
葬儀を行う際に、手配の依頼先としてまず利用されるのが葬儀社です。葬儀社には4つほどの種類があり、それぞれに違った特徴やメリット・デメリットがあります。
葬儀社の種類について解説するとともに、失敗しない葬儀社選びのポイントや、費用の相場と抑えるコツについてもご紹介します。
もくじ
葬儀社とは?葬儀屋との違いも含めて解説

葬儀社とは、ご遺体の管理から葬儀の企画・運営、葬儀後の諸手続きなどを行う専門業者です。葬儀に関するあらゆる業務を担います。
主な業務内容をいくつかご紹介します。
- ご遺体の搬送と管理
- 葬儀の企画と運営
- 必要な物品の手配(祭壇、位牌、遺影など)
- 各種手続きのサポート(死亡届の提出など)
- 参列者への対応
- 葬儀後のフォローアップ
また、葬儀社以外に「葬儀屋」がありますが、呼び方以外で実質的な違いはほとんどありません。
「葬儀屋」という言葉は昔からある呼び方で、現在では「葬儀社」という呼び方が一般的になっています。そのため、高齢の方ほど、葬儀社よりも葬儀屋と呼ぶ人が多い傾向にあります。
葬儀社の種類は大きく分けて4つ!それぞれの特徴を解説

葬儀社には主に4つの種類があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットについて詳しく解説します。
葬儀専門業者
葬儀専門業者は、葬儀の企画・運営を専門に行う業者です。一般的な葬儀社のイメージに最も近い形態と言えるでしょう。
<特徴>
- 葬儀に関する専門的な知識と経験を持つスタッフが在籍。
- 一般葬から家族葬、直葬まで、幅広い葬儀スタイルに対応。
- 自社で葬儀場を所有している場合が多い。
- 地域密着型と全国展開型がある。
ちなみに、地域密着型の葬儀社は、その地域の習慣や文化に精通しており、きめ細やかなサービスを提供できる傾向があります。一方、全国展開型の葬儀社は、豊富な経験と幅広いサービスを提供できる反面、地域の特性に合わせたサービスが不十分な場合もあります。
<メリット>
- 葬儀に関するあらゆる相談に対応できる。
- 自社の施設を利用できるため、スムーズな葬儀の進行が期待できる。
- 葬儀の規模や形式を柔軟に調整できる。
- 専門的なアドバイスを受けられ、故人や遺族の希望に沿った葬儀を実現しやすい。
<デメリット>
- 他の種類の葬儀社と比較して、費用が高くなる傾向がある。
- 大手の場合、画一的なサービスになる可能性がある。
- 営業的な側面が強く、必要以上のサービスを勧められる場合がある。
<適しているケース>
- 葬儀の進め方がわからず、専門的なサポートが必要な場合
- 故人や遺族の希望に沿った、オーダーメイドの葬儀を行いたい場合
- 大規模な葬儀を予定している場合
- 葬儀に関するワンストップサービスを求めている場合
互助会
互助会は、将来の冠婚葬祭に備えて会員が少額ずつ積み立てを行い、必要な時にサービスを受けられる仕組みの組織です。
<特徴>
- 月々の積立によって葬儀費用の負担を軽減できる。
- 積立金は、葬儀や結婚式などのサービスとして返還される。
- 会員特典として、葬儀費用の割引や付加サービスが提供されることが多い。
- 長期的な契約となるため、途中解約時に不利益が生じる可能性がある。
<メリット>
- 計画的に葬儀の準備ができ、突然の出費を避けられる。
- 会員特典により、通常よりも安価に葬儀を行える場合がある。
- 葬儀以外のサービス(結婚式など)も利用できることが多い。
- 葬儀の際、手続きが比較的簡単にできる。
<デメリット>
- 契約期間が長期にわたるため、ライフスタイルの変化に対応しにくい場合がある。
- 途中解約時に解約手数料が発生したり、払戻額が少なくなる可能性がある。
- 選択できる葬儀社や葬儀プランが限られる場合がある。
- 積立金を他の用途に使用することができない。
<適しているケース>
- 将来の葬儀費用に備えて、計画的に準備したい場合
- 突然の出費を避けたい場合
- 長期的に同じ地域に住む予定で、地域に根ざした互助会を利用したい場合
- 葬儀以外の冠婚葬祭サービスも含めて、総合的に利用したい場合
協同組合
協同組合が運営する葬儀サービスには、農業協同組合や生活協同組合などがあります。
<特徴>
- 葬儀は組合員向けのサービスとして提供される。
- 一般的な葬儀社と比較して、費用を安く抑えられる場合が多い。
- 地域に根ざした運営で、地域の習慣や文化に精通している。
- 協同組合直営の葬儀式場を使用できるほか、提携の葬儀社も利用できる。
<メリット>
- 組合員向けの割引や独自のプランがあり、比較的安価に葬儀を行える。
- 地域の習慣や文化に沿った葬儀を行いやすい。
- 組合員同士の助け合いの精神に基づいているため信頼度が高い。
- 葬儀以外の生活関連サービスも利用できる。
<デメリット>
- 組合員以外の利用には制限がある。
- 葬儀の規模や形式の選択肢が限られる可能性がある。
- 大都市圏では利用できる地域が限られる場合がある。
- 専門的なサービスや最新の葬儀スタイルへの対応が遅れる可能性がある。
<適しているケース>
- すでに組合員である場合
- 地域の習慣や文化に沿った伝統的な葬儀を希望する場合
- 比較的安価に葬儀を行いたい場合
- 地域に根ざしたサービスを重視する場合
葬儀仲介サービス業者
葬儀仲介サービス業者は、遺族と葬儀社をつなぐ役割を果たす新しいタイプの事業者です。
<特徴>
- インターネットを活用した比較・相談サービスを提供。
- 複数の葬儀社の中から、ニーズに合った葬儀社を紹介。
- 葬儀社の選定や見積もり比較を代行。
- 葬儀の企画・運営は提携している葬儀社が行う。
<メリット>
- 短時間で複数の葬儀社の情報を比較検討できる。
- 葬儀社の価格やサービス内容の透明性が高まる。
- 中立的な立場からアドバイスを受けられる場合がある。
- オンラインでサービスを利用できるため、時間や場所の制約が少ない。
<デメリット>
- 仲介料が含まれているため、直接葬儀社に依頼するよりも高くなる可能性がある。
- 実際に葬儀を行う葬儀社の質にばらつきがある可能性も。
- 対面でのきめ細やかな対応が難しい場合がある。
- 地域の習慣や文化に沿った提案が不十分になる可能性がある。
<適しているケース>
- 急いで葬儀社を探す必要がある場合
- 葬儀社の比較検討を効率的に行いたい場合
- 葬儀の知識が少なく、中立的な立場からのアドバイスを求めている場合
- インターネットを活用した情報収集や手続きに抵抗がない場合
失敗しない葬儀社選びのポイント

葬儀社を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントがあります。失敗しない葬儀社選びのポイントを詳しく解説します。
事前相談を活用し、対応の丁寧さを見極める
葬儀社のスタッフの対応や説明の分かりやすさは、葬儀の質に大きく影響します。以下の点に注意して、事前相談を活用しましょう。
事前相談の受付の有無 | 事前相談を受け付けている葬儀社は、顧客のニーズに丁寧に対応してくれる傾向がある。受付の有無は信頼性の判断材料になるので要確認。 |
スタッフの態度 | 事前相談の際は、丁寧で親身な対応をしているか、専門用語を多用せずに分かりやすく説明しているかを確認。 |
質問への回答 | 質問に対して明確で具体的な回答があるか、曖昧な返答や誤魔化しがないかをチェック。 |
提案の柔軟性 | 顧客の希望や予算に応じて、柔軟な提案ができるかどうかを確認。 |
資料の充実度 | パンフレットや見積書などの資料が分かりやすく、詳細な情報が記載されているかをチェック。 |
事前相談を通じて、葬儀社の対応の丁寧さや信頼性を見極めることができます。
追加料金が発生しやすいポイントを事前に把握する
葬儀の費用が予想以上に高くなる原因のひとつに、追加料金の発生があります。追加料金が発生する条件は葬儀社によって異なるものの、共通点も多いです。
事前に追加料金が発生しやすいポイントを把握しておくと、葬儀社選びに失敗しにくくなるでしょう。
事前に確認すべき費用項目 | ||
基本プランの内容 | 基本プランに含まれるサービスや物品を詳細に確認すること。曖昧な表現や「一式」といった包括的な表現には注意が必要。気になる部分は細かく内訳を提示してもらうこと。 | |
オプションサービスの料金 | 基本プラン以外のオプションサービスとその料金を確認し、必要なものだけを選択する。 | |
人数変更による追加料金 | 参列者数の変更によって発生する可能性のある追加料金について確認する。返礼品や飲食物は人数によって変動しやすいので、単価も確認しておくこと。 | |
時間外対応の料金 | 夜間や早朝、休日の対応に追加料金が発生する場合がある。 | |
搬送距離による追加料金 | ご遺体の搬送が遠距離になる場合に必要な追加料金について確認すること。 | |
特殊な要望による追加料金 | 特殊な要望がある場合は、追加料金の可能性を確認すること。 | |
返礼品の料金 | 返礼品の種類や価格帯を事前に確認し、予算に合わせて選択する。 |
予想外の出費を防ぐためにも、しっかり細かな部分まで把握しておきましょう。
深夜・早朝の対応や緊急時のサポート体制をチェックする
突然の訃報に対応できる葬儀社を選ぶために、24時間対応や緊急時のサポート体制を確認しておくとよいでしょう。
以下の点を、ホームページやお問い合わせ窓口などで確認しておくと、いざというとき安心できます。
サポート体制の確認するべきポイント | ||
24時間対応の有無 | 深夜や早朝でも連絡が取れ、対応してくれるか | |
緊急搬送の体制 | 急な搬送依頼にも対応できる体制が整っているか | |
スタッフの配置状況 | 夜間や休日でも十分なスタッフが配置されているか | |
緊急時の連絡方法 | 緊急時の連絡先や連絡方法が明確に示されているか | |
プラン変更の柔軟性 | 急な状況変化に対応してプランを変更できるか | |
緊急時の追加料金 | 深夜や早朝の対応に追加料金が発生するか |
事前に確認することで、突然の事態にも適切に対応できる葬儀社を選ぶことができます。
宗教・宗派の対応可否を確認する
葬儀は故人が入信している宗教・宗派に従った形式で行われます。
実際のところ、日本の葬儀は9割が仏教式に則って行われていましたが、近年では無宗教葬も増えています。
身内に特定の宗教・宗派に入信している人がいる、宗教色を感じない葬儀がしたいなど、希望の形式がある場合は以下の点を確認して葬儀社を選びましょう。
対応可能な宗教・宗派 | 葬儀社が対応可能な宗教や宗派の範囲 |
専門知識の有無 | 特定の宗教や宗派に関する専門知識を持つスタッフが在籍しているか |
必要な備品の用意 | 特定の宗教や宗派で必要となる備品や道具を用意できるか |
僧侶や神主の手配 | 必要な宗教者を手配できるか |
無宗教葬への対応 | 外国人や国際結婚のケースなど、異なる文化や習慣に配慮した葬儀が可能か |
「安すぎるプラン」に注意する
極端に安い葬儀プランはさまざまなリスクがあるため、注意が必要です。「安すぎるプラン」のリスクをいくつかご紹介します。
- 葬儀に必要な基本的なサービスがプランに含まれていない可能性がある。
- 安価な材料や設備を使用しており、全体的な品質が悪い。
- さまざまな理由で追加料金が発生し、結果的に他社より高くなる可能性がある。
- 十分な経験や教育を受けていないスタッフが対応する可能性がある。
- 葬儀後のサポートなどアフターフォローが不十分。
- 経営が不安定で極端に安く提供している場合もある。
葬儀の費用は高額になりやすく、シンプルなプランでも経済的負担があることは事実です。そのため、できるだけ安く費用を抑えたいと思うのも仕方ありません。
しかし、安さだけで選んでしまうと、結果的に後悔する可能性があるため、サービスの内容や質、葬儀社の信頼性なども総合的に判断して選択しましょう。
葬儀社の料金相場と費用を抑えるコツ

葬儀にかかる費用は、葬儀の形式や規模によって大きく異なります。一般的な葬儀費用の相場と、費用を抑えるためのポイントを解説します。
一般的な葬儀費用の相場
葬儀の種類別にかかる平均的な費用は以下の通りです。
- 一般葬:100~200万円程度
- 家族葬:60~100万円程度
- 直葬:10~40万円程度
上記はあくまで平均的な金額であり、地域や葬儀社によって大きく異なる場合があります。また、参列者数や追加サービスの有無によっても変動します。
費用を抑えるためのポイント
葬儀の費用を抑えるならば、無駄な出費を削ることが大切です。誰でもできる、葬儀の費用を抑えるポイントをご紹介します。
見積もりは複数社で比較 | 同じ条件で複数の葬儀社から見積もりをとることで、比較検討でき、適切な価格を見極められる。 |
必要最小限のサービスを選択する | 本当に必要なサービスだけを選び、不要なオプションは削除する。 |
参列者数を絞る | 参列者数が多くなるほど費用が膨らむため、家族葬や親族中心の小規模な葬儀にする。 |
返礼品を簡素化する | 返礼品の種類や価格を抑えることで、全体の費用を下げられる。 |
葬儀場の使用時間を短縮 | 使用時間を必要最小限に抑えることで、会場費を削減。 |
互助会や組合のサービスを利用する | 会員向けの割引や特典を活用することで、費用を抑えられる可能性がある。 |
事前に自分で準備をする | 遺影写真や食事の手配など、自分でできることは自分で行うことで費用を抑えられる。 |
生前契約をする | 生前に自分で葬儀プランを契約することで、通常よりも費用を抑えられる場合がある。 |
これらのポイントを参考に、故人や遺族の希望を尊重しつつ、適切な予算内で葬儀を執り行いましょう。
まとめ
葬儀社には、葬儀専門業者、互助会、協同組合、葬儀仲介サービス業者の4つの主要な種類があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。葬儀社を選ぶ際には、それぞれの特徴を理解したうえで、自分たちのニーズに合った葬儀社を選択しましょう。
また、失敗しない葬儀社選びのポイントとして、事前相談の活用、追加料金の把握、緊急時のサポート体制の確認、宗教・宗派への対応確認、安すぎるプランに注意することなどが挙げられます。
慎重に葬儀社を選ぶことで、故人を適切に送りだし、遺族の心の負担を軽減できるでしょう。
葬儀は故人を送りだす大切な儀式であると同時に、遺族や参列者が故人を偲び、心の整理をつける機会です。葬儀社選びの際には、費用面だけでなく、故人や遺族の希望に沿った葬儀が行えるかどうかを重視し、心に残る葬儀を実現してください。