ナスやきゅうりを使った精霊馬は、お盆にご先祖様の魂がこの世とあの世を行き来するために作るものです。
作り方はとても簡単ですが、近年ではご先祖様も驚くようなアレンジをして作る人が増えています。
また、地域や宗派によっては精霊馬を飾らない、時期が違うなどの差異も見られます。
精霊馬の基本的な置き方・作り方や、地域と宗派による差異について解説します。
もくじ
精霊馬の意味と基本的な作り方・置き方を解説
お盆の飾りとして定番の精霊馬は、ご先祖様の魂がこの世とあの世を行き来するための乗り物として作られます。
精霊馬の作り方や置き方について、写真とともに紹介します。
お盆に飾る精霊馬とはご先祖様の魂が行き来する乗り物のこと
精霊馬はご先祖様がこの世とあの世を行き来する乗り物のことです。
きゅうりを馬、ナスを牛に見立て割り箸や爪楊枝を刺したもので、お盆の時期に精霊棚や盆棚にお供え物とともに飾ります。
足が速い馬に乗ってできるだけ早くこの世に戻ってきてもらい、帰りは足の遅い牛に供物を乗せて少しでもゆっくり帰ってもらうという意味があります。
なお、この世に戻ってくるときはゆっくり景色を楽しんでほしいので牛、あの世に帰るときは疲れているからなるべく早く帰れるように馬に乗るという逆の説も。
ナスときゅうりを使う理由は、どちらもお盆の時期に安定して収穫が望め、容易に手に入る夏野菜だからです。そのため、昔から精霊馬にはナスときゅうりが使われています。
精霊馬の基本的な作り方は爪楊枝や割り箸を刺すだけ
精霊馬の基本的な作り方はナスときゅうりに、爪楊枝や割り箸を刺して4本足を生やすだけです。
簡単に作れるので、ご先祖様をお迎えするお盆の飾りとして作ってみてはいかがでしょうか?
精霊馬の基本的な作り方
材料:きゅうり、なす、割り箸2本または爪楊枝8本
- 割り箸を使う場合は1本を4等分して、合計8本にする。
- きゅうりとナスのへたを頭に見立てて、お腹にあたる部分に割り箸または爪楊枝を4本ずつ刺して完成。
きゅうりはより速い馬に見立てるためにスラッとした形のものと、ナスは多くの供物を乗せられるように大きくどっしりしたものを選ぶとよいでしょう。どちらも少し曲がった形を選ぶと、より馬や牛らしく見えます。
ほかの野菜で精霊馬をアレンジして作ってもOK!
精霊馬は絶対にナスときゅうりでなければならない決まりはありません。
ご先祖様の乗り物になるものなら、とうもろこしやトマト、いちご、ゴーヤなどで作っても大丈夫です。
ご先祖様もびっくりなこだわりの精霊馬を作る人もいる
精霊馬は野菜に4本足を生やすだけでできますが、近年ではご先祖様も驚くようなこだわりの精霊馬を作る人もいます。
特に、きゅうりで本格的な馬の形を作る人が増えているようです。
また、より早く移動できる自動車や飛行機を作る人もいます。
昔は馬や牛が乗り物として使われてきましたが、時代に合わせてより快適に移動できる乗り物を作ってもいいかもしれません。
精霊馬をフェイクフードで代用する人も!
精霊馬は本物の野菜を使う必要はありません。フェイクフードと呼ばれる、偽物の野菜で代用することもできます。
精霊馬で使用した野菜は、食べずに処分するのが基本です。しかし、精霊馬は食べ物を粗末にしているのではないかと指摘する声が増えているのが現状です。そのため、本物の野菜を使うことに抵抗がある場合は、フェイクフードで代用してみるとよいでしょう。
割り箸ではなく真菰(まこも)を使った精霊馬も定番
精霊馬はナスときゅうりに4本足を生やしたものが定番ですが、真菰を使って作るのも定番です。真菰とは「神の宿る草」と呼ばれており、万葉集や古事記にも登場します。
稲わらのように束ねて締めることができるので、より本格的な形の精霊馬が作れます。
真菰(まこも)を使った精霊馬の作り方
真菰で精霊馬を作る方法はいろいろありますが、簡単に作れる方法を紹介します。
用意するもの:足・頭用に束ねた真菰4本、胴体用の真菰2本、固定用の紐、赤や青の端切れ布
- まずは胴体用の真菰を、胴体の長さになるように折り曲げて固定。
- 足・頭用の真菰2本を、先端から4分の1くらいのところで1本に束ねる。
- 三角形になるように折って頭を作って固定。
- 胴体用と足・頭用の真菰を首もとに当たる部分から合わせて固定。
- お尻になる部分で足・頭用の真菰を折り曲げて固定。
- 足を適切な長さにカット。
- 端切れ布を胴体に巻いて固定し、必要な部分を補強したら完成。
角や鬣を生やすと、より精霊馬らしくなるのでお好みでアレンジしても良いです。
精霊馬の置き方は飾る場所によって違う
精霊馬の置き方は、飾る場所によって違います。
ご先祖様をお迎えするための精霊棚や盆棚、机などに置く場合はお迎えの日とお送りの日で違う向きに変えて飾ります。
お迎えの日は頭を自宅の方に向け、お送りの日は頭を外側に向けて置きましょう。
向きを変えない場合は、馬は自宅の内側に向け、牛は外側に向くように置きます。
なお、精霊馬を置く位置は両端や右端の奥、手前など地域や家の習慣によって異なるので、事前に確認をしましょう。
また、門先や玄関に精霊馬を置く場合は、外側に向けます。
精霊馬の地域と宗派の差異を解説
精霊馬はお盆の飾りの定番ではあるものの、地域によってはあまり馴染みのないものでもあります。また、精霊馬を飾る地域であっても、宗派によっては飾らないケースもあります。
では、精霊馬について地域と宗派でどのような差異があるのか解説します。
精霊馬は飾る地域と飾らない地域がある
そもそも精霊馬は飾る地域と飾らない地域があります。基本的に精霊馬を飾るのは東日本のみで、西日本の地域では飾らない地域が多いです。
飾る地域の場合は、お迎えの日(迎え盆)の朝に精霊棚を用意し、お供え物とともに精霊馬を飾ります。
北海道から中部地方までは送り盆にしか精霊馬を飾らない
精霊馬を飾る地域であっても、北海道から東北、中部地方まではお送りの日(送り盆)にしか精霊馬を飾らない地域が多いです。
お土産を持ってあの世に帰ってもらうように、送り盆にしか置きません。
なお、送り盆にしか置かない地域の場合は、お供え物とともにその日のうちに精霊馬を処分します。
西日本は精霊馬ではなく精霊舟を作る
精霊馬を飾らない西日本では、精霊馬ではなく精霊舟(精霊船)を作ります。
精霊舟は麦わらや木で作られた舟のことで、シンプルなものから提灯を模した飾りや花を飾ったものなどがあります。
明かりが灯るように作られている舟が多く、長崎市などの一部の地域では、送り盆の夕刻から精霊舟を川に流す「精霊流し」と呼ばれる行事を行うことも。
浄土真宗では精霊馬を用意しない
仏教の宗派のひとつである浄土真宗では、地域に関係なく精霊馬を用意しません。
そもそも浄土真宗では、故人は亡くなった瞬間から成仏して極楽浄土へ導かれ、仏様になると考えられています。そのため十王による行き先を決める審判もなく、故人を極楽浄土へ導くために冥福を祈ったり供養をしたりする風習はありません。
また、お盆にご先祖様をお迎えする風習自体がないので、精霊馬だけでなくお盆に特別な飾りやお供え物を用意することはありません。
精霊馬は地域や宗派の差異に合わせて飾ること
精霊馬はナスやきゅうりを使えば簡単に作れますが、地域や宗派によっては飾らないケースもあります。
お盆の過ごし方や、葬儀の内容、弔いの儀式のやり方なども地域差はありますが、特に精霊馬の扱いについては地域や宗派の差異が大きいと言えるでしょう
あまり馴染みのない地域や、そもそもお盆に特別な儀式や行事を行わない宗派の場合は、それぞれの風習に合わせて精霊馬を飾ることをおすすめします。