相続財産調査のポイント6つ!実際の調査方法から注意しておくべきこととは【税理士監修】

投稿:2023-03-03
相続財産調査のポイント6つ!実際の調査方法から注意しておくべきこととは【税理士監修】

相続が始まると、どんな相続財産があるかを調べる必要があります。調べ忘れてしまいそうな財産も多く、プラスの財産だけでなく、債務等のマイナスの財産もあります。

では、実際にどのような点に注意して調査を行えば良いのでしょうか?

この記事では、相続財産の調査方法や注意すべきポイントを解説します。

なぜ相続財産を調べる必要があるのか?

相続財産を調べる必要があるのは、誰がどの財産を引き継ぐかを決める前提であり、相続税計算の前提にもなるからです。それだけではなく、マイナスの財産が多い場合には、相続放棄も考える判断材料にもなり得ます。

相続財産を調べなければ誰がどの財産を引き継ぐか決められない

被相続人(亡くなった方)の財産は、死亡(相続の開始)と同時に相続人に相続されます。相続人が複数いると、一旦は相続人全員の「共有」になります。

プラスの財産だけでなく、借金等のマイナスの財産も共有になり、全員が同意しなければ、誰がどの財産を引き継ぐか決定することができません。相続人全員の納得を得るためには、相続財産の全体を調べる必要があります。

相続税を払えない

相続財産をきちんと調べないと、相続税を正しく払うこともできません。相続税の申告漏れとして、後で過少申告加算税等が課されることもあります。たとえ、相続人が1人で遺産分割協議が必要ないとしても、自分が引き継ぐ財産が何なのか正確に把握する必要があります。

また、借金等のマイナスの財産が多い場合には、相続放棄を検討する必要も出てきます。

相続財産にはどんなものがあるか

相続財産は様々なものがあります。どんなものがあるかをまず確認しましょう。プラスの財産のほか、マイナスの財産にも注意が必要です。

なお、相続財産以外でも、相続財産と関係が深い等注意して扱うべき財産もあります。この点も後述します。

現金・預貯金・株式等の有価証券

現金・預貯金・株式等はわかりやすい財産と思われるかもしれませんが、通帳などで簡単にわかるとは限りません。ネット取引等をしている人も多いためです。

不動産

土地・建物等です。

債権・動産など

債権は、例えば事業をしている人なら、取引先への売掛金、貸付金等のことです。

動産は自動車、家財道具、貴金属、美術品などです。形があるものなので、わかりやすいと思われます。自動車は現物があるのですぐわかるとは思いますが、担当の自動車ディーラーに確認したり、自動車税納税通知書や自動車の保険証券を確認すればわかるでしょう。

マイナスの財産

簡単に言うと被相続人の債務です。相続放棄や限定承認などをしない限り、相続人がまるごと承継することになるので、一番注意して調べるべきものです。被相続人が事業をしている場合なら、金融機関等からの借金や保証債務等がある可能性もあります。

住宅ローン・自動車ローン等

住宅ローンを借りている人は多いと思います。実際には、住宅ローン等は生命保険(団体信用保険)とセットになっていて、被相続人が亡くなった時には、生命保険金で支払われることも多いのですが、住宅ローンを借りている金融機関等に照会して確認しておきましょう。

そのほか小口の債務 

未払いの医療費、未払い公租公課、クレジットカード等です。長期入院でも、入院費は毎月支払われることが多く、未払い医療費が多額になることは、それほど多くありません。

未払い公租公課は固定資産税や自動車税などの納税通知書で確認できるでしょう。クレジット等は銀行引き落としがほとんどなので把握しやすいです。

借入金や保証債務

事業をやっている人なら多額になることも多いため、一番注意すべきポイントです。調査方法については、後で詳しく解説します。

相続財産ではないが、注意しておくべきもの

相続財産ではないが、他にも注意しておくべき財産等があります。

生命保険金

生命保険金は受取人の固有財産であり、相続財産ではありません。しかし、金額が多額になり、遺産分割協議等でもめる原因にもなりかねないので、注意して取り扱う必要があります。

生前の多額の贈与(特別受益)

被相続人の生前に多額の贈与を受けていた場合、「被相続人から特別の受益を受けた人は、その分は相続分を先に受けたとして扱いなさい」という定めがあります。この点も考慮しないと、遺産分割協議でもめることになりかねません。

年金

被相続人が年金受給者ならば、相続人などが未支給分の年金を受け取れる可能性があります。一方でもらいすぎの年金を返す必要が出てくることもあるので、年金事務所や市区町村の国民年金課などで取り扱いを確認してください。

相続財産の実際の調査方法(その1:プラスの財産)

相続財産の実際の調査方法(その1:プラスの財産)

相続財産は、前述の通りたくさんの種類があります。特に注意して調べるべきものについて解説します。

現金・預貯金・株式等の有価証券

通帳等のほか、銀行や証券会社からの通知物なども確認しましょう。銀行や証券会社等のカレンダーや手帳があれば、そこからわかることもあります。心当たりの銀行や証券会社等があれば、問い合わせましょう。また、ネット取引等はメインの記録がパソコンにだけ残っている場合もあります。故人のパソコンの記録やメール等もできる限り調べてみましょう。

名義預金に注意

被相続人が、ご自分の財産を家族(配偶者、お子様、お孫様等)などの名前で預けていることも多いす。これらの「名義預金」も相続財産となるので、名義を問わず手元の通帳を調べるほか、心当たりの銀行等にも問い合わせましょう。

取引銀行の貸金庫はしっかり調べる

取引銀行がわかったら、貸金庫の格納物も調べましょう。貸金庫の中に大事な財産が格納されていることも多いです。例えば不動産の権利証等は手元に置かずに貸金庫に預けておられる場合も多いと思います。宝石等の高価な財産を格納されていることも多いでしょう。

不動産

固定資産税等の通知書や登記簿の調査で調べます。事業をやっている方ならご家族がよく把握していない事業用の不動産等もありえます。

債権

事業をやっている人なら売掛金、貸付金等があることも多いです。顧問税理士にも確認し、さらに、取引先等にも確認しましょう。その際に、借金や保証債務等マイナスの財産も併せて確認しましょう。

相続財産の実際の調査方法(その2:マイナスの財産)

マイナスの財産は、相続財産調査で一番注意すべきです。マイナスの財産が多ければ、相続放棄も考える必要が出てきます。そして、相続放棄ができるのは、自分が相続人になると知った時から3ヶ月以内で、時間の余裕はそれほどありません。速やかな調査が必要です。

借金や保証債務

取引銀行や取引先等に確認し、借用証、契約書などをしっかり調べましょう。事業をやっている人ならば顧問税理士にも確認しましょう。さらに、以下のような調査も行います。

貸金庫・通知物等の確認

金銭消費貸借契約書や借用書などが貸金庫に格納されていたりします。金融機関等債権者からの通知書などもしっかり調べましょう。

登記簿等の確認

不動産の登記簿を調べて抵当権がついている等で借金がわかることがあります。不動産登記簿はしっかり調べる必要があります。

信用情報センターの活用

個人の借金等については、個人の信用情報を取り扱う全国銀行個人信用情報センター、株式会社シー・アイ・シー、株式会社日本信用情報機構に被相続人の信用情報を請求しましょう。郵送で手続きが可能です。詳しくは各団体のホームページ等で確認してください。

相続財産調査の後の手続き

相続財産調査が終わったら、財産目録を作成し、財産評価をします。これで、遺産分割協議の準備、相続税納付の準備を進めることができるようになります。マイナスの財産が多い等の場合は、相続放棄を検討する必要があります。

財産目録を作成・財産の評価

財産目録を作成し、財産の評価を行います。財産評価の仕方は、それぞれの財産で異なります。不動産の評価等は非常に難しく特に注意が必要です。税理士法人等専門家に相談した方が良いでしょう。

マイナスの財産が多ければ相続放棄も検討

マイナスの財産が多ければ、相続放棄も検討する必要があります。相続放棄ができるのは、自分が相続人となったと知った時から、3ヶ月以内です。

相続財産調査の相談をするなら税理士法人へ

相続財産の調査は決して簡単なことではありません。大事な財産を調べ忘れたり、思いがけない借金を抱えてしまったりするケースも少なくないです。また、財産評価の仕方を間違えて相続人間で紛争になったり、相続税の納付額を間違ってしまったりすることもあります。

そのため、相続財産の調査は、相続に詳しい税理士に相談することをおすすめします。葬儀のデスクでは、相続に強い税理士による公式の相談窓口を設けています。無料で相談できるので、ぜひお気軽にお問い合わせくださいませ。

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■執筆者 
社会保険労務士 玉上 信明(たまがみ のぶあき)

三井住友信託銀行にて年金信託や法務、コンプライアンスなどを担当。定年退職後、社会保険労務士として開業。執筆やセミナーを中心に活動中。人事労務問題を専門とし、企業法務全般・時事問題・補助金業務などにも取り組んでいる。

■監修者 
相続・贈与相談センター赤坂支部
税理士 城 行永(じょう ゆきひさ)

税務と生命保険、不動産の専門知識によって総合的な相続税コンサルティングを行っております。さまざまなケースに対応できますのでご質問ご相談はなんでもお気軽にご連絡ください。
【保有資格】税理士・生命保険募集人・宅地建物取引士

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著者:葬儀のデスク編集部
葬儀のデスク編集部
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