
人生の最期をどのように迎えるかを考える「終活」を始める人が、近年増加しています。実際に著名人の中にも、終活を始めたことを公言する場面を見かけることが増えてきました。
終活の中でも「葬儀」の準備は、終活において重要な要素のひとつです。葬儀は故人を送りだす大切な儀式であると同時に、残された家族や親しい人々との最期のお別れの場でもあります。
亡くなってからでは何もできないからこそ、生きているうちに葬儀について考えることは、残された人たちへの恩返しにもつながります。
終活における葬儀準備の重要性や具体的な手順、注意点について詳しく解説します。後悔しないための葬儀手配のプロセスを学び、自分らしい最期を迎えるための参考にしてください。
もくじ
終活で葬儀について考えることの重要性

終活は、自分自身の人生を見つめ直し、最期の時間をどう迎えるかを計画する行動です。
その中でも葬儀について考えることは特に重要だと思われます。葬儀は単なる形式的な儀式ではなく、故人の人生を象徴する場であり、家族や友人が故人を偲ぶ大切な時間でもあります。
終活で葬儀について考えることの重要性についてより具体的に解説します。
家族の負担を軽減する
突然の不幸が訪れた時、遺族は精神的にも経済的にも大きな負担を抱えることとなります。葬儀形式や費用について何も決まっていない場合は、家族が短期間で多くの決断を迫られることになりかねません。
いざというとき事前に計画しておくことで、遺族が迷うことなく対応できるため、大きな助けとなります。
例えば、家族が亡くなった時に「どの葬儀社に依頼するか」「どの形式で行うか」「どのくらい費用をかけるか」など多くの選択肢を短時間で決めなければなりません。
精神的なショックを受けている状態で決めることは非常に困難であり、中には正しく判断できないケースもあります。事前準備が整っていれば、家族が迷うことなく選ぶことができるため、負担を減らすことにつながります。
自分らしい葬儀を実現する
葬儀は故人の人生を象徴する場でもあります。自分自身が望む形式や内容を事前に決めておくことで、「自分らしい」葬儀を実現できます。
例えば、宗教色の強い伝統的な葬儀ではなく、音楽や映像を使ったオリジナリティある演出を希望する方も増えています。
また、自分がどんな形で送り出されたいかという意思表示はエンディングノートなどに記録しておくことで遺族に伝えやすくなります。
家族間のトラブルを防ぐ
葬儀に関して家族間で意見が対立するケースは少なくありません。
「どんな形式で行うべきか」「費用はどのくらいかけるべきか」といった点で意見が一致せず、トラブルになることがあります。こうしたトラブルは遺族間の関係性にも影響を与えるため、可能な限り避けたいものです。
事前に自分自身の希望や意思を書き残しておくことで、家族間のトラブルを未然に防ぐことができます。また、生前から家族と話し合っておくことで、お互いの意見交換も可能になります。
終活における葬儀の手配、始めるタイミングは?

終活で葬儀準備を始めるタイミングには明確なルールはないため、始めたいと思ったとき、すぐに行動へ移すことをおすすめします。
今後の参考になるよう、終活を始めるおすすめのタイミングをいくつかご紹介します。
健康状態が安定しているうちがベスト!
健康なうちに準備を始めることで、冷静かつ余裕を持って計画できます。病気などで体調が悪化してからでは十分な準備が難しくなるため、早めの行動がおすすめです。
とくに、高齢になってからでは判断力や記憶力が衰える可能性もあるため、自分自身でしっかりと意思決定できる時期に始めることが理想的です。
ライフイベント後
定年退職や子供の独立など、大きなライフイベントが一段落したタイミングで終活を始める方も多いです。この時期は人生の節目として、自身の将来について考えやすい時期でもあります。
例えば退職後ならば時間的余裕が生まれるため、自分自身と向き合う時間も増えるでしょう。時間に余裕ができたタイミングでエンディングノートを書いたり、具体的な希望を書き留めたりする方も少なくありません。
50代以降
一般的には50代から60代にかけて終活を始める方が増えています。ただし年齢だけで判断せず、自分自身が必要だと感じた時期から始めることが重要です。
早い人は、20代のうちから終活を少しずつ進めている場合もあります。若いうちから準備しておくことで、より充実した終活計画が立てられることも。
終活で葬儀を手配する手順と段取り

終活で後悔しない葬儀を手配するならば、いくつかのステップに分けることをおすすめします。
終活で葬儀を手配する手順と段取りについて、それぞれのステップごとに解説します。
自分の「希望」を明確にする
まず、自分自身がどんな葬儀を望むかを明確にしましょう。この段階では以下のポイントについて考えるとよいでしょう。
形式 | 一般葬、家族葬、直葬など |
宗教・宗派 | 仏教、キリスト教、無宗教など |
場所 | 自宅、斎場、寺院など |
参列者数 | 大規模か小規模か |
演出 | 音楽や映像など特別な演出の有無 |
具体的に考えておくことで、自分らしい葬儀計画が立てやすくなります。自分の希望を明確にしたら、エンディングノートなどに書きためておくと、家族へ伝えやすくなるでしょう。
葬儀費用の「相場」を把握する
葬儀費用は規模やオプション追加の有無など、さまざまな要因によって大きく変わります。そのため、生きているうちに明確な金額を出すことはできませんが、ある程度相場を把握していくことで葬儀社やプラン選びの参考になります。
定期的に葬儀費用の相場を調べ、自分自身や家族の経済状況と照らし合わせながら計画するとよいでしょう。また、追加費用が発生するケースも多いため、しっかり考慮するように注意してください。
葬儀社選びの「基準」を知る
信頼できる葬儀社を選ぶことは、葬儀準備の中で最も重要なステップのひとつです。葬儀社によって費用やサービス内容が異なるため、慎重に選ぶ必要があります。
葬儀社選びの基準 | |||
口コミや評判を確認 | 口コミサイトやレビューを確認することで、実際に利用した人々の感想を確認する。知人や友人から直接紹介してもらうのもおすすめ。 | ||
料金体系が明確か | 葬儀費用は分かりづらい部分が多いため、料金体系が透明であるかどうかを確認する。基本プラン以外に追加料金が発生する場合もあるため、直接問い合わせるのもおすすめ。 | ||
希望する形式に対応できるか | 自分が希望する葬儀形式に対応しているかどうかを確認する。特殊な演出や宗教儀式への対応も要確認。 | ||
アフターサポートの有無 | 葬儀後の手続きや法要についてアドバイスしてくれる葬儀社ならば、より安心できる。 | ||
アクセス性、立地条件 | 葬儀場や斎場までの距離や、交通アクセスを確認する。参列予定に高齢者が多い場合は、移動の負担が少ない場所を選ぶとよい。 |
複数の葬儀社から見積もりを取り、それぞれのサービス内容や費用を比較することもおすすめです。焦らずじっくりと検討しましょう。
葬儀の「生前契約」という選択肢
生前契約とは、自分が生きているうちに葬儀社と契約し、希望内容や費用などを事前に決めておく方法です。
自分自身が望む形式や内容を事前に決められるため、自分らしい葬儀を確実に実現できます。
また、自身で契約をするため、費用面だけではなく精神面でも、家族への負担を大幅に軽減できます。とくに費用については、契約時点で支払いを済ませておくことも可能なため、経済面で負担をかけたくない場合はおすすめです。
「葬式見積もり」を賢く活用する
複数の葬儀社から見積もりを取ることで、費用やサービス内容の比較検討ができます。見積もりは基本的に無料でできるため、積極的に活用しましょう。
見積時のチェックポイント | |
基本プランとオプション料金の内訳 | 基本プランにはどこまで含まれているのか、追加料金として発生する項目は何かを明確にしておく。 |
火葬料・斎場使用料 | 火葬料や斎場使用料は地域によって異なるため、地域差も確認すること。 |
見積書内訳の詳細性 | 見積書には祭壇費用、棺桶代、遺影写真代など細かな項目ごとの金額が記載されていることが理想。不明な点があればその場で質問すること。 |
追加費用発生の可能性 | 見積書以外に追加料金(飲食代、返礼品代など)が発生する可能性についても確認。 |
基本的にはオンライン見積もりサービスを利用すると便利です。ただし、最終的には直接相談して納得した上で契約することをおすすめします。
葬儀の「生前相談」で不安を解消
生前相談では何度も葬儀を行っている専門家から、直接アドバイスを受けられるため、不安や疑問点を解消しながら計画を進めることができます。
相談時には以下について確認するとよいでしょう。
・希望通りのプランニングが可能か
・費用面で無理なく進められるか
・家族への説明資料(エンディングノートなど)の作成サポートの有無
・宗教的な要望への対応力
知っておきたい葬儀の種類と特徴

近年では従来よりも葬儀の種類が増えており、それぞれのライフスタイルや経済状況に合わせてプランを選べるようになりました。
葬儀の種類の中でも代表的な「一般葬」「家族葬」「直葬」の特徴について解説します。
一般葬
一般葬は最も伝統的な形式の葬儀です。
多くの場合1日目に通夜、2日目に告別式・火葬という流れで行われます。参列者数は数十人から数百人規模になることも。
幅広い関係者を招待するため、多くの人々と故人を偲ぶことができます。ただし、大規模になりやすい分、費用も高額になる傾向があります。
家族葬
家族やごく親しい友人など、身内だけで行う小規模な形式です。近年では家族葬を希望する方が増えており、静かなお別れを重視したい場合に適しています。
また、通夜を行わず、告別式・火葬のみを行う「一日葬」と組み合わせるケースも増えています。
少人数でアットホームな雰囲気の中で葬儀を行うことができ、規模が小さい分、一般葬よりも費用を抑えられる傾向にあります。
直葬
直葬は通夜や告別式を行わずに火葬のみ行う形式です。最小限のコストで済むため経済的な負担を減らせますが、お別れ時間が短いというデメリットがあります。
できるだけ宗教色を抑えて、シンプルで経済的な葬儀を行いたい方におすすめです。
葬儀の形式で費用は大きく変わる?

葬儀の形式によって費用は大きく異なります。一般葬、家族葬、直葬のように規模や内容が異なる形式では、必要となる費用も変わります。
主な内訳 | 一般葬 | 家族葬 | 直葬 |
祭壇費用 | 30~80万円 | 20~50万円 | – |
式場使用料 | 10~40万円 | 10~30万円 | – |
飲食代 | 20~30万 | 10~20万円 | – |
火葬料 | 祭壇費用・式場使用料に含ま割れる場合が多い | 無料~6万円(自治体による) | |
遺体搬送費 | 祭壇費用・式場使用料に含ま割れる場合が多い | 1万円~3万円 | |
棺桶代 | 祭壇費用・式場使用料に含ま割れる場合が多い | 5万円前後 | |
返礼品代(1人あたり) | 2,500~5,000円 | – |
後悔しない葬儀のための生前相談・生前契約

終活において葬儀について決める際、後悔しないためには生前相談と生前契約を積極的に活用することをおすすめします。
なぜならば、生前相談や生前契約は、自分自身と家族双方にとって多くのメリットがあるからです。うまく活用することで、不安や疑問点を解消しながら計画的に準備を進めることができます。
生前相談とは?
生前相談とは、自分自身の希望する葬儀内容について専門家と話し合う機会です。具体的に相談できる内容をご紹介します。
相談できる内容 |
・希望する葬儀形式(一般葬・家族葬・直葬など) ・費用や予算に関するアドバイス ・式場や斎場の選定 ・宗教的儀式への対応 ・納骨先(お墓・納骨堂)の手配など |
生前契約とは?
生前契約は、生きているうちに葬儀社と正式な契約を結び、自分自身の希望する内容や予算について取り決めておく方法です。
生前契約のメリット |
・希望通りの内容で実施できる ・自分自身が望む形で最期のお別れを迎えられます。 ・費用面での家族への負担軽減 ・突発的な事態にも対応が可能 |
契約内容は定期的に見直す必要があります。状況や希望が変わった場合には更新しましょう。
信頼できる業者と契約することが重要です。解約条件や返金ポリシーについて必ず確認しておきましょう。
終活における葬儀のよくある質問

終活や葬儀準備についてよくある質問をご紹介します。
貯金がなくても葬儀はできますか?
経済的事情で貯金がない場合でも、いくつかの方法で対応が可能です。貯金がなくても葬儀ができる方法をいくつかご紹介します。
葬祭扶助 | 生活保護受給者の場合に利用できる制度。自治体から一定額の補助金が支給されるため、最低限の火葬のみ行うことができる。 |
低価格プランの利用 | 簡素化された低価格プランならば、20~30万円程度で利用できる。 |
分割払いの利用 | 葬儀ローンやフリーローン、クレジットカード支払いなどで葬儀費用を分割にすることも可能。 |
自治体やNPO法人への相談 | 一部の自治体やNPO法人では、経済的困窮者向けに無料または低価格で支援する制度がある。 |
終活で大切な10のことは何ですか?
終活ではさまざまな準備が必要ですが、中でもとくに重要な10項目についてご紹介します。
1 | 身辺整理をする | 大切なものと不要なものを整理し、必要に応じて処分する。貴重品や重要書類の保管場所を明確にし、家族が困らないように準備しておく。 |
2 | エンディングノートを書く | 自分の死後について、希望や意思を書き残す。財産リストなど、伝えたいことについてのメモも残す。 |
3 | 遺言書を作成する | 相続トラブル防止や財産分配の明確化に役立つ。 |
4 | 財産整理 | 自分自身の財産状況を把握し、不要なものは整理する。不動産や株式など複雑な資産については専門家に相談するとよい。 |
5 | 断捨離 | 不要な物品を整理し、大切なものだけ残すことで家族への負担軽減につながる。 |
6 | 生命保険・年金の確認 | 契約内容や年金受給状況について確認し、不足部分があれば補填する。 |
7 | 医療・介護について考える | 延命治療や介護方針について事前に意思表示しておく。 |
8 | お墓の準備 | 墓地購入や納骨堂契約など、お墓に関する準備を行う。 |
9 | デジタル遺品整理 | スマホやパソコン内のデータ、SNSアカウントなどデジタル遺品も整理するログイン情報や削除希望内容をエンディングノートに記載しておくと便利。 |
10 | 人生を楽しむプランを考える | 残りの人生を充実させるためにも、自分らしい生き方を見つけて楽しむことが大切。新しい趣味を見つけるのもおすすめ。 |
断捨離の終活は何歳から始めるべき?
断捨離は年齢に関係なく、自分自身が必要だと感じたタイミングで始めるべきでしょう。ただし、多くの場合、50代以降から始める方が多い傾向にあります。
50代以降は、子供が独立し、自宅内のスペースに余裕ができるうえに自身や配偶者の健康状態について考える機会が増えます。
定年退職後ならば、時間的余裕も生まれて、じっくり断捨離を進めることができるでしょう。
一度に全て片付けようとせず、「少しずつ進める」ことがポイントです。また、大切な思い出品については写真撮影などで記録として残すと、後悔しにくいでしょう。
まとめ
終活で最も大切なのは、自分自身と家族の双方への思いやりです。中でも葬儀は、家族への負担が大きい部分であるため、早めに計画しておくことをおすすめします。
生前に葬儀について決めておくメリットはたくさんありますが、やはり家族への負担を軽減できることと、自分らしいお別れを実現できる点が大きいでしょう。
生前相談や生前契約など、生きているうちに葬儀の準備はできるので、終活のひとつとしてぜひ葬儀について決めてみてください。