死化粧(エンゼルケア)とはいつするものなのか|タイミングや手順、かかる費用を解説

投稿:2022-06-22
死化粧(エンゼルケア)とはいつするものなのか|タイミングや手順、かかる費用を解説

「死化粧」とはエンゼルケアの一環で「エンゼルメイク」とも呼ばれ、故人が亡くなってから納棺するまでの間に行われます。

より美しい姿で旅立てるように、故人の身だしなみを整えるものです。昨今では死化粧だけではなく、清拭を含む全身をケアすること意味するを言葉になりました。

死化粧は病院で看護師が行うもののみならず、介護施設の介護士やエンゼルケア専門業者、葬儀会社でもおこなっており遺族が行うことも可能です。

死化粧(エンゼルケア)を行うタイミングと手順、エンゼルメイクのコツや費用など詳しく解説します。

死化粧(エンゼルケア)はご遺体が安らかにみえるための配慮

命の灯火が消えた肉体からは体温と共に血色は失われ、時間ごとに在りし日の面影が消えてゆきます。

中には長い闘病生活で表情に無念さが滲む故人もいるでしょう。

せめてご遺体が安らかに見えるよう外観の変化を整えて故人の尊厳を守り、遺族の悲しみを緩和させるために遺体に死化粧を行なったのがエンゼルケアの始まりです。現在では全身の処置も含みます。

死化粧はエンバーミングや湯灌とは大きく異なる

本来エンゼルケアは看護もしくは介護の延長であり、自分で身の回りのことが出来ない人、つまり最期の身支度が出来ない故人に代わって行われるケアのことを指していました。

エンバーミングは防腐処理サービス、湯灌は遺体をぬるま湯で全身を清める儀式であり、それぞれ専門業者もしくは葬儀会社が請け負います。

それぞれ最後はエンゼルメイクを施しますが、基本的な意味合いも方法も大きく異なります。

死化粧とエンバーミングの違い

  • エンゼルケアは防腐処理なし/ドライアイス必須
  • エンバーミングは10日~2週間ほどは衛生的かつ安全/ドライアイス不要
    ※安心して故人に直接触れることができる
  • エンバーミングは損傷した箇所を修復

エンバーミングは日本語で「遺体衛生保全」もしくは「死体防腐処理」と訳されます。エンゼルケア同様、国家資格はありませんが、団体が定める資格試験に受かった人しか施すことができない専門技術です。

エンバーミングは遺体に薬品を用いて「防腐処理」を施し、さらには事故などで欠損した部分を修復する技術を用いて、故人を生前に近い状態にして保存できるようにします。

血液を抜き、血管と内臓に防腐液を注入する事によって、防腐処理と自然に見える血色を作り出します。死化粧を施しても浮くことはなく、ナチュラルに見えるのが特徴です。

エンバーミングを行う人をエンバーマーと呼びます。エンバーマーになるには病理・解剖・公衆衛生・感染症など高度な医学知識が必要なため、医療従事者やエンバーミング専門学校を卒業した人に限られます。

一方、エンゼルケアは医療従事者以外でも講習を受けることで誰にでもできるものです。

日本ヒューマンセレモニー専門学校

一般財団法人 日本遺体衛星保全協会

エンバーミングの費用は遺体の状態が良ければ20万円前後ですが、損傷の大きさと修復内容によって金額は大きく変わります。

死化粧と湯灌の違い

湯灌は故人にとって最期の入浴のことです。生前同様シャンプーと入浴でスッキリした後、爪を切って死化粧を、男性は髭を剃り、身支度を整えて死出の旅に送り出します。

「湯灌の儀」には「逆さ水」を用いるしきたりがあります。これは葬儀での慣習である「逆さごと」です。逆さごととは、例えば死装束の合わせが生者とは逆の左合わせ、屏風を逆さまにするなど日常とは逆を行うこと。

日常と一線を引く事で生と死の境界を設ける、または古より、死者の世界は生者とはあべこべであるとの考えもあります。

逆さ水は、お湯に水を注ぐのではなく、水にお湯を注いでぬるま湯を作り浴槽に溜めます。

入浴の際、故人の体には布がかけられるので裸を人目に晒す事はありません。この時、家族も立ち会ってお湯をかけてあげる事もできます。

湯灌のメリット3つ

  • 故人と遺族との最期のスキンシップ
  • 死後硬直が和らぎ体勢を整えられる
  • 遺体が温まる事で死化粧がしやすい

料金はおよそ90分で6万円〜10万円です。

神道でも湯灌に当たる沐浴があり、通夜祭の前に沐浴で現世での穢れを清めてから棺に納めます。

死化粧(エンゼルケア)は故人が亡くなってから納棺されるまでの間に行う

死化粧(エンゼルケア)は故人が亡くなってから納棺されるまでの間に行う

エンゼルケアは故人が亡くなり納棺の前に行われ、死後硬直が始まる2~3時間前には済ませます。

エンゼルケアは遺体を整える事と感染防止といった公衆衛生上の理由、この2つの目的から行うものです。

看護師が死化粧(エンゼルケア)を行う場合

故人が病院で亡くなった場合は看護師がエンゼルケアを行い、最後は簡単な死化粧を施します。死化粧に関して病院ではあくまでも故人が退院する際の身支度のお手伝いであるため、基本的にリクエストはできません。

病院内で売られている新しい浴衣に着替えさせてくれますが、簡単な衣装であれば遺族が用意した死装束を着付けてくれる場合もあります。

葬儀会社に死化粧(エンゼルケア)を依頼する場合

自宅で亡くなった場合は葬儀会社もしくはエンゼルケア専門業者に依頼します。多くが葬儀の際の有料オプションサービスですので、故人の雰囲気とは違うメイクだと思ったらやり直してもらう事も出来ます。

死化粧は誰がしなくてはいけないという決まりはない

死化粧をする人は決まっていません。葬儀社や看護師ではなく、は家族が行ってもいいのです。

ただ、体温を失った故人の顔に通常の化粧品をのせても肌には馴染みにくいので思うようにメイクが進みません。そこでエンゼルメイクのポイントを紹介します。

  • ファンデーションやコンシーラーはリキッド・もしくはクリームタイプを 使用する。
  • 両手の熱と脂で馴染ませるように、ベースメイクの最後にはハンドプレスをおこなう。
  • ファンデやコンシーラーの伸びが悪い時は少量のオイル(美容オイルor天然オイル)を入れて伸ばす。アイシャドウ・チーク・口紅も同様。

手順は以下の通りです。

  1. メイク前に保湿クリームを塗る。馴染むように最後は両手でハンドプレス
  2. ベース下地を塗る。両手で軽くハンドプレス。
  3. ファンでを両額・頰・顎・鼻 に点置き、内から外へと伸ばす。必要に応じてコンシーラーをのせる。
  4. チークはクリーム・パウダーどちらでもOK。ただしクリームの場合はいつも以上に少量づつ、もしくはオイルを少し足して伸ばして使用。パウダーの場合は大きめのチークブラシでふわっと大きくのせる。
  5. アイメイク。眉・アイシャドウ共にどばっと色をおとさないように薄く重ね、マスカラを使う場合はまぶたにつかないようにまつげの下にティッシュを置く。
  6. 口紅は指先でポンポン置く。

メイクの仕方は生者と何らかわりはありません。少しの手間をかけるだけで良いのです。

死化粧(エンゼルケア)の手順、流れ

  1. 臨終後に医療機器の取り外し
  2. 排泄物の処理
  3. 口腔ケア
  4. 全身清拭と綿詰
  5. 着替えとメイクアップ

死化粧は上記手順で行います。実際にどのような処置をするのか、それぞれ解説します。

医療器具の除去

故人が入院もしくは介護施設に入所していた場合は、看護師もしくは介護士が体につけられていた人工呼吸器や人工肛門(ストーマ)、点滴や胃ろうなどのチューブ等を除去、そしてその孔を専用フィルムや絆創膏で閉じます。

在宅ケアの場合、家族がエンゼルケアを行う場合は点滴は家族が外す事もありますが、あらかじめ講習等を受けていない場合は感染防止等の見地から専門業者に依頼しましょう。実際のところ、在宅のほとんどが葬儀会社、もしくはエンゼルケア専門業者に依頼される人が多いです。

ただし、血管カテーテルは出血を防ぐために抜かずにそのまま火葬する事もあります。

排泄物や内容物を出す

死後直後は体が弛緩する事で排泄物が漏れ出す事もありますが、綿詰めや専用のゼリーを入れる事で防ぎます。

胃の内容物等、すべてを取り出す必要はありませんが最低限度出し、その際、遺体の右半身を下に横向きにして心窩部を押します。

排泄物は上半身を起こして自然に出させたり、寝かせた状態で腹部を圧迫して排出させます。病気で亡くなった人の中には腹水が溜まったままの状態の場合もあり、そのままの場合もあれば、遺族の申し出によって業者が対応する事もあります。

口腔内のケア

口腔内が汚れたままだと、死後、強い臭気へと変わるため口腔ケアは重要です。

家庭内にもある、オキシドールなどの過酸化水素水を口腔ケアスワプ、ガーゼや脱脂綿に含ませて口腔内を清掃します。ただし、汚れを拭き取る際に力を入れすぎると口腔内を傷つけて出血する事があります。死後は止血し辛いので、ケアの際は力加減と薬剤で傷つけないように気をつけなければなりません。

そして最も気をつけなければならないのが「時間との戦い」です。顎は死後硬直が早く現れる箇所であり、平均3時間、早くて1時間ほどで顎関節硬直が始まり、開閉が難しくなります。早い段階で行うのが良いでしょう。

全身の清拭

アルコールを含ませた清拭タオルで顔から順番に下へと全身を拭いていきます。

頭髪はドライシャンプー、汚れの程度によっては洗髪を行い、体液が漏れ出ないように鼻・耳・口、そして下半身を脱脂綿と青梅綿で塞ぎます。

着替え

エンゼルケアで清められたあと、新しい浴衣もしくは故人が生前に用意していた衣装を着つけたらメイクで肌色をそして髪型を整えます。整え終えたら胸の上で手を組ませて、合掌させて終了です。

死化粧(エンゼルケア)にかかる費用は場合によって大きく異なる

死化粧にかかる費用は、病院か葬儀会社に依頼するかで大きく異なります。

病院で行う場合は5,000円~10,000円

病院や介護施設におけるエンゼルケア料金は保険適応外で全額自己負担、浴衣なし(持込による着付けもなし)で5,000円~10,000円程度です。

浴衣持込の場合はプラス2,000円~3,000円、病院・施設側で浴衣を用意すると20,000円前後となります。

葬儀会社で行う場合は4万円程度

エンゼルケアもしくは「美装納棺」と呼ばれ、基本料金の平均金額は4万円、着替え(和・洋)が入ると4万円~5万円、特殊メイクが必要となると5万円前後が相場です。

まとめ|死化粧は故人が美しく旅立てるようにするために行うもの

死化粧、エンゼルケアは故人のためのみならず、身なりを美しく整えて旅立たせてあげたいと願う遺族の思いもこめられています。

著者:葬儀のデスク編集部
葬儀のデスク編集部
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