かつてはお寺にあるお墓や納骨堂にご遺骨を納めることが当たり前とされていましたが、現代では樹木葬や海洋散骨、手元供養など、それぞれのご家庭にあった供養の方法を選べるようになりました。
そもそもお墓とは、故人を偲び手厚く弔うためのもの。手を合わせて供養の対象とすることで故人とつながれる大切な場所です。
「後継者がいないのでお墓を建てても維持できない」
「お墓が遠方にあるので、なかなかお墓参りに行けない」
こういったお悩みから、近年は自宅で故人を供養する「手元供養」を選ぶ人が増えています。
今回インタビューをしたのは、自宅墓「おくぼ」を販売する山野石材株式会社の中野 誉久(なかのやすひさ)さんです。自宅墓とはなんなのか、開発・販売をしようと思ったきっかけや想いなどを伺いました!
もくじ
自宅で故人を供養する「自宅墓」
「自宅墓」とは手元供養の一種です。手元供養とは、故人のご遺骨を自宅に置いたり、身につけたりして供養する方法のこと。
ペンダントやブレスレットなどのアクセサリーにしたり、ミニ骨壷に収めたりなど豊富な種類の手元供養品が販売されています。
今回インタビューをしたのは、自宅に小さなサイズの墓石を置いて供養する「自宅墓」。わざわざ遠方のお墓に出かけなくとも、自宅にいながらお墓参りができます。
おうちに置ける小さなお墓「おくぼ」
山野石材株式会社で販売されている自宅墓「おくぼ」は、B5サイズの小さなお墓です。ご遺骨を入れた骨壺を御影石の墓石の中に納め、自宅で供養を行います。
従来のお墓を購入した場合100万円以上かかるケースがほとんどですが、おくぼの販売価格は「8万円」と経済的な負担も少ないです。
<おくぼのセット内容>
- ステンドグラスの写真立て
- ミニ墓石
- 台座
- 丸プレート
- 二寸壺
手元供養を行う際、「ご遺骨と一緒に写真を飾りたい」と希望する人が多いようです。そのためおくぼは、ステンドグラスで彩られた写真立てがセットになっています。
写真立てのラインナップも豊富で、故人にぴったりのデザインを見つけられます。
自分で管理できなくなった時でも安心な永代供養のセットプラン
手元供養をする場合、ご遺骨の一部だけを保管しておくことが多いです。もちろんご遺骨の全てを自宅で供養しても良いのですが、全てのご遺骨が納まる手元供養品は少ないことやスペースを要することから一部だけを保管する人が多いのが実情です。
そのため、実際には手元供養だけでなくお墓や納骨堂に納めた上で、分骨し手元供養する人もいます。
しかし、自宅墓の他にもお墓や納骨堂を利用するとなると、経済的負担は大きいです。
山野石材株式会社で販売する「おくぼ」は「永代供養(合葬)」もセットになったプランが用意されています。
ミニ骨壷に入りきれないご遺骨は、樹木葬墓地で永代供養を行ってくれるので、おくぼだけで故人の供養ができます。
※熊本県阿蘇にある樹木葬墓地「天空陵」で永代供養(合葬)されます。
もし手元で管理することができなくなった場合でも永代供養を行ってくれるので、最後的な
ご遺骨の供養先も心配ありません。
200年もの伝統を誇る「山野石材株式会社」
おくぼを販売している「山野石材株式会社」は創業100年、黎明期である江戸時代までを含めると200年もの長い歴史があります。
おくぼの販売だけでなく、従来のお墓の設計・施工や記念碑の設計・施工、供養関連のポータルサイト運営など幅広く事業を展開されています。
山野石材株式会社のスタッフ中野さんにインタビュー
【編】
まずはじめに、簡単な自己紹介をお願いいたします!
中野誉久と申します。山野石材に入社して11年。もともとは墓石(お墓)の担当をしていましたが、今は樹木葬や永代供養の担当をしています。
終活カウンセラーとお墓ディレクターの資格を取得し、自宅墓「おくぼ」の開発に携わりました。
【編】
ありがとうございます。
中野さんが石材会社で働こうと思ったきっかけはなんですか?
日本はかなりの高齢社会ですよね。終活関連企業であれば将来性もあり、長く働けるのではないかという思いがきっかけでした。地元福岡で働きたいという気持ちもありましたね。
実際に働いてみて感じたことは、社会が大きく変化している中で、供養のかたちも変わらなければいけないということ。
供養の選択肢を増やし、誰もが供養のことで困らない社会にすることを目標にしています。
他の商品やサービスと同じように、供養も人それぞれで自分や家族に合ったものを選べるようになってほしいです。
常識にとらわれずに石の持つ新たな可能性を追求し続ける
【編】
お葬式や供養のかたちも大きく変化していますもんね。
他の商品やサービスとは違って、買わないという選択は難しいですし、経済的負担も大きいもの。
少しでも納得できる選択肢を選べるようになるのはとても良いことだと思います。
御社の企業理念を教えてもらえますか?
弊社のスローガンは「石を通じて社会に貢献する」です。墓石の設計・施工をはじめ、街並みや公園、ビル、寺社・仏閣、記念碑の石工事など「石」を核にした様々な活動を行い、地域社会の発展とともに歩み続けています。
最も大切にしていることは、ミクロではお客様のご満足、マクロでは石を通じて地域の発展に貢献する事です。これまでの常識にとらわれず、「石」の持つ新たな可能性や供養の在り方について開拓し続けています。
弊社は200年もの歴史ある会社にはなりますが、そうした伝統にあぐらをかくことなく、新しい分野にも果敢に挑戦を続けることも大切にしています。
【編】
「石」の持つ新たな可能性や供養の在り方・・・。
御社のそうした姿勢があったからこそ「おくぼ」が誕生したのでしょうね!
そうですね。近年、核家族化などの影響でお墓参りに行けずにお墓が荒れてしまうことに悩みを抱える人が増えています。
そのほかにも「お墓の後継ぎがいない」や「住環境の事情から仏壇が置けない」などの問題も増えてきました。それに加え、コロナ禍でお墓参りがさらに困難な状況となっています・・・。
しかしそうした状況下においても、大切な人を供養することを諦めないでほしい。そうした思いで「自宅墓」の開発にいたりました。
実際に自宅に置ける墓石のみを販売している会社はあるのですが、私たちが目指したのは「より付加価値の高い愛される自宅墓」です。
小さくても「墓石」って存在感があると思うんです。もちろんそれが良いところでもあるのですが、もっと日常風景に溶け込ませることはできないかな、と考えました。
実際に自宅墓を購入したいと考える人たちは、マンション住まいの方や一人暮らしの方も多いと思うんですよね。インテリアとして飾りたいと思えるようなお洒落な自宅墓を目指した結果、ステンドグラスの写真立てを加えることにしました。
写真と一緒に飾ることで、より故人を感じることもできますしね。
また「最後まで」安心してご供養できるよう、自宅墓に「永代供養」のプランをつけたいと考えました。販売して終わり、というサービスにはしたくなかったんです。そこでご協力いただけるお寺を探し、金剛宝寺とのタッグを実現。
こうして永代供養もできる自宅墓「おくぼ」が誕生しました。
供養に関するお悩みを抱える人を少しでも減らしたい
【編】
自宅墓となると、管理できなくなった時に対応に困りますもんね。故人さまの大切なご遺骨の新たな供養先をどうするか・・・。多くの人が悩むと思います。
永代供養までサポートしてくれるなら、安心して購入できますね。
実際に、どういった方が「おくぼ」を購入されていますか?
まだ販売を開始して間もないのですが、実に多くの方にお問合せをいただいています!
「主人が亡くなったので自宅で供養したい」という方や「今まで納骨をせずに骨壺を家に置いていたけど、きちんと供養したい」といった方にご購入いただきました。
また「自分が亡くなったらおくぼで供養して欲しい」と生前に検討されている方も多いです。
自分の中では「自宅墓は世の中に求められているものだ!」と思っていたのですが、正直なところ確信は持てていなかったんです・・・。
ただ、今回「おくぼ」の販売を新聞に取材されたところ50件以上の問い合わせがありました。多くの需要があることがわかって安心しました。今は、より多くの人に知っていただくための活動中です。
ご供養についてお困りの方、お墓参りでお悩みの方、新しい供養の形をお探しの方など、さまざまな供養のお困りごとの解決に繋がれば・・・と願っています。
【編】
選択肢が増えることは、供養に関するお悩み解決につながると思います。より多くのご家族に自分たちにあった供養を考えて欲しいですね。
この仕事をやっていて「よかった」と思う瞬間や「やりがい」を教えてください。
ご主人を亡くされておくぼを購入された奥様から、このようなお言葉をいただきました。
「こういった商品をずっと探していたんです。これで亡くなった主人といつでもいっしょにいられる気がします。主人は花が好きだったから、ステンドグラスのデザインも気に入ってくれると思うわ。」
求められていた商品を販売できたこと、そしてほんの少しではありますが奥様の「主人と一緒にいたい」という気持ちのサポートができたことは本当に嬉しかったです。
ほかにも、お墓が建ってご納骨をされた後、お客様のホッとした表情を見たときなどもこの仕事をやっていてよかったと思います。
法人のお客様とも仕事をすることがあるので、いっしょに企画して苦労をともにした区画(永代供養や樹木葬の)が結果がでた時も達成感がありますね。
供養のスタイルは変わっても「大切な人を想う」気持ちは変わらない
【編】
亡くなったご主人を身近に感じる供養ができて、その奥様が「おくぼ」と巡り会えたことはとても喜ばしいことだと思いました。
いまお墓も多様化が進み選択肢も多くなってきましたが、中野さんが考える「現代におけるお墓」とはなんでしょうか。
「形」や固定観念にとらわれず、故人を偲びご供養したいという思いを大切にし故人の思い出に寄り添いながらお参りしていく場所だと考えています。そのためにも、今後も様々な選択肢を提供し続けていきたいです。
たまに「私はどう弔って欲しいだろう」と考えることがあるのですが、たくさんの供養の方法を知っているので、なかなか決めることができません(笑)その時が来るまでゆっくり考え続けたいと思っています。
【編】
これからも「お墓」のかたちはどんどん変わっていくのかもしれませんね。
そうですね。ただ「大切な人を想う」気持ちは時代が変わっても変わることはありません。また「ご先祖様に感謝をする」という生活習慣や真心も守り継いでいきたい日本人の大切な財産です。
今後、供養のスタイルはさらに多様化していくことでしょう。しかしそこに息づく思いは変わることなく、「利便性」と「想い」が両立した新たなカタチの「お墓」が築かれていくのだと思います。
弊社もそういったお客様の想いに寄り添ったサービスを提供し続けていきたいです。
【編】
私も「大切な人を弔いたい」という本質的な想いは変わらないと思っています。
では最後に読者にメッセージをお願いいたします。
終活や供養に関することはわからないことが当然です。お客様にとっては初めてで大変なことでも、私たちであれば過去の経験から適切なアドバイスができるときがあります。
今回ご紹介した自宅墓以外にも、お墓の新規建立、改葬、墓じまい、リフォーム、永代供養の紹介、樹木葬の紹介などご遺骨に関することなら何でも対応しております。
どんなささいなことでもご相談ください。
葬儀のデスクより
供養の形式もさまざまな選択肢を選べる時代になりましたが、供養のかたちに優劣はありません。
固定概念にとらわれず、それぞれの家族にあった供養の方法を選んで欲しいと感じました。
中野さん、お話しを聞かせてくださり誠にありがとうございました!