
終活は自分の人生を振り返りながら、最期の時間をどう迎えるかを計画する行動です。中でも「葬儀の準備」は、終活において重要な要素のひとつと言えるでしょう。
終活において、どのように葬儀の準備を進めたらよいか、身辺整理から生前予約まで詳しく解説します。
もくじ
なぜ終活で葬儀の準備が必要なのか?

葬儀は人生最後の大切なイベントです。しかし、多くの場合、突然訪れるため準備が整っていないことがほとんどです。
その結果、遺された家族が精神的にも経済的にも大きな負担を抱えることになります。
終活で葬儀の準備を行うことは、家族への負担を減らすことにつながります。ほかにもさまざまなメリットがあるため、自分の死後を考える終活を行うならば、葬儀の準備も進めておくことをおすすめします。
終活で葬儀の準備が必要な理由について、さらに詳しく解説します。
終活で葬儀準備をする3つの理由
終活で葬儀を準備するべき理由を3つご紹介します。
家族の負担を軽減できる
突然の不幸が訪れた際、遺族は悲しみと同時に多くの決断を迫られます。精神的に弱っている状態で、多くの決断をすることは負担も大きいうえに、判断力が低下して間違った選択をしてしまうことも珍しくありません。
そこで、葬儀準備を事前に進めておくことで、家族が抱える精神的・経済的負担を大幅に軽減できます。
事前に自分自身で希望や計画を立てておけば、家族は故人との別れに集中することができ、精神的な負担が軽減されます。
さらに、費用についても事前に準備しておくことで経済的なトラブルを防ぐことが可能です。
自分の意思を尊重できる
自分自身が希望する形式や内容を事前に決めておけば、自分らしい葬儀の実現につながるでしょう。
例えば、「無宗教式がいい」「家族だけで小規模にしたい」「好きな音楽を流してほしい」など、自分らしい演出や形式を選択できます。
また、「どこで行うか」「誰に参列してほしいか」といった具体的な希望も明確にしておくことで、自分自身が納得できる形で葬儀を実現できるでしょう。
葬儀費用を事前に把握できる
葬儀費用は決して安価ではありません。全国平均では約130万円程度と言われていますが、形式や規模によって大きく変動します。場合によっては相場よりも、費用がはるかに大きく膨れてしまうことも。
事前に費用相場や内訳について把握し計画的に準備しておくことで、不必要な出費やトラブルを防ぐことができます。また、生前契約などを活用すれば、自分自身で費用を支払うこともできるため家族への配慮にもつながります。
葬儀準備をしないことで起こり得るリスク
事前準備がない場合、遺族や関係者間でさまざまなトラブルが発生する可能性があります。葬儀準備をしないことで起こり得る主なリスクについて解説します。
家族間の意見が対立する
葬儀の形式や内容について、家族間で意見が対立することがあります。
葬儀を行う際は、多くの選択肢をひとつずつ明確に決める必要があります。その全ての選択肢において、家族間で意見が食い違う可能性もあるでしょう。
葬儀における家族間の対立は精神的ストレスとなり、故人との別れに集中できなくなる原因にもなります。
費用が高額になる
事前に相場や内訳について把握していない場合、高額なプランや不要なオプションを選んでしまうリスクがあります。
とくに突然の場合は冷静な判断が難しくなるため、不必要な出費が発生しやすくなります。
葬儀内容が希望と異なる
自分自身の希望を伝えていない場合、遺族は故人の意向とは異なる内容で葬儀を進めてしまう可能性があります。
「もっとシンプルな式でよかった」「特定の音楽や演出を取り入れてほしかった」など、希望があるならば、しっかり伝えておくことが大切です。
終活における葬儀準備のステップ

終活で葬儀準備を進める際には、いくつかのステップがあります。それぞれのステップについて、何をするべきか解説します。
ステップ1:葬儀のイメージを具体化する
まずは、自分自身がどのような葬儀を望むのか、そのイメージを具体化しましょう。葬儀の形式や規模、参列者の範囲などを明確にすることで、準備がスムーズに進みます。
また、自分が希望する内容を明確にしておくことで、家族が迷うことなく対応できるようになります。
具体化できたイメージはぜひ、エンディングノートなどに書き残しておきましょう。
葬儀の形式・規模を検討する
まずは葬儀をどのような形式・規模で行うか検討することから始めましょう。
葬儀の形式 | 特徴 |
一般葬 | 一般的な形式で、多くの参列者を招いて行う伝統的な葬儀。通夜、告別式、火葬がセットになっており、2日間にわたって執り行われるうえに、規模が大きくなりやすいため費用は高くなる傾向がある。多くの人々と故人を偲ぶことができる形式。 |
家族葬 | 家族や親しい友人のみで行う小規模な葬儀。費用は一般葬よりも抑えられるが、後日弔問客への対応が必要になる場合がある。一日葬と組み合わせるケースも多い。 |
一日葬 | 通夜を行わず、告別式と火葬のみを行うシンプルな形式の葬儀。宗教色も少なく、費用も比較的抑えられる。家族葬と組み合わせるケースも多い。 |
直葬 | 通夜や告別式を行わず、火葬のみで済ませる形式。最も費用が安価だが、お別れの時間が短いデメリットがある。 |
自分自身がどの形式を望むかを考え、それに応じた規模(参列者数)も検討しましょう。
参列者をリストアップする
誰に参列してほしいかをリストアップしておくことで、遺族が迷わず参列者を招待できます。
最近は年賀状のやり取りも減っているため、郵送ではなくメールなどオンラインで訃報をお送りすることも増えています。リストアップする際は、連絡先情報も忘れずに記録しておきましょう。
参列者リストに記載するべき情報 |
・氏名 ・住所 ・電話番号またはメールアドレス ・関係性(親族、友人、仕事関係者など) |
リストアップする際には「必ず呼びたい人」と「可能であれば呼びたい人」に分けておくと遺族が優先順位をつけやすくなり、臨機応変な対応が可能になります。
葬儀で伝えたい想いを整理する
葬儀は単なる形式的な儀式ではなく、自分自身の想いや感謝を伝える場でもあります。
「これまで支えてくれた家族や友人への感謝」「自分の人生で大切にしてきた価値観」「次世代へのメッセージ」など、自分自身が伝えたい内容について整理しておきましょう。
近年では、生前にビデオメッセージを録画し、葬儀で流すケースも増えています。また、自分自身が好きだった音楽や写真スライドショーなどを取り入れることで、より個性的で感動的な式を実現できます。
ステップ2:葬儀費用の相場を知る
終活において、費用面について理解しておくことも重要です。事前に相場や内訳について把握しておけば、不必要な出費を抑えることができます。また、自分自身や家族の経済状況に合ったプラン選びも可能になります。
葬儀費用の相場を知る際に、知っておくべきポイントをご紹介します。
葬儀費用の内訳と目安
まずは、葬儀費用の主な内訳と目安を把握しておきましょう。葬儀費用は主に以下の項目で構成されています。それぞれの項目について目安となる金額を把握しておくとよいでしょう。
項目 | 費用の目安 |
祭壇費用 | 30~100万円 |
家族葬 | 10~40万円 |
火葬料 | 2~10万円 |
飲食代 | 10~30万円 |
会葬返礼品 | 1人あたり2,500~5,000円 |
地域によって火葬料や式場使用料が異なります。また、飲食代や返礼品代は参列者数によって変動するため、事前にある程度の人数を見積もっておきましょう。
費用を抑える方法
費用面で不安がある場合でも、工夫次第でコスト削減が可能です。費用を抑える方法を知っておくことで、いざというときに役立ちます。
主な費用を抑える方法についていくつかご紹介します。
公営斎場を利用する | 公営斎場は民間斎場よりも使用料が安価な場合が多いため、コスト削減につながる。ただし、公営斎場は予約が取りづらい場合もあるため早めに確認すること。 |
シンプルな祭壇プランを選ぶ | 豪華な祭壇ではなくシンプルなプランを選ぶことで費用を抑えることができる。また、生花祭壇よりも造花祭壇の方がコストを低くおさえられる場合がある。 |
飲食代や返礼品数を調整する | 通夜振る舞いや精進落としなどの飲食代は参列者数によって大きく変動する。必要に応じて小規模な家族葬の場合は飲食提供を省略する選択肢も検討する。 |
生前契約による割引利用 | 生前契約では割引が適用される場合がある。事前に契約内容を確認し、自分自身に合ったプランを選択すること。 |
不要なオプションサービスを省略する | 葬儀社によっては不要なオプションサービスが含まれている場合がある。見積もり時点で必要最低限の項目だけ選ぶよう心掛けること。 |
ステップ3:葬儀社を選ぶ
信頼できる葬儀社選びは非常に重要です。葬儀社によって提供されるサービス内容や料金体系が異なるため、自分自身や家族に合った業者を慎重に選ぶ必要があります。
葬儀社を選ぶ際に参考にするべきポイントをご紹介します。
生前相談の活用
葬儀社では生きているうちにさまざまなことを相談できる「生前相談」を実施しています。
生前相談では、自分自身が希望する形式や内容について、葬儀の専門家と話し合うことができます。
相談できること | ||
希望する葬儀形式 | 一般葬、家族葬、一日葬、直葬など。基本的な形式以外にも、特別な演出などを相談することも可能。 | |
費用や予算について | プランの案内や細かな追加料金についてなど、予算に合わせて相談できる。 | |
式場・斎場の選定 | 希望する葬儀の形式にふさわしい場所を提案してもらえる。 | |
宗教的な要望 | 寺院で執り行えるか、僧侶を呼べるか、神道式でもできるかなど。宗教に合わせた葬儀への対応を相談できる。 | |
納骨先の手配 | 霊園や納骨堂など、希望する納骨先がある場合は、相談することも可能。納骨先につなげてくれる場合も。 | |
エンディングノートの書き方 | 終活で希望の葬儀形式を決めるにあたってどのように書くべきか、相談できる葬儀社もある。 |
生前相談は基本的に無料で行えます。知りたい内容を一気に相談して解決できるうえに、生前に葬儀社の対応を確認することもできるので、ぜひ積極的に活用することをおすすめします。
また、この段階で複数社から見積もりを取り比較検討すると、より絞りやすくなるのでおすすめです。
葬儀社の実績と評判を確認
葬儀社を選ぶ際には、実績や評判をしっかり確認しましょう。信頼できる葬儀社を選ぶことで、安心して準備を進めることができ、後悔のない葬儀を実現する助けになります。
葬儀社の実績については、ホームページやパンフレットから確認できます。
- 創業年数と運営歴
- 年間の葬儀実施件数
- 過去に手がけた事例など
葬儀社の実績は、多いほど信頼して契約まで至った人が多い証拠になります。気になる葬儀社の実績が少ない場合は、スタッフの実績(葬儀業界での職歴)を確認するとよいでしょう。
評判に関しては、ホームページの「お客様の声」ではなく、口コミサイトやマップアプリのレビューなどを参考にするとよいでしょう。ただし、口コミやレビューは、悪い評価ほど投稿されやすいため、高評価・低評価の偏りなく確認することをおすすめします。
複数社への見積もり依頼
複数社から見積もりを取ることで、それぞれのサービス内容や料金体系を比較できます。
一括見積もりサービスなども便利ですが、最終的には直接相談し納得した上で契約することがおすすめです。見積書を確認する際は以下の部分に注意してください。
基本プランとオプション料金内訳 | どこまでが基本料金に含まれるのか、オプションはどこまで対応できるのか、細かな内訳をよく確認する。 |
火葬料・斎場使用料 | 地域差が大きい部分のため、基本料金が全国統一の大手葬儀社であっても、よく確認すること。 |
見積書以外の追加料金の有無 | 見積もりにない追加料金が発生する可能性の有無も確認するとより安心できる。例えば、急な変更がある場合は別途料金がかかるなど。 |
ステップ4:生前予約(生前契約)
生前予約(生前契約)は、自分自身で葬儀社と契約することです。葬儀社との契約は一般的に、逝去後に喪主が行いますが、自分自身で予め契約しておくことで、希望通りの葬儀を実施できます。
生前予約は、自分自身はもちろん遺族にもメリットの多い方法です。積極的に活用することをおすすめしますが、生前予約には注意すべき点もあります。
生前予約のメリットとともに注意点について解説します。
生前予約の特徴とメリット
生前予約の特徴とメリットをまとめてご紹介します。
希望通りのお別れを実現 | 自分自身が望む形式・内容で進行できるため、「自分らしい最期」を実現できる。 |
家族への負担軽減 | 契約時点で費用支払いまで済ませておけば、遺族への経済的負担が軽減される。また、葬儀の内容が明確になっているため、遺族間で意見が対立する心配もなくなる。 |
突発的な事態にも対応可能 | 突然の場合でも契約内容に基づいてスムーズに手配される。喪主が連絡した葬儀社では、特定の宗教儀礼に対応できないなどのリスクも避けられる。 |
物価上昇のリスク回避 | 生前契約では料金固定の場合も多いため、将来的な物価上昇による影響を避けられる。 |
葬儀社とのトラブル防止策
葬儀社との間でトラブルが発生すると、精神的にも経済的にも大きな負担となります。葬儀は短期間で準備を進める必要があるため、事前にトラブルを防ぐための対策を講じておくことが重要です。
生前予約を行う際に、葬儀社とのトラブルを防止するための具体的な方法を解説します。
契約内容を詳細に確認する | 契約書には、提供されるサービス内容や費用の内訳が明記されているため、細かく確認すること。基本プランとオプションの区別、追加料金の条件確認は必須。わからないことは必ず質問して、解決しておくこと。 |
キャンセルポリシー | 万が一契約後にキャンセルする場合の条件や手数料についても確認しておく。 |
契約後も定期的に確認する | 契約後も定期的に内容を見直すこと。もしも、自分の希望や状況が変わった場合には、早めに契約内容を修正しておく。また、葬儀社側から提供されるサービス内容や料金体系に変更がないかも確認する。 |
生前予約の注意点
生前予約にはさまざまなメリットがありますが、いくつか注意しなければならない点もあります。
まずはキャンセルポリシーをしっかり確認することです。解約できる条件、手数料、どれだけ返金されるのか(差し引きされる金額)、家族による解約手続きの可否を重点的に確認してください。
また、生前予約をしたら、必ず家族へ共有しましょう。家族が生前予約の存在や内容を知らない場合、自分自身で行った準備が無意味になってしまうからです。できれば、生前相談の時点で家族と情報を共有しておくことをおすすめします。
そして、人生の状況や価値観は時間とともに変化するため、一度結んだ生前契約でも定期的に見直してください。
まとめ
終活で葬儀を準備する際は、自分自身がどのような最期を迎えたいかを具体的にするところから始めましょう。
終活で予め葬儀の内容などを決めておくことで、遺された家族の負担を減らすことができるため、最期の恩返しにもつながります。
家族に負担をかけたくない場合や、希望する葬儀形式がある場合はぜひ、終活のひとつとして葬儀の準備を始めてみてください。