葬祭ディレクターとは、葬儀において必要な知識や技能を審査する、厚生労働省の認定を受けた資格のことです。
葬祭ディレクターを取得することは、葬儀のプロフェッショルであるということを証明するものであるといえます。
故人を見送るための大切な儀式。できることなら、安心できる人に任せたいですよね。
葬祭ディレクターの資格について、詳しく解説します。
もくじ
葬祭ディレクターの資格を解説
葬祭ディレクターの資格について、解説します。
葬祭ディレクターとは葬儀のプロフェッショルである証
葬祭ディレクターとは、葬儀に関わる知識や技能を証明する資格です。
葬祭ディレクターという資格は、1996年に葬祭業界を代表する2つの組織である「全日本葬祭業協同組合連合会」と「全日本冠婚葬祭互助協会」が、「葬祭業に従事する人々の知識・技能の向上を図り、併せて社会的地位向上を図ること」を目的に作った資格で、厚生労働省から技能審査として認定されています。
葬祭ディレクターには、1級と2級があり、1級は個人葬から社葬まで、すべての葬儀を執り行える知識と技能、2級は個人葬を執り行える知識と技能があることを証明するものです。
現在、日本における葬祭ディレクターの合格者の累計は34,000人程度。
葬祭ディレクターは、英語では「フューネラルディレクター(funeral director)」という名称で、欧米の一部では取得を義務付けている国もあります。
葬祭ディレクターは、葬儀に関わるあらゆる知識と技術をもったプロフェッショナルといえるでしょう。
一級・二級葬祭ディレクターがある
葬祭ディレクターになるためには、「葬祭ディレクター技能審査協会」が毎年9月に実施する「葬祭ディレクター技能審査」を受験し、合格する必要があります。
葬祭ディレクターの資格は1級と2級のふたつで、1級の方が難易度が高いです。
試験は、1級・2級ともに学科試験と実技試験があります。
学科試験は、葬儀に関わる知識の他に、社会的環境や遺族の心理、公衆衛生、行政手続き、宗教などの関連知識について出題されます。
実技試験は、葬儀場設営の基本である幕張装飾技法の習熟度を判断する「幕張」、遺族や関係者に対する応接能力を判断する「接遇」、葬儀を適切に進行できるかを判断する「司会」、適切な言葉づかいなどを判断する「実技筆記」の4部構成です。
葬儀ディレクターの試験は、葬儀に関するプロフェッショナルとしての知識だけでなく、実務能力を兼ね備えているかどうか審査する試験と言っても過言ではありません。
1級の人は金色のネームバッジ、2級の人は銀色のネームバッジをつけているので確認してみると良いでしょう。
葬儀社で働く上で葬儀ディレクターの資格は必須ではない
実は、葬儀社の運営に必要な資格や許可などはなく、葬祭業に従事するスタッフも葬祭ディレクターの資格を取得する義務はありません。
極端な話、だれでも葬儀社を営業し働くことができます。
しかし、葬儀を行うには、知っておかなくてはいけない知識、そして技能があります。誰でもできる仕事ではありません。
もちろん資格を取得していなくても、豊富な経験があり、申し分のない葬儀の運営・進行をしてくれるスタッフや、経験が浅くても遺族の気持ちにしっかりと寄り添ってサポートしてくれるスタッフもいます。
葬儀ディレクターの有資格者であれば、申し分のない葬儀の運営・進行をしてくれるという保証はありませんが、葬儀を運営・進行するために必要な一定以上の知識と技能を持っていると言えるでしょう。
また、人生の中で遺族として葬儀を執り行う側になることは数える程しかありません。
故人を見送るための大切な葬儀、どんな人に任せたら安心なのか、私たちには判断するのが難しいのです。
葬祭業者が多くなるにつれて「どうやって実力のある葬祭業者を選べばよいのだろう」と悩む遺族の方が増えてきたため、葬祭ディレクターの資格が平成8年に導入されました。
葬祭ディレクターの資格が、葬祭関連の確かな知識と経験を持つことを証明するようになったのです。
葬祭ディレクターの認定試験を行う葬祭ディレクター技能審査会では、葬祭ディレクターの資格を「葬祭業界に働く人々の、より一層の知識・技能の向上を図ることと併せて、社会的地位の向上を図ること」を目的に作ったとしています。
現在、葬祭ディレクターの資格を持っている方は葬祭の仕事に関して確かな知識と経験を持っているとされ、多くの遺族の方から信頼を得ているのです。
今後も葬祭ディレクターの資格が世間に知られるにつれて、葬祭ディレクターの価値や社会的地位はさらに高まっていくと言えるでしょう。
葬祭ディレクターの主な仕事内容
葬祭ディレクターは、非常に多岐にわたる業務を担当します。
会場の設営や事前手配だけでなく、司会進行まで担当しなければならないので、葬祭ディレクター有資格者として一人前になり、仕事をこなすには多くの経験が必要でしょう。
葬祭ディレクターの主な仕事内容は、以下の通りです。
- 葬祭に関する事前相談の受付
- 事前相談会・説明会などでの公演
- 葬祭の受注
- 遺族との打ち合わせ
- 式典の見積もり金額算出
- 葬儀会場の手配
- 宗教者との打ち合わせ
- 葬儀会場の設営・準備
- 料理や飲み物などの手配
- 通夜・葬式の司会進行
- 四十九日法要・香典返しの手配
- 仏壇や墓地に関するアドバイス
葬祭ディレクターの仕事の中で、最も大切だと言われているのか遺族への対応です。
亡くなった方のご意向を尊重しつつ、遺族の悲しみに寄り添い、最適な葬儀を執り行うことが葬祭ディレクターの役目。
葬祭ディレクターとして、遺族に合った葬儀のカタチを提案することは、難易度の高い専門的な知識と経験が必要なのです。
葬祭ディレクターの合格率と人数
試験の合格率は、1級が60%前後、2級が70%前後です。
決して簡単な試験ではありませんが、実務経験を積み、着実に勉強すれば合格できる試験となっています。
2019年の合格率と資格保有者数は以下の通りです。
1級と2級の受験者数と合格率(2019年)
受験者数 | 合格数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
1級 | 1,227人 | 782人 | 63.7% |
2級 | 950人 | 713人 | 75.1% |
資格保有者数累計
資格保有者数合計 | 1級 | 2級 |
---|---|---|
37,085人 | 19,130人 | 17,955人 |
葬祭ディレクター資格の取得方法
厚生労働省認定の葬祭ディレクター技能審査は「葬祭ディレクター技能審査協会」が行い、その実際の試験の業務は、中央技能審査委員会及び各支部技能審査委員が担っています。
葬祭ディレクター資格の取得方法について、解説します。
試験を受けることができる条件
葬儀ディレクターの試験を受けることができる条件(受験資格)は、以下のように定められています。
葬儀ディレクター1級の受験資格
2020年9月30日現在、葬祭実務経験を5年以上有する者、または2018(平成30)年度以前に2級合格後2年以上葬祭実務経験を有する者
葬儀ディレクター2級の受験資格
2020年9月30日現在、葬祭実務経験を2年以上有する者
葬祭ディレクター技能審査協会が認定した葬祭教育機関の所定のカリキュラムを修了した者(見込含む)は、2級受験時にその期間を葬祭実務経験に算入することができるのです。
詳しくは、葬祭ディレクター技能審査協会の葬祭ディレクター技能審査のページに掲載されています。
葬祭ディレクター技能審査協会の葬祭ディレクター技能審査のページ
2級の葬祭ディレクター資格を持たない人でも5年以上の実務経験があれば、1級を受験することが可能です。
葬祭ディレクター資格の試験は毎年1回以上実施されています。
試験は学科試験と実技試験からなっているので、理論から実践までをカバーする内容です。
内容は、専門知識はもとより、技能もマニュアルだけではなく遺族心理、宗教等の知識まで必要とされます。
お客様から多方面の質問に応答できるかを問う説明実演、葬儀の司会能力、マナーなどのテストもあり、お客様に適切な対応ができるかを評価するものとなっているのが特徴です。
1級は全ての葬儀における受注から会場設営、式典運営に至るまでの詳細な知識と技能を問われます。
2級は個人葬における受注から会場設営、式典運営に至るまでの一般的な知識と技能が試験範囲です。
つまり、1級は社葬までできる人、2級は個人葬までできる人ということになります。
葬儀ディレクター試験にかかる費用
実際に試験を受けるためにかかる費用を解説します。
受験料は葬祭ディレクター1級か2級か、一部受験かで変わる
葬祭ディレクターの資格試験を受験するには、1級で55,400円、2級で39,700円かかります。
すでに学科試験か実技試験のどちらかに合格している場合、不合格だった部分の受験料だけを支払って再受験することも可能です。
一部受験の場合の費用は、以下の通りとなります。
- 1級学科試験のみ受験の場合:8,300円
- 1級実技試験のみ受験の場合:47,100円
- 2級学科試験のみ受験の場合:8,300円
- 2級実技試験のみ受験の場合:31,400円
葬祭ディレクター公認テキストの購入費用
受験料以外に、葬祭ディレクター試験合格のためテキストや問題集を買う必要も出てくるでしょう。
問題集は複数ありますが、葬祭ディレクター技能審査会の公式サイトで紹介されているテキストの値段は以下のようになっています。
- 葬儀に関する基本的な内容をまとめた「四訂 葬儀概論」:10,476円
- 学科試験の内容を解説した「解題 葬儀概論」:3,143円
- 模擬問題集:2,500円
このように、受験準備には案外お金がかかります。
勤めている葬儀社によっては資格取得のお金を補助してくれるケースもありますので、すでに実務経験を積んでいる方は会社の制度を見直してみましょう。
まとめ|葬祭ディレクターは遺族を安心させるための一つの要素
遺族は深い悲しみの中、限られた時間で葬儀社を探さねばなりません。大切な家族の最後の儀式は信頼できるスタッフに任せたいものです。
葬祭ディレクターの資格があるから、優秀なスタッフであるとは一概には言えません。しかし、知識と技能を兼ね添えた、葬儀のプロフェッショナルです。
葬祭ディレクターの資格は、ひとつの安心できる目安となることでしょう。