通夜振る舞い(通夜ぶるまい)とは、通夜の後、遺族が弔問客へ感謝の気持ちを伝えるために設ける会食のことです。故人との思い出を語り合い、故人を偲ぶための会でもあります。
会食といっても、通夜振る舞いはいくつかの基本的な作法があります。
気をつけるべきポイントをおさえていないと、遺族に失礼にあたったり、周囲に不快な思いをさせてしまうことも。
特に、故人が仕事関係の方や、長年親しくお付き合いのあった方の場合は、失礼があるとその後の人間関係にも響きます。
遺族に失礼のないように故人を見送るためにも、通夜振る舞いでの基本的な作法について知っておくことはとても重要です。
通夜振る舞いの基本的な作法や意味、実際の流れを詳しく解説します。
もくじ
通夜振る舞いの意味と実際の流れ
「通夜振る舞い(つやぶるまい)」とは、お通夜に参列してくれた弔問客を遺族が斎場の別室に案内し、弔問のお礼のためのおもてなしをする食事会のことです。
通夜振る舞いを行う意味と実際の流れについて解説します。
通夜振る舞いは遺族が弔問客をもてなすもの
通夜振る舞いとは、お通夜に参列してくれた弔問客を遺族が斎場の別室に案内して、弔問のお礼のためのおもてなしをする食事会のことです。
通夜振る舞いには、弔問のお礼とお清め、故人を供養するという目的で、故人とともにするこの世での最後の食事という意味があります。
今日では夕刻に1~2時間程度の短い時間で営まれる通夜ですが、本来通夜とは文字通り「夜通し」故人に付き添うものであり、通夜振る舞いもまた、夜通し延々と続けられるものでした。
しかし、近年では弔問客を長時間拘束することのない、1時間前後といった短時間での通夜振る舞いが一般的となっています。
通夜振る舞いの最中は、世話役やお手伝いの人は裏方なので同席はできません。
世話役の人たちには別室で仕出し弁当か、通夜振る舞いと同じ料理を交代で食べてもらい、弔問客が帰った後で、通夜振る舞いと同様、お酒や食事でもてなします。
宗教によって通夜振る舞いの行い方にも違いがあります。
神式の葬儀においては通夜祭(仏式の通夜に当たる)の後に、通夜振る舞いに相当する直会(なおらい)が行われるのが通例です。
キリスト教では通夜というもの自体が本来ないため、通夜振る舞いもありません。しかし、キリスト教本来のスタイルではありませんが、日本独自の慣習として通夜に当たる儀式が行なわれることもあり、そこではお茶菓子などがふるまわれます。
通夜振る舞いの食事は精進料理でなくとも問題ない
通夜振る舞いの食事は、お斎(おとき:葬儀・法事など仏事でとる食事)と呼ばれます。
元来は精進料理で、肉や魚は避けられていました。しかし、最近では特にこだわらず、簡素化され、寿司や刺身、手軽につまめるサンドイッチやオードブルなどを大皿に盛ってもてなすのが主流です。
夜更けまでの酒宴になることもありましたが、通夜自体も短時間になっており、それに続く通夜振る舞いも長くても1時間前後というのが一般的になっています。途中で退出する弔問客も少なくありません。
通夜振る舞いは、個別のお膳で供されることが多い精進落としとは対照的に、テーブルに並んだ大皿から各自取り分けるスタイルが主流です。
そのため、大人数が取り分けるのに向いている寿司や煮物、サンドイッチ、オードブル盛り合わせといったメニューが多くなるのでしょう。
本来であれば忌明けまでは肉・魚を避けるべきと考えられますが、今日ではそういった制限もゆるやかとなっており、お祝い事をイメージさせる伊勢海老や鯛などの食材を避ける程度となっています。
また、宗教にもよりますが、死の穢れを清める意味もあり、日本酒やビールなどのお酒も用意されることが多いです。
子どもや車で来られた方のために、お茶やジュースなどアルコールの入っていない飲み物も用意されています。
通夜振る舞いの料理の準備は、葬儀社に手配してもらうことも可能で、その場合は、弔問客の人数を予想して葬儀社に依頼するとよいでしょう。
地方では、喪家で手伝いの人がご馳走を作りますが、都会では店屋物や仕出し屋に頼むのが一般的です。
実際の流れを解説~案内から閉式まで
通夜振る舞いの流れは、次のとおりです。
1.通夜振る舞いの案内
通夜での挨拶の時にあわせて行なわれることもありますが、葬儀会社スタッフなどが順に通夜振る舞いの会場へと案内することがほとんどです。
2.開式の挨拶
通夜振る舞い開始にあたり、喪主が挨拶を行うこともあります。僧侶へのお礼は通夜振る舞い前に行なわれることが一般的です。
3.会食の開始
会食中、遺族は弔問客にお酌をするなどしつつ、挨拶を行います。
あくまで故人を偲ぶ場であり、通常の宴席とは異なりますので、挨拶は手短に済ませましょう。
4.閉式の挨拶
頃合いを見計らって、おひらきとする旨を案内します。この際、告別式の案内もあわせて行なうことが一般的です。
通夜振る舞いの基本的な作法を解説
通夜振る舞いに参加する範囲は地域によって異なります。
関東地方では一般会葬者も参加しますが、関西地方では遺族や親族のみで通夜振る舞いを行うことが多いです。
通夜振る舞いに参加することになった場合の、基本的なマナーを解説します。
通夜振る舞いに誘われたら断らず参加するのがマナー
通夜で僧侶が退場した後、喪主の挨拶で通夜振る舞いのアナウンスがあります。
強制ではありませんが、故人を偲ぶという点から声をかけられたら断らず、なるべく参加しましょう。
参加する場合はひと口でも箸をつけるのがマナーで、箸をつけることが故人の供養になります。
遺族側も弔問客にその旨を伝えて、席についてもらようにお願いしましょう。
通夜振る舞い自体は1時間程度行われますが、故人や遺族と親しい間柄ではない場合は長居せずに30分程度で退席します。
通夜振る舞いは応じるのがマナーですが、やむをえない事情があるならすぐに帰っても構いません。
どうしても通夜振る舞いを辞退する必要がある場合には、遺族や世話人に挨拶をし、退席する際は両隣の人に「お先に失礼します」と挨拶して目立たないように退席します。
ただし、それでも通夜振る舞いへの参加をお願いされた場合には、一口でも箸をつけるようにしましょう。
通夜振る舞いに僧侶が同席しない場合は「御膳料」を渡す
地域や寺院によりますが、できれば僧侶にも通夜振る舞いに同席してもらったほうがよいでしょう。
しかしながら、お寺の都合や遺族への配慮などを理由として、通夜振る舞いに遠慮される僧侶もいます。
もし、僧侶が会食を辞退された場合には、「御膳料(ごぜんりょう)」を渡しましょう。
表書きを「御膳料」として、普通の墨の毛筆か筆ペンで書きます。僧侶に不幸があったわけではないので、薄墨では書きません。封筒は無地で、水引・のしのないもの。喪主の氏名は、御膳料よりもやや小さめに、表書きと同じく普通の墨の毛筆か筆ペンで書きます。御膳料の金額は5,000~10,000円程度が目安で、葬儀が終わってからか、お通夜の前か後に渡せば大丈夫です。
お布施とどう違うのだろうか、と疑問を持たれる方がいるかもしれません。
御膳料とは、僧侶が通夜振る舞いを辞退された場合にのみお渡しするものです。
一方、お布施とは、僧侶がお通夜やお葬式の場で、お経を上げて故人を供養してくれたことに対する謝礼であるという点が異なります。
通夜振る舞いの出欠に関わらず、仏式の葬儀で僧侶が読経してもらっているようであれば必ず必要な費用です。
遺族に対する配慮をする
通夜振る舞い中も遺族は忙しくしています。遺族と話し込んだり、邪魔にならないようにしましょう。
遺族はもてなす側とはいえ、身内を失くしています。故人と関係のない話はしないなど、気遣いを忘れてはいけません。
通夜振る舞いで避けるべき行動
通夜振る舞いは「宴会」ではありません。お酒が提供されることもありますが、節度をもったふるまいを心がけましょう。
通夜振る舞いでは避けるべき行動を6つ解説します。
1. 酔っぱらう、長居してたくさん飲食する
通夜振る舞いの席では、お酒が用意されることもあります。飲める方はお酒を飲んでもかまいません。
ただし、通夜振る舞いは、あくまでも故人を偲ぶ場であり、「宴会ではない」ことを忘れないようにしましょう。
節度を守って、飲みすぎて酔っ払ったり、盛り上がって大きな声を出したりすることがないようにしなければいけません。
また、通夜振る舞いは、1時間程度でおひらきとなります。長居してたくさん飲食するのはマナー違反です。
2. 遺族に故人の死因を尋ねる
突然亡くなった場合などは特に、故人の死因が気にある方もいるかもしれません。
しかし、故人の死因について触れられたくない遺族もいます。たとえ気になったとしても、遺族に死因を尋ねるのはマナー違反です。
3. 大声で話したり、笑ったりする
通夜振る舞いで料理がふるまわれるのは、食事をしながらリラックスしたムードで故人を偲んでほしいという遺族の気持ちの表れでもあります。
実際、故人と親しい関係にあった人などによる生前の思い出話には、思わず笑いを誘われるようなこともあるでしょう。それでも、大声で話したり大きな笑い声を立てたりといったことは控えます。
たとえ、遺族から「にぎやかなほうが故人も喜びます」と言われても、遺族の気持ちを考えて、大声で笑ったりはしゃぐことは慎みましょう。
4. 仕事の話など故人に関係のない話をする
通夜振る舞いの場で、仕事関係の人と顔を合わせることがあります。しかし、仕事関係の人と会っても、そこで名刺交換や仕事の話などをするのはマナー違反です。
通夜振る舞いは単なる食事会ではなく、故人を偲ぶ席であることを忘れないようにしましょう。
故人の思い出などを語らうのが基本なので、仕事関係の話以外でも、故人と無関係の話は極力慎みます。
5. 忌み言葉を使う
通夜振る舞いも葬儀のうちです。葬儀の場で避けるべきとされている忌み言葉(たびたび、引き続き、迷う、など)を使うことのないよう注意しましょう。
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6. 喪主、遺族に弔問客を見送らせようとする
喪主はじめ遺族は、通夜振る舞いがお開きとなっても弔問客を見送ることはせず、自席から目礼するなどにとどめるものです。
喪主や遺族にお見送りをさせようとしてはいけません。また、自分が喪主や遺族側になるときにも、弔問客を見送るのはマナー違反です。
まとめ|通夜振る舞いは故人を偲びしめやかに行うもの
通夜振る舞いとはお通夜に参列してもらったお礼に、遺族が弔問客をもてなす会食のことをいいます。故人の思い出話をしながら故人を供養する目的で、しめやかに行われるものです。
最近では、通夜振る舞いを省略する方も増えていますが、通夜振る舞いでの基本的な作法を覚えておくと、故人や遺族に失礼のないように、正しい作法でお見送りできます。
正しい作法で故人を見送ることも、供養のひとつとなるでしょう。