本人が生存している間に行われる葬儀を、生前葬と呼びます。
まだまだ一般的な葬儀ではありませんが、直接お世話になった人に感謝の意を伝えることができるなどのメリットも多いため、新しいスタイルの葬儀として注目を集めています。
生前葬にかかる費用感を中心に、生前葬の意味やメリット、生前葬に参列する際のマナーなど生前葬のことを詳しく解説します。
もくじ
自分が生きている間に行う生前葬とは
生前葬は自分が生きている間に行う葬儀のことです。葬儀の形式が多様化しているとはいえ、生前葬はまだまだ一般的なものではありません。そのため、生前葬とはどのようなものなのかご存じない方は多いのではないでしょうか。
まずは、なぜ生前葬を行うのか詳しく解説していきます。
生前葬は自分が主催者になれる
葬儀は自分が亡くなってから行うものですが、生前葬は基本的に自分自身が主催者となって行います。主催者として自分の理想に近い形の葬儀にできるだけではなく、それを実際に見ることができるのです。これは、一般的な葬儀では絶対にできないことでしょう。
生前葬の主催者は自分自身でなければいけない
ちなみに、生前葬は自分自身が主催者でなければなりません。生前葬には生きている内に感謝の気持ちを伝えたいという目的があり、あくまでもこれは本人が周囲に対して思うものです。
もし本人以外の人が主催者となり、本人へ感謝の気持ちを伝えるために生前葬を行おうとすれば、不快な思いをさせてしまうでしょう。生きている人に対し、周囲の人が葬儀をあげるというのは失礼にあたります。
実例から見る生前葬の流れ
生前葬は主催者によって内容が変わります。ここでは、実例から見る生前葬の流れを紹介します。
- 開式
- 主催者の自分史を動画上映もしくは写真のスライドショー
- 参列者のスピーチや余興、ゲーム
- 食事
- 主催者の挨拶
- 閉式
これはあくまで一例です。
生前葬には決まりがないので、自分史ではなく自分が作り上げた作品を展示したり、参列者とゲームを楽しんだりと、いくらでも自分好みの内容にすることができます。
生前葬を行うことのメリットやデメリット
生前葬には、それぞれメリットやデメリットがあります。メリットとデメリットをそれぞれ解説します。
生前葬を行うことのメリット3つ
生前葬のメリットは3つあります。
1.自分自身が主催者になれるので、理想の葬儀を実現できる
一つ目は生前葬は本人自身が主催者になれることです。自分が納得する葬儀を行うことができ、その様子を自分の目で見ることができます。
生前葬に限らず、一般的な葬儀でも家族に願いを託すことで、理想の葬儀を実現することは可能でしょう。しかし、亡くなってから行われる葬儀では、実際に自分の目で見ることは叶いません。
生前葬なら、理想の形になるようじっくり時間をかけて計画することができますし、主催者として見届けることができるのは最大のメリットではないでしょうか。
2.生きているうちに周囲に感謝の気持ちを伝えられる
二つ目のメリットは、生前葬を行うことにより、自分が生きているうちに周囲に対して感謝の気持ちを伝えることができるということ点です。
当然のことですが、亡くなった後は感謝の言葉をかけることはできません。生きているうちに感謝を伝えたいものですが、たとえ心の中で感謝していても言葉にして伝えるきっかけを掴むのはなかなか難しいでしょう。
生前葬というきっかけがあれば、これまでお世話になってきた人たちに改めて感謝の気持ちを伝えることができます。これを機に、関係が薄れていた人たちと交流が始まることもあるようです。
3.自分の死後、残された家族の負担を減らすことができる
三つ目のメリットは、残された家族の葬儀の負担を減らせるということです。生きているうちに生前葬を行い、亡くなった後は遺族や親族だけでの直葬にすれば金銭面の負担も軽減できます。
亡くなった後、残された家族は故人を失った悲しみを抱えながら葬儀の準備をしなければいけません。こうした家族の負担を考え、生前葬を検討する人が増えているのです。
他にも、終活の一つとして生前葬を行う人もいます。生前葬で社会生活に一旦区切りをつけることにより、新たな気持ちで第二の人生を歩むことができるようです。家族側にとっても死を前向きにとらえることで、亡くなった時の精神的な負担を減らすことができるでしょう。
このように生前葬には数々のメリットがありますが、良い面があれば悪い面があるようにデメリットもいくつかあります
生前葬のデメリットは理解を得られにくいこと
生前葬のデメリットとしては、亡くなった後再び一般葬を行われることがあり、葬儀の形式は違えど二度葬儀を行うことになるケースがあることです。
例葬儀の負担を軽減させるために生前葬を行ったはずが、なぜ亡くなった後、再度葬儀が行われることがあるのでしょうか。
これには、大きく二つの理由が考えられます。
1.亡くなった後に葬儀をしないことへの理解が得難い
一つ目は、生前葬は一般的なものではないため、葬儀を行わないことに対し周囲の理解を得られないこと。
2.生前葬をしても亡くなった時にまた葬儀で弔いたいと思うこと家族も多い
二つ目はやはり故人の供養のために葬儀を行いたいという家族の心情です。後者で言えば、たとえ葬儀の準備に追われ金銭的にも負担がかかることになっても、故人を偲ぶ為に葬儀を行いたいと思うものなのでしょう。
本人が残された家族の負担を気遣うように、家族も故人を想って行動を起こすのです。
他にも、生前葬をきっかけにして相続について問題が発生することがあります。生前葬は本来、前向きな目的として行われるものです。しかし、家族の中には本人の死を意識することによって相続に関心が向いてしまい、家族間でトラブルが発生することがあるのです。
生前葬を行う前に、まず相続問題にも目を向けることが必要かもしれません。
生前葬には家族や関係者の理解が不可欠
生前葬は本人だけの気持ちで行うことはできないので、家族や関係者の理解が不可欠となります。葬儀が多様化の一途を辿っているとはいえ、死を連想してしまい不吉だ、縁起でもない等と思う人がいるのは事実です。
生前葬はこれまでの人生を振り返り、これからの人生を明るく前向きに生きる為に行うものですが、本人の気持ちを受け入れてもらうのは容易ではないでしょう。
生前葬を行う際は、根気強く家族に説得を試みる必要性がでてくるかもしれません。
生前葬にかかる費用は20万円~が目安
生前葬はどれくらいの費用がかかるのかご存じでしょうか。生前葬の認知度はまだそれほど高くないので、費用が分からないという方は多いと思います。
生前葬は参列者や会場によって、価格が大きく変動します。
例えば、ホテルの会場を借りて小規模で行う場合は、20~30万円で開催することが可能です。参列者を増やすと必然的に会場の規模が大きくなるので、100~200万円程度の費用がかかります。中には大規模な生前葬を行い、300万円の費用がかかったケースもあります。
生前葬は、その内容によっても費用が大きく変動します。生前葬の自由度は高いので、とことん理想を追求し、細部までこだわりたいという方はそれ相当の費用がかかるでしょう。逆に言えば、内容次第では予算を抑えたリーズナブルな価格で生前葬を行うこともできるということです。
生前葬に招待された場合はどうすればよい?
生前葬に参列した経験がある方は、それほど多くありません。そのため、招待されたことに戸惑いや不安を感じる方が少なくないようです。
ここからは、生前葬に招待された場合のマナーや注意点についてご紹介いたします。
一般的なお葬式とは異なる点を解説
一般的なお葬式と生前葬には、いくつかの違いがあります。
異なる点を下記にまとめました。
- お葬式は家族の誰かが喪主となるが生前葬は本人が主催者となる
- お葬式は自分の目で見ることができないが生前葬は実際に見ることができる
- 生前葬は無宗教で行われる為、形式にとらわれない
- 生前葬はパーティーのように明るい雰囲気で行われることが多い
生前葬は本当の葬儀のように住職を呼び、厳粛に執り行うこともありますが、ほとんどの場合はしんみりとした雰囲気ではなく、参列者が楽しめるものが多いようです。
会費制のことが多く、基本的に香典は包まない
一般的な葬儀には香典を包みますが、生前葬はどうなのでしょうか。
生前葬は葬儀と違い、会費制であることが多いので香典は包みません。招待するという意味合いから会費制でもなく、香典も辞退するという場合もあります。この場合は、後日品物を贈るといいでしょう。
ただし品物を贈る場合は、主催者が終活の一環として生前葬を行っていることがあるので、自宅に置いても邪魔にならないものを選ぶことをお勧めします。
会費制ではないけれども、案内状に香典を辞退するという記載もないのであれば、香典として1~2万円を用意するといいでしょう。
もし生前葬に出席した後、主催者が亡くなり、再度葬儀が行われる場合は香典を包むべきなのでしょうか。
結論から言うと、生前葬で香典をお渡ししていても葬儀に参列する場合は香典を包む必要があります。参列者にとっては生前葬と葬儀で、二度香典を包むことになるでしょう。
生前葬には平服で参加する
葬儀は喪服で参列しますが、生前葬の場合は平服で問題ありません。生前葬はホテルの会場を借りて行うことが多いので、喪服は不釣り合いです。男性はスーツ、女性はワンピースやアンサンブル等を着用すればいいでしょう。女性の場合は、派手なヘアメイクにならないように身だしなみには気を付けたいところです。
服装については案内状に記載されていることがあるので、確認するといいでしょう。不安であれば主催者に確認しても、マナー違反にはなりません。
まとめ|終活の一環で生前葬について知っておこう
生前葬とは自分が生きているうちに行う葬儀です。家族や友人知人に対して感謝の気持ちを伝えることができ、終活の一環として行うこともあります。
一般的には無宗教で行われ、自由度が高いのが特徴です。生前葬の費用は、会場の規模や内容によって大きく価格が変動します。
その一方で、生前葬には注意点もあります。葬儀の形が多様化しているとはいえ、家族や関係者の理解を得ることは容易ではないということです。
また残された家族の葬儀の負担を減らすために生前葬を行ったはずが、家族は故人の供養の為に再度葬儀を行うこともあります。
参列者の立場としても、生前葬のマナーや香典の有無等分からず、戸惑うことも少なくないでしょう。生前葬を行うには、周囲の理解が必要不可です。
感謝の気持ちを持っていたとしても、普段の生活ではなかなか言葉にする機会は多くありません。生前葬を行うことは、大切な人たちに感謝の気持ちを伝えるきっかけにもなります。また、人生の区切りをつけることによって、これからの人生がより豊かになるのではないでしょうか。