11月15日いい遺言の日に考える、遺言のあるべき姿、望まれる遺言の形

投稿:2020-11-15
11月15日いい遺言の日に考える、遺言のあるべき姿、望まれる遺言の形

遺言書、法律上は「いごんしょ」と読みますが世間では「ゆいごんしょ」で浸透しています。遺言書の作成数はこの10年ほどで1.5倍にも増えており、増加傾向を見せています。とはいえ、一般的と言える数ではありません。

そこで遺言書に関するアンケート調査を、40歳以上の男女144人を対象に行いました。

調査結果から、相続遺産を主体とした一般的な遺言内容ではなく、デジタル遺産を含めた遺産管理の際に必要な「情報」を遺言に求めていることがわかりました。

40歳以上の男女:遺言書作成に関心なしは半数近く

■遺言書を残したいと考えたことは?
ある  ・・・24%
ややある・・・28%
ない  ・・・48%

「ない」と断言した人の割合が高い結果となりましたが、実際のところ、関心の有無は拮抗している事がわかります。

多くの人が遺言書を自分とは無関係と考えるのは、「遺言書=財産家」のイメージがあるからです。

また、もしもの時の「意思」を家族に伝えているので遺言書は必要ないと考える人もいます。

しかし、最近では新たな理由も加わっています。

50歳時点での未婚率の増加問題

生涯未婚率の上昇、特に50歳時の未婚の割合が年々増加の一途を辿っています。

特に男性の未婚率が急増傾向であり、厚生労働省のこの先20年間の予測でも増加が続くと出ています。

今回の調査結果から見えてくることは「ない」と答えたパーセンテージと50歳時の男女合わせた未婚率が近いということです。

40代男性の未婚率は約17.6%、女性で約13%、未婚者総数の約30.6%を占めており、遺言書を残したいと考えたことが「ない」48%の多くに未婚者が含まれていると考えられます。

もちろん、配偶者がいる人であっても必要性を感じない人もいるので一概には言えませんが、家庭を持った人の多くが結果的に晩年に遺言書を作成しているという事実があります。

そして多くのケースで、遺言書を率先して作成に導いたのが「妻」であることもわかっています。

財産含め家庭内を把握しているのは実際には妻であることがほとんどです。

遺言・お墓への関心や準備を考えるのは女性の方が多く、男性は死後のことよりも現在の仕事や問題への関心事が優先事項となるようです。

厚生労働省/50歳時の未婚割合の推移

公正証書作成数から見る遺言書

遺言書には大きく二種類、自筆と公証人によって作成されるものがあります。

公正証書は役場で管理されるので、紛失や詐欺の心配がなく、また、家庭裁判所の検認作業も省かれるので気軽かつ確実な遺言書を残すことができます。

平成29年度の法務省の調査結果において、公正証書を作成した人の数は平成19年度で74,160件、平成29年で110,191件でした。
(自筆証書:平成19年13,309件・平成28年17,205件)

下記、内訳のポイントをまとめました。

  • 55歳以上の男性:54%
  • 55歳以上の女性:45.8%
  • 既婚者:76.5%
  • 未婚者:8%
  • 死別・別離:15.3%

年齢が高くなるにつれて遺言書の作成率が上がり、特に75歳以上から一気に40%増加します。

遺言書を考えたことがある52%の人とは?

今回の40歳以上の男女に行なったアンケート結果で遺言書を残したいと考えている人が52%、法務省の調査人数とは桁が異なるので比較対象となりませんが、遺言を残したいと考える人と実際に遺言を残した人のパーセンテージはほぼ同じです。

法務省の調査結果で遺言書作成は年代が上がるにつれて増えていることがわかっており、この52%の人たちは将来その数字に入る予備軍とも言えるでしょう。

ただ遺言書の内容が従来の形である、残される家族のためだけではなく、個人的な理由がメインとなったものも少しずつ増えていると思われます。

家庭内での個人主義化が進み、個人の意思や権利が尊重される時代です。個人的なことなので「遺言書」を残すことを考えていなくても、実際には口頭で遺言を伝えている人は多くいます。中には家族に知られず秘密を守るために、信頼できる知人に託す場合もあります。

  • 葬儀の在り方、生前に自分が望む葬送を決める。
  • 特定のコミュニティのみ価値があるものをコレクションしている場合、その扱いや譲渡先の指示。
  • ネット上やパソコンのデータの管理、消去を知人に託したい。

他人にとっては何の財産的価値はなくともそれを持つ人にとって、死後の扱いは気になるところです。口約束だけでは心配で、それらを確実に守る方法の一つとして結果、「遺言書」にたどり着いてもおかしくはありません。

また昨今の「お一人様」現象、生涯独身を決め込んだ女性によるマンション購入や墓地の生前購入が新しい生活スタイルとして徐々に浸透しつつあります。

それに伴い、終活を見据えて遺言書を考える人が出てきている事実もあります。

最近ではインターネットで独身女性向けの遺言サービスも出始め、関心を集めつつあります。

従来の財産分与が主体ではなく、家庭内での個人主義化と生活様式の多様化によって、自分の意思を確実に履行する公正証書「遺言書」を考える人が今後増えてゆくことでしょう。

法務省/平成29年度調査我が国における自筆証書による遺言に係る遺言書の作成・保管等に関するニーズ調査・分析業務

親世代の高齢化

独身既婚かかわらず、家族や親族間の問題に拘わりを持ち始めるのが40代です。そして親世代の高齢化とともに家での世代交代がおこるのが50代に入った頃です。

その頃になると、会社や知人、葬儀の席で、相続などで揉めた話なども見聞きすることも増えます。両親が年を取り、子供も手が離れて行くと、彼らの話が他人事に思えなくなってくるでしょう。

現役世代では、両親が健在である内は遺言書作成は遠い先のように捉えがちですが、自身の遺言書の必要性を考える頃でもあります。

64%の人が遺言書を残したい人がいる

◾️遺言を残したい人はいる?
複数人いる・・・49%
一人いる ・・・15%
いない  ・・・36% 

遺言を残したいと考える人が52%に対して、遺言を残したい「相手がいる」人は64%であり、矛盾が生じています。

これは一体どういうことなのでしょうか?

次にその件を考察します。

遺言書とは自分を見つめ直すものでもある

遺言書作成を考えた事がない人の12%が、残したい人がいると答えたことになります。言い換えれば、今回のアンケートに参加したことで遺言書を意識したと言えます。同時に自分を取り巻く環境を見つめた人もいるでしょう。あるいは残すのであればこの人、漠然とそう思っただけかもしれません。

しかし、この12%の人たちが次に同様のアンケートに参加した時「考えたことがある」に変わるのです。

いい遺言書とは?受け取る側の本音

残された者にとって現実問題として、故人の遺産の整理があります。家族とは言えども、全てを把握しているわけではありません。印鑑一つにしても置き場所・種類など、本人にしかわからないことも多いでしょう。

またマイナンバーカードなど、公・民共にデジタル化が加速する今、デジタル遺産の問題も顕著化しています。

多くの人が一般的な遺言内容ではなく、情報を生前にわかるようにまとめておいて欲しいと考えている事が今回の調査結果からわかりました。

一般的に見られる遺言書の内容

  • 相続人の指定
  • 預金や証券、土地、美術品や宝石類など遺産分割方法
  • その他(子供の認知・後見人・祭祀承継人指定)
  • 個人的な願い(遺骨の扱いや遺品等)

デジタル遺産とデジタル遺品

金融界では預金通帳も取引も紙から電子へと切り替わりつつあり、オンライン化された証券、年金、ネットコンテンツ契約やオンラインショッピング、SNSやネット上の作品等の著作権などをデジタル遺産といい、それに伴う遺品、メールや写真、デジタル作品など、これらは新たな財産カテゴリーであります。

そして全てにパスワードと暗証番号、時には合言葉も存在します。本人ですら把握できていない物もあるかもしれません。

遺言作成の相談相手はネット

遺言書の作り方をネットで検索すると答えた方が47%、何事も「ググる(google it)」時代、現代を象徴する答えであります。

しかしITを駆使する年代は一般的に50歳前後まで、会社勤め現役世代までとされています。

それより上の世代の殆どがネット社会以前以後かかわらず、弁護士や司法書士、銀行や知人などの紹介で作成しています。

相談相手としての配偶者

 「相談相手がいない」と答えた42%の人は、スマホでSNSを駆使していても情報収集に使うことがなく、またパソコン操作に不慣れなのかもしれません。

しかし40歳以上で42%の人が「いない」と答えた背景には、配偶者がいない事が考えられます。配偶者がいれば必然的に相談相手となるからです。

調査結果まとめ

アンケート結果

  • 遺言書を残したいと考えたことがない・・・48%
  • 遺言書を残したい人がいる・・・64%
  • 遺言書を作成したくても相談する相手がいない・・・42%

結果からわかった事

  • 約76%の人が遺産や保険に関するお金の手続きに関する情報を遺言書に望む
  • 47%が遺言書作成に関する情報をネット検索に頼る
  • 半数以上もの人が死後に自分の意思を残したいと考えている

遺言書は多くの人が自分には関係ないと考えていますが、ちょっとしたきっかけがあれば関心を持つこともわかりました。

著者:葬儀のデスク編集部
葬儀のデスク編集部
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