熨斗(のし)は、「表書き」「熨斗」「水引」「名入れ」の4つで構成されています。それぞれ特別な意味があり、状況に応じて正しく選ぶことが大切です。
その中でも特に表書きと水引は、シーンによってさまざまな種類から使い分ける必要があります。熨斗を準備する際には注意しておかなければなりません。
熨斗の表書きや水引の種類など、シーン別に詳しく解説します。
熨斗は4つの要素から構成されている
お店で「熨斗(のし)」をつけてもらうときは、表書きと氏名を指定すればお店の方が決まり事に則って熨斗をつけてくれます。
日常生活で必要になることも多いため、基本的なことを知っておくと便利です。
熨斗を構成する4つの要素を詳しく説明します。
熨斗は一般的に「熨斗紙」のことをさす
「熨斗をつけてください」とお願いするときの「熨斗」とは、一般的には「熨斗紙」のことを指しています。
本来の「熨斗」とは、水切りの右上についている飾りのことです。金色の細長いものを紙で包んでいますが、それは「熨斗鮑(のしあわび)」といって、鮑を乾燥させた保存食を象徴としています。
栄養価が高く、貴重な食品である鮑は古くは不老長寿をもたらすと考えられ、縁起のよいものとしてお祝いごとには欠かせないものでした。神社や神棚にお供えとして、日持ちがして扱いやすい熨斗鮑(のしあわび)が選ばれるようになったのです。
熨斗鮑とは、鮑を殻からとったあと、薄く伸ばして乾燥させたもののこと。本来は鮑そのものをお供えとして捧げていました。
そうした古くからの慣習により、現代では、熨斗鮑の代わりにお祝い事の熨斗紙には熨斗が描かれるようになったのです。
しかし、仏事用の熨斗紙には熨斗はついていません。これは、仏事では肉や魚などの生ものを贈ることは禁じているためです。
熨斗がついている場合は、仏事ではない、お祝い事であるということを示す役割もあります。
中央に書く「表書き」〜「志」「粗品」「寿」など
のし紙の上段、水切りの上、中央に書くのが「表書き」です。表書きはどんな贈り物なのかを表すもので、「寿」「祝」「内祝い」「志」「粗品」など、様々な文言があります。
その時々に応じて、ふさわしいものを選ぶことが大切です。
中央の飾り「水引」〜「結び切り」「蝶結び」など
中央のリボンのような飾りが水引です。その贈答品が未開封であることを示すためであり、魔よけの役割や、人を結びつけるという願いもこめられています。
水引には紅白、黒白、双銀など色だけではなく、結びきり、蝶結び、花結びなど形状も様々です。表書き同様、どんな贈り物かによって変わります。
水引きの下に入れる「名入れ」〜送り主の名前を入れる
水引の下に送り主の名前を入れます。会社からならば会社名、団体から贈るなら「〇〇一同」と書くケースもあります。
弔事の場合の熨斗の表書きと水引の種類
熨斗の本来の意味を考えると、お祝い事で使われるものなので弔事では使用しません。
しかし現代において熨斗とは「熨斗紙」のこと。香典返しやお供えなど、弔辞の際も熨紙は必要です。
仏式、神式、キリスト教、それぞれ熨斗紙の種類や表書き、水引を解説します。
仏式の場合〜無地で水切りは黒白の結び切りを選ぶ
仏式の熨斗紙は、無地か蓮の花が描かれているものを選びます。一般的に水引は黒白の結び切りです。
しかし、西日本や北陸の一部の地域では、黄白の結び切りが使われることもあります。
表書きは、以下のように贈り物の内容によって使い分けましょう。
お供えの場合の表書きは「御供物」「供物」など
仏式のお供えでは「御供物」「御供」「御霊前」が一般的です。忌明け後は「ご霊前」は使用せず「御仏前」を使います。
宗派によっては、「御霊前」を使わないこともあるので、注意しましょう。
浄土真宗の場合は表書きに「御霊前」を使用しない
「御霊前」は4四十九日を迎える前、まだ成仏されていない場合のお供えの表書きです。仏教では死後49日間は成仏せず、7日ごとに裁きを受けます。そして49日目の裁きで行き先が決まり、成仏すると考えられています。
しかし浄土真宗では亡くなった方はすぐに成仏すると考えられているので、四十九日前でも「御霊前」は使わず「御仏前」と書くのが正しいマナーです。
香典返しの場合表書きは「志」
香典返しの表書きは「志」が一般的で、これは宗教に関係なく使えます。
一部の地域では、「満中陰志」「満中陰」と書くことがあるので、その地域の作法を確認しておくと安心です。
四十九日法要以降の場合表書きは「志」
法事の際の表書きでも「志」を使う場合が多いです。他に「忌明志」「茶の子」とする地域もあるため、その地域の慣習を調べておきましょう。
神式やキリスト教の場合表書きは「志」、水切りは結び切り
神式でも水引は仏式の弔事用と同じで、黒白か黄白の結び切りです。表書きは「志」の他に「偲草」「偲ぶ草」と書くケースもあります。
ちなみに、神式やキリスト教では香典返しをしないこともあるので、注意が必要です。
お祝い事一般の場合の熨斗と水引の種類
お祝い事での場合は、熨斗のついた熨斗紙を使います。水引の色が紅白であることは共通ですが、結び方や表書きがお祝いの種類によって異なるので注意しましょう。
お祝いの種類別に熨斗の選び方を解説します。
一般的なお祝いの場合は「蝶結び」の水引き
一般的なお祝いの場合は、何度あってもよいことなので「蝶結び」の水引を使用します。表書きは「御祝」としておくのがよいでしょう。
お世話になった方へのお礼の場合は「御礼」「謝礼」
お世話になった方へのお礼は「蝶結び」の水引で、表書きは「御礼」「謝礼」「謹謝」とします。
結婚のお祝いは「結び切り」の水引き
結婚は一度だけ祝うべきものなので、水引は何度も結び直せる「蝶結び」ではなく、「結び切り」を使います。また、結婚の場合、気をつける必要があるのは、水引の本数です。一般的には5本か、7本ですが、結婚では10本のものを選びましょう。
表書きは「御結婚御祝」「寿」「御祝」のいずれかがよいでしょう。4の数字は縁起が悪いと考える場合があるため、「祝御結婚」は避けたほうがよいです。
結婚祝いのお返しの場合は「内祝い」「寿」
水引は10本で「結び切り」、表書きは「内祝」「寿」と書きます。
出産の場合は「蝶結び」の水引き
水引は7本で「蝶結び」を選びます。表書きは「御祝」「御出産祝」です。
出産祝いのお返しの場合「内祝い」「寿」
水引は7本で「蝶結び」を選びます。表書きは一般的には「内祝」ですが、「寿」「出産内祝」でも結構です。
節句、七五三の場合は「蝶結び」の水引き
子ども関係のお祝いは、水引は7本で「蝶結び」。表書きは「御祝」ならどんな場合でも使えますが、「七五三御祝」「祝七五三」でもよいでしょう。
長寿祝いの場合は「蝶結び」の水引き
水引は7本で「蝶結び」です。表書きはどの年齢でも「御祝」なら問題ありません。年齢ごとに、還暦なら「祝還暦」、古稀なら「祝古稀」とします。
入学、卒業の場合は「蝶結び」の水引き
水引は7本で「蝶結び」です。表書きは「御祝」でもよいですし、「祝御入学」「祝御卒業」にしてもよいでしょう。
栄転の場合は「蝶結び」の水引き
水引は5本で「蝶結び」です。表書きは「御祝」の他に「御栄転御祝」があります。
お見舞いの場合は「結び切り」の水引き
水引は5本で「結び切り」です。表書きは「お慰め」「御見舞」とします。
お見舞いのお返し(快気祝い)の場合は「快気内祝」「快気祝」
水引は5本で「結び切り」。表書きは「快気内祝」「快気祝」です。
開店、新築の場合は「蝶結び」の水引き
水引は7本で「蝶結び」です。どちらの場合でも表書きは「御祝」が使えます。開店なら「御開店祝」、新築なら「御新築祝」でもよいでしょう。
年賀など時節が決まっている慶弔の場合は「蝶結び」
年賀ののしは、水引は紅白の5本か7本で「蝶結び」。表書きは「御年賀」とします。
お歳暮やお中元も水引は年賀と同じものを使いましょう。表書きはそれぞれ「御歳暮」「御中元」です。
まとめ 熨斗の種類と意味を理解してTPOに合った熨斗を使いこなそう
熨斗は大きく分けて、弔事とお祝い事があります。お見舞いなどは、お祝いとはいえませんが、亡くなった人に関わるものでなければ紅白を使うと考えてよいでしょう。
水引の結び方にもそれぞれ意図があるので間違えないように気をつけ、表書きはその都度確認しておくと安心です。