お盆の期間中、あの世から戻ってくるご先祖様や家族の霊が滞在するための専用の棚のことを「精霊棚(しょうりょうだな)」、また「盆棚」と言います。
精霊棚に飾るものは様々です。お盆飾り独特の精霊馬や水の子、閼伽水(あかみず)、他にも食べ物やお花やご先祖様が好んだもの、盆提灯などを飾ります。
全て飾るとなるとそれなりのスペースが必要ですが、現在の住宅事情も鑑みて、簡略化してお供えする家も多いです。
精霊棚は、宗派や地域や各々の家庭によって飾り方が異なる点もあるので、初めて精霊棚を用意する場合は周囲の方に飾り方を聞くと良いでしょう。
一般的にはお盆は8月13日からですが、地域によっては旧暦に基づいた7月に行う場合もあります。片付けは盆明けのその夜か、翌日以降に行うのが一般的です。
精霊棚について、基本的な知識や飾り方や片付け方、宗派ごとの違いなどを詳しく解説します。
もくじ
お盆に仏壇の前に設置する、供養のための棚が「精霊棚」
お盆にご先祖様の霊をお迎えして、供養するための祭壇を「精霊棚」もしくは「盆棚」といいます。仏壇や神棚とは別に用意するのが一般的です。
具体的にどんな役割があるものなのでしょうか。それぞれの宗派ごとに解説します。
お盆休みが一般化するほど日本に馴染んだ「お盆」
「お盆休み」という言葉が一般化するほど、お盆は生活に密着した伝統行事です。正式には「盂蘭盆会(うらぼんえ)」で、もともとは「逆さ吊り」という意味があり、お釈迦様の弟子である「目連尊者」のエピソードが由来になっています。
盂蘭盆会の由来は「目連尊者」が母親を救ったという説
目連尊者は優れた神通力の持ち主で、ある日その力で餓鬼道に堕ちて、逆さ吊りにされて飢えに苦しむ母親の姿を見ました。なんとか救おうとしましたが、その試みはかえって母親を苦しめることになってしまいます。
そのとき、「母親を救いたいなら、母親と同じように苦しんでいる人に救いの手を差し伸べるように」とお釈迦様が仰いました。
その言葉通り、目連尊者は修行僧に食べ物や飲み物や寝場所を贈り、とても喜ばれます。そしてその話が餓鬼道に伝わって母親が救われたのです。
そのときの修行僧たちが修行を終えたのが旧暦の7月15日。そのため、お盆は元々は旧暦の7月15日に行われていました。しかし、改暦後は新暦の8月13日から16日までの4日間の間に行う旧盆が主流となっています。
しかし、東京など新盆にお盆行事を地域も多いです。新盆の場合は、新暦の7月15日を中心にお盆関係の祭りを行います。
浄土真宗では精霊棚を用意しない
浄土真宗の場合はお盆を供養のための日ではなく、ご先祖様に感謝の気持ちを捧げる日と考えています。また、浄土真宗では人が亡くなると霊にならずにすぐに仏様になって浄土で暮らすとしており、他の宗派のように現世の自宅に帰ってくることはありません。
そのため、ご先祖様の霊をお迎えして、おもてなしするスペースである精霊棚は用意しないのです。
精霊棚に必要な盆棚飾りとお供えの飾り方
精霊棚には真菰(まこも)のござを敷き、その上に盆棚飾りやお供えを並べます。まこもは、お釈迦様がその上に病人を寝かせて治療したとも伝えられる、仏教と深い関りのある植物です。その場を清め、涼ませる働きもあり、ご先祖様の霊が安らげる場所にします。
盆提灯は精霊棚の左右に飾るもので、家紋や絵柄が入ったものが多いです。初盆の場合は、白提灯を吊るし、初めて自宅に帰る霊が迷わないように目印とします。
仏壇から位牌を取り出し精霊棚の中央に安置し、その前には精進料理を捧げてください。食べ物は、素麺やお菓子、果物野菜などを置くこともあります。手前には、高炉や蝋燭立てやおりんなどの仏具を配置します。
お盆ならではのお供えの1つである水の子は、仏前を供養する水で洗ったお米とナスやキュウリを刻んだものを、水を張った器に盛ったものです。ほおずき、みずはぎを添えた閼伽水(あかみず)、縄を張った笹竹を飾ることもあります。
真菰(まこも)のござや笹竹や水の子などは、地域によっても飾り方が違うので確認しておきましょう。
他にも、先祖の霊の乗り物である「精霊牛」はお盆独特のものです。精霊牛は地域に関わらず用意するもので、キュウリやナスに箸や楊枝を刺して四つ足の動物に見立てます。精霊牛は他のお供えなどを飾った後、空いている場所に飾りましょう。
花は、ハギやキキョウが基本ですが、故人が生前好んだお花を供えるとよいとされています。しかし、毒があるものや、香りが強すぎるものは避けましょう。
スペース的に精霊棚を置くことが難しい場合は、小さな机の上や仏壇に用意します。
精霊棚の片付け方
お盆の最終日にあたる8月(または7月)の16日(または15日)の夕方に、送り火を焚いて先祖の霊を見送ると、お盆は終わります。
精霊棚は最終日の夜か翌日に片付けますが、地域によってタイミングが違いますので、年配の方に聞いておくとよいでしょう。
宗派による精霊棚の飾り方の違い
精霊棚を飾る際に気をつけたいのは、宗派によって異なる飾りです。特徴的なものを紹介するので、参考にしてみてください。
浄土宗の精霊棚の飾り方
浄土宗の場合は、精霊棚の上に真菰(まこも)を敷き、棚の四隅に笹竹を置き飾り縄で囲うようにして結界を作ります。しめ縄には、ホオズキをぶら下げましょう。それから、お花や迎え火・送り火用の提灯を用意してください。
お供えに関しては、全宗派共通の精霊馬や、精進料理、水の子、閼伽水、季節の果物、素麺などを用意しますが、嗜好品はNGです。お酒やタバコは嗜好品となるのでふさわしくありません。
真言宗の精霊棚の飾り方
真言宗も浄土宗と同様で、精霊棚の上に真菰(まこも)を敷き、棚の四隅に笹竹を置き飾り縄で囲うようにして結界を作ります。その神聖な結界のなかなら、ご先祖様の霊は安らぐことができると考えられているためです。御供え物は浄土宗と内容は変わりません。
精進料理は、故人が食べられる状態で置いてあげるのが好ましいとされています。
曹洞宗の精霊棚の飾り方
浄土宗と真言宗は精霊棚には、基本的には真菰(まこも)を敷きます。(真菰(まこも)が用意できない場合は、白い布を敷く)しかし、曹洞宗では真菰(まこも)を敷かずに白い布を敷いてください。オガラで作った梯子を立てかけることもあります。
ご先祖様が好きだったものをお供えして、喜んでもらえるようにしましょう。
日蓮宗の精霊棚の飾り方
浄土宗と真言宗と大きな飾り方の違いはありません。ご先祖様だけではなく、多くの方が救われるように大きめの椀を用意して、お水をたっぷり入れてお供えするのが好ましいです。
まとめ 精霊棚はお盆の間家族やご先祖様が滞在するための棚
精霊棚は大切なご先祖様や家族が再び自宅に戻ってきて、滞在してもらうための棚です。そのため、十分に安らいでもらえるように多様なお供えが用意されます。
昔からのしきたりはありますが、スペースによってはすべてを用意するのは難しい場合もあるでしょう。
簡易なものでもお迎えしてもてなすことが大切なので、位牌を仏壇から出すだけではなく、可能な範囲でお供えするのがおすすめです。
また、宗派別のお供えについて解説しましたが、お盆についてはその地域のしきたりや、各家庭での方法があります。お寺でも、家庭ごとのお供えの仕方を尊重するとしている場合が多いです。
基本の形と異なることもあるかもしれませんが、各々の伝統を大切にしておくとよいでしょう。