生前整理とは自分の死後に残された家族が、遺品や財産を整理しやすいように生きているうちから準備しておくことです。
生前整理をすることは、残された家族だけでなく自分にもメリットがあります。
しかし、死はいつやってくるかわからないため、いつから生前整理をしておくべきなのかわからず、先延ばしにしてしまうケースも少なくありません。
生前整理はいつから始めるべきなのか、具体的なタイミングを年代別にやるべきことやメリットとともに解説します。
もくじ
家族の負担を減らすための生前整理を始めるタイミングとは
終活は定年後から始めるイメージを抱かれやすいですが、定年を向かえるまで生きていられる保証は誰にもありません。
死のタイミングは誰にもわからないため、生前整理をいつから始めればいいのかわからず、いつまで経っても始められないケースもあるでしょう。
生前整理はいつから始めればいいのか解説します。
生前整理は自分や家族にさまざまなメリットがある
終活が一般的になるまで、生前整理は必要のないものだと思われていました。しかし実際は、生前整理をすることで自分と家族(遺族)の双方にさまざまなメリットがあります。
自分へのメリットは、死後に自分の希望を家族に伝えられることです。たとえば、葬儀のスタイルや財産の分与など、生前整理をしておけば自分の希望を家族に伝えられます。
また、生前整理をすることで、改めて自分の生活習慣や身の回りを見直せるため、より充実した生活を送るヒントを得られます。生前整理は自分の死後のことを考えて行うものと思われがちですが、残りの人生をよりよいものにするための整理でもあると言っても過言ではありません。
生前整理をきちんと行えば、残された家族の負担を減らすこともできます。自分の死後に家族の大きな負担となりやすいのが、遺留品や有料サービスなどの処分・確認・対応、財産の相続などです。
生前整理をして生活に必要なものだけを残し、遺言書を残しておくことで、家族の負担を減らすことができるうえに、相続に関するトラブルも避けられます。
生前整理は自分と家族の双方にメリットがあるので、先延ばしにせずにできるところから始めていきましょう。
生前整理は健康なうちから始めたほうがよい
実際に生前整理を始めるなら、健康なうちから始めたほうが良いです。「○○歳から始めるべき」などの決まりはないので、思い立ったときに少しずつ始めていきましょう。
何歳から始めても早すぎることはないので、20~30代のうちから始めても問題ありません。若いうちから生前整理を始めると、当初と状況が一転してしまうことがありますが、改めて整理しなおせばいいだけです。
ちなみに厚生労働省の「健康日本21(第二次)の推進に関する参考資料」によると、平均寿命は男性が「80.21歳」女性が「86.61歳」であるのに対し、日常生活に制限なく過ごせる健康寿命は男性が「71.19歳」女性が「74.21歳」と公表されています。
参考:健康日本21(第2次)の推進に関する参考資料 – 厚生労働省
日常生活に制限が出てしまうと、生前整理が進めにくくなってしまうため、70代をタイムリミットの目処として健康なうちから少しずつでも生前整理を始めるとよいでしょう。
区切りのいいタイミングを生前整理を始める目安にする
今すぐに生前整理を始めるスイッチが入らない場合は、区切りのいいタイミングで始めるとよいでしょう。
たとえば、50歳や60歳など区切りのいい年齢になったり、転職したり、子供が家を出て自立したりなどのタイミングです。
自分にとって区切りのいいタイミングは、心機一転しやすいタイミングでもあるので、生前整理を始める時期としては最適と言えます。
年代別に生前整理を始めるタイミングややるべきことを解説
生前整理を始めるタイミングはいつでも問題ありませんが、年代によっては進めにくい項目もあるでしょう。
そこで、年代別に生前整理を始めるタイミングややるべきことを解説します。
30代は事故や病気に備えて最低限の整理をしておく
30代ではまだ生前整理には早いと思われがちですが、事故や病気で突然死するリスクは誰にでもあります。万が一のときのために、30代のうちから生前整理を始めても無駄になることはありません。
30代なら30歳や35歳などの区切りのいい時期や、結婚をしたときや子供が生まれたとき、転職をしたときなどが生前整理をするタイミングとしておすすめです。
ただし30代から遺言書を残したり、納骨堂を契約したりなどは難しいうえに、長い人生で目まぐるしく環境が変化する可能性もあるので、最低限の整理だけでも良いでしょう。
たとえば、加入している保険や有料サービスについてや、預貯金や債務についてをまとめるなどです。残された家族が対応に困らないためにも、最低限の整理だけは早いうちから始めていきましょう。
40代から具体的な終活の話を始めていく
親が健在なら、40代にもなれば親の終活が本格的に始まっている時期ではないでしょうか。親の終活を一緒に進めていきながら、自分自身の終活の話も少しずつ始めていくとよいでしょう。
親の終活を中心に考えてともに進めていくことで、自分自身がどのように生前整理を進めていけばいいかもわかってくるはずです。
死と向き合うことは、楽しいことではありません。しかし、ここで勇気を出して向き合い、早めに具体的な終活の話を始めていけば後の負担が軽くなっていきます。
少しずつでいいので、30代よりも具体的で詳細な生前整理を始めていき、後の負担を減らしていきましょう。
50代から不用品の整理などを少しずつ始める
50代になると定年が近付いていることを実感していきます。中には会社で重要な役職に就いている人もいるでしょう。そして、本格的に老後の生活についても考え始める時期です。
50歳を迎えたときや、昇進したタイミングなどで生前整理を始めてみましょう。
生前整理は老後の人生を安心して快適に暮らすための準備でもあります。少し早めではありますが、お金に関する整理だけでなくお墓探しを始めてもよいでしょう。本格的に医療や介護などについても考え始めることで、より具体的な生前整理を進められるようになります。
また、家に物がたくさんある状態なら、使わない物は処分するなど断捨離もおすすめです。断捨離と聞くと、短期間でスパッと大量に物を捨てるとイメージされやすいですが、引き出しひとつ分など少しずつ進めても問題ありません。
まだ体力も気力もあるうちから断捨離を始めれば、快適な老後へと繋がるでしょう。
60代にはエンディングノートなどで具体的な生前整理を行う
60代は終活を始める人が最も多いタイミングです。やはり60代なら、退職したときが生前整理を始めやすいタイミングです。時間に余裕ができることで、終活に取り組みやすくなるのではないでしょうか。
生前整理がなかなか始められなかった人も、健康寿命が来る前に本格的に始めていきましょう。財産や債務は全体でどれくらいあるのか、保険・有料サービス・税金はどこにどれくらい払っているのかなどを見直し、ある程度思い切った断捨離なども行います。
また、お墓探しや葬儀の形態なども本格的に検討し始めましょう。
エンディングノートなどを作ることで、自分の身の回りを整理しやすくなるので、本格的な生前整理を始める際にぜひ活用してください。頭の中で考えるだけでなく、きちんと書き出すことで、具体的にどのように生前整理を進めればいいかなどを把握しやすくなります。
また、エンディングノートには生前整理で整理したことを書くだけでなく、家族へのメッセージや、万が一のときにやってほしいことなども書きましょう。エンディングノートは終活で使うメモのようなものなので、必要だと思った項目があればどんどん追加して問題ありません。
70代はやり残したことを消化しながら生前整理を終わらせる
70代は健康寿命に到達する時期です。生前整理や終活は自分が健康なうちにしかできませんので、まだ生前整理を始めていないならすぐに始めるべきです。
生前整理の内容は60代と変わりません。断捨離やお金に関する整理などを進めつつ、やり残したことも消化していきましょう。
やり残したことを消化することも、生前整理のひとつです。人生でやり残したことをリスト化し、楽しみながら消化して充実した人生を送りましょう。
生前整理は健康なうちから人生の歩みとともに始めること
生前整理を始めるタイミングは、いつから始めても早すぎることはありません。生前整理は膨大な時間と労力を要するうえに、やるべきことも大量にあるので、健康なうちから始めた方が良いです。
人生の歩みとともに少しずつ始めれば、万が一のときに家族の負担を減らすことができます。自分や家族のためにも、できることから進めていき、悔いのない人生を送りましょう。