葬式の際は、「遺族側」「参列者側」ともに挨拶の機会が多いため、事前に準備をしておくことで相手に失礼のない対応ができます。
あまり経験する機会がないので不安に思う方もいるかと思いますが、挨拶の言葉はある程度パターンが決まっており、テンプレートを基に自身の状況を肉付けすれば良いので難しく考える必要はありません。
ただし、使ってはいけない忌み言葉やいくつかのマナーがあるため、遺族側、参列者側両方の葬式での挨拶文例と、気をつけるべきポイントを詳しく解説します。
もくじ
遺族がおこなう通夜での挨拶
通夜で挨拶を行うタイミング5つとその注意点
挨拶のタイミングは主に5つあります。
1.僧侶をお迎えした時
最初に僧侶をお迎えしたタイミングで、読経に来ていただいたお礼と慣れない中での対応となる旨を伝えましょう。
2.受付で弔問客を迎えた時
参列してくれた弔問客へ感謝の気持ちを伝えましょう。ただしここでの挨拶は短く簡潔に伝えることがポイントです。
3.お通夜の閉会時
閉会時にも、参列してくださった方々に対して挨拶を行います。同時に通夜振る舞いの案内と、葬儀・告別式の時間や場所の連絡をします。
4.通夜振る舞いの開始時
通夜振る舞いの席に参列者をご案内し終わったら開始の挨拶をします。祝宴で使う言葉は避けなければならないため、念のためNGワードを調べておくと安心ですね。
5.通夜振る舞い終了時
会食が終わったタイミングで、滞り無く通夜を終えることができた感謝を述べてから会を締めましょう。
遺族がおこなう葬式での挨拶
挨拶を行うタイミング8つとその注意点
挨拶のタイミングは主に8つあり、それぞれにポイントがあります。
1.僧侶をお迎えした時
通夜同様、まずは読経して頂く僧侶をお迎えした際に挨拶し、感謝の気持ちを伝えましょう。
2.受付で弔問客を迎えた時
葬儀の前の弔問で、弔問客からお悔やみの言葉を受けた時に挨拶を返します。もし悲しみで言葉が出てこなければ、深くお辞儀をして感謝を表すだけでも結構です。
3.葬儀の終了時
葬儀の終了時、喪主として簡単に挨拶をしましょう。
4.告別式の終了時
告別式の終了時は、親族代表として簡単に挨拶をします。もし、葬儀の後に続けて告別式を行う場合は、式の終わりに挨拶をしますのでここの挨拶は不要です。
5.式終了、出棺時
出棺時、見送ってくれる参列者へ向けて挨拶をします。
出棺時には火葬場への出発に先立ち、最後まで残って出棺の見送りをしてくださったことへの感謝や今後の遺族への厚誼、支援のお願いを含めた挨拶にします。会葬者は立っているので、短く簡潔に述べましょう。この時までに精進落としの案内をするようにしましょう。
6.精進落とし会食開始時
精進落としの会食は、僧侶や関係者へのお礼の挨拶で始めます。宴が始まったら喪主は出席者の席を一人ひとり回りお礼を伝えましょう。
7.精進落としの会食終了時
葬儀・告別式を無事終えた感謝の挨拶をし、締めましょう。
8.僧侶がお帰りになる時
僧侶に感謝の意を伝えた後、挨拶後にお布施を渡します。
基本的に挨拶は喪主が行いますが、万が一代わりに親族が挨拶を行う場合は、「遺族を代表して、ご挨拶をさせていただきます」と始め、喪主との関係性を簡単に自己紹介してから本文に入りましょう。
通夜・葬儀での挨拶文例
受付にて参列者に挨拶を返す時は、なるべく簡潔にしましょう。
受付時の挨拶例文
- お忙しいところお運びいただきありがとうございます。
- ご丁寧に恐れ入ります。
- 〇〇(故人の名称)も喜んでいると思います。
式での挨拶の内容はテンプレートを使いながらも自分のオリジナルな表現も盛り込み、参列者に感謝の意が分かりやすく伝わるよう工夫しましょう。
気持ちを届けたい時は、やはり借りてきた言葉でなく、自身の言葉を使った方が心に響きます。
通夜・葬儀の挨拶|例文1
故人の長男の〇〇でございます。遺族を代表して、ご挨拶をさせていただきます。本日はご多用の中ご会葬を賜り、誠にありがとうございました。おかげをもちまして、本日の告別式をつつがなく執り行うことができました。
父は口数が少ない人でしたが、まとまったお休みには家族旅行をし思い出を作ってくれる心優しい人でした。
本日は皆さまにお見送りをしていただき、父も喜んでいると思います。お世話になった皆様に、心よりお礼を申し上げます。今後とも父の生前同様のご厚誼を賜りますよう、お願い申し上げます。
本日は、ご参列いただきありがとうございました。
通夜・葬儀の挨拶|例文2
遺族を代表しまして、ご挨拶をさせていただきます。私は、故人の長男の〇〇でございます。本日はお忙しい中、母〇〇のためにお集まりいただき、心より感謝申し上げます。ご親交のありました皆様にお見送りをしていただき、母もさぞかし喜んでいることと思います。
母はいつも大らかでどんな時も私達家族を包み込んでくれました。それは病気になってからも変わらず、そんな生き様を誇りに思います。
今後とも、母の生前同様のご指導を賜りますようお願い申し上げます。
本日は、ご参列いただきありがとうございました。
出棺前の挨拶文例
出棺前の挨拶は、葬儀に参列してもらったお礼と、生前お世話になったお礼を述べましょう。
ここでは死因の簡単な説明をしても構いません。故人の生前の様子や人柄について話した後は、今後の決意表明などが盛り込みます。
出棺前の挨拶|例文1
本日はお忙しいところ、父○○の葬儀にご会葬くださり誠にありがとうございます。
皆様から心のこもったお別れの挨拶を賜り、故人もさぞかし喜んでいると存じます。
生前中のご厚誼に、厚く御礼申し上げます。
私どもは未熟ではありますが、故人の教えを守り、精進していく所存です。
今後とも故人同様、ご指導、ご鞭撻いただけますことをお願い申し上げます。
本日は誠にありがとうございました。
出棺前の挨拶|例文2
母は先日脳梗塞で意識不明となり、病院に駆けつけたときにはすでに帰らぬ人となっていました。
毎朝欠かさず散歩し運動も好きであれほど元気だった母が、よもや亡くなろうとは思ってもいませんでした。
母にはまだまだ教わりたいことがたくさんあったのですが、もう聞くこともできないのが残念でなりません。
生前賜りましたご厚情に、深く感謝申し上げてご挨拶とさせていただきます。
会食での挨拶文例
会食が始まる前の挨拶は、葬儀を無事に終えられたことへの感謝や、ゆっくりと過ごし食事してもらいたい旨をお伝えしましょう。
会食前の例文
本日はお忙しいところ、最後までお見送りいただきまして誠にありがとうございました。
おかげさまで滞りなく葬儀を行うことができました。
ささやかではございますが、精進落としのお膳をご用意いたしましたので、故人の思い出をお聞かせいただきながら召し上がっていただければと存じます。
どうぞ、ごゆっくりおくつろぎください。
そして終わりの挨拶では、今後のお付き合いに向けての挨拶をします。
会食後例文
本日はお忙しい中、また遠方よりお越しの方もおられる中、お時間頂戴しましてありがとうございました。
故人の思い出話をもっとお聞きしたいところではございますが、お疲れかと思いますので、これにて終了とさせていただきたいと思います。
遺された家族一同助けあっていきたいと思いますので、どうかこれからも変わらぬご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
どうぞみなさまお気をつけておかえりください。
本日は誠にありがとうございました。
僧侶への挨拶文例
僧侶にはお出迎えとお見送りの際に挨拶をします。
お出迎え時の例文
本日はお忙しい中、ご足労いただき誠にありがとうございます。
何分不慣れでございますので、ご指導いただきますようよろしくお願いいたします。
お見送り時の例文
本日はご丁寧なおつとめを賜り、誠にありがとうございました。
おかげさまで、無事葬儀を執り行うことができました。
些少ではございますが、どうぞお納めください。
参列者がおこなう葬式での挨拶
挨拶を行うタイミングと注意点
親しい方が亡くなった時は、さまざまな想いや労りの言葉をかけたいところですが、親族も知らないことをうっかり口にすると後でトラブルに巻き込まれます。
悪気がなくとも一度ついた火は、本人がいないとなると余計に消すことが難しいです。
挨拶はできるだけありきたりな言葉で、短くすませた方が無難です。
一般的な文言としては、「この度はご愁傷さまでございます。心よりお悔やみ申しあげます。」が挙げられます。
ちなみに「ご冥福をお祈りいたします」は仏式のみの挨拶で、他の宗教の方にはふさわしくありません。同じ理由で「成仏」「往生」「供養」などは仏教用語にあたるので使えません。
同じ仏教でも浄土真宗では故人はすぐに仏になるという概念があるため、「冥福」「霊前」などの言葉は存在しません。
ちなみにキリスト教では、お悔やみのかわりに「帰天」「召天」という言葉をかけます。
これは死というものが、神に召される祝福と考えられているからなのです。
宗教や宗派によって使ってはいけない言葉もあるので、注意しましょう。
葬式での挨拶文例
宗教を問わない挨拶例文
- この度は思いがけないお知らせをいただきました。ご家族の皆様はさぞかしご無念のことでございましょう。私にできますことがありましたらお手伝いいたしますので、何なりとお申し付けください。
- この度は誠にご愁傷さまでございます。突然のことでさぞやお力を落とされていることと存じます。・突然のことでお慰めの言葉もございません。心よりご回復を祈っておりましたのに、本当に残念でなりません。
- この度は誠に残念なことになりまして、心からお悔やみ申し上げます。
キリスト教の挨拶例文
- 安らかなお眠りをお祈り申し上げます。
葬式での挨拶 気をつけなければいけないポイント
使ってはいけない忌み言葉
日本では言霊という概念があり、発した(発された)言葉は現実となると信じる人も多いです。
そのため死を連想させる忌み言葉(消える、終わる、追って、浮かばれない、迷う、四・九)や、重ね言葉(度々、いろいろ、またまた、ますます、次々)は不吉なことや災いを呼ぶとしてマナー違反となります。
また、生命に関する直接的すぎる言葉(ご存命、生存中、生きている頃、亡くなる、死亡、急死)もご遺族の心境を考え避けましょう。
もし故人が小さいお子様の場合は、自分の子供の話も避けるべきです。
いずれも相手への思いやりの気持ちがあれば、自然と避ける言葉だと思います。
しかしながら重ね言葉等、日常的に何気なく使用している言葉あるので、注意して発言するよう心がけましょう。
葬式で失礼のないよう挨拶をするためのポイント
まず残された家族を傷つけないよう、死因を聞くことは避けましょう。笑顔でお話することも場にふさわしくありません。
また、宗教によってふさわしくない言葉や忌み言葉をうっかり使うことがないよう、あらかじめ言い換えの言葉を調べておくと安心です。
当たり前のことですが、自分がされて嫌なことを相手にしてはいけません。
相手への感謝や純粋な気持ちが伝われば良いので、些細な言い間違えや言葉のつっかえなどは気にしなくても結構ですし、立派なことを言おうと気負わなくても大丈夫です。
挨拶の長さは、葬儀や告別式の挨拶は3分程度、出棺時は1分~2分程度、会食時の挨拶は1分程度が挨拶が目安です。長すぎても短すぎても失礼にあたりますので、事前に確認しておきましょう。
挨拶が覚えられない場合は、メモを見ながらでも問題ありません。
用意した原稿を自分で何度か読み、出来れば家族の前で練習として声に出して読んでみて、おかしなところがないか確認してもらうと確実です。
また各行事の全体の流れを頭の中に入れておくと、当日焦らなくて済みます。
覚える余裕のない人は、紙に簡単にまとめて横に大事なこともあわせてメモ書きしておくと安心ですよ。
まとめ 葬式の挨拶は気持ちを込めた言葉を伝えよう
参列者に向けた挨拶はどれだけ立派なことを言うかより、故人との心温まるエピソードを紹介し参列者への感謝をストレートに伝えるほうことの方が大事です。
そもそも式は故人に代わり、お世話になった方への感謝を伝える場なので、心のこもったあなた自身の言葉、偽りない気持ちを伝えてください。
そして挨拶は暗記しなくとも、特に緊張しがちな方はメモを見ながらで構いません。
早口やモゴモゴしたりせず、皆様にちゃんと気持ちが届くようはっきり言うことで、きっと心に残る式になるでしょう。