遺産分割協議はなにから始めればよい?進め方5つのポイントを解説【税理士監修】

投稿:2023-05-01
遺産分割協議はなにから始めればよい?進め方5つのポイントを解説【税理士監修】

遺産分割協議とは、相続人による遺産の分割方法に関する協議のことです。遺産分割協議によってはじめて、相続財産をだれがどのように引き継ぐのかが確定します。

では、遺産分割協議はどのように進めていけばよいのでしょうか?

遺産分割協議の前に準備しておくこと、実際にどのように協議を進めていくのか、そして、万一協議がうまく進まなかった場合にはどう対応するのかなど、それぞれのポイントを解説します。

遺産分割協議を始める前にまずチェックすること

まずは遺産分割協議を始める前にいくつか確認しておくべきことがあります。遺言書の有無の確認、相続財産調査、相続人の確定、相続人以外の関係者の確認等です。

それぞれどのようなことを確認すべきか、詳しく解説します。

遺言書の有無の確認

遺言書は、被相続人の最終の意思であり、最大限の尊重が必要です。しかし、相続が発生した後では被相続人本人に意思確認することはできません。そのために、法律で定められた厳格な手続きを確実に守る必要があります。

まずは遺言書があるかないか、必ず確認しましょう。

公正証書遺言ならば公証人役場で保管されています。自筆証書遺言ならご自宅や銀行の貸金庫などをさがしますが、発見後に家庭裁判所の検認が必要です。法務局での自筆証書遺言保管制度で保管される手続きをとっていたら検認は不要です。

相続財産の確定

相続財産が固まっていないと、遺産分割はできません。注意すべきポイントは次の通りです。

相続財産は、被相続人名義の財産だけとは限りません。被相続人がお子様お孫様等の名義でつくっている「名義預金」があれば、これも相続財産となります。

借金や保証等のマイナスの財産も相続財産であり、遺産分割の対象です。みなし相続財産や生命保険等も考慮する必要があります。

最近では、ネット預金やネットでの有価証券取引のようなデジタル遺産等も注意が必要です。

相続人の確定

相続財産は共同相続人の共有となっています。相続人が確定していないと、遺産分割協議をしても無効になってしまい、やり直さなければなりません。

相続人の確定のために戸籍調査を行いますが、現在の戸籍だけでなく、改製原戸籍など被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を調べる必要があります。なお遺言で法定相続人以外の受遺者等が定められている場合には、遺産分割協議に関して受遺者の意向も確認する必要があります。

遺産分割手続きは遺言の有無により異なる。

遺産分割手続きの進め方は遺言の有無によって異なります。

遺言がある場合

遺言は被相続人の最終の意思であり、遺産分割は基本的には遺言に従います。

ただし、次の点に注意が必要です。

1:相続人全員が合意すれば遺言と異なる協議分割をすることが可能です。法定相続人以外の受遺者などがいた場合は、受遺者の権利を侵害することはできませんが、受遺者も含めて全員が合意すれば遺言と異なる協議分割もできます。

2:遺産相続には「遺留分」があります。遺言で遺留分を侵害するような定め方が行われていれば、遺留分侵害額請求という手続きをとることも可能です。もちろん、遺留分を侵害されている当事者が特に異議なく遺言通りの分割に同意するなら、遺言通りの分割とすることもできます。

遺言がない場合

遺言書がない場合は、法定相続人が法定相続分により遺産を分割します。遺産分割協議により、実際にどの財産を誰がどれだけ相続するかを確定します。

遺産分割協議の実際の進め方

遺産分割協議の実際の進め方

遺産分割協議は対象者全員の合意が必要です。分割の仕方は様々であり、遺産分割協議書で明確にする必要があります。基本的にはその内容を財産目録等で明確にしておくのが望ましいでしょう。

遺産分割の仕方は4とおりある

現物分割、代償分割、共有分割、換価分割の4つです。

1:現物分割

現物分割は、遺産そのものを現物で分けるものを指します。たとえば、被相続人の配偶者が住み慣れた不動産を相続し、子供たちが預貯金・有価証券等を相続する、といったことです。

2:代償分割

代償分割は、特定の相続人が相続分以上の遺産を取得する場合に、他の相続人に価値の差分の金銭を交付する方法です。配偶者が受け取る不動産の価値が高いので、子供たちに別途金銭を交付するや、預貯金・有価証券などの公平な分割が難しいので、その分を金銭で調整する、といったことを行います。

3:共有分割

共有分割は、被相続人名義の不動産に同居している相続人が当該不動産を共有する、といったことです。事業用資産を分割すると値打ちがなくなるので共有にする、といったことも考えられます。

もっとも、共有者間で将来もめ事等が起こると、当該遺産を有効利用できなくなる、といった可能性もあるので注意が必要です。

4:換価分割

換価分割は、遺産を売却して、その代金を分ける方法です。わかりやすく、公平な分割がしやすくなります。但し、遺産の売却の手数や、税金・処分費用などを考慮する必要があります。

相続人間の協議・全員一致で分割協議は完了

このようにして、相続人や関係者の間の協議で全員一致すれば、遺産分割協議は完了します。後で紛争が起こらないように、マイナスの財産をどう考えるか、みなし相続財産や特別受益を考慮したか、また相続人以外の関係者がいないのか、といったポイントをもう一度しっかり確認しておきましょう。

遺産分割協議が整えば、遺産分割協議書を作る

遺産分割協議が整っても、遺産分割協議書に不備があると、後で紛争の火種になりかねません。形式、手続きに注意しておきましょう。要点は次の通りです。

相続人関係者全員が署名押印して作成

遺産分割協議書は、相続人全員が署名押印(実印)して作成します。仮に受遺者等が加わる場合には、そのような関係者も含めて全員が署名押印します。全員が一部ずつ保有します。一通の遺産分割協議書に全員が署名押印するのが原則です。

相続人が遠隔地に住んでいる等で、一通の協議書を順番にまわしていくのが煩雑であり、紛失なども心配なら、「遺産分割協議証明書」という書式を各自が作成し、全員分の遺産分割協議証明書をひとまとめにして一冊に仕上げ、遺産分割協議書と同じ書面として取り扱う方法もあります。

遺産分割協議書の記載内容の注意点

遺産分割協議書で、誰が何を取得するのかを明記します。財産目録の形で明確にしておきましょう。

また、それぞれの財産の記載の仕方に注意が必要です。

遺産分割協議書により、法務局での登記や銀行の手続きを進めることになるので、間違いのないように明確に記載する必要があります。
例えば、不動産なら登記事項証明書の通りに正確に記載します。銀行の預金なら、銀行名・支店名・種別・口座番号・名義などを正確に記載します。なお、名義預金があった場合の取り扱い等は専門家に確認して間違いのないようにしてください。

生命保険金・死亡保険金は原則として遺産分割の対象ではありませんが、遺産分割協議で考慮することも多いので、確認の意味で遺産分割協議書に記載することもよく行われます。

また、遺産分割協議後に他の遺産が判明することも、あり得ます。「上記記載以外の財産は、別途協議する。」といった記載を入れるのも1つの方法です。他の遺産が判明しても、それほど大きな額にはならないと考えるなら、「上記記載以外の財産は、○○が相続する。」のように特定の人が相続することにしておく方法もあります。

問題が起こったときの対応(遺産分割協議が整わない・後で相続財産や相続人が判明した)

遺産分割協議が整わないときには、遺産分割調停や、遺産分割審判という紛争解決の手続きがあります。また、後で相続財産や相続人が判明すれば、遺産分割協議のやり直しとなります。

もしこのようなケースになったら、すぐに税理士法人等専門家に相談することをお勧めします。相続人や関係者の間で、争い続けるとこじれてしまって、骨肉の紛争になりかねません。

遺産分割協議の相談をするなら税理士法人へ

以上のように、遺産分割協議は事前の準備、実際の進め方、その後の手続きまでも様々な注意が必要です。さらに、相続財産の状況も相続人の状況も様々です。ご自分で悩まれるのでなく、相続手続きに詳しい税理士法人に早め早めに相談されることをおすすめします。

葬儀のデスクでは、相続に強い税理士による公式の相談窓口を設けています。無料で相談できるので、ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。

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■執筆者 
社会保険労務士 玉上 信明(たまがみ のぶあき)

三井住友信託銀行にて年金信託や法務、コンプライアンスなどを担当。定年退職後、社会保険労務士として開業。執筆やセミナーを中心に活動中。人事労務問題を専門とし、企業法務全般・時事問題・補助金業務などにも取り組んでいる。

■監修者 
相続・贈与相談センター赤坂支部
税理士 城 行永(じょう ゆきひさ

税務と生命保険、不動産の専門知識によって総合的な相続税コンサルティングを行っております。さまざまなケースに対応できますのでご質問ご相談はなんでもお気軽にご連絡ください。
【保有資格】税理士・生命保険募集人・宅地建物取引士

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著者:葬儀のデスク編集部
葬儀のデスク編集部
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