出家をして俗世間から離れて修行を行っている僧侶を修行僧と言います。修行僧は決まった時間に決まった修行をするので、普通に生活している人よりも自由がありません。
宗派や修行寺院によって修行内容や生活様式は異なりますが、中には厳しい修行を行わなければならないケースも。
出家して俗世間から離れるとどのような生活になるのか、修行僧の生活について解説します。
もくじ
修行僧の1日の流れと生活様式とは
俗世間から離れ、悟りを開くために修行をしている修行僧は、一般的とは異なる生活を送っています。
修行僧はどんな生活をしているのか、服装や食事から1日の流れまで解説します。
修行僧は出家している僧侶であり住職ではない
まず混同されがちな修行僧と住職の違いについて解説します。
修行僧とは、俗世間から離れ出家をして修行に勤しんでいる僧侶のことです。一方の住職とは、自分のお寺に住み込んで運営を行う僧侶のこと。
どちらも僧侶であることは共通していますが、修行僧は厳しい修行の日々を送っているのに対し、住職は修行の日々を送りつつ職業として僧侶の役割を全うする必要があります。
お寺の運営が宗教法人の場合はビジネスのため、修行僧と住職では生活様式も自由度も異なります。
修行僧の服装は動きやすい作務衣が多い
僧侶が葬儀や仏前で着用している服は「法衣(ほうえ)」や「袈裟(けさ)」と呼ばれるものです。
袈裟は布状の衣装のことで、法衣は袈裟の下に身に着ける衣装のことです。葬儀や法事など人前に出る場合は正装用を着用し、普段の勤行などでは略装用を着用します。
なお、近年では洋服に近い形の略装用の法衣を着用する宗派もあります。
ただし常に袈裟や法衣を身に着けているわけではありません。多くの修行僧は「作務衣(さむえ)」と呼ばれる服装を、清掃や雑務を行う際の普段着として着用しています。
作務衣は動きやすく体型の変動にも対応していて、修行僧や住職だけでなく一般人でも着られる服装です。
住職の中にはプライベートはカジュアルな洋服を着ている方もいますが、修行僧は俗世間から離れて修行しているため、僧侶らしさのある作務衣が普段着として選ばれています。
食事は1日3回の精進料理
宗派や修行寺院によりますが、修行僧の食事は1日3回の精進料理が基本です。
多くの修行寺院では、修行僧は肉や魚など動物性の食べ物を口にするのは禁止されています。ベジタリアンの中でも特に制限が厳しいヴィーガンと同じで、バターや牛乳、卵なども食べません。
修行僧は、動物性の食べ物を使わない菜食主義的な食事を1日3回毎日食べ続けます。なお、食事も修行の一環なので、食事中は私語を慎みます。
メニューは修行寺院によって大きく異なりますが、基本的に「ご飯(お粥、白米など)+漬物+おかず+汁物」の組み合わせが多いようです。
揚げ物が出るケースもありますが、肉や魚の代わりの大豆ミートや野菜を使った揚げ物になります。
ただし一切の肉や魚が食べられないわけではありません。修行寺院にもよりますが、檀家や信者によって献上された肉や魚は食べてもいいとされているケースもあります。
中にはおやつの時間を設けている修行寺院もあります。制限がつくケースもありますが、ポテトチップスやジュース、炭酸飲料などジャンキーなお菓子や飲料を食べてもいい寺院もあるので、全く食事の自由が効かないわけではありません。
修行僧の1日の流れは早朝に起床し21時に就寝する
修行内容が宗派や修行寺院によって違うので、1日の流れも多少の違いはありますが、修行僧は基本的に早朝の暗い時間に起床し、21時ごろには就寝する生活を送ります。
以下は具体的な修行僧の1日の一例です。
※修行寺院によって修行内容や順番、時間が異なります。
- 4:00 起床・朝課(ちょうか):朝の読経
- 5:00 粥座(しゅくざ)もしくは小食(しょうじき):朝食
- 6:00 祖録拝読(そろくはいどく)や独参(どくさん)など:昔の高僧の著作物を読んだり、禅問答を行ったりなどの修行
- 6:30 作務(さむ):掃除や労働
- 11:00 日中諷経(にっちゅうふぎん):昼の読経
- 12:00 斎座(さいざ)もしくは中食(ちゅうじき):昼食
- 13:00 作務や勉強や練習、休憩時間など
- 16:00 晩課諷経(ばんかふぎん):夕方の読経
- 17:30 薬石(やくせき):夕食
- 19:00 夜坐(やざ)もしくは開板(かいはん):夜の坐禅
- 21:00 開枕 (かいちん):就寝
修行寺院によって読経の回数や作務の内容が違いますが、食事や起床、就寝のタイミングは基本的に世間一般よりも早い生活リズムになっています。
出家して世間から離れた修行僧の修行内容を解説
修行僧はまず見習いから始まります。僧侶の中にも階級があり、次の階級に進むためには難易度の高い修行を行うのが一般的です。
では修行僧はどのような修行を行っているのでしょうか?日々の修行から、宗派によって異なる修行内容を解説します。
修行僧は日常生活の全てが修行
修行僧の生活は全てが修行です。読経や座禅はもちろんですが、早寝早起きや食事、清掃、雑務、勉強も全て修行です。
特に朝の掃除は暑さや寒さに屈することなく、早朝から毎日ほうきや雑巾などを使って行わなければならない大切な修行のひとつ。
そして食事も感謝の念を常に絶やさず、私語を謹んで食べなければなりません。
動物性の食べ物を口にせず、厳しく制限された精進料理を食べるのも修行の一環です。
読経や写経は正しい姿勢で毎日行う修行
読経や写経は、経典の修得のための修行としてどの宗派でも共通して行われます。
読経や写経は1日に数回、正しい姿勢のまま乱すことなく30分以上休憩なしに行われるのが一般的です。
仏教の目標は悟りを開くことなので、見習い期間を終えて住職や僧侶として認められたあとも、寺院にお勤めする限りは永続的に毎日行わなければなりません。
宗派によって水行やお遍路などの修行もある
修行僧は修行寺院で過ごす日常生活の全てが修行です。しかし宗派によっては、修行寺院から外に出て水行やお遍路などを行うケースもあります。
水行
経文を唱えながら水を浴びる修行。
お遍路
四国八十八ケ所の寺院を巡る旅で、距離は約1400kmほど。修行僧だけでなく一般人も先祖供養や祈願のために行うケースも。
托鉢(たくはつ)
鉢を持って路上や家の前に立ち、経文を唱えながれ金銭や米などを施しを受けて回る修行。
千日回峰行(せんにちかいほうぎょう)
白装束と草履に、肩から死出紐(しでひも)をかけて、腰に宝剣を差して約7年間、1000日かけて4万kmの距離を歩く修行。記録が残る約400年のうち完遂できたのは50人未満で、「世界三大荒行」に数えられるほど過酷な修行。
大荒行
日蓮宗の寺院で行われている修行。2時50分に起床し、3時から23時まで10時間にもおよぶ読経や写経を100日間行う。食事は最低限の白粥と梅干しのみで、5分済ませなければならない。
ほかにも厳しい修行はまだまだありますが、必ずしも過酷な修行を行わなければならないわけではありません。
悟りを開く方法や方針は宗派や修行寺院によって違います。修行僧にとって日々の生活も立派な修行なので、強制でない限りはあえて厳しい修行を選ぶ必要はありません。
また、中には一般人が修行を体験できる寺院もあるので、気分転換や自分を見つめ直す機会として体験してみてはいかがでしょうか。
悟りを開くために日々修行をくり返すのが修行僧の生活
修行僧の生活は宗派や修行寺院によって違います。
修行は悟りを開くために行うものなので、日々修行をくり返すのが修行僧の生活です。
修行僧にとっては日常生活の全てが修行なので、起床と同時に修行が始まります。
厳しさの程度は宗派や修行寺院によって異なりますが、中には常に厳しい修行を行わなければならないケースもあります。
ちなみに、一般人でも修行の一部もしくは1日体験できる寺院もあるので、修行僧がどんな生活をしているのか知りたい人や、自分を見つめ直す機会を設けたい人は体験してみてはいかがでしょうか。