死に水(死水)とは、ご臨終を告げられた際故人の口元を水で潤す儀式のことです。「死に水をとる」ともいわれ、遺族にとっては最期を看取る重要なお別れの儀式となります。
死に水の由来は、お釈迦様の逸話にある、「末期の水」という説が有力です。
死に水の意味や由来、実際に行う儀式の手順など詳しく解説します。
もくじ
死に水の意味や由来を解説
「死に水」は「しにみず」と読み、「末期の水(まつごのみず)」という別名もあります。
臨終を告げられた後に立ち会った全員が、死を迎える人に人生最後の水をあげる儀式です。
死に水を行う意味や由来を解説します。
「死に水」とは故人の口元を水で潤す儀式
人が亡くなる時や亡くなったばかりの人に、「死に水」と呼ばれる水を口に含ませせる儀式を行います。この儀式が「死に水(しにみず)」もしくは「末期の水」です。
新しい脱脂綿やガーゼを割りばしの先につけたものか、新しい筆先に水を含ませて、くちびるに水をつけてあげます。
かつては死に水は「人が亡くなる間際」に行われていました。水が喉を通ると生きている、この水が通る喉ぼとけの音がしなくなると息が切れていると見なしたとも言われいるため、医学が発達する前は死亡判定のために行われていたのかもしれません。
現在では息を引き取ったあとに行われることが多いようです。
一般的に遺体が病院などから自宅や葬儀場へ運ばれた際に、葬儀社が用意してくれることがほとんどです。
仏教では、人が死んであの世に行くと、飲食ができなくなると考えられています。そのため最後に水を飲んでもらってから、あの世へと旅立ってほしいという意味が込められているのでしょう。
地域によっては特別な場所から水をくんできたり、樒の葉(しきみのは)や菊の葉、鳥の羽、綿棒に水をつけて行う場合もあります。
また一説には、水を飲ませることによって死者を蘇生するという考え方から始まった習慣とも言われています。
死に水の由来はお釈迦様の逸話である「末期の水」
仏教の経典「長阿含経」には「末期の水」が出てきますが、これが死に水の由来と言われています。
「長阿含経」にはお釈迦さまが亡くなる際に、「口が乾いたので水を持ってきてほしい」と弟子に頼んだところ用意できず、雪山の鬼神が鉢に浄水を酌んで捧げたと記されています。
最後に何かをしてあげたいという遺族の気持ちが、そのまま供養として形になり広まったのが死に水です。
ちなみに儀式を「死に水を取る」と言いますが、二つの意味が含まれています。実際に故人の口を潤すという儀式自体を指すだけでなく、「その人の最期を看取る」という意味です。
また比喩的にも使われることもあり、「最後まで関係者として全面的に面倒をみる」といった意味になります。
浄土真宗やキリスト教では死に水をしない
亡くなるとすぐに成仏するという教えの浄土真宗では、末期の水をとることはありません。また、死を安息とするキリスト教でも末期の水は行われず、他の儀式が行われます。
神道では死に水の儀式は行いますが、「死のけがれを清めるために行われるもの」とする考えで、箸ではなく榊の葉を用います。
病院で亡くなった場合には、病院のスタッフが用意をして手順を教えてくれるので、それに従って行いましょう。自宅で亡くなった際にも、医者や葬儀社の担当者が教えてくれるので、不明なことは聞くと安心です。
死に水の儀式手順やマナーを詳しく解説
死に水は、故人の身体を拭き清める「清拭」や死化粧の前に行われる、最初の儀式です。お葬式の最初の儀式とも言えるでしょう。
死に水の手順やマナーを解説します。
死に水は故人との血縁が濃い人から行う
臨終に立ち会った方全員が、故人の口を湿らせていきます。枕元に寄って口元を水で潤しますが、血縁が濃い順番で行いましょう。
家族が揃っていない場合には、揃うのを待って行うこともあります。揃うのに時間がかかる場合に、儀式に参加するかどうかは親族間で話し合ってください。
配偶者もしくは「喪主→子→故人の両親→兄弟姉妹→子の配偶者→孫」が一般的です。小さな子供の場合は、無理をさせる必要はありません。
最近では儀式の簡略化が進み、枕元に水の入ったコップを置くことで代わりにすることもあります。
死に水はくちびるを濡らす程度がマナー
のどの渇きを癒す意味合いがあるからといって、生きている人が飲むような水の量を与える必要はありません。故人のくちびるが濡れる程度で大丈夫です。
- 桶やお椀に入った水と、新しい脱脂綿やガーゼを割りばしの先に輪ゴムでつけたものを枕元に用意する(生前故人が使用していた茶碗を使う場合もあり)
- 脱脂綿を水につけて湿らせる。
- 脱脂綿などの当て方は、唇の左から右へなぞるようにし、上唇から下唇の順で当てる。
- 顔を拭く時は濡らした布でおでこ→鼻→顎の順番に拭く。(おでこを左から右へ、鼻を上から下へ、顎を左から右へ拭く)
- 各人最後に手を合わせる。
まとめ|正しい作法で死に水を行い故人の死と向き合おう
大切な人亡くしてからでは、落ち着いて作法の確認をするのは難しいものです。いざという時のために基本知識を入れておくことで、少しでも心に余裕を作ることができるでしょう。
故人の安らかな旅立ちを願い、労いや感謝の気持ちなどをこめて儀式を行うことが、死と向き合う事にもつながります。