「痛み入ります」という言葉は、相手に対して敬意を込めつつ、深い感謝の意を伝えるときに使用する言葉です。
一般的な感謝の言葉である「ありがとうございます」と比べ、謙遜の気持ちをより強めた言葉のため、基本的には目上の人や仕事上の取引先などの方に使います。家族や友達など身近な人に対してはあまり使いません。
施主として葬儀を執り行っている場合や受付を担当する場合、参列者から「ご愁傷様です」と言われた際の返事としてもよく使われます。お悔やみの言葉をかけていただくことに慣れていない場合は、前もって頭に入れておくとよいでしょう。
「痛み入ります」の意味とその使い方、注意点などを詳しく解説します。
もくじ
「痛み入ります」の意味と言い換え、使う際の注意点
「痛み入ります」という言葉は、目上の方に丁寧に感謝の気持ちを伝える言葉です。普段よく使われる表現ではありませんが、公式の場で使うことが多いので正しい使い方を把握しておきましょう。
「痛み入ります」の意味や言い換え、使う際の注意点を解説します。
基本的には目上の人に対して使う言葉
「痛み入ります」は、基本的に目上の人に対して使う言葉です。相手が自分にしてくれたことにただ感謝を伝えるだけではなく、恐縮し、深く感謝している気持ちを伝えたいときに使います。
日常生活で使う機会は多くはありませんが、ビジネスシーンや冠婚葬祭では使われることが多いフォーマルな敬語の一つ。話し言葉よりは、手紙やメールで使われることが多いです。
もちろん、取引先など気を遣う相手へのメールで使用しても失礼にあたる言葉ではありません。
相手に対する敬意と同時に深い感謝の念が伝わる言葉なので、ふさわしい場面で上手に使いましょう。
「恐れ入ります」と「痛み入ります」の違い
「痛み入ります」と似た言葉として「恐れ入ります」が挙げられます。一方は「痛み」で一方は「恐れ」ですが、「入ります」というのは共通しており、同じようなニュアンスで使う言葉です。
「痛み入ります」は相手の好意を痛いほど申し訳なく思っていることを表現していますが、「恐れ入ります」は恐縮しつつ感謝しているという表現になります。
どちらかというと、「痛み入ります」のほうが申し訳ない気持ちを強く感じているわけですが、言い換えは可能です。
「痛み入ります」の言い換えは「有難く存じます」
「恐れ入ります」の他に言い換える場合は、シンプルに「有難く存じます」「助かります」「感謝いたします」「恐縮です」他にも「忝う(からじけのう)ございます」がふさわしいです。
「忝う(からじけのう)ございます」は今ではあまり使われませんが、他の言葉は「痛み入ります」よりも大げさにならないため、どんな場面でも使えます。
皮肉にとられないよう注意
社会に出るまで、社会に出た後も「痛み入ります」という言葉を知ってはいたけど、実際に使ったことがないという方も多いのではないでしょうか。
それは「痛み入ります」は使いどころが難しい言葉だからです。
「痛み入ります」は目上の相手に対する謙遜と恐縮する気持ちが強い言葉なので、場合によっては大変大げさな言い回しになってしまい、皮肉と受け取られてしまうこともあります。
例えば、時代劇などで余計な口出しをした相手に「御忠告、痛み入ります」と言っていることも。これは、本来「余計なことを言うな」と言いたいところを、皮肉を込めてわざと丁寧に言っているのです。
こうした表現は時たまみられるので、「痛み入ります」をそのまま皮肉と感じる方もいるかもしれません。だからこそ「痛み入ります」は、それにふさわしい場面で使うことが大切です。
痛み入りますと言われたときの返し
「痛み入ります」と誰かに言われたとき、どのように返すのが適切なのでしょうか。
「とんでもないことでございます」
「痛み入ります」という敬語での感謝の言葉に対して、恐れ多い、もったいないという気持ちを込めて返す言葉です。
なお、「とんでもございません」「とんでもありません」は日常的に使われていますが、文法的には間違いなので気をつけましょう。
「滅相もないことでございます」
「とんでもない」と同様の意味がある「滅相もない」を使うことも可能です。「滅相もございません」と言うこともあります。
「こちらこそありがとうございます」
相手の丁寧な感謝の言葉に対して、丁寧に感謝の言葉で返すこともあります。ただし、通夜や葬儀の際はこの返し方はふさわしくないこともあるでしょう。
葬儀で「痛み入ります」を使うシーン別の例文
通夜や葬儀、法事や法要の際に「痛み入ります」とお礼を申し上げる場面はよくあります。故人の家族だったとき、受付を担当したとき、この言葉がすっと出るようにしておくと便利です。
葬儀での「痛み入ります」を使うシーンを例文と一緒に紹介します。
参列者より「この度はご愁傷様です」とお悔やみを言われた際の例文
故人の家族や受付を担当した際、弔問に訪れた方より「この度はご愁傷様です」とお悔やみの言葉をかけていただく場面があります。
「ご愁傷様」という言葉には、「あなたの悲しいお気持ちはよく分かりますよ」という意味が込められており、家族を亡くした以外は、事故や重い病気に見舞われるなど非常に大きな不運があった相手にしか使いません。
そのため決まり文句ではありますが、深い意味のある言葉です。「痛み入ります」と同様、ふさわしくない場面で使ってしまった場合、皮肉ととられてしまうこともあるでしょう。
返す言葉としては「恐れ入ります」「痛み入ります」がふさわしいです。「丁寧なお悔やみを痛み入ります」とすることもあります。「ありがとうございます」と返す場合は、「お心遣いありがとうございます」とするとより丁寧です。
香典や供物を受け取った際の例文
香典や供物を受け取った際、丁寧なお礼の言葉として使うことがあります。
「お心遣い痛み入ります」
「お心遣い恐れ入ります」
と返事をしましょう。
喪主の挨拶などでの使い方
喪主や受付として参列者に感謝を述べ挨拶する際に、「痛み入ります」を使うことがあります。
「御多忙の中お運びいただき痛み入ります」
「お足もとの悪い中、ご足労いただき痛み入ります」
などです。
まとめ|「痛み入ります」は丁寧に感謝を伝えるフォーマルな言葉
「痛み入ります」は親しい間柄では使う言葉ではありません。しかし、相手に対する敬意を「ありがとう」よりも強い感謝の気持ちを伝えられます。
それだけにちょっとしたことに対するお礼で使ってしまうと、大げさに感じられ皮肉ととられてしまうことも。もちろん、感謝していないのに使ってしまうと、相手の怒りを買ってしまうこともあるので使いどころは気をつけましょう。
ビジネスシーンだけではなく、通夜や葬儀の場にはマッチした言葉なので、受付を依頼された際などに使えます。何に対して感謝しているかを添えて「痛み入ります」と言うとより丁寧で、相手に気持ちが伝わりやすいです。