過去帳とは、仏壇に保管する家族の系譜のことです。
仏具の一種で、亡くなった方の俗名(生前の名前)・戒名(法名、法号)・亡くなられた年と日付・息を引き取ったときの年齢を書き記します。
仏壇があるご家庭では、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
仏具としての使い方と歴史について触れつつ、過去帳の書き方や役割を解説します。
もくじ
過去帳の役割や歴史を解説
仏壇があるご家庭では、「過去帳」が保管されているケースが多いです。「過去帳」とは一体どのようなものなのでしょうか?
過去帳の役割や歴史などを詳しく解説します。
過去帳とは仏壇に保管する家族の系譜
過去帳とは、仏壇に保管する家族の系譜のことです。家の家系図のようなものとイメージすると良いでしょう。
代々受け継がれてきた過去帳の記録からその家の縁故関係の歴史を知ることができます。
過去帳の歴史|戸籍のような役割を持った重要なものだった
その歴史は古く、鎌倉時代には使われていたと言い伝えられています。
かつての日本では、「仏教を信仰し、必ず菩提寺(ぼだいじ)を持ち、その檀家となること」が義務付けられており、過去帳は当時、現代でいう戸籍のような役目も担っていたほど重要なものでした。
菩提寺には檀家の過去帳が保管され、それに加え、檀家もそれぞれの家に過去帳を持っています。
過去帳は命日の覚書
過去帳には命日の覚書としての役割もあります。
命日などの場面では、普段は仏壇の引き出しなどに保管されている過去帳を見台にのせ、供養する人のページを開いて手を合わせるのです。
法要のときには、供養する人のページを開いて、お経をあげてもらいます。
過去帳は位牌を整理する時に使う仏具でもある
過去帳は、位牌を整理する時に使う仏具でもあります。
位牌の数が増えてくると、仏壇に次に納める位牌が置けません。
そのため、三十三回忌や五十回忌などの法要に合わせ、位牌に書かれた記録を、過去帳に書き写します。
繰り出し位牌という何枚かの位牌を入れられるものもありますが、位牌が増えてくると仏壇のなかが窮屈になってしまうものです。仏壇を大きくする方法もありますが、現代の住宅事情では、現実的ではありません。
こんなときは、仏壇を大きくせずに過去帳を使って位牌を整理するのがよいでしょう。
位牌は「故人の魂が宿っているもの」「亡くなってしまった人そのもの」を意味するものですが、過去帳は家系図のようなもので、「魂が宿るもの」ではありません。位牌を整理するか否かは、慎重に決めましょう。
過去帳の書き方や宗派による違いを解説
過去帳には、決められた書き方があります。また、宗派による違いもありますので、注意が必要です。
過去帳の書き方宗派による違いを解説します。
過去帳は誰が書いてもよい
過去帳は誰が書いても問題ありませんが、お寺の方に頼んで書いてもらうのが一般的です。
菩提寺の住職へ記入を依頼する場合は、四十九日の法要や、戒名・法名をつけてもらうときにお願いしましょう。
法要や戒名・法名をつけてもらうときに代理で記入をお願いする時の費用は、法要のお布施の中に記入のお礼分を含むのが一般的です。お布施の費用相場は、3万円〜5万円程度となります。
古い過去帳の内容をまとめて書き写してもらう場合や、過去帳を紛失してしまいお寺にある記録を照合してもらう場合は、法要のお布施とは別に3万円〜5万円のお布施を渡すのが一般的です。
法要とは別に過去帳の記入だけを依頼する場合も、お布施を包むようにしましょう。5千円から1万円が相場です。
過去帳の書き方
過去帳には、独自の書き方があります。過去帳の書き方を解説します。
筆記用具として「筆」が一番ふさわしい
筆記具はボールペンや筆ペンではなく、硯で墨をすって筆で書くのがよいとされています。
墨はインクより退色しにくいため、長い年月にわたり過去帳を代々継承していくのにふさわしいからです。
墨や筆を用いて書けないという場合は、ボールペンや鉛筆で書いても問題ありません。最近では、パソコンを使った印刷もあるようです。
筆できれいに書く自信が無い方などは、過去帳の記入を代行してくれる業者もありますので、活用しても良いでしょう。
表装は「〇〇家過去帳」など家の姓を記入
形式は、縦に綴じられた「和本(和綴じ)形式」のものと、横長の紙を一定間隔で折りたたんだ「折本形式」のものがあります。
表紙の素材は布(金襴・緞子など)や唐木(黒檀、紫檀など)が一般的です。
過去帳の表装(表紙)には、その家の姓を記入します。「〇〇家過去帳」「〇〇家先祖代々」などと記載しましょう。また、「過去帳」とだけ書いても問題ありません。
過去帳に書く内容と書き方
過去帳に書く内容は、亡くなった年と月日、故人の戒名と名前(俗名)、息を引き取ったときの年齢、続柄などです。
過去帳で使われる戒名は、主に2文字の短い戒名のことが多いですが、戒名のほかに院号や釈号、居号などを含めた長い戒名が使われる場合もあります。
この部分は宗派によってやや書き方が異なりますので、わからない場合は、お寺に確認してみるとよいでしょう。
過去帳の種類「日付入り」と「日付まし」
過去帳は、「日付入り」と「日付なし」のものがあります。
「日付入り」のものは1日から31日までの日付が入っており、故人が亡くなった日付のページに記載する仕組みです。
日付を入れた過去帳は毎日めくることで故人の命日(月命日・祥月命日)を確認し、追善供養、または謝恩をすることができます。
デメリットは、同じ日付に複数人の故人がいる場合に行数が足りなくなり記入できなくなることです。
家庭で毎日ご先祖さまを供養する為に使うのであれば日付入りのものが使いやすいと言えるでしょう。
これに対し、日付の入っていない過去帳は、死亡順に記入していく年表式のものであり、記録簿として使いやすい点がメリットです。
しかし、日ごとに揃えて記入するわけではないので、複数の故人の命日(日)が重複すると同時に開いて出しておくことはできません。
年表のように先祖代々の記録簿として使用したいという場合は、「日付なし」の方が日付ごとの行数の制限に縛られないため、より多くの記録を残すことができるという点で適していると言えます。
宗派による書き方の違い
過去帳は、宗派による書き方の違いもあるため、注意が必要です。
宗派による違いについて解説します。
浄土真宗|法名を書き込む
浄土真宗は戒名とは言わず「法名」と言います。
過去帳には釈号や院号などを記載し、それに続けて「法名」を記入しましょう。
釈号は、男性の場合は「釈」、女性の場合は「釈尼」です。
男性の場合は、「釈〇〇」(〇〇は法名)の3文字を、女性の場合は、「釈尼〇〇」の4文字を書きます。
また、法名に院号をつける場合、男性は「〇〇院釈〇〇」の6文字で、女性の場合は「〇〇院釈尼〇〇」の7文字を書きましょう。
浄土宗・日蓮宗・天台宗など
浄土宗では、限られた方にだけ、戒名の前に誉号をつけるのが決まりです。
日蓮宗は、法号(戒名)の前に日号が用いられます。男性の場合は「日〇〇」、女性の場合は「妙◯◯」となるといった宗派による違いがあります。
天台宗では戒名の前に、大日如来を表す梵字を入れる場合もあるので、よくわからない場合は、お寺(菩提寺)に確認するとよいでしょう。
仏具としての使い方
過去帳は一部の宗派(浄土真宗)を除き、基本的には仏壇の中に片付けます。引き出しの中に保管されるケースが多いです。
そして故人の「月命日」に過去帳を取り出し、故人の名前が記されたページを開いて見台に置き、手を合わせます。
しかし、浄土真宗の場合は位牌を用いず過去帳に手を合わせるのが正式な作法です。月命日に限らず、過去帳は閉じた状態でも片付けずに見台に置きます。
過去帳は家族の系譜を次世代へ引き継ぐ大切な仏具
過去帳は、家族の系譜を次世代へ引き継ぐ大切な仏具です。
自分で書く場合は、亡くなった方を供養する気持ちをもち、一文字ずつ丁寧に想いを込めて書きましょう。
先祖代々の系譜を正しく記入して次の世代に引き継ぐこともとても重要なことです。
過去帳を上手に使い、家族の系譜を次の世代に引き継いでいきましょう。