故人と一緒に埋葬される副葬品(ふくそうひん)は、日本古代からある風習です。
古代では故人が死後の世界を過ごすために必要なものが副葬品として選ばれていましたが、現代では思い出の品や好きだったものを選ぶケースが多いです。
ただ、日本では棺に入れた副葬品は故人とともに火葬されるので、故人が好きだったものでも安全上の理由で副葬品としてふさわしくないものがあります。
副葬品として棺に入れて良いものと悪いものを、判断基準や理由を交えて解説します。
もくじ
棺に納めて良い副葬品を解説
副葬品(ふくそうひん)とは棺に入れる品物のことで、日本古代より続いている風習です。
基本的に故人の好きだったものを副葬品として棺に納めるケースが多いですが、故人とともに火葬されるため、安全上の理由で棺に納めることができないものがあります。
まずは、棺に納めて良い副葬品について詳しく解説します。
副葬品として入れて良いものは花や手紙、衣類など
処分する際に燃やせるゴミとして出せるものは、基本的に副葬品として棺に納めても問題ありません。
中には燃やしても問題ないものであっても、副葬品としてふさわしくないものや、事前確認が必要なものもあるので、心配な場合は葬儀社に相談するとよいでしょう。
供花以外にも育てていた花などを入れられる
副葬品の定番と言えば「花」です。棺に納める花は「別れ花」とも呼ばれています。
祭壇脇の供花を一輪ずつ切り取って納めるのが一般的ですが、供花以外にも故人が育てていた花や好きだった花を納めても問題ありません。
ただし、血液を連想させる赤い花や、死を連想させる黒い花、触れると危険な棘や毒のある花などは副葬品としてふさわしくないので避けましょう。
手紙や故人の写真、千羽鶴などの紙類
手紙や故人の写真、千羽鶴などの紙類は基本的に棺に入れても大丈夫です。
●手紙
故人への思いをしたためた手紙や、故人が大切にしていた手紙がよく副葬品として選ばれています。
●千羽鶴
病室に飾られていた千羽鶴を副葬品として納めるケースもあります。ただし、千羽鶴の火葬を禁止している火葬場があるので、事前に確認することをおすすめします。なお、鶴の数が少なければ相談なく納めても問題ありません。
●故人の写真
副葬品として納める写真は故人のみが写っているものを選び、生きている人が写っているものは避けましょう。
●イラスト
風景などは問題ありませんが、写真同様に生きている人を描いたイラストは避けるべきです。
天然素材の衣類もよく副葬品として選ばれる
故人が愛用していた衣類や、気に入っていた衣類も副葬品としてよく選ばれています。
衣類はご遺体の上にかけられている布団の上に重ねて納めますが、死装束の代わりに着せることも可能です。ただしご遺体は硬直しているため、袖が通しにくいので、死装束の代わりに愛用していた衣類を着せたい場合は早めに葬儀社に相談しましょう。
また、副葬品にできる衣類は朝や絹、綿などの天然素材のものに限ります。
タバコやお酒などの嗜好品もOK
タバコやお酒など、故人が好んでいた嗜好品も副葬品としてよく選ばれています。
ただし、瓶や缶に入ったお酒を納める場合は、紙コップに移し替えてから入れてください。紙パックのお酒ならそのまま入れても問題ありませんが、容器にプラスチックや金属が使われている場合は、葬儀社に相談してから入れましょう。
朱印帳・納経帳・巡礼服があれば積極的に入れるべき
故人が寺院を巡って御朱印を集めていたときに使用していた朱印帳や納経帳は、故人が生前に仏様を信仰し功徳を積んでいた証になります。仏式の葬儀なら、ぜひ積極的に棺に入れてあげましょう。
また、巡礼服(白衣)があれば、死装束として着せてあげるのもおすすめです。
ペースメーカーや食べ物など事前確認が必要なものがある
副葬品として棺に入れても基本的に問題ありませんが、中には事前に確認や申請が必要なものもあります。
火葬場や葬儀社によって判断が異なるケースもあるので、判断に迷うものは入れる前に相談をしましょう。
食べ物や飲み物は基本的に問題ないが事前確認が必須
食べ物や飲み物は基本的に、棺に入れても問題ありません。ただし、水分を多く含む食品は燃えにくいうえに、火葬時間が長くなってしまうので事前確認を必ず行いましょう。
副葬品としてよく選ばれている食べ物や飲み物は以下の通りです。
- 和菓子
- クッキーやパウンドケーキのような焼き菓子
- スナック菓子
- 紅茶、コーヒー
- お酒
- 果物
果物は丸ごと入れてしまうと火葬中に破裂して事故を招いてしまう可能性があるので、小さく切り分けたものを入れてください。
また、缶詰を入れる場合は缶は、中身を紙製の容器に出してから入れましょう。
火葬場や葬儀社の判断による部分なので、問題がなさそうな食べ物や飲み物でも必ず相談をしてください。
ペースメーカーなどの医療品は事故の恐れがあるので必ず知らせる
ペースメーカーやボルトなどの医療品が体内にあると、火葬中に爆発などの事故を起こす危険性があります。
体内に入っている医療品は見た目ではわからないので、故人が体内に医療品を装着している場合は、事前に火葬場や葬儀社に知らせましょう。
分厚い書類やぬいぐるみは燃えにくいのでサイズなどを確認する
書籍やぬいぐるみは燃やせるので基本的に入れても問題ありませんが、サイズに注意する必要があります。
●書籍
2cm以内のものが目安。分厚い書籍は燃えにくいので、入れる場合は分冊するか一部のみを入れましょう。
●ぬいぐるみ
大きさによっては燃えにくい場合があります。大量に灰が出るケースもあるので、必ず事前確認をしてください。
棺に副葬品として納めてはいけないものを解説
故人の愛用品や好きだったものでも、安全上の理由などで副葬品にはできないものがあります。
棺に副葬品として納められないものを解説します。
副葬品として入れてはいけないものは貴金属や写真など
遺骨に付着する、色が付くなど汚れの原因になったり、火葬炉の故障に繋がったりするものは基本的に棺に入れられません。
●結婚指輪・メガネ・腕時計など
ガラスや貴金属でできているものは、燃え残りやすく遺骨を汚してしまう、火葬炉を故障させてしまう可能性があるで副葬品にはできません。ただし、火葬後に骨壷に納めることは可能です。
●お金
硬貨は金属類なので燃やせないうえに、傷つけると貨幣損傷等取締法に接触します。紙幣も火葬場によっては禁止にされているケースもあるので、六文銭(冥銭)として副葬品にするのであれば木や紙で作られたレプリカ品を入れましょう。
●カーボン製品
燃えにくいうえに炭素繊維が浮遊し、火葬炉や換気設備の故障を招く可能性があるので入れられません。
●革製品
燃えにくく遺骨を汚す可能性があるためNG。
●ビニール製品・プラスチック製品・ゴム製品
火葬時に有毒物質が発生する恐れがあるため入れられません。
●スプレー缶・ライター・電池など
爆発事故を招く可能性があるため入れられません。
●生きている人の写真
故人の写真は問題ありませんが、生きている人が写っている写真は、あの世に道連れにされるという言い伝えがあるので避けるべきでしょう。
入れてはいけないものの判断基準は不燃物や危険性があるもの
副葬品として入れてはいけないものの判断基準は、事故の危険性や遺骨を汚す可能性があるかどうかです。
- 火葬炉の事故を招く可能性がある
- 燃やすと有毒物質を発生する可能性がある
- 燃え残る可能性がある
- 灰や燃え残りなどが遺骨に付着して汚す可能性がある
- そもそも燃やせないもの(不燃物)
- 燃えにくくて燃やし終わるまで時間がかかる
- 道連れなど入れると縁起が悪いもの
上記に当てはまるものは基本的に副葬品にはできません。
ちなみに火葬の温度は800~1,200度ほどで、火葬炉によって最大温度が違います。そのため事故の危険性や遺骨を汚す可能性がないものでも、火葬炉によっては入れられないものが多少違います。予め葬儀社に問い合わせた方が良いでしょう。
故人の好きなものを副葬品として入れる場合は事前確認を忘れずに
燃やせるものなら基本的に副葬品として棺に納めることはできますが、中には安全上の理由から副葬品としてふさわしくないものもあります。
とくに問題なさそうなものでも、火葬場や葬儀社によっては棺に入れられないケースがありますので、故人の好きなものを入れる場合は必ず事前確認をしましょう。
副葬品は故人とともにあの世へ送られるものです。火葬後に遺骨とともに骨壷に納めることもできるので、ぜひ故人の愛用品や好きだったものを選んであげてください。