日本のお盆は年に1度、故人が現世に戻ってくる仏事として、ご先祖様をお迎えする準備や供養をするものです。仏教の風習というイメージがありますが、日本古来の宗教である神道にもお盆の風習はあります。
しかし、同じ仏教でも宗派によってお盆の考え方が異なり、特に「浄土真宗」は特徴的です。
一般的なお盆とは大きく異なる浄土真宗では、どのようなお盆の過ごし方をするのでしょうか?
一般的なお盆と比較しながら、浄土真宗のお盆の作法や風習を解説します。
もくじ
一般的なお盆とは違う浄土真宗のお盆の過ごし方
浄土真宗は仏教の中でも特徴的な考えを持つ宗派なので、一般的なお盆とは違う過ごし方をします。
浄土真宗のお盆の過ごし方について、お盆の時期とともに解説します。
浄土真宗ではお盆にご先祖様をお迎えする準備をしない
浄土真宗とは浄土信仰(浄土思想)に基づく仏教の宗派のひとつです。浄土信仰とは阿弥陀如来を対象とする信仰のこと。
仏教では、三途の川のほとりから極楽浄土か地獄か、十王による故人の行き先を決める審判が始まると考えられています。
一方、浄土真宗では「臨終即往生」という教えがあり、故人の魂はすぐに極楽浄土へ行って仏様になるとされています。
そのため冥福を祈って故人を供養しないので、ほかの宗派では当たり前に行っている弔いの儀式を浄土真宗では行いません。
お盆も例外ではありません。一般的にお盆はご先祖様があの世からこの世に戻ってくる時期と考えられているので、お迎えをするための準備を行います。
しかし、浄土真宗ではお迎えの準備はもちろん、お迎えにあたる儀式も行いません。
浄土真宗では、親鸞聖人の教えをもって亡くなったご先祖様が、お盆の時期だけ戻ってきて子孫の供養を受けるような人ではないと考えられているので、お盆に特別な準備をする必要がないのです。
浄土真宗のお盆の時期は一般的なお盆と同じ
浄土真宗ではお盆にご先祖様をお迎えする準備はしませんが、なにもしないわけではありません。
浄土真宗ではお盆にあたる時期を「歓喜会(かんぎえ)」と言い、お寺などで仏法を聞かせていただく日とされています。
なお、時期はほかの宗派のお盆と同じで、新盆の地域(東京や横浜など)なら7月13日〜16日、旧盆の地域なら8月13日〜16日です。
ちなみに初盆では、自宅に僧侶を招いて読経や仏法を聞かせていただくケースが多いです。
浄土真宗のお盆(歓喜会)の作法や風習を解説
浄土真宗のお盆の過ごし方には特徴的な作法や風習があります。地域やお寺によって変化する部分もありますが、基本的には「特別なことをしないこと」が浄土真宗の作法です。
浄土真宗のお盆の作法や風習を詳しく解説します。
「歓喜会(かんぎえ)」は法話会で仏様に感謝する
浄土真宗のお盆「歓喜会」は仏法を聞かせていただく日なので、浄土真宗の各お寺などでは法話会が開かれます。
歓喜会の法話会は浄土真宗の年間行事として盛大に開かれるので、多くの門徒たちが集まります。
法話会の目的は、阿弥陀如来に慈悲を仰ぎ、仏様に感謝をして喜ぶ人になるためです。一般的な供養とは違う形ではあるものの、仏様や故人へ感謝を伝える日であることは変わりません。
ちなみに、自宅に僧侶を招いて読経をあげていただく場合は、僧侶とともにお聖教を読みます。ほかの宗派では読経を聞くだけですが、僧侶と一緒に声に出して読むのも浄土真宗ならではの大切なお勤めです。
お仏壇はいつもと同じで豪華すぎるお供えはしない
お盆の時期は、ご先祖様をお迎えするためにお仏壇を飾り付けるのが一般的ですが、浄土真宗ではいつも通りのままで特別な飾り付けは行いません。
ただし、浄土真宗にとってもお盆は大切な時期なので、お仏壇の掃除や仏具のメンテナンスは行いましょう。
また、お供え物も豪華にしません。シンプルに、故人が好きだったお菓子や季節の果物、炊きたてご飯などをお供えします。
盆提灯は基本的に飾らない
浄土真宗ではお盆でもお仏壇に特別な飾り付けは行わないので、盆提灯も飾りません。
ただし、禁止しているわけではないので飾っても良いです。一部の地域では、浄土真宗でも盆提灯を飾る習慣があります。
なお、お寺によっては決まりとして盆提灯も飾らない場合もあるので、盆提灯を飾る前に菩提寺に決まりがあるか確認をしておきましょう。
お墓参りは行っても良い
浄土真宗のお盆は、歓喜会が開かれること以外に特別な行事や風習はありません。ただし、世間一般のお盆同様に、お墓参りには行っても良いです。
そもそも浄土真宗のお盆はご先祖様へ感謝をする日なので、ご先祖様に会いに行くためのお墓参りは行ってよいとされています。
もちろん、ご先祖様が眠っているお墓を綺麗に掃除して、感謝の気持ちを伝えることは忘れないようにしましょう。
そうめんや団子を食べる地域もある
ごく一部の地域のみですが、浄土真宗にはそうめんやお団子を食べる地域もあるそうです。
実は、ほかの宗派でそうめんや団子はお盆のお供え物の定番のもの。
お盆1日目にこの世に戻ってくるまでの長い道中の疲れを癒やすための「お迎え団子」として甘い団子をお供えします。そして最終日に、お土産として持たせるための「送り団子」をお供えします。送り団子は白い団子が定番です。
また、中にはご先祖様にのんびり過ごしてもらうためにお供えするケースもあります。
そして、そうめんは「幸せが細く長く続く」という意味から、縁起のよいものとしてお供えするようになったという説があります。
ただし、浄土真宗では基本的に団子もそうめんも、宗教的な意味でお供えすることはありません。単純なお供え物として団子やそうめんを供えることはありますが、お盆だからという理由で宗教的な意味合いで団子やそうめんを供えることはありません。
しかしごく一部の地域では、そうめんや団子を供えるのではなく、お盆に食べる風習があるそうです。理由は定かになってはおらず、現在では団子ではなくお菓子を食べるケースが増えているとのことです。
もちろん一部の地域に限定した風習なので、浄土真宗の大多数ではお盆にそうめんや団子を食べる風習はありません。
浄土真宗のお盆(歓喜会)は法話会以外の特別なことはしない
浄土真宗のお盆は基本的に、法話会以外に特別なことはしません。
一般的にお盆は、ご先祖様の魂がこの世に戻ってくる日として認識されていますが、浄土真宗では戻ってくるという考えはないので、お迎えにあたる儀式は行いません。
豪華な飾りも行わず、お仏壇は普段どおりにするのが基本です。
ただし、浄土真宗のお盆はご先祖様に感謝をする日なので、お仏壇やお墓の掃除、メンテナンスはきちんと行いましょう。