、金額が大きい場合はお札を折らずに入れられるサイズの封筒を選びましょう。
表書きには薄墨で「心付け」もしくは、「志」「寸志」「御礼」などと記載するのが一般的です。ただし、関係者側に不幸があったわけではないので、薄墨がない場合は通常の黒墨を使っても問題ありません。
葬儀社が心付け専用の袋を用意してくれるケースもあるので、必要な場合は聞いてみるとよいでしょう。
葬儀の心付けは感謝の気持ちを直接伝えたいときに渡せばいい
葬儀の心付けは必ず渡さなければならないわけではありません。渡す場合も、お世話になった人全員に渡す必要はありません。
そもそも心付け自体、お礼の気持ちとして渡すお金なので、心から感謝の気持ちを伝えたい場合に渡せばいいものです。
なお、近年では心付けを不要として受け取り自体を禁止しているケースが増えているので、渡したい場合は必ずルールやマナーなどを確認してから渡しましょう。