
エンバーマーとは、エンバーミングを行う人を指す言葉です。
エンバーミングとは、遺体を消毒し、防腐処理や必要であれば修復などを行い、長期保存できるように保全する技法のこと。
日本では、まだあまり馴染みのない職業ですが、最近では、エンバーミングを希望するご遺族の方が増えてきていることもあり、注目度が高まっています。
エンバーマーの仕事内容や資格の取得方法などを詳しく解説します。
もくじ
エンバーマーの仕事内容を解説
エンバーマー(Embalmer)という職業をご存知でしょうか。日本ではあまり普及していないので、聞きなれない職業かもしれません。
エンバーマー(Embalmer)の仕事内容について、解説します。
エンバーマーはエンバーミング(遺体衛生保全)を行う人
エンバーマー(Embalmer)とは、エンバーミング(embalming)を行う人のことを指します。
そもそも、エンバーミングとは、遺体を消毒し、保存処理を行い、必要に応じて修復することで長期保存を可能にする技法です。日本語では「遺体衛生保全」といいます。
エンバーミングは、エンバーマーと呼ばれる資格を持った技術者だけがすることができる処置です。
エンバーミングには専用の施設があり、エンバーマーは、通常エンバーミングセンターに勤務します。
エンバーマーという仕事は、単に技術だけを身につければ良いというものではなく、ご遺族の気持ちを汲み取り、ご遺族が穏やかな気持ちで故人の最期を見送ることができるよう配慮するような高い精神性が求められる仕事です。
日本では医療従事者や各企業や協会の認定資格を持つエンバーマーや、アメリカやカナダ州でのエンバーミングの資格を持った外国人エンバーマーなども活躍しています。
また、日本国籍を持つ日本人が海外で死亡した場合などのご遺体の移送や、日本で死亡した外国人のご遺体の移送の際には、エンバーミングは必須です。
エンバーミングとはご遺体の長期保存するための処置
エンバーミングとは、遺体を消毒や保存処理、また必要に応じて修復することで長期保存を可能にする技法です。遺体を消毒液で清拭し、皮膚を切開し防腐剤を注入し、静脈から血液を排出することで、長期保存を可能にします。
必要に応じて顔や身体の復元処置を行い、着替え、メイクを施し、外見も整えるのも重要な役割です。
具体的には、エンバーミングでは血管などを使用し、血液と防腐剤を入れ替える処置をします。基本的には動脈から防腐剤を注入し、静脈から血液を排出するように、マシーンから管をつなぐ作業です。
体腔の一部分を切開して中に防腐剤を流し込んだり、縫合したりして、ご遺体を整えていきます。エンバーミングを行うことで、ご遺族は、生前のような姿で衛生的なご遺体とお別れがすることができるのです。
今までは医師など免許を持った医療従事者しか行うことができなかったのですが、ご遺体に関しては特別な専門技術としてエンバーマーも執り行うことができるようになりました。
エンバーミングとエンゼルケアの違い
「エンゼルケア」とは、病院で亡くなった際に行ってくれる湯灌や身繕いなどのことで、あくまでもご遺体のケアを目的としているものです。
お通夜から火葬が終わるまでの期間は、早くても2~3日はかかるため、その間、ご遺体の保存状態を保つための「応急処置」といえるでしょう。
1~2日間であっても、長時間ドライアイスが当たった遺体の部位は変色することがあり、やむを得ないとは言え、遺族にとっては辛いことでもあるかもしれません。
エバーミングは、遺体の腐敗を防止する処置を施し、ご遺体を衛生的に長期保存できるようにするという意味でエンゼルケアとは目的が異なります。
「エンゼルケア」をでは、ドライアイスや防腐剤で遺体の劣化を抑制するのが、通例です。
エンゼルケアは、「遺体処置(または「死後処置」)」「遺体のメークアップ」「遺体保存処置(ドライアイス)」などといった名前で、葬儀社から出される見積書の明細項目の中に記載されていることが多いです。
また、前述したように、専門的な処置を行うという点で手法が異なります。
「エンバーミング」は「エンゼルケア」のような応急処置ではなく、体を化学的・外科医学的防腐処置技術によって、外観的な変化なく長期間保存する方法なのです。ドライアイスでご遺体を痛めることなく常温で保存することができます。
「エンバーミング」は医療行為ではありませんが、化学や外科医療の知識と専門技術を必要とされる遺体処置法です。の処置自体は「エンバーマー」という専門資格を持つ人しか行うことができません。
実は、「エンバーマー」の資格を持っている人が所属している葬儀社は、あまり多くありません。「エンバーミング」を行う医療機関も少ないです。
ところが、一部の葬儀社では「エンゼルケア」と「エンバーミング」が混同されるような案内をしていることがあり、まだ日本でエンバーミングは一般的ではないのが現状です。
日本でエンバーミングが普及していないワケ
土葬の文化が基本であったアメリカやカナダなどの地域では、感染症の蔓延を防ぐためにも、エンバーミングを行ってから葬儀を行うという流れができています。
海外では、一般的なご遺体の処理方法なのです。
一方で、火葬する文化が定着していた日本では、長期的にご遺体を保存することがないため、エンバーミングの認知度があまり高くありません。日本では、ご遺体は遺体冷凍庫による低温保存をするのが主流だったためです。
エンバーミングは日本では、まだまだ一般には広まっていません。
しかし、日本でも、家族葬の増加に伴ったご遺族のグリーフケアのひとつとして、エンバーミングの件数は増加傾向にあります。エンバーミングの需要が高まれば、必然的にエンバーマーの資格が必要とされるでしょう。
エンバーマーになるために必要な資格を解説

これから需要が高まることが予想されるエンバーマー。エンバーマーになるためには、どのような資格が必要なのでしょうか。
エンバーマーになるために必要な資格について解説します。
エンバーマーは国家資格ではない
2020年10月時点で、エンバーミング及びエンバーマーの国家資格はありません。エンバーマーは、日本遺体衛生保全協会(IFSA:International Funeral Science Association in Japan)からの認定を受けた資格です。
IFSAは環境省の行政指導を受けながらエンバーマーの養成をし、日本で適正なエンバーミングを普及しようを務めています。
日本にはエンバーミングに関しての法整備がないため、エンバーミングの資格は基本的に民間の認定資格です。
日本でエンバーミングの資格を得ようするときには、まず一般社団法人日本遺体衛生安全保全協会(IFSA)の認定養成学校に通い、資格認定試験に合格する必要があります。試験に合格後、IFSA認定のエンバーミングの資格が授与されるという流れです。
IFSAの認定養成学校となっているのは、日本ヒューマンセレモニー専門学校の「エンバーマーコース」が挙げられています。
IFSA認定のエンバーミングの資格は、特にIFSAに加盟している企業への就職の際に有効な資格です。
日本で適正だと認められているエンバーミングの資格は、通信講座では取ることはできません。エンバーマーとして必要な学習は、一般教養や葬祭学・遺体衛生保全、そして実習です。
特にエンバーミングに関しては、現場での実習が最も重要であるといわれています。
エンバーミングを行うときには、エンバーミングセンターなどの処置施設や機器を必要とするため、実習などの際にも限られた場所でしか学ぶことができず、通学による実習が必須です。
一般社団法人 日本遺体衛生保全協会のホームページ | エンバーマー養成校ご案内
エンバーマーの資格取得にかかる費用の相場は?
エンバーマーの資格を取得するためにかかる費用はどのくらいでしょうか。
参考までに、IFSAの認定校である日本ヒューマンセレモニー専門学校「エンバーマーコース」の概要と費用をお伝えします。
1年目納付金
合計98万5千円(入学金15万円・授業料48万円・実習費20万円・施設費15万円、維持費5000円)
2年目納付金
合計83万5千円(授業料48万円・実習費20万円・施設費15万円・維持費5000円)、
【別途費用】1年次:48万円 2年次:10万円
2年間での納付金は、182万円、別途費用は合計で58万円、総額240万円となります。
そのほかの方法としては、エンバーミングの本場であるアメリカ北部やカナダの葬儀学校に留学して、エンバーミングの資格を取る方法です。
アメリカの各州のフューネラルディレクターとエンバーマーライセンスなどが、エンバーミングの資格に当たります。
葬儀学校に1年ほど通い、その後学科試験に合格をして学校を卒業する必要があり、なかなか大変です。
卒業後は、スーパーバイザー(監督者・管理者)となるエンバーマーのもとで、エンバーミングだけではなく葬儀全般の実地訓練(インターンシップ)に従事するのが一般的でしょう。
そういったプロセスを経て、ようやくエンバーミングの資格を手に入れることができます。
しかし、実際には就労ビザを取得することが困難で、葬儀学校を卒業できたとしても、インターンシップを終えられないケースもあるようです。
エンバーマーの資格取得後の就職先や収入は?
エンバーミングの資格を取ってから、エンバーマーとして仕事をする場合、葬儀社への就職をすることが多いようです。
アルバイトやパートなどの非正規職員として働くこともあるようですので、給料は雇用形態によっても変わるでしょう。
また、葬儀社には大手の会社もあれば、個人経営などの小規模なところもありますので、給与額には差がありますが、大手の葬儀社へ就職した場合は、月給20~30万円くらいが目安だといわれています。
エンバーマーの求人を調査したところ、神奈川県にある某企業の求人案内では、勤務時間は9:00~18:00。給料は「月30万円+エンバーミング報奨金」とあり、休日は月間8日~9日でした。
応募要件はIFSA(一般社団法人 日本遺体衛生保全協会)認定のエンバーマーの資格を有していること、高卒以上、普通自動車運転免許(AT限定可)と表記があります。
高齢化社会が今後、ますます本格化する日本においては、将来性のある職業であると言えるでしょう。
まとめ エンバーマーはご遺体を長期保存させるための処置を行う人
エンバーマーは、ご遺体にエンバーミングを施し、長期保存させるための職業です。
日本ではまだ一般的ではありませんが、生前の姿を保った状態のご遺体とゆっくりお別れをしたいと考えるご家族の考えなどにより、エンバーミングの件数は年々増加傾向にあります。
日本でも今後需要が高まることが予測されるので、将来性のある資格といえるでしょう。
エンバーミングの仕事に興味を持った方は、資格の取得を検討してみてはいかがでしょうか?