仏様に帰依することを意味する仏教用語はいくつかありますが、中でも「南無三(なむさん)」と略される「南無三宝(なむさんぼう/なむさんぽう)」は特殊な場面で使われる言葉です。
似たような言葉があるので、間違った使い方をすると意味が通じずに困ってしまうかもしれません。
南無三宝の意味と類義語について、使い方の例文を交えて解説します。
もくじ
南無三宝(南無三)の意味と使い方とは
南無三宝とは仏教用語のひとつで、特殊な場面で使われます。
日常で使う言葉ではないので、間違った使い方をしてしまうと混乱を招いてしまう可能性も。
南無三宝とはどのような意味なのか、使い方と例文を交えて詳しく解説します。
南無三宝(なむさんぼう/なむさんぽう)の意味は仏様に帰依を誓って救いを求めること
「南無三宝(なむさんぼう/なむさんぽう)」とは「南無三(なむさん)」とも略される仏教用語で、仏・法・僧の三宝に呼びかけて、仏様に帰依を誓って救いを求めることです。
また、仏に救いを求めることを転じて、失敗したときなどに「しまった!」「大変だ!」という意味でも使われます。
そもそも南無とは、サンスクリット語の「ナモ」や「ナマス」から音写した漢訳仏教語で、敬意や尊敬、崇拝を表します。
そして三宝とは、仏陀とその教えである法、そして法を伝える役割の僧のことを指す言葉です。仏教における3つの宝と言われているため、「仏・法・僧」を三宝と言います。
南無三宝の使い方と例文
南無三宝は仏様に救いを求めるほど大変なことになってしまった、どうしたらいいかわからないときに使います。
以下は南無三宝の使い方の例文です。
- 親が危篤になったと連絡が入った。南無三宝、どうかお助けください。
- 大事故に巻き込まれそうになったが、南無三宝と言ったら助かった。
- 南無三宝、この失敗からは逃れられないだろう。
- 南無三宝、ここが通行止めになっているとは知らなかった。
- 大ピンチだ!南無三宝!
- 南無三宝・・・。これは困った・・・。
ちなみに、太宰治や泉鏡花の作品にも南無三宝は使われています。
鮭川の入海のほとりにたどり着いた時には、南無三宝、父は荒蓆あらむしろの上にあさましい冷いからだを横たえていた。
<太宰治・新釈諸国噺>
南無三宝の類義語と混同しやすい言葉を解説
仏様に帰依することを意味する仏教用語はいくつかあります。中でも南無三宝は仏様に救いを求めることも意味していますが、「仏様に帰依すること」が共通しているという理由で類義語と混同しやすいです。
間違った言葉の使い方をしてしまうと、正確に意味が伝わらない可能性があります。では、南無三宝の類義語と混同しやすい言葉を解説します。
「三宝礼」とは浄土宗と日蓮宗の経文
南無三宝と混同しやすい言葉として「三宝礼」があります。
そもそも「三宝礼」とは仏・法・僧の三宝に帰依することを宣言する浄土宗と日蓮宗の経文のことで、お勤めや葬儀の際に読み上げられる経文です。
ちなみに三宝礼は宗派によって呼び方が違います。三宝礼と呼ぶのは浄土宗や日蓮宗などですが、ほかには「三礼文」や「三礼」と呼ぶ宗派もあります。
以下は三宝礼の全文です。
- 一心敬礼十方法界常住仏
- 一心敬礼十方法界常住法
- 一心敬礼十方法界常住僧
なお、「十方法界」ではなく「十方一切」と読むケースもあります。
- 一心敬礼十方一切常住仏
- 一心敬礼十方一切常住法
- 一心敬礼十方一切常住僧
「一心敬礼十方法界常住仏」は仏様を、「一心敬礼十方法界常住法」は仏様の教えを、「一心敬礼十方法界常住僧」は仏教の教えを伝える僧を、いついかなるときも真心を込めて敬い、礼拝いたしますという意味です。
「帰依三宝」は仏教徒になること
「帰依三宝」は南無三宝の類義語で、間違えられやすいですが意味が全く異なります。
南無三宝は救いを求めることを意味する一歩で、帰依三宝は仏様に帰依して従うことを意味します。要するに仏教徒になることです。
そもそも、仏門に入って仏様の教えに従うことは、仏教徒としての基本的な条件なので、帰依三宝とは仏教徒の基本を示していることになります。
「帰命頂礼」は心から仏様に帰依すること
「帰命頂礼」は心の底から仏様に帰依することを意味します。地に頭を付け礼拝し、深く帰依することを表しています。
「帰命」とは、命を投げ出してでも帰依し従うほど厚い信心のことです。そして「頂礼」とは頭を地に付けて礼することで、古代インドの最高の敬礼であり、五体投地とも言います。
南無三宝は仏様に救いを求めるときに使う仏教用語
「南無三宝」は仏様に帰依することを意味していますが、ただ帰依を誓うのではなく、仏様に救いを求めるほどのピンチに陥った際に使います。
特に葬儀などで読まれる「三宝礼」や、仏教徒になる意味を指す「帰依三宝」は、南無三宝と混同しやすいので注意が必要です。
それぞれの意味を理解して、適切な場面で言葉を使いましょう。