香典に包むお札は、香典袋の表側にお札の裏側がくるようにするのが一般的なマナーです。
故人のご不幸に対して、お悔やみの意味で顔を伏せるということを表しています。
また、香典を包む際は新札を避け、きれいな旧札を使うようにすることも香典のマナーのひとつ。いざというときの為に役立つ香典袋の包み方や書き方について、わかりやすく解説します。
もくじ
香典に入れるお札の向きは重要
お札には表と裏、そして上と下といった向きがあることをご存じでしょうか?
表は人物が描かれている面で、お札の上下に関してはお札を縦向きにした時に金額が書かれている左側が上、人物が描かれている右側が下になります。
近年では、香典のお札の向きを気にしない方も増えていますが、お札を正しく入れていないことに対し不快な思いをする方が一定数いるのは事実です。
まずは、香典を包む際のお札の正しい入れ方について解説します。
香典袋には基本お札が裏側になるように入れる
香典袋には、お札が裏側になるように入れましょう。なぜ裏側なのかというと、故人が亡くなった悲しみにより、顔を伏せていることを表現するためです。
先述した通り、お札の表側は人物が描かれた面になります。中袋の有無に関わらず、表書きを書いた香典袋を裏返してお札を取り出した時に、人物が見える面が天を向いている状態が正しい入れ方です。複数枚入れる場合は、すべての向きを揃えましょう。
香典袋の表面から見てお札が裏側になる、すなわち人物が顔を伏せている状態になるように入れるのが一般的なマナーです。
お札の上下に関しては、人物像が下にくるようにすると良いでしょう。地域によって考え方は異なるので、周囲の人に確認しておくと安心です。
香典には新札ではなく旧札を使うのがマナー
お通夜や葬儀・告別式で使う「香典袋」、いわゆる「不祝儀袋」には「旧札」を入れます。新札を使ってしまうと、不幸を待ちわびていた、不幸に備えていた等を連想させてしまうからです。
ご不幸は突然やってくるものです。新札を使うと不快な思いをさせてしまうので、手元に新札しかない場合は折り目をつけてから渡すと良いでしょう。旧札を入れる際は、破れや汚れ等、傷みが激しいものは失礼にあたるので注意します。
ちなみに葬儀の後に行われる四十九日法要の香典には、新札を使用しても問題ありません。四十九日は命日から49日目に行われるものなので、あらかじめ日程が予測できる上、案内状を受け取って参列するものだからです。
ただしそれでも不祝儀袋には旧札を使うべきだと考える方はいるので、香典に入れるお札は新札ではなく旧札が無難でしょう。
香典袋の表書きは宗派や時期によって異なる
香典袋の表書きは、宗派によって異なります。仏教では、お通夜や葬儀・告別式は「御霊前」、四十九日法要以降は故人が仏になると考えるので「御仏前」です。三十五日法要も四十九日法要と同じく「御仏前」とします。
浄土真宗は即日成仏するという考えなので、全て「御仏前」です。神式は「御玉串料」や「御榊料」、キリスト教は「御花料」となります。
このように宗派によって死生観が異なるので、表書きも変わってくるのです。
香典袋の選び方〜黒白・双銀で結び切りの水引き
香典袋にはいくつかの種類がありますが、黒白もしくは双銀の水引を選ぶといいでしょう。また、不幸を繰り返さないよう結びきりを使用します。
金額によっても香典袋の選び方は異なります。
お渡しする金額が10,000円未満なら水引が印刷されたもの、10,000円~30,000円は印刷ではなく黒白で結ばれているものを選びます。それ以上の金額であれば、双銀を使用すると良いでしょう。
金額に合う香典袋を選ばなければ失礼にあたるので、注意が必要です。
香典の包み方
香典袋に包み方について解説します。
折り込むタイプの香典袋は、下側を折り込んでから上側を被せるようにします。所説ありますが、悲しみで俯くことを表現するためだと言われています。慶事の場合は、最後に下側で被せるように折るので弔事とは逆です。
場合によっては、奉書紙を用いることもあるでしょう。奉書紙は和紙の一種で、主に香典を包むために使われます。奉書紙の表はつるつるとしている面となり、こちらに文字を書き込みます。
お札は描かれている人物が裏側にくるように入れ、不祝儀袋のように上側を被せるように包みましょう。
袱紗(ふくさ)を用いた香典袋の包み方
袱紗(ふくさ)で香典を包むこともあるはずです。
袱紗には使用するシーンによって正しい向きがあることをご存でしょうか?
弔事で用いる時は、左に向かって開くようにするのが正しい向きです。右側に開くように使うのは慶事の時。間違うと相手に不快感を与えてしまうので、注意しましょう。
では、実際に袱紗でどのように包むのでしょうか。
袋状になっている金封袱紗は香典の表書きが天を向くようにして右側に挟み込みます。
四角い布タイプの爪付き袱紗や台付き袱紗の包み方は同じです。ひし形に見える向きで袱紗を広げたら、その上に香典を置きます。そして右、下、上、左という順番で被せていきましょう。香典を置く時は中心から少し右側にずらした位置に香典を置くようにすると、左に向かって開くようになります。
香典は弔事だけではなく、慶事でも使用するものなので、いざという時の為に用意しておくといいかもしれません。
香典の金額相場は故人との関係性や年齢等によって異なる
お通夜や葬儀、法要・法事には、どれくらいの金額を包めば良いのか、分からないという方は多いのではないでしょうか。
香典の金額は、故人との関係性や年齢等によって変わります。どれくらい包むべきなのか分かるよう、ここからは香典の金額相場について解説していきます。
1、3、5、10がつく金額にする
香典袋にお札を入れる時は、1、3、5、10がつく金額を選びます。例えば3,000円、10,000円、15,000円です。2がつく金額も問題ありません。
4や9は「死」「苦」を連想させ、縁起が悪いといわれているので、4,000円や9,000円などの金額は避けましょう。
基本的な香典の金額相場
金額を決める時は、故人の関係性や年齢等を考慮しましょう。基本的に、故人と近い関係の方ほど金額が高くなります。
ただし近い関係とは血縁に限らず、生前故人にお世話になった方もそれなりの程度の金額をお渡しすることが多いです。親戚は10,000円が相場になります。
金額相場は下記の通りです。
- 喪主以外の故人の子どもは10,000円〜100,000円
- 故人の兄弟は10,000円〜50,000円
- 故人の孫は3,000円〜10,000円
- 故人の甥や姪は3,000円〜20,000円
香典の金額には差がありますが、年齢が高くなるほど香典の金額はあがります。40代で100,000円をお包みすることがある一方、孫や甥、姪等の若い世代は3,000円で問題ないとされています。
夫婦でお渡しする場合は、2人分の金額、仮に1人10,000円とするのであれば、夫婦で20,000円です。子どもが一緒に参列するなら、子ども1人あたり3,000円から5,000円を加えた金額にすると良いでしょう。
故人の友人知人や仕事関係の方は、1人あたり3,000円から10,000円が金額相場。こちらにも金額に差がありますが、年齢や生前の故人との関係性を考慮して決めましょう。複数名の場合は、キリの良い金額になるよう配慮します。
金額相場はあくまでも目安です。故人との関係性や年齢によって、ご自身に相応しい金額をお包みすることが大切です。
香典袋の書き方と渡し方マナー
香典袋の正しいお札の入れ方や、金額相場の解説をしました。
続いて、香典袋の書き方と渡し方について解説します。
香典袋の書き方〜氏名・住所・金額
香典袋は正しく書く必要があります。誰からいくら頂いたのか、遺族側が把握するためです。
中袋がない香典袋の場合は、外袋の裏に氏名、住所、金額を記入。 中袋がある場合は、氏名・住所・金額に分けて、それぞれ解説します。
氏名〜外袋の表面、中央下に書く
書き入れる場所は外袋の中央下と中袋の裏側。通夜や葬儀・告別式でお渡しする香典の外袋には薄墨、四十九日法要以降は濃墨を使うのがマナーです。
中袋は筆ペンやサインペン等を使い、はっきり分かりやすく書き入れるといいでしょう。
氏名はフルネームで書き、夫婦で香典をお渡しする場合は、世帯主の氏名のみを書き入れます。ただし、生前夫婦でお世話になった場合や妻側の親族にお渡しする場合は、夫の名前の横に妻の名前も書きます。夫の代理で妻が参列する場合は、夫の名前の左側に「内」と書き添えると良いでしょう。「内」は、代理で参列したという意味合いなるのです。
友人知人、仕事関係等、複数名で香典を包む場合もあるのではないでしょうか。香典袋は、外袋と中袋で記入できる人数が異なります。
外袋の表書きは、3名まで連名で書くことができます。氏名は右から順に書きますが、一番右側に役職が上の方、もしくは役職が同じなら年齢が上の方になるようにするといいでしょう。4名以上でお渡しする場合は別紙に氏名を書き、香典袋に入れます。
中袋に書ける人数は2名です。3名以上になる場合は別紙に記入します。
複数名でお渡しする場合は、「一同」と書く方法もあります。例えば「株式会社◯◯ ◯◯課一同」「友人一同」等と書き、個々の名前は別紙に記入して香典袋に入れるのです。法人名を書く際は、正式名称を書くようにしましょう。
住所〜中袋の裏側に書く
住所を書き入れる場所は中袋の裏側です。氏名の右横に、郵便番号から書きます。2名分まで記入可能です。
金額〜算用数字ではなく「旧漢字」で書く
金額は中袋の表側中央に旧漢字で書き入れます。表面に金額を書く際は、金額の前に「金」を付け、円は「圓」を使用します。
例えば5,000円を包む場合は「金五仟圓」、1万円を包む場合は「金壱萬圓」と書くのです。
ご遺族は悲しみの中にいます。礼儀に欠けないよう香典袋は正しく書くことを心掛け、失礼のないようにしましょう。
香典袋の渡し方
香典をお渡しするタイミングは、お通夜もしくは告別式です。香典は基本的に告別式でお渡ししますが、お通夜のみ参列する場合はその時にお渡しするといいでしょう。
どちらも参列する場合であっても、お渡しするのは一度だけです。これは、不幸が続くことを連想させないようにするためだと言われています。
四十九日法要では、法要の開始前に喪主に渡します。地域によっては喪主に渡すのではなく祭壇に置くこともあるので、葬儀社や周囲の方に確認すると安心です。
やむを得ず、お通夜や葬儀・告別式、四十九日法要等に参列できない場合もあるでしょう。その場合は、現金書留を使用して香典を送ります。送るタイミングは、葬儀や法要から1週間から1か月以内。香典返しの関係上、早めに郵送するのが良いです。
まとめ 香典のお札は香典袋の表側にお札の裏側が来るように
お札には表裏、上下といった向きがあります。不祝儀袋にお札を入れる際は、袋を裏側にしてお札を取り出した時に、人物が描かれている面が天を向くようにしましょう。上下に関しては、人物が袋の下側にくるようにするのが一般的なマナーです。
香典の表書きは、一般的な仏教でのお通夜や葬儀・告別式には「御霊前」、四十九日法要以降の法要は「御仏前」となります。ただし宗派によって異なり、浄土真宗では全て「御仏前」となるのです。
香典の金額相場は、故人との関係性や年齢によって変わります。故人と近い関係、もしくは年齢を重ねるほど、包む金額は高くなります。
香典は故人や遺族に弔意を表す為だけではなく、遺族に対し金銭的な援助をするという意味合いもあります。悲しみの中にいる遺族に対し、余計な心労をかけないようマナーを守ることが大切です。