お墓を購入する時、必要になる費用のひとつに「永代使用料」があります。
「永代」とはいつまでの期間をさすものなのでしょうか?
実は、ここで使われる「永代」は、永久という意味ではありません。
永代使用料の「永代」とは「お墓を管理する寺院」、そして「お墓を継承する子孫」が続く限り、永代に渡ってお墓の土地を使用できるというものです。
永代使用料の意味や金額相場、撤去されてしまうケースなど詳しく解説します。
もくじ
永代使用料の意味や金額相場を解説
永代使用料とは、お墓の土地にかかるお金のことを意味します。永代供養、永代使用権など、似たような言葉がたくさんあり、なかなかわかりにくいものです。
永代というと、永久に使用できると思う方もいるでしょう。
永代使用料の意味や金額相場について、解説します。
永代使用料とはお墓の土地を使用するために払うお金
永代使用料(えいだいしようりょう)とは「土地を使う権利を永代に渡って取得するための料金」のことで霊園や寺院に支払い、永代使用権を得るものです。
つまり、永代使用料を支払うことによって、永代に渡ってお墓の区画を使用する権利(=永代使用権)を得ることができます。
永代使用権とは「永代に渡ってその土地を使用できる権利」のことでそれぞれの霊園や墓地にある「使用規定」が契約内容となります。
土地を購入するのに近い印象を受ける方が多いですが、実際は、永代使用料を支払い「土地を借りる」という意味です。そのため、消費税や贈与税は掛かりません。
墓所を使用したか否かにかかわらず納めた永代使用料の返還はないことが多く、管理側に権利を返還しても永代使用料は戻りません。
永代使用料は、墓地の管理を行う、寺院や霊園に対して支払います。
支払いが済むと墓地の使用許可証(永代使用承諾書)が発行され、晴れてその墓地(特定の区画)を使用することができるようになります。
たまに「永代使用料は毎年払うもの?」と勘違いされる方もいますが、毎年払うものではありません。
永代使用料を支払うタイミングは、墓地を契約した時の一度だけです。初回契約時のみ支払います。
永久に使用できるという意味ではない
永代使用料の「永代」とは、永久に、という意味ではありません。
「お墓を管理するお寺や霊園が存続する限り」そして「お墓を継承する子孫」が続く限り、永代に渡ってお墓の土地を使用できるという意味です。
所有権ではないため勝手な売買は禁止
永代使用料を支払うと得られるのは、墓地の区画を使用する権利です。
墓地を使用する権利が続く期間は、「お墓を管理するお寺や霊園が存続する限り」そして「お墓を継承する子孫」が続く限り、となります。
そのため、墓地を使用する権利を数年経ったら更新しなければいけない、ということはありません。
ただし注意点として、得られるのはあくまでも「使用する権利」であり、「所有権」ではないということです。
墓地の所有者は管理人(公営霊園であれば自治体の首長、寺院墓地であれば住職)となります。
墓地が不要になったからといって、施主はその墓地を勝手に他人に貸したり、売ったり、譲ったりすることはできません。
土地によって金額相場はさまざま
永代使用料は、お墓を建てる際のお金に含まれます。
お墓を建てるための土地のお金のため、お墓の値段にはこの永代使用料込みの金額が記載されることも少なくありません。
全国的な永代使用料の価格の相場はおよそ60万円から80万円といわれています。
しかし、実際の価格の幅はもっと広く、安い場合で20万円ほど、高い場合で200万円近くかかることもあるようです。
価格相場の幅が広い理由とは
価格相場の幅が広い理由は、永代使用料が土地の価格であることが大きく関係しています。土地の価格であるため、その地域の地価にも大きく影響されるのです。
基本的に地価は都市部に行くほど高く、逆に地方へ行くほど安くなるという傾向にあります。
これに加えてお墓の立地条件やお墓の形態も大きな要因として挙げられます。立地条件に関しては、周辺の環境の良いところであったり、交通の便が良かったりといった立地条件が良いところほど永代使用料も高くなる傾向にあります。
そして、お墓の形態については一般墓よりも合祀墓の方が、他の故人の方と共有する分、永代使用料が安くなるのです。
立地条件(駅から近い・複数の公共交通機関がつかえる)などによっても相場はかなり違ってきます。
特に、都内23区などでは公営・民間・寺院問わず料金が高く、区画の大きさも0.50平米(間口50cm×奥行き50cm)の小さな区画が多いようです。
都立の青山霊園では、1.60平米の土地代だけで、約480万円かかります。もちろん、郊外などに行けばそこまで高額ではありません。
家族や親戚が通いやすく、集まりやすい場所や予算で検討し、いくつかの霊園を実際に見てみると良いでしょう。
以下の表は、約1.20平米の面積で算出した土地代の地域別、料金比較です。
▼永代使用料(土地代)の相場
- 東京都23区:約160万円~200万円
- 23区外:約40万円~60万円
- 神奈川県:約40万円~60万円
- 埼玉県:約30万円~50万円
- 千葉県:約20万円~40万円
※管理料は1年間ごとに約4,000円~14,000円ほど支払いが発生します。
※寺院の場合はこの他に別途入檀料がかかる場合と入檀料が使用料に含まれている場合がありますので注意が必要です。
人気の高い霊園や立地条件の良い場所などではお求めやすい区画がすぐに埋まってしまうので、もし見学して気に入った場所があれば一度仮申込みされるとよいでしょう。
仮申込みでは、霊園にもよりますが「1~2週間ほど仮押さえ」が可能です。
<注意点>
見学する霊園によっては、石材店の指名制度などがあるので、事前に電話などで確認してから行くとよいでしょう。
お墓を購入する際必要な費用
お墓を建てるためには、永代使用料以外にも費用がかかります。内訳は下記のとおりです。
- 永代使用料
- 管理料(管理費)
- 墓石代
- 法要費用
- 入壇料
永代使用料については前述の通りですので、ここでは永代使用料以外の費用について解説します。
管理料(管理費)
管理料とは、霊園や寺院が墓地を運営・管理するために支払う費用のことです。
一年分をまとめて支払うのが一般的なので、「年間管理料」とも言われており、主に共用設備の清掃や水道料などの費用が含まれます。
墓地の運営母体によって異なりますが、一般的な相場は大体5,000円~15,000円程度。管理料は、管理費とも呼ばれます。
墓石代
お墓を建てる時に費用がかさんでしまうのが墓石代です。墓石代とは、墓石を建てるための費用のことを意味します。
墓石代の内訳は、以下のとおりです。
- 竿石(棹石)と呼ばれる墓石本体の石材費
- 墓石の彫刻などにかかる加工費用
- 外柵、カロート(納骨棺)などの設備費用
- 花立、香炉、塔婆立などといった付属品の費用
墓石代は使用する石の種類や大きさ、デザインによって費用が変動しますが、相場は約100万円〜約200万円です。
また、寺院や霊園ではなく、石材店に連絡し墓石を建ててもらうので、費用は石材店に支払います。
法要費用
新しくお墓を建てる際は下記の法要を行う必要があります。
- 開眼供養(入魂式)
- 納骨式(納骨法要)
開眼供養(入魂式)とは、新しくお墓を建てたときに故人の魂をお墓に迎え入れるための法要のことを指し、納骨式(納骨法要)とは火葬したご遺骨をお墓や納骨堂に納めるとき(=納骨するとき)におこなう法要のことを指します。
法要ですので、僧侶にお布施を包みます。開眼供養のお布施の相場は約3万円~5万円程度です。
ただし、開眼供養と納骨式を同時におこなう場合は1.5倍~2倍のお布施を包むようにしましょう。
また、僧侶に遠方から来ていただく場合はお車代として1~2万円程度、僧侶が納骨式後の会食に臨席しない場合は御膳料として1万円程度包むのがマナーです。
入壇料
墓地の永代使用料の他に墓地にかかる費用には、檀家になるための費用も含まれます。お墓を建てる場所が寺院墓地である場合は、管理している寺院の檀家になることが前提です。
檀家とは、その寺院を財政面で支援する家のことで、特に寺院主催の行事などのための費用を負担します。
檀家になるための費用を入壇料といい、費用が永代使用料と一緒になっている場合と別々になっている場合があるようです。
その相場は寺院によってさまざまですが、おおよそ10万円から30万円が一般的な範囲となります。
永代使用料と管理費は違うもの
「永代使用料」と「お墓の管理費」も全くの別のものです。
永代使用料は、墓地を使用する権利を得るためのお金のことを意味します。お墓を契約した初回に支払いますから、いわゆる「初期費用」と言えるでしょう。
それに対して、お墓の管理費は、霊園やお寺の維持のために毎年支払う「維持費用」となります。霊園やお寺も施設・設備があり、それらを維持するにはお金が必要です。
私たちがお墓参りをする時に、快適に・安全に霊園を利用するためにも、毎年の管理費を支払います。
一年分をまとめて支払うのが一般的なので、「年間管理料」とも言われており、主に共用設備の清掃や、水道料などの費用が含まれるもの。
墓地の運営母体によって異なりますが、一般的な相場は大体5,000円~15,000円程度です。
永代供養料とは違う
「永代使用料」とよく似た言葉に「永代供養料」というものがありますが、全くの別のものを指します。
- 永代使用料:墓地を永代にわたり使用する権利を得るために支払うお金
- 永代供養料:遺骨を永代にわたり供養してもらうために支払うお金
永代使用料は、墓地の使用権を得るために支払うのに対し、永代供養料は、遺骨を永代にわたり供養してもらうために支払います。
より詳しく解説すると、永代供養料は、お墓の維持・管理(先祖のご遺骨の供養)を自分たちですることが難しくなったとき、代わりに霊園の管理者やお寺に供養をしてもらうのに必要なお金のことです。
「墓じまい」という言葉を耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。少子高齢化により、将来お墓を守る後継者がいなくなってしまい、お墓をしまう人も増えています。
永代供養料は、そのような課題を抱えている方が、供養を自分たち以外に任せるときにかかる料金です。
永代使用料を払ったのにお墓が撤去されるケースを解説
永代使用権は、言葉の意味通り、家系が続く限り有効なので、一度支払ってしまえば子孫も利用することが可能です。
しかし、高いお金を出して永代使用料を支払い、お墓を建てる土地の使用権を得たとしても、場合によっては墓地を使用する権利を失うことがあります。
特に注意が必要な点を、2つ解説します。
1.管理料の支払いが滞った場合
管理料とは、墓地の設備整備や清掃などに割り当てられる料金です。
多くの場合、永代使用料を支払ったらそれで終わりではなく、年に1回、数千円~数万円の管理料を支払う必要があります。
寺院や霊園の利用規約によりますが、この管理料の未払いが3年から5年以上続くと、お墓の持ち主がいない無縁墓とみなされ、墓地の使用権を失ってしまう可能性があるようです。
その場合、お墓が撤去されるとその遺骨は納骨堂や無縁供養塔などで他の無縁仏と一緒に供養されることになります。
墓地の管理者は、きちんと法律に基づいて所定の手続きを行い、自治体の許可を得ることでお墓を無縁仏とみなし撤去できるようです。
その場合は、墓地埋葬法に基づいて事前にそのお墓の継承者や縁故者がいなかどうか確かめることが必要となります。
このことは、「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」の第三条にも記載されています。
参考文献:墓地、埋葬等に関する法律施行規則(昭和23年7月13日厚生省令第24号)|厚生労働省
管理料の滞納が続いてしまうと、永代使用権が取り消されてしまい、お墓そのものも撤去されてしまう場合もありますので、管理料を滞納しないように注意しましょう。
建墓期限内にお墓を建てない
建墓期限とは、お墓の土地を契約した後、お墓を建立しなければならない期限のことになります。
多くの墓地・霊園がこの建墓期限を設けており、とくに都心の公営霊園等は人気ですので、常に倍率が高く、キャンセル待ちの方も多いのです。
そのため、建墓規定が厳しく定められていることもあります。
建墓期限を過ぎてしまえば、永代使用料を支払っていたとしても、最悪の場合、墓地の使用権を失う場合がありますので気をつけましょう。
まとめ|永代使用料はお墓の土地を使用するための権利
永代使用料は、お墓の土地を使用するための権利です。
永代とは、永久という意味ではありませんので、きちんと意味を理解し、お墓が撤去されないように管理料を滞納しないなどの注意が必要となります。
永代使用料の意味を正しく理解し、末永くお墓を守っていきましょう。