古くからの伝統文化として日本人に馴染みがあるお焚き上げ(おたきあげ)。
破魔矢などの正月飾りやお守り、だるまなど正月に神社でお焚き上げをしている光景は誰でも見かけたことがあるのではないでしょうか。
お焚き上げをするべきものやそのタイミング、神社仏閣でお焚き上げをする際の注意点と相場など、お焚き上げについて知っておきたいことを詳しく解説します。
もくじ
お焚き上げは日本人に馴染み深い伝統文化
お焚き上げは日本人に馴染み深い伝統文化です。しかし、お焚き上げという言葉を聞いたことはあるけれど、どのようなものか実はよく分からないという方も多くいます。
お焚き上げとは神仏に関わるものや、本人もしくは故人の思いが込められた大切な品物等を焼却し供養する儀式です。神聖な火である「浄火」で燃やすことにより、宿っていた神様を天に還す、または遺品を故人に返すという意味があります。
お焚き上げの由来は、「庭燎(にわび)」だと言われています。庭燎とは神事の際に庭でたかれる篝火のことです。「ていりょう」とも呼びます。
日本では大切にしている品物には魂が宿るあため、粗末にしてはいけないという考えが今でも根強く残っています。感謝の気持ちを込めてお焚き上げをすることで魂が浄火されるとして、古くからお焚き上げの儀式が行われてきました。現在でも、日本全国でお焚き上げが行われています。
お焚き上げとどんど焼きの違い
お焚き上げと聞くと、「どんど焼き」のことを思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。
お焚き上げとどんど焼きには違いがあります。どんど焼きは、門松やしめ縄等の正月飾り等を火で燃やす行事です。毎年、小正月にあたる1月15日前後に行われます。とんど焼きや左義長、道祖神祭等、地域によって名称が変わります。
なぜ、どんど焼きが行われるのでしょうか。門松やしめ縄等の正月飾りは歳神様を迎えるためのものです。お迎えした歳神様は、煙に乗って天に戻ると考えられています。このことから、どんと焼きで正月飾りを燃やし、歳神様を天にお見送りするようになりました。
どんど焼きには無病息災、家内安全、子孫繁栄、五穀豊穣等様々な願いが込められており、その火や煙、灰には厄除けの効果もあると言われています。
一方、歳神様を送る火でお餅や団子を焼き食べると縁起がよく、一年健康で過ごせると言い伝えられてる地域もあります。
どんど焼きの由来は諸説ありますが、火がどんどん燃えること、どんっどんっという竹が燃える音が聞こえることにつながりがあるという説が有名えす。
先述した通り、お焚き上げは神仏に関わるものや遺品を供養するためのものなので、歳神様を見送るために行われるどんど焼きとは違うものです。
遺品整理としてのお焚き上げと正月飾りやお守りなどのお焚き上げ
お焚き上げは、遺品整理のために行うものと正月飾りやお守り等を供養するために行うものの大きく二つに分けられます。
遺品整理として行うお焚き上げ
まず、遺品整理は、故人が所有していたものや葬儀で使用した灯篭や仏事品はそのまま捨てるのが忍びないという気持ちからきたものでしょう。故人の愛用品を捨てることが躊躇われますが。いつまでも残しておくことは難しいです。遺品整理としてのお焚き上げをすることで、故人を偲びながら廃棄することができます。
お焚き上げには、遺品を故人に返すという意味合いや、遺品整理することで残された遺族や親族の心の整理がつくという一面があります。遺品整理は、本当の意味での故人との別れになることでしょう。
遺品整理としてのお焚き上げは、神社やお寺、もしくは民間業者でも行っています。ただし神社やお寺では、お焚き上げできない品物もあるので、必ず事前に確認をとるようにしましょう。
正月飾りやお守りなどを処分するためのお焚き上げ
次に正月飾りやお守り等についてですが、正月飾りを燃やす行事はどんど焼き、お守りは神社に納めることで年末年始にお焚き上げしてもらえます。
お守りは時間の経過と共に効力を失い、悪い気が入ることがあると言われています。ご家庭でお守りを処分するのは罰が当たる気がするものでしょう。よって、お焚き上げが勧められているのです。
お守りは購入した神社でお焚き上げをしてもらうのが一般的です。
お焚き上げをするべきものやできないものがある
それでは、焚き上げをするべきものにはどのようなものがあるのでしょうか。
結論から言うと、どんなものでもお焚き上げすることができます。ただし、神社やお寺では環境問題への配慮からお焚き上げできないものがあるので、事前確認をしておきましょう。
お焚き上げするべきもの|お守り・お札・門松など
お焚き上げするべきものはいくつかあります。
例えば、お守りやお札、破魔矢、だるま等神仏に関わるもの、門松やしめ縄等正月飾り、故人の遺品等です。
人形やぬいぐるみ等は家庭で処分していいのですが、日本では古くから思いが込められたものには魂が宿ると考えられてきたので、お焚き上げをしてもらう方も少なくありません。他にも手紙や日記、年賀状等もお焚き上げできます。専門業者では近年、携帯やパソコンを取り扱っているところもあります。
処分したいけれど捨てにくいという品物は、お焚き上げを検討するといいかもしれません。
仏壇は閉眼供養をすることでお焚き上げできる
仏壇や仏具は、お焚き上げが必要なものです。
しかし、魂が宿っていると考えられているため、そのまま処分することはできません。処分する時は、住職に閉眼法要をお願いしましょう。閉眼法要は魂抜きや御霊抜きとも言われます。
閉眼法要をすることで普通の「モノ」になり、手を合わせる対象ではなくなります。こうしてはじめて、お焚き上げができるモノになるのです。
環境面への配慮からお焚き上げできないも|ガラス・プラスチックなど
神社仏閣では、お焚き上げできないものがあります。
例えば、ガラスや家電、プラスチック等有害物質がでるものです。環境問題への配慮から、これらを受け付けていません。
また、どんど焼きで人形やぬいぐるみ、だるま、紙類等を焼くことも禁止しているところがあります。正月飾りであっても、プラスチックの物は受け付けてないところも多いでしょう。
浄火は神仏にささげる神聖なものです。燃やして処分するためだけのものではないので、節度を持った心ある対応をすることが大切です。
人形やぬいぐるみ等をお焚き上げしてもらいたい時は、どんど焼きではない時期に問い合わせてみましょう。
お焚き上げ供養をするベストな時期とは?
今度は、お焚き上げ供養をするベストな時期について解説していきます。また、お焚き上げにも目的別でご紹介します。
神仏に関わるものは年末年始にお焚き上げする
お守りやお札等神仏に関わるものは、年末年始にお焚き上げしてもらうといいでしょう。お焚き上げすることで宿っていた神様を天に還すことができるからです。神社やお寺によっては、受付時期を限定せず、通年納めることができるところもあります。
ちなみに、お守りは購入した神社でお焚き上げするべきと言われていますが、遠方で手に入れた場合は直接納めに行けないものです。その場合は、近くの神社でもお焚き上げができる場合もありますし、遠方の神社が郵送で受け付けてくれることもあるので確認してみましょう。
正月飾りはどんど焼きでお焚き上げする
門松やしめ縄などの正月飾りは、1月15日前後に行われるどんど焼きでお焚き上げしてもらいましょう。
お焚き上げをして、歳神様を天にお見送りするのです。
故人の遺品は四十九日や法要の後でお焚き上げする
故人の遺品は、一般的に四十九日の忌明け、もしくは一周忌や三周忌の法要の後に行うことが多いです。
とはいえ、故人の遺品はいつお焚き上げするべきかという決まりがありません。故人との関わりが深いほど、遺品の処分が躊躇われるものではないでしょうか。お焚き上げする時期に、明確な決まりはないので気持ちの整理がついた時に行うといいでしょう。お焚き上げをしてもらうことにより、故人を偲び供養することができるはずです。
なお、故人が生前大切に残しておいてほしいというものに関しては、故人の気持ちを尊重し大切に保管しておくことをおすすめします。
終活としてのお焚き上げ
残された遺族の負担を減らしたい、これからの人生を豊かに過ごす為に身の回りの整理をしたい等という理由から、終活としてのお焚き上げをする方が増えています。
それでも、愛用品や写真、人からもらった物等は簡単に捨てることができないものでしょう。不要なものだとしても、捨てるに捨てられないと悩む人は多くいます。
だからこそお焚き上げをすることで、罪悪感なく廃棄できるのです。身の回りの整理をすると心が軽くなり、安らかな気持ちにもなるのではないでしょうか。
神社やお寺でお焚き上げをするのと業者のお焚き上げとの違い
お焚き上げは、神社やお寺だけではなく民間業者でも行っていますが、それぞれ注意しなければならないことがあります。
ここからは神社やお寺のお焚き上げと業者のお焚き上げとの違い、相場について解説します。
神社仏閣でお焚き上げをお願いする際の注意点と相場
神社仏閣では、きちんと供養してもらえるという安心感がある一方、お焚き上げできないものがあったり、そもそもお住まいの地域の神社やお寺ではお焚き上げをしていなかったりすることがあります。またお焚き上げが可能でも、受け付けている時期が限られていることも難点です。
神社仏閣でのお焚き上げの相場は、供養の仕方や品物によって違いがあります。供養の仕方には合同供養と現地供養がありますが、神社やお寺の中で行うものは合同供養となり、相場は安くなります。
例えば、お正月飾りに関しては無料でお焚き上げしてくれるところがほとんどです。
お守りであれば購入金額と同じ、もしくは半額程度をお賽銭に入れるといいと言われています。
仏壇をお焚き上げしてもらう際は閉眼供養も必要なので、1万円~2万円程度。
遺品は一つひとつの金額ではなくまとめてお願いすることになります。相場は、みかん箱1箱分で5千円~1万円程度となり、箱の大きさによって2万円程度かかることもあります。
現地供養の場合は自宅に住職を招いて行うので、合同供養の費用より数万円程度高くなると心積もりしておくといいでしょう。
ただしこれらはあくまでも目安となるので、お焚き上げを検討する場合は直接神社やお寺に問い合わせることをお勧めします。
遺品整理業者にお焚き上げをお願いする際の注意点と相場
遺品整理業者では、神社やお寺で受け付けていない品物も受け付けてくれます。宗派も問いません。受付時期も通年であることが多いので都合もつけやすいです。
その一方で、遺品整理業者にお願いすると神社やお寺よりも費用が高くなることがあります。また、悪質な業者にお願いしてしまい、供養されずに不法投棄されたというトラブルがあるので遺品供養証明書を発行してもらうことをおすすめします。
遺品整理業者の相場は、神社やお寺と同じようにまとめて依頼することになるため、段ボールの大きさで数千円から数万円程度です。
部屋の中の遺品をまとめてお焚き上げしたい時は、部屋の広さや品物の量によって費用が変わります。例えばワンルームなら10万円以下となり、2DKなら20万円以下が相場です。正確な費用に関しては遺品整理業者に確認するといいでしょう。
まとめ~しきたりを守って正しいお焚き上げ供養をしよう
お焚き上げとは、お守りやお札等の神仏に関わるものや遺品を神社やお寺で浄火によって供養する行事です。小正月に行われるどんと焼きでは、正月飾りを燃やし歳神様をお見送りします。お焚き上げには仏壇や遺品整理の為のものと神仏に関わるものがありますが、近年では終活としてお焚き上げすることも増えています。
お焚き上げの相場は品物の種類や量、頼む場所によって変わるので事前確認が必要です。
お焚き上げは日本人に馴染み深い伝統文化です。思いが込められた品物を供養し、心の整理をつけることでこれからの人生をより豊かにすることができるのではないでしょうか。しきたりを守り、正しいお焚き上げ供養をしましょう。