香典返しとは、通夜や葬儀でいただいた香典のお返しのことです。また、無事に四十九日の法要を終えることができたというお礼を伝えるものでもあります。
香典返しを送る時期は忌明け、金額相場はいただいた香典の3割〜半額程度のものを選ぶのが基本的なマナーです。
近年は忌明けではなく、葬儀当日に香典返しを渡す「即日返し」も増えてきました。
香典返しの意味や送り方、気をつけるポイントなど詳しく解説します。
もくじ
香典返しを送る意味と選び方・送る時期などを解説
お葬式に参列したからいただく「香典」。遺族はいただいた香典に対して香典返しを送るのが基本的なマナーです。
その意味と品物の選び方や送る時期について、注意点を解説します。
香典返しは葬儀でいただいた香典に対しての御礼
お葬式に参列する際、参列者は必ず「香典」を持参し、遺族へと渡します。香典は相互扶助に基づく考えから生まれたものですが、大切な人を失い深い悲しみの中にいる遺族を慰め励ますという意味も込められているものです。
香典をいただいたら、遺族は「香典返し」をするのがマナー。
香典返しは故人の代わりにお世話になった御礼を述べるためだけのものではなく、いただいた香典に対して無事に四十九日の法要が済み、弔事を滞りなく終えた報告をするための贈り物です。
基本的には忌明返し(後返し)といって、後日参列者の香典の金額に合わせて品物を選んで贈ります。
特別な相手には個人的に感情を込めても良く、特に直接手渡しをすることで、より感謝の気持ちを伝えることもできるでしょう。
会葬御礼と香典返しの違い
香典返しと混同されがちなものに「会葬御礼」があります。会葬返礼品とも呼ばれ、葬儀への参列に対する感謝を表す贈り物のことです。会葬御礼は香典の有無にかかわらず、すべての弔問客に渡します。
金額相場は500円から1000円程度でタオルやコーヒーなど日常生活に役立つものが定番の品物です。近年は、コンパクトさを重視し図書カードやクオカードなどを用意することもあります。
会葬御礼はすべての弔問客に渡しますが、香典返しはいただいた香典に対する御礼なので、香典を受け取らなければ渡さなくても問題ありません。
会葬御礼と香典返しは贈り物という面で混同しやすく、渡した品の目的が勘違いされてしまうこともあるので、渡すタイミングで明確に説明しましょう。
金額相場は半返しの文化に沿った香典の3割〜半額程度
日本には特有の「半返し」という習慣があります。いただいたものの半額程度のものをお返しするというものです。
香典返しの相場は、いただいた香典の半額が一つの目安となります。
しかし、徐々に半分では多すぎるという考えも生まれました。一般的に、3分の1から半分程度の予算で用意するのが良いでしょう。
香典の金額は立場によって異なるので、3種類程度の価格帯の香典返しを用意しておけば対応できます。
なお、香典返しの金額の上限は15,000円程度とされています。誰からいくらいただいたかをしっかり把握しておく必要があります。
連名の香典を受け取った時は一人あたりの金額で考える
社員有志など連名の香典を受け取ることも考えられますが、香典を人数で割った1人あたりの金額で決めるとよいでしょう。
1人あたりの金額が少ない場合は、全員で分けられるお菓子などを持参すると良いです。
1人あたりの金額が3000円以上など多い場合は、それぞれに個別で香典返しを用意しましょう。
香典返しにふさわしい品物は「消え物」
香典返しは不祝儀に対するお返しとなるので、消え物が良いとされ、品物は後に残らない乾物や飲み物、すぐに使ってしまえる日用品が挙げられます。
消え物であるからといって肉や生臭いもの、お酒を贈るのはマナー違反です。
香典返しを送る時期は忌明けから1ヶ月以内
弔事を無事終えたことに対する御礼の意味なので、四十九日を過ぎた後、忌が明けてから贈ります。
仏式の場合は亡くなられた日から49日後、神式の場合は50日後、キリスト教の場合は1ヶ月後ですが、そこから1か月以内には渡せるよう準備しましょう。
ただし浄土真宗の場合は、それよりも早いタイミングで香典返しを送るのがルール。初七日が終わってから1か月程度をめどに送ります。
また四十九日が3か月にわたる場合は、四十九日よりも前に三十五日法要を行い、忌明けとなります。
香典返しを直接手渡しする場合、相手と予定がうまく合わないのが原因で、渡すのが遅れてしまわないように調整しましょう。
香典返しは本来喪主が持参して手渡すのがマナーですが、現代では直接訪ねて歩くことが難しいのが現状です。そのためあいさつ状を添えて郵送しても、問題ないとされています。
手間を省くために郵送を選んだ場合は、配送料に注意してくださいね。
また相手に届く時期がお盆・お彼岸・年始・相手側のおめでたい行事に重ならないよう、配慮しましょう。
負担が少ない即日返しも増えている
最近では葬儀当日に、受付で香典を頂いたタイミングですぐお返しするという風潮が広まっています。即日返しまたは当日返しと呼ばれますが、参列者に一律2000円から3000円程度です。
いただく香典は10,000円程度が最も多いことから、その3分の1程度の金額として相場が決まりました。受付ではなくお斎の席で、会葬御礼とともに香典返しも贈ることもあります。
元々関東地方や東北地方の習慣でしたが、現在では利便性があり全国に広まりつつあります。葬儀会社のスタッフが香典返しを手配をしてくれるため面倒がなく、渡しそびれる心配もありません。
また全員にその場で手渡しできるので送料がかからないということがメリットですが、人によって送りわけができないことがデメリットです。
また高額の香典をいただいた方については、後日追加で品物をお贈りしたり、香典の金額に応じて複数の香典返しを用意してお渡しする必要が出てきます。
なお、親族などから高額の香典を頂いた場合は、身内としての手助けである意味合いが大きいため、必ずしも半返しをする必要はありません。
香典返しで気をつけるべきポイント4つ
贈答品を送る際にはあいさつ状を同封しますが、書き方にいくつか注意点があります。
また直接手渡しする場合と郵送では、品物への掛け紙の種類が異なるのです。
稀に香典返しをしなくてもマナー違反ではないケースもいくつか存在しますので、確認しておきましょう。
あいさつ状(御礼状)は必ず添える
あいさつ状は必ず添えるようにします。内容は大きく分けて「会葬やお供えへの感謝の気持ち」、「故人の法要が滞りなく終了したご報告」、「挨拶を書面や配送で済ませることへのお詫び」の3つです。
挨拶状の構成と注意点
- 会葬や香典へのお礼、あるいは故人とのお付き合いに対する感謝
- 忌明け法要などが無事に済んだことの報告
- 香典返しの品物を送付した旨の連絡
- 書面にて失礼することのお詫び
- 日付
- 差出人の名前
あわせていくつかの注意点があります。
時候の挨拶は入れず、もし頭語を「拝啓」と始めたら、結語を「敬具」で結びましょう。句読点「、」や「。」は使いません。
マナー違反とされた背景には諸説ありますが、「法事もお礼状もつつがなく進むように」などの意味があります。
そして中でも重要なのが「重ね重ね」や「たびたび」などの重ね言葉を使わないこと。縁起が悪いため、避けましょう。
重ね言葉と同様の意味合いでお礼状の用紙は1枚とし、封筒も一重の白無地を使うことが基本ですが、最近でははがき大のカードタイプを使うケースが増えています。また文中で直接的な言葉は言い換えが必要です。
香典のことは「ご厚志」「お心遣い」とすることで、お金という意味を前面に出さずに済みスマートです。「逝去」は丁寧な表現なので、身内の場合は「死去」を使いましょう。
手渡しと郵送では掛け紙が異なる
手渡しと郵送で適した掛け紙が異なるので注意です。
手渡しの場合は、包装紙の上から掛け紙をつける外掛け(外のし)になります。
一方で郵送の場合は、運ばれることを考えて、掛け紙をつけてから包装紙で包む内掛け(内のし)にします。
香典返しを送る必要がない代表的な5つのケース
香典返しをしなくても良いケースがいくつか存在します。
ただし下記の理由で香典返しをしない場合でも、忌明けにあいさつ状を出し、どのように香典を扱ったのか報告しましょう。
主に代表的な5つのケースを解説します。
1.香典返しを辞退された場合
香典に、「香典返し不要」と記載されていることがあります。
遺族に対して気を遣っていただいているので、その場合は相手のご厚意に沿って香典返しをしなくても良いです。香典返しにかけるお金を葬儀費用に充てて欲しいなど、その方のご要望に沿いましょう。
2.一家の働き手を亡くし、その子どもが小さい場合
一家の働き手が亡くなった上に子どもがまだ幼ければ、経済的に大変になることは簡単に想像できます。
無理をしてまで香典返しをしなくて良いです。
3.香典ではなく弔電や手紙のみをいただいた場合
弔電や手紙などでお悔やみの言葉のみを頂いた場合は、無事に弔事を済ますことができたという報告も込めて、お礼状のみで良いとされています。
4.香典を事業や社会福祉施設へ寄付した場合
故人の希望でゆかりの事業や施設などに寄付する場合は、故人の遺志を尊重します。
寄付した場所と目的も明記し、故人の遺志であった場合はあわせて書き添えてお礼状だけ送りましょう。
5.贈り主の名義が法人だった場合
贈り主の名義が法人だった場合、香典は経費として計上されているのでお返しする必要はありません。
もし社長や部長、同僚などから個人名義で香典を頂いた場合は、通常通りにお返しましょう。
ちなみに社葬の場合は企業活動となり、社葬で企業が受け取った香典は雑収入に計上され課税対象となります。
また、企業で一旦受け取った香典が遺族へ渡ると、遺族に贈与税が発生するので注意。
現在では、亡くなった直後の密葬で家族が香典を受け取るようにし、社葬では香典を辞退する例がほとんどです。よって社葬の香典返しは一般的ではありませんが、仮にする場合は遺族から喪家の名前で贈ります。
香典返しへの御礼は不要
香典返しには参列者へのお礼や報告の意味と、忌明けを迎えたご遺族が心機一転するという意味合いがあります。
もし香典返しにさらにお礼を重ねてしまうと、仏事において不幸が重なるという意味になってしまい、相手に対して逆に失礼になります。貰った側からお礼や返事をするという事は、基本的に不要です。
まとめ|香典返しは葬儀参列者へ感謝の気持ちを示すもの
香典は故人の友人や知人から、故人への最後の贈り物という側面もあります。遺族はそのお返しを、故人に代わって行うのです。
愛する人を失ったばかりで大変な時期ですが、参列者には品物と一緒に気持ちもお渡しできるよう、どういうスタイルが合っているのかご家族で話し合ってくださいね。