内閣府が公表している資料によると、16歳以上でなんらかの運転免許証を所持している人は約75%もいるとの結果がでています。
多くの人が運転免許証を取得していますが、所有者が死亡した場合はどうなるのでしょうか?
所有者死亡後の運転免許の扱いと、返納する場合の手続きの流れについて解説します。
もくじ
運転免許は自分の死亡後どうなるのか
日本では多くの人がなんらかの運転免許証を持っており、有効な免許を持ったまま所有者が死亡するケースは少なくありません。
死亡後に故人の銀行口座やクレジットカードなどは利用停止手続きが必要ですが、運転免許はどうなるのでしょうか?
運転免許証の扱いについて解説します。
更新できないので有効期限が過ぎて失効になる
運転免許にはそれぞれで有効期限が決められています。例えば自動車の場合は免許取得後5年未満のドライバーや違反運転者は3年、それ以外の一般的なドライバーは5年です。
所有者が死亡している場合、運転免許の更新ができないので、有効期限が過ぎてそのまま失効になります。
返納を行わなくても罰則はない
運転免許証は効力を失った時点で速やかに返納しなくてはならないと、道路運送法で定められています。
しかし、返納の義務は所有者本人に発生するので、遺族に返納の義務はありません。そのため、本人が亡くなった後、遺族が返納を行わずに放置をしても罰則はありません。
ただし返納を行わない場合、有効期限が近付くと更新通知のハガキが届くので、気になるのであれば返納手続きを行いましょう。
死亡後でも身分証明書として悪用されるリスクがある
運転免許証には個人ごとに免許証番号が割り振られています。そのため、死亡後に返納が行われなくても、運転免許証として悪用されることはありません。
ただし、運転免許証は顔写真付きの身分証明書としての役割があり、所有者が死亡していても、顔写真付きの身分証明書として効力は残ったままとなります。
顔写真付きの身分証明書はさまざまなサービスの登録に必要なものなのです。故人の運転免許証でもネットバンクやキャッシュレス決済アプリ、FX口座などの金融サービスへの登録も可能。
金融サービスは詐欺に使われるケースが多く、運転免許の効力を失った免許証でも、第三者の手に渡ってしまったら詐欺などに悪用される可能性があります。
故人の運転免許証が悪用された場合、遺族がトラブルに巻き込まれてしまうので、所有者死亡後の運転免許証の取り扱いには注意が必要です。
死亡後の運転免許を返納する際の手続きの流れを解説
所有者の死亡後も、運転免許証としての効力は失われますが、顔写真付きの身分証明書としての機能は失われません。
返納を行わずに放置をしてしまうと、身分証明書として第三者に悪用されるリスクがあるので、所有者が死亡した場合はなるべく遺族が返納手続きを行うことをおすすめします。
では、所有者が死亡後に運転免許を返納する際の手続きの流れと、生前に自分で返納する方法を解説します。
運転免許を返納する時期は明確に定められていない
まず、死亡後の運転免許の返納時期についてですが、法律で明確に定められていないので、運転免許の有効期限が過ぎてしまっていても問題ありません。
死亡後に何年も経過していても、罰則などの不利益が生じることはないので、返納する時期は状況が落ち着いてからでも大丈夫です。
ただし、身分証明書として悪用されるリスクを考慮すると、速やかに返納手続きを行うことが望ましいでしょう。
故人の死亡診断書や届出人の身分証明書などを用意する
所有者が死亡後に運転免許を返納する場合、まずは死亡診断書や届出人の身分証明書などの必要書類を用意しましょう。
返納手続きに必要なものは以下の通りです。
- 故人の運転免許証
- 死亡診断書/死体検案書:病気などで病院で死亡した場合は死亡診断書を発行してもらえます。事故や即死、事件の場合は警察の指定医から死体検案書が発行されます。
- 故人の戸籍謄本の写し:故人の戸籍謄本の請求には戸籍交付申請書と、故人と家族関係がわかる戸籍謄本、請求者の本人確認書類、印鑑が必要です。家族以外が請求代行する場合は家族の委任状も必要です。
- 申請者の身分証明書
- 申請者の印鑑:認印でも問題ありません。
以上の必要書類が揃ったら免許返納手続きを行いましょう。
なお、必要書類は申請先の窓口によって異なるので、予め電話やホームページなどで確認しておくとよいでしょう。
警察署または運転免許センターに必要書類と運転免許証を提出
必要書類が揃ったら警察署または運転免許センター(国家公安委員会)に行き、返納手続きを行いましょう。
なお、地域によっては交番や駐在所でも手続き可能な場合があるので、近くに警察署や運転免許センターがない場合は問い合わせてみてください。
各窓口に運転免許返納届が用意されているので必要事項を記入して、予め用意した必要事項とともに提出したら返納手続き完了です。
運転免許返納手続きが面倒な場合はで穴を開けて対処する
もし、運転免許返納手続きが面倒な場合は、パンチなどで穴を開けて対処してください。
所有者の死亡後に形見として手元に残しておきたい場合、窓口で穴を開けて、無効のマークが付いた状態で返却されます。
返納を行わない場合でも同じように処理することで、身分証明書としても使えなくなるので悪用を防ぐことができます。
生前に自主返納する場合は必ず本人が手続きを行う
自分が死亡後に、運転免許がきちんと返納されるのか、放置して悪用さてしまうのではないか不安な場合は生前に自主返納を行いましょう。
自主返納を行う方法は、所有者死亡後に遺族が返納する手順とほとんど同じです。ただし、自主返納の場合は必ず所有者本人が手続きを行わなければなりません。
返納先は同じく警察署や運転免許センターです。必要なものも運転免許証と印鑑のみなので、遺族が返納手続きを行う場合よりも簡単に手続きできます。
自主返納を行った場合、代わりに使える身分証明書として「運転経歴証明書」の発行が可能になります。運転免許の返納と運転経歴証明書の発行申請を同時に行う場合は、3×2.4cmの証明写真と、交付手数料(670円)も用意しましょう。
必要なものを揃えたら、窓口で指示に従って手続きを行うだけで運転免許を返納できます。
返納手続きを行っても行わなくても運転免許証は死亡後に失効する
運転免許証は所有者の死亡後に運転免許としての効力は失われます。正式に無効にするには返納手続きを行う必要がありますが、返納を行わなくても有効期限が過ぎれば自然と効力は失われます。
ただし、所有者の死亡後も顔写真付きの身分証明書としての機能は失われません。返納手続きを行わないと、身分証明書として悪用されるリスクがあるので注意してください。
自分の死亡後に運転免許がどうなるのか不安な人は、自主返納を検討するとよいでしょう。