「ウエディングドレスではなくエンディングドレス」デザイナー社長が辿り着いた「おみおくりの正装」|株式会社ルーナ(中野雅子さん)

「ウエディングドレスではなくエンディングドレス」デザイナー社長が辿り着いた「おみおくりの正装」|株式会社ルーナ(中野雅子さん)

人生の最期を飾る死装束。かつては「白の着物」を着せることが一般的でしたが、近年は故人が好きだった服を着せてあげたり、エンディングドレスを用意したりする人も増えてきました。

エンディングドレスは「現代の死装束」とも呼ばれており、レースがあしらわれていたり、洋風なデザインだったりと種類も豊富で、華やかな衣装であることが多いです。

今回インタビューを行ったのは、エンディングドレスの販売を行っている株式会社ルーナの

中野雅子さん。「さくらさくら」というブランドで、着物やドレス、アクセサリーなどを販売しています。

エンディングドレスを販売しようと思ったきっかけや、エンディングドレスに込められた想いなどを伺いました。

最期の日はその人らしい美しい衣を〜現代の死装束

死装束とは、故人に着せる衣服のこと。仏教では人は亡くなると浄土へ旅立つと考えられていたため、死装束は「旅に出るための装い」でした。そのため、衣服の他にも杖や足袋、六文銭などを入れた頭陀袋などさまざまな装具を身につけます。

※地域や宗教宗派によって違いがあります。

日本は仏式のお葬式が多いので、死装束として身につける衣服は「白の着物」であることがほとんどでしたが、近年は従来の死装束ではなく「エンディングドレス」を選ぶ人も増えています。ご遺族が故人のために選ぶこともあれば、故人が生前準備しておくこともあり、多数の企業が多種多様なエンディングドレスを販売しています。

さくらさくらのエンディングドレス(株式会社ルーナ)

さくらさくらのエンディングドレス(株式会社ルーナ)

福岡県博多区にある株式会社ルーナは、「さくらさくら」というブランドのエンディングドレスを販売しています。

従来の死装束に近い「着物」のタイプから洋風な「ドレス」まで、エンディングドレスのデザインも豊富です。

エンディングドレス以外にも、お顔のベールや綿帽子、コサージュなどの小物やアクセサリーも販売。どれも洗練されたデザインでこだわり抜かれた品ばかりです。 公式サイトから通販で購入することができます。

さくらさくらの「おみおくり、という正装。」へのこだわり

さくらさくらの「おみおくり、という正装。」へのこだわり

さくささくらのエンディングドレスはウエディングドレスの上質な素材をな生地を採用しており、レースで使用している糸は全て国産糸です。

衣を幾重にも重ねたデザインのため、病気や怪我の痕など故人の体型をカバーしてくれます。それに加え、エンディングドレスを速やかにご遺体に負担なく着せることができるよう配慮もされたデザインとなっています。

株式会社ルーナ「さくらさくら」の代表中野雅子さんにインタビュー

株式会社ルーナ「さくらさくら」の代表中野雅子さんにインタビュー

【編】
まずはじめに、簡単な自己紹介をお願いします。

私は株式会社ルーナ「さくらさくら」の代表を務めている中野雅子と申します。アパレルのデザイナー兼パタンナーとして36年経験を積みました。

高校時代にマザーテレサが来校し、慈愛に満ちた活動や「死は平等である」という考え方を初めて知りました。特に弱い立場や困っている方に、自分は何ができるかを常々意識するよう教育を受けて育ちました。

その後、短期大学と専門学校で好きだった服飾デザインを学び、卒後、アパレルメーカーのシニアファッションの企画室にデザイナー兼パタンナーとして9年勤務。30歳の時、現在のアパレル会社「ルーナ」を先代父と共に起業しました。

【編】
マザーテレサの講演を高校生の時に聴けるなんてとても貴重な体験ですね!
お父さまと一緒に起業されたとのことですが、起業されたきっかけを教えていただけますか?

もともとは、福岡県久留米市で創業者・母が編み物教室を開いたことが始まりです。その後、洋裁店になり、高度成長期に社員100人規模の縫製工場へと発展していきました。途中、バブル崩壊で大変な時期を経て平成6年にアパレルメーカー「株式会社ルーナ」を私と父で立ち上げました。

起業しようと思ったきっかけは、「自分の思う服作りを続けながら家庭と仕事を両立したい」と考えたからです。

アパレルメーカーに勤めていた時代、当時はまだ寿退社が一般的だったんですよね。ただ私は仕事が大好きで、「なんでもやってみたい!」と家庭と育児と仕事、3倍速で奮闘していたんです。そんな矢先、過労で体調を崩してしまい・・・。

「自分の会社なら気兼ねなく両立ができるかな?」という浅はかな考えも理由のひとつで独立し父とともに起業をしました。

しかしその後、関連事業の縫製工場の管理も担うこととなり、さらに多忙になってしまい・・・。そして父が病に倒れ急逝し、私が代表となりました。

先代・父が他界してから、頭にずっとあった「おしゃれで、選べる死装束」を販売したいと考え、課題に着手。リサーチと研究に五年かけ前例のないエンデイングドレスブランド「さくらさくら」を2006年綜合ユニコム社主催フューネラルビジネス展で公的に発表するに至りました。

それぞれの価値観、嗜好の多様性に応えられる現代の死装束を作りたい

さくらさくらの「おみおくり、という正装。」へのこだわり

【編】
そうだったのですね・・・。
お父さまが亡くなられたことがきっかけで、「おしゃれで、選べる死装束」を作りたいと考えられたのですね。

はい。もともと弊社ではエンディングドレスの販売はしていなかったんです。

きっかけは、先代・父の葬儀で、当時幼かった娘が「おじいちゃんおばけみたい。」と、白の死装束姿の父を恐れて放った言葉が場の悲しみを誘ったこと。可愛がった孫と最後のお別れできず父は無念だったろうと思いました。

ただ、従来の死装束にも、大事な意味があることは気付きでした。非日常の仏衣に着替えさせていただいたことで、気持ちが徐々に落ち着き死を受容できたんです。

ただもっと現代に合うコンセプトで、それぞれの価値観、嗜好の多様性に応えられる選択肢があればと強く感じました。

そこから自分が思う「現代の死装束」、エンディングドレスを販売しようと志しました。

【編】
確かに小さいお子様から見たら、いつもと違う姿は恐怖の対象なのかもしれません。
非日常を演出する、というのも理解は難しいでしょう。

そうなんです。最後のお別れをさせてあげることができなかったことがずっと心に引っかかっていたんですよね。

事業スタート当時、私が知る範囲では洋風死装束を販売している会社はありませんでした。前例がないのなら、と自由な発想で迷うことなくブランディングを進めました。故人らしさが感じられお別れという神聖な場にふさわしい装いを基本としました。

まずは生前とは違う故人の状態や遺族の気持ちを学ぶことからはじめ、北海道、岩手、東京の死化粧師、納棺師、エンバーマーの方々からも多くのことを学ばせていただきました。当初、ご納棺や火葬場、エンバーミングのオペ室にも入らせていただいたこともあります。

こういった経験を基盤として、故人に映える色調、素材、デザイン選定を行い、お悔やみの場にふさわしい格調高いデザインを意識し制作しています。

名前も「死装束」という言葉は使いたくなかったんですよね。

華やかな死装束を「おみおくり、という正装。」と題して、産経新聞さんの取材で「死装束の死を使わない表現はないか?」と協議しているときに、「エンディングドレス」という言葉を思いついたんです。当時「エンディングノート」が流行っていたので、そこからの発送ですね。現在も、エンディングドレスのキーワードで周知活動中です。

本気で故人さまに向き合うことの重要さに気付けた出会い

本気で故人さまに向き合うことの重要さに気付けた出会い

【編】
「エンディングドレス」という言葉を考えたのは中野さんだったのですね!今は、認知度もかなり高くなっていると思います。「おみおくり、という正装。」というコピーもとても好きです。

仕事をする上で大変だったことはありますか?

初めて納品に行った葬儀社さんで「気付けまで手伝って」と依頼されたことです。まだお若い男性故人さまのお母様から「こんな素敵な衣装をありがとう。お願いします」と言われ、一瞬返事に迷いましたが、断ると失礼にあたるのではと思い引き受けることにしました。

納棺師さんとアイコンタクトで腕を袖に通したり、襟元を正したり。あくまでも表面的なお手伝いしかできない素人の私が関わって本当に良いのだろうか・・・と少し複雑な気持ちでしたね。ただ着替えが終わった故人さまを見た時のお母様をいまだに忘れられません。

その後も御納棺の補助的な機会が何度かありましたが、「本気だったらちゃんとご遺体に向き合って」とアドバイスをくださった親切な納棺師の方々に出会えたことは、かけがえのない経験となっています。

あと、業界に全くコネクションがなかったので、無謀にも大手企業さまの飛び込み営業から始めたのはとても大変でした。

そして実は9年前には私自身癌を発症し、闘病生活を送った経験があり、正直ひとのおみおくりどころではなくなりました。

一時は会社をたたもうかと考えましたが、お客様の声が頻繁に寄せられるようになり「これは私の使命なのだ」と感じて現在にいたります。

【編】
中野さまが真摯に故人さまに向き合っていたからこそ、こうしてご支持をいただけたのでしょうね。
この仕事をやっていて「よかった」と思う瞬間や「やりがい」を教えてください。

エンディングドレスが「幸せの記憶」として、お客様の心に刻まれていることです。

自然と故人さまの身支度に家族が参加したり、在りし日の明るいエピソードに花が咲いたり・・・。エンデイングドレスが故人さまの尊厳を守るだけでなく、心のケアになった話をお客様から聞くと本当にこの仕事を始めて良かったと思います。

天国でお互いを見つけやすいようにと、エンディングドレスを贈りあったご夫婦の愛

天国でお互いを見つけやすいようにと、エンディングドレスを贈りあったご夫婦の愛

【編】
身支度が悲しい思い出だけになってしまうのは辛いですよねさくらさくらのエンディングドレスに救われた人も多いと思います。
印象に残っているお客さまのエピソードを聞かせてください。

たくさんの愛情物語がありますよ。

ひとつだけあげるとすると、2週間くらい先の日付けで指定配のネット注文をいただいたご夫婦ですね。先の日付けでわざわざ「指定」されることは珍しいので、念のため確認したところ「その日、大安吉日に受け取りたいんです」とのこと。ご主人が余命宣告を受けられたので、奥さまもいっしょにご病床のご主人とカタログを見ながら、お互いが天国で着る物を決められたそうです。

後から奥さまが天国に逝かれた時「迷わず見つけられるから寂しくないね。絶対みつけちゃる」と。ご夫婦の愛情いっぱいの物語ですよね。

最近は、お誕生日や結婚記念日指定配などリクエストをいただくこともあります。形式にとらわれ過ぎず自分の想いにふさわしい送り方が葬儀のニューノーマル、最近の傾向です。

【編】
事前に終活をする人も増えていますし、今後需要も高まりそうですね。
どういった方がエンディングドレスを選ばれているのでしょうか?

ご自身で選ばれる方は、「身なり=心のあらわれ」とお考えの方や美意識の高い方ですね。お葬式で周りに迷惑をかけたくないと思う方やおひとりさまも多いです。

そのほかには、親思いの娘様、お義母様を慕うお嫁様、可愛がられたお孫様。遠方に住んでいて、介護に関われなかった娘・息子様などが「せめて最期になにかしてあげたい」とエンディングドレスを贈られることもあります。

感謝の気持ちを伝えたいと考えている方にもぜひご利用いただきたいです。

【編】
おひとりさまが多いのには驚きました!
さくらさくらの中でも、特に人気の商品を教えてください。

ロングセラー「白妙」。「移ろいゆくものに美を見出す」という日本の美意識を代表する「桜」をモチーフにした魅力的なデザインとなっています。

日本女性に映える着物をと制作したところ、日本に永住されている外国の方や、海外に住む日本の方にもご評価をいただいていてとても嬉しいです。

ロングセラー「白妙」

【編】
首回りの刺繍がとても美しいですね!白の着物なので従来の死装束にも近く、選びやすいのかも知れません。

ライフエンディング業界に携わっているので、終活をより意識されるかと思いますが、中野さまはどのように見送ってほしいですか?

自宅葬っていいなと思います。親しい友人と身内だけで、いつものように明るく食卓を囲んでほしいです。遺影は40才頃の若めの写真をすでに準備しています。お客様に教わったことですが、娘たちに人生の卒業式だと思ってほしいです。

【編】
「人生の卒業式」ってとても良いですね。日常空間の中で、さくらさくらの非日常な上品なエンディングドレス。悲しみの中にも温かさを感じる素敵な式になりそうです。
では最後に、読者へメッセージをお願いいたします!

私はエンディングドレスは「その日を彩る、幸せの記憶」だと考えています。

最期の日は是非、美しい衣をまとう日に。いい人生に、いいエンデイングドレスを。

葬儀のデスクより

まだエンディングドレスが認知されていなかった時代、一から築き上げていくのはとても大変だったと思います。

お葬式の形式は多様化し、昔ほどしきたりに厳しい人も減ってきました。人生の最期を彩る「正装」として、エンディングドレスを選んでみるのも良いかも知れませんね。

中野さん、お話を聞かせてくださり誠にありがとうございました!

エンディングドレスのさくらさくら(株式会社ルーナ)

エンディングドレスのさくらさくら(株式会社ルーナ)

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