相続人の調査は慎重に。ポイントは「戸籍」等の厳密な調査【税理士監修】

投稿:2023-03-02
相続人の調査は慎重に。ポイントは「戸籍」等の厳密な調査【税理士監修】

相続発生時に誰がどのような順序で相続人になるのか、そのルールは民法で明確に決まっています。しかし、相続人の調査は実際には簡単なことではありません。どのような点に注意する必要があるのかを解説します。

なお、この記事では、遺言がない場合を前提に解説しています。遺言がある場合には、遺産分割は遺言の内容が優先されます。この点については、別の記事で解説していますので、そちらをご覧ください。

相続人を確定していないと、こんな問題が起こる

誰が相続人になるのか、なぜはっきりと確定しておかないといけないのでしょうか?

相続が開始すると、相続財産は相続人が法定相続分に応じて共有することになります。

相続人が決まっていなかったり、後で別の相続人がいることがわかったりすると、どのような問題が起こるのか確認しておきましょう。

遺産分割協議ができない

相続財産は分割するまでは相続人共有のものです。共有権利者である相続人が話し合って、相続財産を実際にどのように引き継ぐか決定します。相続人が不確定であると、遺産分割協議ができません。たとえ遺産分割協議が無事に整ったとしても、後で別の相続人が現れたりすると、遺産分割協議をやり直す必要が出てきます。

財産の引き継ぎができず、相続税が払えない

遺産分割協議が整って、誰がどの財産を引き継ぐかがはっきりして初めて、財産の承継手続きや相続税の支払いなどができます。財産の承継というのは、不動産登記や、銀行預金、有価証券の引き継ぎなど多岐にわたります。相続人が確定できないままでは、財産の引き継ぎもできず、相続税も払えません。相続人全員が延滞税を払うことにすらなりかねないので注意しましょう。

誰が相続人になるか「法定相続分の定め」を確認する

誰が相続人になるのか、民法で法定相続人の定めがあります。相続人を確定するために、まず、民法の内容を確認しておきましょう。

被相続人との関係の近さで、法定相続人と法定相続分が決まる

被相続人との関係の近さで、法定相続人とその順位が決まり、法定相続人の順位に応じて、法定相続分が決まります。

配偶者は常に第1順位の相続人です。なお、内縁者は法定相続人にはなりません。それ以外の順位は次の通りです。全て「血族相続人」です。

  • 第1順位:子供(養子も含む)。相続時に子が亡くなっていれば孫が子に代わって相続人となる(代襲相続)。
  • 第2順位:直系尊属(父、母等)。相続時に父、母が亡くなっていれば、祖父、祖母が相続。
  • 第3順位:兄弟姉妹。相続時に兄弟姉妹が亡くなっていれば、その子(甥、姪)が代襲相続。

配偶者がいる場合の法定相続分は次のようになる。

配偶者とそれ以外の相続人がいる場合の法定相続分を表にすると、次の通りです。

配偶者相続人
(常に第1順位)
血族相続人法定相続分
配偶者配偶者以外の相続人
配偶者
(内縁は含みません)
第1順位
子(養子も含む)
相続時に子が亡くなっていれば孫が代襲相続。
2分の12分の1
第2順位
直系尊属(父、母等)
父、母が亡くなっていれば、祖父、祖母が相続。
3分の23分の1
第3順位
兄弟姉妹
相続時に兄弟姉妹が亡くなっていれば、その子(甥、姪)が代襲相続。
4分の34分の1

相続人の調査は戸籍に基づいて慎重に行う

相続人の調査は戸籍に基づいて慎重に行う

日本は戸籍制度が整っているので、戸籍さえ調べれば簡単に相続人がわかると思っている方も多いようです。しかし、戸籍調査は決して簡単なことではありません。さらに言えば、戸籍だけではわからない相続人が隠れていることもあります。

戸籍調査は現在の戸籍だけでなく、改製原戸籍なども必要

戸籍調査は、現在の戸籍を調べるだけでは不十分です。日本国民は、出生により父母の戸籍に入り、婚姻により新たに夫婦の戸籍に入るというように、出生から死亡までの間にはいくつかの戸籍に記録されます。

例えば、婚姻すれば夫婦で新しい戸籍を編成し、もとの戸籍から抜けてしまいます。現在の戸籍では婚姻した兄弟姉妹との身分関係さえわからなくなってしまうということです。自分の親が離婚していた、全く知らない隠し子がいる、といったことは、現在の戸籍だけではわかりません。

法定相続人を特定するためには、亡くなった方の全ての戸籍謄本等が必要となります。

そのために、「改製原戸籍」(かいせいげんこせき:「はらこせき」とも呼ばれる)等を調べる必要があります。

「改製原戸籍」とはなにか。

被相続人の出生から死亡までの戸籍を全てまとめた戸籍です。被相続人の本籍地で保管されています。本籍地がわからなければ、被相続人の現住所の市区町村で調べることができます。改製原戸籍を調べてはじめて、自分の親が離婚していたとか、全く知らない隠し子がわかる、といったこともあるようです。

実際の調査方法

実務的には、被相続人の現在の住所地の市区町村の戸籍係等で相談するのが一般的です。最近では、郵送等でも調査に応じてくれますので、市区町村に電話等で確認してみてください。

調査方法の一例(市町村に所定書式で調査を依頼する。)

次の図は、郵送調査のための戸籍調査の依頼の一例です。

改製原戸籍といった言葉を知らなくても、役所に頼んで「出生から死亡までの記載がある戸籍を調べてください」と言えば、必要な資料を調べでくれます。改製原戸籍などのほか、被相続人の死亡の事実を示す「除籍謄本」などもまとめてくれるので、ぜひ相談してみましょう。

なお、郵送で調査をお願いする場合、必要な料金は「定額小為替」で支払います。これも、役所の担当者が必要な料金について教えてくれるので安心してください。

豊中市役所「戸籍・住民票・印鑑証明書などの請求>郵送請求

(図解の出典:豊中市役所「戸籍・住民票・印鑑証明書などの請求>郵送請求」)

ネット情報ではかえって混乱してしまう

ネット情報等で「改製原戸籍」を検索すると、戸籍の歴史に遡ったりした複雑な解説しているものをよく見かけます。しかし、読むとかえって混乱してしまうことも多いです。

役所の窓口で相談すれば、大概の問題は解決します。また、後述の通り、難しい問題は専門の税理士法人等に任せればよいのです。ネット情報に振り回されないようご注意ください。

参考:東京法務局の資料でわかりやすい説明があります。

東京法務局で「【相続登記ガイドブック】相続登記の手続について(詳細編)」という資料があります。この中で、戸籍謄本等の収集方法について、簡潔に説明されているので、ぜひ参考にしてみてください。

「【相続登記ガイドブック】相続登記の手続について(詳細編)」

相続人の調査を含め、相続対策の相談をするなら税理士法人へ

相続人の調査は専門的な知識が必要ですが、通常の相続については、役所の窓口で「出生から死亡までの記載がある戸籍を調べてください」といえば解決するでしょう。

もし戸惑うようなことがあれば、ご自分で対応するよりも、相続問題に詳しい税理士法人等に調査をお願いするのが無難です。相続人の調査のみならず、その後の遺産分割協議や、財産の承継、相続税納付に至るまでの様々な手続きについても、相談にのってくれるでしょう。前述の通りネット情報等では、一般の人が必要としないような複雑な情報が掲載されていることも多く、混乱することになりかねません。

葬儀のデスクでは、相続に強い税理士による公式の相談窓口を設けています。無料で相談できるので、ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。

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■執筆者 
社会保険労務士 玉上 信明(たまがみ のぶあき)

三井住友信託銀行にて年金信託や法務、コンプライアンスなどを担当。定年退職後、社会保険労務士として開業。執筆やセミナーを中心に活動中。人事労務問題を専門とし、企業法務全般・時事問題・補助金業務などにも取り組んでいる。

■監修者 
相続・贈与相談センター赤坂支部
税理士 城 行永(じょう ゆきひさ)

税務と生命保険、不動産の専門知識によって総合的な相続税コンサルティングを行っております。さまざまなケースに対応できますのでご質問ご相談はなんでもお気軽にご連絡ください。
【保有資格】税理士・生命保険募集人・宅地建物取引士

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著者:葬儀のデスク編集部
葬儀のデスク編集部
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