無縁墓とは、読んで字のごとく縁者がいなくなり、手入れをされなくなったお墓のことです。誰からもお墓参りにきてもらえずに、老朽化したお墓のことをさしています。
お墓は手入れをしないと、徐々に朽ちていき、雑草も生い茂り、見るに堪えない姿になってしまうことも・・・。
近年、様々な要因から無縁墓が増えていることが問題になっています。長い間誰も訪れず、茂みに覆われてヒビが入った無縁墓を見て、他人事のように思えない方もいるでしょう。
無縁墓の意味や、無縁墓になってしまった時の処置。無縁墓にしないための方法など詳しく解説します。
もくじ
無縁墓の意味や実際の処置を解説
無縁墓は、誰からもお参りされず、長い間放置されたお墓のことです。正式名称は「無縁墳墓」。
無縁墓とはいえ、かつてはそこに納骨をして弔ってくれた人がいたはずです。きっとその人も、まさか無縁墓にしてしまうとは思ってもみなかったことでしょう。
では、誰にもお参りされず、暮石の管理もされない無縁墓は一体どうなるのでしょうか。
無縁墓の意味や実際の処置など、詳しく解説します。
無縁墓とは長期間放置されたお墓のこと
お墓は建てたら終わりではありません。その後、お墓の権利者が霊園に維持費や管理費を納め、お墓の手入れをし続ける必要があります。
無縁墓は、縁者がいなくなり、長い間放置され老朽化したお墓のことです。
お墓の維持費や管理費の支払いが長期間滞っている場合も、無縁墓として扱われます。その期間は、例えば公営墓地、東京都の場合は管理費の滞納が5年間、他の自治体では3年~10年間です。
長期間支払いがなかった場合、墓地埋葬法に基づきお墓の前と官報にて無縁墳墓等改葬公告が出されます。お墓の所有者は期日内に申し出なければなりません。
民間の場合は霊園、もしくは菩提寺が同様の形式で所有者を探します。もし、1年間名乗り出る者も、所有者を見つけ出すこともできなかった場合は撤去処置が行われます。
公益社団法人 全日本墓園協会 / 平成26年度総括研究報告書 無縁改葬の現状
無縁墓になった時の処理は「撤去」
無縁墳墓等改葬公告を1年間掲示後、申し出がなければ、撤去されてお墓は更地に戻されます。
”お墓の中のお墓”、墓地や霊園によっては、敷地内の一角に撤去された無縁墓を積み置く場所があり、訪れた人々が目にすることがあります。
専用の場所に集め置かれたり、墓石を廃棄処分にしてコンクリートにリサイクルされることもあります。しかし年々、魂抜きされた墓と無縁墓は増え続けており、置き場所の問題で廃棄処分される傾向にあるようです。
遺骨(無縁仏)は自治体の無縁塚などで合祀
無縁墓の遺骨は無縁仏として、公営・民営ともに霊園内にある無縁仏を祀る無縁塚や供養塔に合祀されます。
近年、無縁仏の数が増えすぎて納骨する余裕がなく、粉骨にして合祀することも増えているのが現状です。
無縁墓が増えている背景
無縁墓が増加傾向にあるのは社会背景が大きく関わっています。
要因は大きく2つ。それぞれの背景を解説します。
1.少子高齢化
総務統計局による人口推計では、総人口1億2千681万人に対し、50歳以上は44.8%、65歳以上で28.7%との数字が出ました。(※令和2年9月1日時点)
諸外国とくらべても65歳以上の比率が高く、日本は少子高齢化といわれ、さまざまな問題になっています。
2015年における生涯未婚率(50歳)、女性14.1%、男性23.4%と1/3が単身世帯です。過去5年間で、ともに4%アップしており、少子化も高齢化とともに大きく進むと予測されています。
お墓は代々先祖から子どもへと受け継いでいくもの。継承者となる子孫がいなければ、お墓を引き継ぐことができません。お墓を引き継ぐ人がおらず、そのまま放置された場合、そのお墓は無縁墓になってしまうでしょう。
国立社会保障・人口問題研究所 / 人口統計資料集(2020)50歳時の未婚率
2.核家族化と過疎化
2013年、熊本県人吉市において市内995カ所ある霊園・墓地を調査したところ、1万5千123基の約4割以上が無縁化、墓地によっては8割のお墓が無縁墓となっていたことがわかりました。
2013年当時の人吉市は人口34,909人・65歳以上10,924人・高齢化率31.3%。2020年8月時点で、人口31,765人・65歳以上11,602人・高齢化率36.5%。
7年間で新生児約550人、10~50代がそれぞれ700人ほど減少していることがわかります。
そして70代はやや増加、90歳以上は大幅に増加しており、高齢化率も全国平均より10%も高いです。
人吉市では子育て世代が多数流出し、高齢の親世代が残されてしまったのでしょう。子ども世代が市外に出てしまうことで、高齢化率があがってしまうことが多いです。
この問題は2013年のお墓の調査時から、すでに顕著化されており、人吉市だけではなく、山間部の町や村などでも深刻な問題となっています。
都市部に人口集中することによって起こる過疎化は長年の懸案事項なのです。
核家族社会の今、子ども世代に祭祀の承継意識を持つ者が圧倒的に少ないのは、先祖供養や檀家制度へ触れる機会がほとんどなかったこともひとつの要因であるといえるのではないでしょうか。
無縁墓にしないために気をつけるべきポイント
無縁墓にしないためのポイントは、大きく3つです。
1:管理費の滞納に気をつける
管理費を長期滞在した場合、無縁墓とみなされます。定期的に支払い、お墓の管理をしましょう。
2:墓じまいをする
お墓を引き継いでくれる子孫がいない場合、墓じまいをするのもひとつの手段です。墓じまいとは、お墓を撤去するだけでなく、お墓に入っていた先祖を別の形式で供養するもの。
お墓に納骨することで、祖先とのつながりを深く感じられる人もいるでしょう。故人を偲ぶことができる、大切な場所でもあります。それでもさまざまな事情からお墓を受け継いでいくことが難しいと感じた場合は、墓じまいを考えるのもひとつの手です。
こういった背景から、遺骨をお墓に埋葬するのではなく、「散骨」や「永代供養」といや弔い方を選ぶ人も増えています。
3:自分の死後の祭祀承継者を決め、生前に引き継ぐ
人の死はいつ訪れるかわかりません。自分が生きているうちに、祭祀承継者を決め、生前に引き継いでおくこともひとつの手段です。
日本には、昔から「言霊」という概念があり、不吉なことを口にすることはよくないとされていました。生きているうちに自分の死後の話をするのは、縁起でもなく言語道断というわけです。
しかし、近年「終活」という言葉も誕生し、生前に「死」を考え身の回りを整理する人も増えています。
自分の死後、子孫が困らないよう、事前に話しをしておくことも大切です。
無縁墓に関するトラブル事例
2019年8月、京都の市営墓地で無縁墓と間違われて撤去されてしまったという、トラブルが発生しました。
7~8年ぶりにお墓参りに訪れたらお墓が無くなっており、霊園に問い合わせたところ5年前に無縁墓として撤去したと言われたとのこと。
これは霊園側の管理がずさんだったために起こった悲劇でした。
30年前に墓地の地図を作り変えた際、権利者の墓地に間違った区画番号を振ってしまったことが原因で、市には本来の番号が登録されており、権利者は管理費を支払い続けていました。
しかし、納付と墓地の地図データとのリンクがされていなかったために、市も墓地側も気づけず無縁墓として撤去されてしまったのです。
お墓が公告を1年間出していたとはいえ、この被害者は高齢でかつ他府県在住であり、知る由もありません。
今回の事は高齢化社会の中、決して他人事ではないでしょう。自衛のためにも一度、霊園側の地図と墓地の区画番号が一致しているかどうか確認し、できる限り期間をあけずに、お墓参りをすることが大切です。
まとめ|無縁墓にしないよう供養のカタチを考えよう
無縁仏になる理由は、社会情勢の変化にあります。少子高齢化や核家族化にともない、先祖代々継承するという「お墓」の形式をとることが難しいのです。
家が途絶えることもあれば、不仲による疎遠などもあるでしょう。
少しでも不安がある人は、無縁墓、そして無縁仏にならないよう、永代供養などお墓のいらない供養方法を決めておくのもひとつの手段。
家族と話し合いを重ね、それぞれの事情にあった弔いのカタチを考えることが大切なのです。