親しい方や知人の訃報を受けたら、すぐにでもお別れの挨拶に駆け付けたい気持ちでいっぱいになることでしょう。通夜や葬儀、法要に参加する際は、香典を用意する必要があります。
香典には書き方からお札の入れ方、包む金額等様々なマナーがあり、マナーを知らずに用意してしまうと失礼にあたることも。
香典袋の基本的な書き方、マナーについて詳しく解説します。
香典袋の正しい書き方を解説
香典袋は正しい書き方やマナーがさまざまあり、全てを把握している方はそれほど多くないと思います。もし、香典袋の書き方を間違えたとしても、その間違いを指摘される場面はほとんど無いので、気づかずにいるケースも少なくありません。
香典袋(不祝儀袋)の正しい書き方やマナーを解説します。
香典袋に記入するものは「表書き」「氏名」「住所」「金額」
香典袋に記入するのは、表書き、氏名、住所、金額の4つです。それぞれの書き方を解説します。
表書きの書き方は宗派や時期によって異なる
表書きは「御霊前」「御仏前」「御香典」「御花料」など、故人の宗教宗派によって表記が変わるので注意が必要です。宗教によってはタブーとされている表書きもあるので、失礼とならないよう気を付けたいところ。
主な宗教の表書きを解説します。
仏教は期間や宗派によって「御霊前」や「御仏前」など表書きが異なる
仏教の場合、亡くなってから四十九日法要の前までの期間は「御霊前」、四十九日法要以降は「御仏前」の表書きを使用します。
基本的に仏教では四十九日の忌明け法要までは、御霊(みたま)となってこの世にいらっしゃると考えられているためです。
ただし、浄土真宗など一部の宗派では「御霊前」は使用せず、四十九日法要の前であっても「御仏前」の表書きとなる場合があります。人が亡くなると即刻浄土に召されて仏になると考えられているためです。
「御香典」という表書きであれば、宗派問わず、四十九日法要の前でもそれ以降でも使用できます。
神道の表書きは「御玉串料」「御榊料」「御神前」
神道の表書きは「御玉串料」「御榊料」「御神前」のいずれかを使用します。
「御霊前」と書くことはできますが、ご神前に捧げるものになり、仏ではありませんので「御仏前」とは書きません。
蓮の花の絵が書かれている香典袋は仏教用になりますので選ばないようにしましょう。水引は、黒白か銀もしくは白一色のものを使用します。
キリスト教の表書きは「御花料」「献花料」
キリスト教は「御花料」「献花料」が一般的な表書きです。カトリックでは、「御ミサ料」、プロテスタントでは「忌慰料」と書くこともあります。
カトリックかプロテスタントかよくわからないことも多く、「御花料」または「献花料」だけ覚えておけば問題ありません。
香典袋は水引のない、キリスト教用の物を使います。
無宗教または故人の宗教がわからない場合、表書きは「御霊前」
日本ではいかなる宗教も信仰していないという方は少なくありません。また、故人の宗教がわからない場合もあるでしょう。
故人の宗教がわからない場合の表書きは「御霊前」と書くのが無難です。しかし、浄土真宗やプロテスタントの場合はタブーとされてしまうので注意しておきましょう。
故人の宗教がわからない場合、香典袋は多くの宗教・宗派で使用できる白色のものを使用し、水引は黒白または銀一色の結びきりのものを使用しましょう。
中袋の書き方〜氏名・金額・住所を記入する
香典袋には、中袋が付いているのが一般的です。中袋が付いている場合には、この中袋にお札を納めてから、香典袋で包みましょう。
中袋には、金額、氏名、住所を書きます。中袋によっては、金額や氏名などを書く欄が印刷されているものの場合は、指定された欄に記入するとよいでしょう。
欄が印刷されていない中袋については、表側の中央に香典として包む金額を縦書きし、裏側の左下部分に香典を出す方の氏名と住所を書きます。
住所と氏名の書き方〜名前はフルネームで書く
住所は郵便番号まで書きます。数字部分は算用数字でも漢数字でも、どちらでも構いません。
名前はフルネームで記入しましょう。香典袋には中袋や内袋と言うお金を入れる封筒がついていることが多く、この中袋にはご遺族が香典返しをするときの参考となる、金額や住所氏名を記入します。
これらが書かれていないと、ご遺族が対応に困ってしまうことがありますので、必ず記入するようにしましょう。
金額の書き方(表面)〜算用数字ではなく「旧漢字」で書くこと
中袋の表側には包んだ金額を記入します。注意すべきこととしては、一般的に、香典の金額は簡単に改ざん出来ないように旧漢字(大字)で書くことになっているのです。
数字の前に「金」をつけ、「円」は大字では「圓」と書きます。例えば、10,000円の香典を出す場合は、「金壱萬圓」、もしくは、「金壱萬円」と記入します。
「也」を付ける場合、必須ではないのでつけなくても問題ありません。大字の書き方は、あまり馴染みがないと思いますので、いくつかの記入例をご紹介します。
金額 | 旧漢字 |
---|---|
3,000円 | 参仟圓・参阡圓 |
5,000円 | 伍仟圓・伍阡圓 |
7,000円 | 七仟圓・七阡圓 |
10,000円 | 壱萬圓 |
30,000円 | 参萬圓 |
50,000円 | 伍萬圓 |
70,000円 | 七萬圓 |
100,000円 | 拾萬圓・什萬圓 |
最近の香典袋には、金額の記入欄が中袋では横書き用に印刷されているものもあるようです。横書きの場合は、算用数字やアラビア数字で記入します。
数字の前に「金」または「円マーク(¥)」を付記し、金額を書いた最後に「円」または「-」を付けましょう。
住所、氏名の書き方(裏面)〜左側に記入する
中袋の裏面には、会葬者の住所、氏名を書きます。中袋裏面の中央から左側に郵便番号、住所、氏名の順番で記入するのが一般的です。
連名などで記入する場合で人数が多くなる場合は、別紙に記入し、中袋に同封します。
中袋がない場合〜香典袋(外袋)の裏側に記入する
地域によっては、「袋が2重になっている=不幸が重なる」という考え方から、中袋を使用しないとしている場合もあります。
また、包む金額によっては水引が印刷された封筒タイプの香典袋を使うのが一般的です。
封筒タイプの香典袋の場合、中袋や中包みがついていないため、香典袋(外袋)の裏側に住所と氏名、金額を書きます。
住所、氏名の書き方は、香典袋の裏側に、先ほどご紹介した中袋の裏面に記入するときとと同じように、郵便番号、住所、氏名の順番で縦書きで書くだけで問題ありません。
連名の場合の書き方〜代表者の住所のみ記入し、3名までは名前を書く
連名で香典を出すときには、全員の住所を書くのではなく代表の方の住所をひとつだけ書けば充分です。
夫婦が連名で書く場合は、主たる人をフルネームで書いて、その左横に従たる人の名前のみを書くことが一般的となっています。夫はフルネームで書いて、妻は名前のみを書くということです。
夫婦では無い方で連名するに際は、全員フルネームを書きましょう。
3名までは表書きの下に書きますが、それ以上の場合には名前のリストを香典袋の中に同封するのが一般的です。
4名以上になる場合は、表書きには代表者の名前を中心に、名前の左下に「外一同」と書きます。
詳細は白無地の紙に全員の姓名、住所、金額を記載し、内袋に入れましょう。
会社・法人の場合の書き方〜会社名・肩書・代表者名を書く
氏名については個人名ではなく、会社名や団体名となることもあります。会社の代表者名で書く場合には、会社名、肩書、代表者名を書きます。このとき、表書きの真下に代表者名が位置するように書きましょう。
会社代表の場合の3名の名前の書く順番は、中心に一番目上の人の名前を書き、順に左側に他2名の方の名前を書きます。中心から右側には名前を書きません。
代理で出す場合の書き方〜依頼主の名前を書く
参列する人が代理の場合、香典袋には依頼主の名前を書きます。会社代表の代理の場合は、前の項目に記載のとおりに記載すれば大丈夫です。
代理で持参した後は、依頼主の方に間違いなくお渡ししたことを報告をしましょう。妻が夫の代理として持参する場合は、夫の氏名の左下に少し小さめの文字で「内」と書きます。これは「奥様が代理でお見えになった」という意味です。
「お葬式」「通夜」に参列する際の香典袋は「薄墨」で書く
葬儀で香典袋に字を書く際は、市販されている薄墨の筆記具、薄墨の筆ペンを使用しましょう。
薄墨のペンを使うのは、「悲しみの涙が硯に落ちて墨が薄まった」「急なことでしっかりと墨をする時間もなく駆けつけた」などの意味があると言われています。
ただし、四十九日法要以降の香典袋は、薄墨ではなく普通の濃い墨を使用します。これは「故人を偲んでしっかりと墨をすった」という気持ちを表現するためです。
詳しくは、こちらの記事を参照ください。
香典の表書き「御仏前」の場合は「薄墨」NG!薄墨、濃墨の使い分けはこうやって見分ける
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