葬儀の際、喪主は遺族代表として挨拶をする機会が多々あります。喪主挨拶の基本は故人を偲び、参列者に対して感謝の気持ちを伝えることです。
ただし慶弔では、忌み言葉(死亡、急死など)や重ね言葉(ますます、重ね重ねなど)といった縁起が悪く、使わないほうが良いとされる言葉があるので、これらは別の言葉へと言い換える必要があります。
さまざまなシーンでの挨拶の例文をメインに、喪主が挨拶をするタイミングやポイントなど、弔いの場にふさわしい挨拶をするための知識を解説します。
もくじ
喪主の挨拶時に気をつけなければならないこと
喪主は遺族の代表者として、参列者の前で挨拶する機会が何度かあります。喪主の挨拶は故人に哀悼の意を示し、参列者に感謝の気持ちを伝えるためのものです。くれぐれも失礼がないようにしなければなりません。
まずは、喪主の挨拶時に気をつけるべきことを解説していきます。
喪主が挨拶をするタイミング
細かいものを合わせると、喪主が挨拶をするのは下記のタイミングです。
- 世話係への挨拶
- 参列者に対しての挨拶
- 僧侶に対する挨拶
- お通夜や通夜振る舞いでの挨拶
- 葬儀や告別式での挨拶
お通夜や通夜振る舞いの開始前、葬儀や告別式の際は、弔問客全員の前で挨拶することになります。どのような言葉を伝えるのか、予めカンペ(原稿)を準備しておくと安心です。
のちほどシーン別の例文を紹介するので、参考にしてみてください。
挨拶で用いてはならない「忌み言葉」
お通夜やお葬式、告別式、四十九日法要等の挨拶では、用いてはならない「忌み言葉」あります。忌み言葉は、不幸や不吉なことを連想させるので縁起が悪いとされている言葉のことです。
では、どのような言葉が忌み言葉にあたるのでしょうか。
不幸が繰り返されることが連想される「重ね言葉」
まずは、「重ね重ね」「重ねて」「次々」「引き続き」「くれぐれも」「たびたび」「いよいよ」「ますます」「再び」等の、重ね言葉といわれるものです。これらの言葉は不幸が繰り返されることが連想されるので、避けるべきとされています。
生死に関する言葉や不吉な言葉
次に、生死に関する言葉、不吉な言葉も忌み言葉になります。「死」「死亡」「死去」「生きる」「生きている頃」「生存」「落ちる」「消える」「浮かばれない」「迷う」等は、慶弔の挨拶では使わないように気を付けましょう。
数字の「4」や「9」も「死」や「苦」を連想させてしまう不吉な言葉となります。
忌み言葉の中には、日常生活でもよく使っている言葉もあるでしょう。無意識に挨拶の中で使ってしまうことがあるかもしれません。
喪主の方に悪意はなくても、参列者の中には忌み言葉に敏感に反応する方がいる可能性があります。挨拶する際は、こうした言葉を使わないように注意した方がいいでしょう。
ちなみに忌み言葉とは少し違いますが、宗教の違いで使うべきではない言葉があります。
例えばキリスト教では、「安らかなお眠りをお祈りいたします」と伝えるのが一般的です。「死」は終わりではなく現世の罪が神様に許され、天に旅立つという考えなので、仏教で使う「ご冥福をお祈りいたします」という言葉は相応しくありません。
挨拶をする際は、宗派についても十分配慮する必要があります。
「家族葬」でも喪主の挨拶は必要
「家族葬」は故人の身内や親族、ごく親しい方だけで執り行う小規模な葬儀です。家族葬の場合の喪主挨拶はどうするべきなのでしょうか。
結論から言うと、家族葬の場合も喪主の挨拶は必要です。基本的には、一般的な葬儀と同じく参列者への感謝の気持ちや、故人に代わって生前お世話になったことに対するお礼等を伝えると良いでしょう。当然ながら、先述した「忌み言葉」も挨拶の中で使うべきではありません。
ただし、身内だけで行う家族葬の場合はかしこまった挨拶をしないケースがあります。堅苦しい挨拶をせず、故人との思い出話に花を咲かせ、故人を偲ぶという葬儀方法は家族葬ならではのメリットです。
喪主挨拶のシーン別例文集
喪主挨拶の内容は、自己紹介(故人との関係)や参列者への感謝、故人との生前の付き合いに関する感謝、故人とのエピソード、遺族に対する今後の支援等を盛り込むと良いです。
中には、故人とのエピソードが尽きない方、参列者に向けて伝えたいことがたくさんあるという方がいるかもしれませんが、時間は限られています。長くても3分以内に納めるようにしましょう。
ここからは、シーン別喪主の挨拶例文集をご紹介いたします。
告別式の際の挨拶例文
告別式では、基本的に「出棺前」のタイミングで挨拶をします。告別式の挨拶では、忙しい中参列してくれた方々への感謝の気持ち、そして告別式を無事に終えたことへの感謝の気持ちを伝えると良いでしょう。
では、告別式の際の挨拶例文を紹介します。
遺族を代表し、皆さまに一言挨拶を申し上げます。 私は、故人の○○(続柄)の○○(名前)でございます。 本日はご多忙のところ、ご会葬いただきまして誠にありがとうございました。生前故人に寄せられた皆様のご厚情に対し、心より御礼申し上げます。おかげをもちまして、昨日の通夜と本日の告別式を滞りなく執り行うことができました。 〇〇(故人)が晩年を豊かに過ごせましたのも、皆さま方のご厚情のたまものと深く感謝いたします。 私どもは未熟でございますが、故人の遺志を継ぎ、精進していく所存でございます。皆さまには、故人と同様お付き合いいただき、お力添えをいただければ幸いに存じます。 本日は誠にありがとうございました。 |
今回紹介した例文は、典型的な文章となります。これだけでも問題ありませんが、感謝の気持ちを伝えた後、故人の人柄やエピソード、病気が発覚してからの過ごし方等を盛り込むことで、より気持ちも伝わりやすいです。
故人に思いを馳せ、自分の言葉で挨拶文を完成させてみても良いでしょう。
通夜の際の挨拶例文(通夜時・通夜終了時)
お通夜の挨拶では、参列者への感謝の気持ち、故人の気持ちを代弁する言葉等を盛り込むと良いです。
本日はお忙しいところ、○○(故人)の通夜にお集まり頂きまして、誠にありがとうございます。○○も喜んでいることと存じます。心より感謝申し上げます。 ささやかではございますが、別室に酒肴を用意しております。お時間の都合がよろしければ、どうぞ召し上がりながら故人の思い出話を聞かせていただければ幸いでございます。 本日は誠にありがとうございました。 |
通夜振る舞いの際の挨拶例文
通夜振る舞いでも、参列者への感謝の気持ちと故人の気持ちを代弁した言葉を改めて伝えます。最後には、葬式・告別式の案内を忘れないようにしましょう。
本日はお忙しいところ、○○(故人)の通夜にお集まりいただきまして、誠にありがとうございました。皆様に見守られて、○○もさぞかし喜んでいることと存じます。故人が生前たまわりましたご厚誼と、ご厚情に心より感謝申し上げます。 明日の告別式は○○時○○分より○○斎場で執り行う予定でございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました。 |
僧侶への挨拶例文
僧侶への挨拶は、お通夜の前に出迎える時とお通夜が終わり御布施をお渡しする際に行います。
▼お通夜の前の例文
本日はお忙しい中、ご足労いただき誠にありがとうございます。 不慣れな事でございますので、ご指導いただきますようよろしくお願いいたします。 |
▼御布施をお渡しする時の例文
本日は大変丁寧なお勤めを賜り、誠にありがとうございました。 お蔭様で無事に通夜を執り行うことができました。 些少ではございますが、どうぞこちらをお納めください。 |
弔問客への挨拶例文
弔問客から「このたびはご愁傷様です」等、言葉をかけられた時はどのように返すと良いのでしょうか。
この場合は、「お忙しい中、ご弔問いただき誠にありがとうございます」「ご丁寧にありがとうございます」と返すと良いでしょう。手短に「ありがとうございます」や「恐れ入ります」等の言葉を返しても構いません。
もしくは何も言葉を返さず、深々とお辞儀をしても気持ちは伝わります。
友人関係への挨拶例文
故人の友人関係の方が弔問にきていただいた際の挨拶は、基本的に形式に従うといいでしょう。故人との関係性によっては、少しくだけた表現にしても構いません。故人と友人とのエピソードを盛り込むことは、故人を偲ぶことにもつながるものです。
お忙しい中お悔やみいただきまして、誠にありがとうございます。故人の存命中には格別のご厚情を賜り、あわせてお礼申し上げます。皆様にご弔問いただき、故人も喜んでいるかと思います。 故人は生前皆様とお会いすることを楽しみにしておりました。容態が急変し、それが叶わなかったこと、残念でなりません。 ささやかではありますが、別室に酒肴をご用意させていただきましたので、故人の思い出話をしながら、おくつろぎください。 本日は、誠にありがとうございました。 |
親族への挨拶例文
故人との関係性にもよりますが、親族であればそれほどかしこまって挨拶しなくても構いません。故人の状況はある程度、把握しているものだからです。親族への挨拶では感謝の気持ちを伝え、今後のお力添えをお願いしましょう。
ここでは故人が親であった場合を想定した例文を紹介します。
お忙しい中、お悔やみいただきまして、誠にありがとうございます。○○(故人)は〇日〇時に家族が見守る中、息を引き取りましたが、安らかな最期でございました。 〇〇歳という年齢で天寿をまっとうしたことは、子としてなによりの慰めでございます。 これからは故人の遺志を継ぎ、頑張っていく所存でございます。まだ私未熟な私どもですが、今後ともお力添えをよろしくお願いいたします。 |
仕事関係者への挨拶例文
故人の仕事関係者へ挨拶する場合は、仕事に関するエピソードを盛り込みましょう。ただし具体的な話は避け、差しさわりがないよう配慮することが大切です。
ここでは故人が父親を想定した例文を紹介します。
本日はお忙しいところ、お悔やみをいただきまして誠に恐れ入ります。 仕事人間の父でしたので、最後まで仕事のことを考えておりました。退院して仕事ができることを心待ちにしておりましたが、それが叶わなかったことは残念でなりません。 存命中は、格別のご厚情を賜り、あわせてお礼申し上げます。 ささやかではありますが、別室に酒肴をご用意いたしましたので、お時間の都合がよろしければ、どうぞご歓談くださいませ。本日はありがとうございました。 |
喪主の挨拶は完璧でなくて良い、カンペを見てもOK
ここまで例文をいくつか紹介してきましたが、喪主の挨拶は完璧にしようと思わなくて大丈夫です。遺族は故人を失った悲しみを抱えているものです。挨拶の最中、故人のことを想い、言葉に詰まることがあったり、思うように話せなくなったりするのは仕方がないことでしょう。
弔問客は、遺族の悲痛な思いを察しています。そのため挨拶も覚える必要はなく、カンペ(原稿)を読みながら挨拶しても問題ないです。カンペを挨拶の前に取り出し、そのまま読み上げても構いません。
喪主の挨拶で最も大切にすることは、故人を偲び参列者に対して感謝の気持ちを述べることです。完璧を目指すこと、感動させようとすることを意識するのではなく、心がこもった挨拶をすると良いでしょう。
まとめ:喪主の挨拶は事前に準備しておこう
喪主が挨拶するシーンは、いくつもあります。中でも、お通夜や通夜振る舞い、葬儀、告別式では、参列者全員の前で挨拶する必要があるので事前に準備しておくと安心です。
家族葬でも基本的には喪主は挨拶しますが、身内だけで執り行う場合は堅苦しい挨拶をしないこともあります。
喪主挨拶をする際は、今回紹介した例文を参考しつつ、自分の言葉をまじえて話すようことで気持ちがより伝わるでしょう。
喪主の挨拶は完璧な仕上がりにする必要も、感動させようとする必要もありません。最も大切なのは故人を偲び、参列者に感謝の気持ちを伝えることなのです。