「殊勝(しゅしょう)」とは、「心がけや行いなどが、健気で関心なさま」という意味で、相手を褒めるときに使う言葉です。仏教用語を語源に持つため、謙虚で奥ゆかしい響きを秘めています。
少し難しい言葉のため最近は使われる機会も減ってしまい、意味を知らなかったという方もいるかもしれません。
また、この言葉は目上の人が目下の人に使用するもので、目下の人が使うと失礼にあたることも。
「殊勝」の意味から語源、ビジネスや日常シーンで恥じないための使い方まで詳しく解説します。
もくじ
殊勝の読み方と意味を解説
「殊勝」は、文字通りに解釈すると「殊に勝れていること」です。
もともとは仏教用語として、文字通り「もっとも優れていること」とという意味で使われていました。
現在では、心がけや行いが他の人より勝っている、特に優れている、けなげで感心であるという意味で「殊勝」という言葉が使われます。
殊勝の読み方と意味
「殊勝」と書いて「しゅしょう」と読みます。主に以下の意味で使用される言葉です。
- とりわけすぐれているさま。格別。
- 心がけや行動などが感心なさま。けなげであるさま。
- 神々しいさま。心打たれるさま。
語源が仏教用語であることから、人より「特に優れていて格別であること」を立派で素晴らしいと声高に褒め称えるのではなく、謙虚に感服するさまという意味で使われます。
現代では、「心がけや行いなどが健気で感心である」「特に優れていることを称賛に値する 、見上げたものだ」と感服する意味で使われることが一般的です。
殊勝の類語は「見事」「感心」「神妙」など
見事、天晴れ、神妙、感心、奇特、美事、偉いなどが挙げられます。
殊勝よりも一般的に使われているような語句が多いです。
殊勝の語源を詳しく解説
「殊勝」には勝つという字が含まれていますが、勝ったことを声高に偉ぶる言葉ではありません。もとは仏教用語を語源に持つため、控えめに感服しているさまを表現しているのです。奥ゆかしさが感じられる、格式の高い日本語表現のひとつと言えるでしょう。
「殊勝」それぞれの漢字のなりたち
殊勝のそれぞれの漢字のなりたちを解説します。「殊」という漢字の字源は、「別々に異なる」「普通とちがって特別に」という意味があります。
「殊」は「真っ二つに斬る」ということから転じて「ほかにない、特別な」を表します。「殊勲賞」などという誉れ高い勲章もあるように、「殊」という漢字を使うことで「普通と異なるほど特に優れている」という最上級の意味に転じることができるのです。
「勝」という漢字の字源は、「力強く物を持ち上げる。」「持ち堪える。」という意味。そこから転じて「勝つ、勝る、優れる」といった意味合いに変化しました。
「殊勝」には「勝」という字が使われていますが、何かと争って「勝利する」のではなく、何かと比べて「勝る、優れている」という意味で捉えてください。
「殊勝」は、この2つの漢字が組み合わせ、「他の人よりも異なり、勝っている、優れている」という意味を表現しています。
殊勝はもともと仏教用語が語源
殊勝のもともとの語源は仏教用語です。仏のすぐれた智慧を「殊勝智」と称賛したり、場の雰囲気がとても厳かであることを「殊勝の気」と表現したりする際使われていました。
仏典では、とりわけ優秀なことを表現する際にも、あからさまに褒め称えるより控えめな賛辞をおくることを由としています。そのため時代とともに、仏教理念である「謙虚=美徳」であることを根底に敷き、もともとの「とりわけ優れているさま」よりも、「心がけや行いが健気で優れているさま」と相手に敬意を表す言葉になっていったのです。
殊勝の使い方や言い回しを解説
ビジネスシーンでよく使われる殊勝。実際の使い方や言い回しを解説します。
殊勝の使い方は目上の人が目下の人に使う言葉
殊勝という言葉は、「殊勝な心がけ」「殊勝な態度」などという意味で使います。通常の使い方は「親に心配をかけまいと殊勝な顔つきの子ども」「殊勝にも学費を稼ぎながら勉強している学生」というように、自分より目下の人に使う言葉です。
殊勝は目上の人には使わない
家でおとなしく留守番をしていたら「殊勝な子どもだ」と親にほめられた経験を持つ方もいるでしょう。大人になってからも「休みの日も家で仕事の勉強をするとは殊勝な心がけだ」と上司に高く評価された方もいるかもしれません。
殊勝は、目上の人から目下の「健気なさま、感心なさま」をほめるときの言い回しであることに着目してください。
上司や目上の方に対して使うのはNGです。通常は、「親に心配をかけまいと殊勝な顔つきの子ども」「殊勝にも学費を稼ぎながら勉強している学生」というように、自分より年若な弱小者に対して使います。
ビジネスで使用する際は、上司から部下の「神妙なさま」を評価する時に使う表現です。ついうっかり、取引先の顧客や会社の上司に「殊勝」という言葉を誤用しないように注意しましょう。
殊勝の言い回し「殊勝ぶる」「殊勝な行い」など
殊勝という言葉は、「殊勝ぶる」「殊勝な行い」「殊勝な心がけ」「殊勝な態度」「殊勝な面持ち」「殊勝な顔つき」という言い回しで使うことが多いです。
この言葉には「勝」という言葉が入っていますが、決して勝ち誇ったような言い回しではありません。「控えめで尊い」「関心するさま」です。
ただし、「殊勝げ」という言い回しで、「もっともらしく取ってつけたような態度」を表すこともあるので注意してください。
殊勝の類義語を解説
殊勝によく似た言葉に、「健気」「神妙」「気丈」「奇特」などがあります。また、「感心」「感服」など称賛の意味も含んでいますが、多少ニュアンスが違いますのでそれぞれの意味を理解しておきましょう。
「健気(けなげ)」は、年少者や力の弱い者が、困難に立ち向かう振る舞いが立派で、ほめるべきであることを表します。
「神妙(しんみょう)」は、面持ちや態度がいつもの態度から予想できないほど静かでおとなしいため、感心している気持ちを表すものです。
「気丈(きじょう)」は、困難な中でも気持ちをしっかりと保ち、状況に左右されない立ち居振る舞いが立派だと褒めるときに使い、そのような人を「気丈な人」と表現します。
「奇特」は行いなどが感心で褒めべきであるときに使われ、立派で称賛に値するというもとの意味の他にも、「普通ではなく変わった人だと表現することもあるため注意が必要です。また、そのような人を「奇特な人」と呼ぶこともあります。
まとめ〜殊勝とは目下の人を褒める時に使う言葉
「殊勝」は、目下の人の心がけや行動などが立派で、健気なさまを賞賛するときに使います。
類似語には「健気」「神妙」「奇特」「気丈」など多くの表現がありますが、そのほとんどは、立場が弱い若年者に対しての誉め言葉として使われます。目上の人に使われることはありません。
「殊勝ごかし」という表現もあり、殊勝なふりをして神妙にしているものの、実は相手をだますような態度を揶揄するときにも使われます。ビジネスで使う際は誤って使わないよう気をつけてくださいね。
「殊勝」は、日本語の謙虚さや奥ゆかしさが根底にある美しい言葉のひとつです。意味や語源を知って、場面や状況にあわせ適切に使いましょう。