葬儀では、故人の多くの関係者が参列し、お通夜から火葬までを2日間で行うことが一般的でした。しかし、近年は家族や親族など親しい人々だけで行う「家族葬」が増加しています。
家族葬は一般的な葬儀と比べて費用を抑えられることが大きな魅力ですが、実際にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。この記事では、家族葬の費用相場や内訳、費用を抑える方法などについて詳しく解説します。
家族葬とは?
家族葬は、「身内だけのお葬式」として知られる葬儀形式です。参列者を家族や親族、親しい友人などに限定して行われます。
家族葬の特徴 |
・参列者が少ない(数名から30名程度) ・費用が一般葬より比較的安く抑えられる ・儀式が簡素化されている ・故人や遺族の意向を反映しやすい ・より親密で和やかな雰囲気の中で行える ・準備や後片付けの負担が少ない |
家族葬は故人や遺族の意向をより反映しやすく、経済的な負担も軽減できる葬儀形式として、近年需要が高まっています。
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家族葬を選ぶメリット
家族葬を選ぶ主なメリットをご紹介します。
一般葬よりも葬儀費用を抑えられる
家族葬は参列者が少ないため、会場費や飲食費などを抑えることができます。そのため、全体的な費用を低く抑えることが可能です。
とくに大規模な葬儀を望まない故人や、経済的な負担を軽減したい遺族にとって、大きなメリットであると言えます。
また、一般葬ではなく家族葬を選ぶことで、具体的に以下のような費用を削減することが可能です。
具体的な費用削減例 | |
会場費 | 小規模な会場を選ぶことで10万円以上の削減が可能 |
飲食費 | 参列者が少ないため10~30万円程度の削減が可能 |
供花 | 規模を縮小することで5~10万円程度の削減が可能 |
返礼品 | 参列者が限られるため20万円程度の削減が可能 |
あくまでも一例であるため、規模や内容によって削減できる金額は変動しますが、家族葬で規模が縮小されれば、その分費用も抑えられます。
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故人や遺族の希望を取り入れやすい
参列者が少ないため、故人の意思や遺族の希望に沿った形式の葬儀を行いやすくなります。
例えば、故人の好みである音楽を流したり、思い出の品を飾るなど、より個人的な要素を取り入れられます。
そのため、故人らしさを大切にした、心のこもった葬儀を実現できるでしょう。
喪主や遺族の負担を軽減できる
一般葬と比べて規模が小さいため、喪主や遺族の精神的・肉体的な負担が軽減されます。
また、参列者への対応や式の進行などにかかる労力が少なくなるため、故人との最後の時間をゆっくりと過ごすことができます。
準備や後片付けにかかる時間も短縮されるため、遺族の負担が大幅に軽減できるでしょう。
家族葬の流れ
家族葬の一般的な流れについて、各段階での注意点とともに解説します。
逝去・ご遺体の搬送
ご逝去後は、速やかにご遺体の搬送準備を行います。
まずは、ご遺体を搬送してもらうために葬儀社を選びます。事前に複数の葬儀社の情報を集めておくと、いざという時にスムーズに対応できます。
利用者の評判や料金体系、サービス内容などを比較検討しておくとよいでしょう。緊急時に慌てることのないよう、家族で話し合って候補を絞っておくことをおすすめします。
葬儀社を選んでいる間に、医師によって死亡診断書が発行されるため、忘れずに受け取ってください。
死亡診断書を受け取ったら、記載内容に誤りがないか確認をしましょう。なお、死亡診断書の原本は1通のみ発行されます。役所等での手続きでは、提出した死亡診断書が返却されない場合もあるためコピーを複数取っておきましょう。
葬儀社の担当者が到着したら、指定した場所へご遺体を搬送します。ご遺体の搬送先は自宅もしくは葬儀社の遺体安置室になります。葬儀社以外で安置する場合は、ご遺体を安全に安置できる環境を整える必要があるため、事前によく確認しておきましょう。
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葬儀社側との打ち合わせ
ご遺体を搬送後は葬儀社側と葬儀に関する打ち合わせを開始します。
なお、家族間で葬儀の規模や形式について話し合い、ある程度の方向性を決めておくと、打ち合わせがスムーズに進みます。
事前に決めておくとよいこと |
・葬儀の規模(参列者数) ・予算の上限・葬儀の形式(宗教や儀式の有無) ・特別な要望(音楽、装飾など) |
後に失敗しないためにも、事前にしっかり整理しておくとよいでしょう。
葬儀の内容がある程度決まったら、葬儀社から見積もりと契約書が発行されます。費用の内訳や契約条件をよく確認し、不明な点があればその場で質問しましょう。
後々のトラブルを防ぐためにも細かな部分までしっかり確認しておくことをおすすめします。とくにオプションサービスや追加料金が発生する可能性がある項目については、詳細を必ず確認しましょう。
確認すべきポイント |
・基本プランに含まれるサービスの内容 ・オプションサービスの料金 ・キャンセル料の発生条件 ・支払い方法と期限 ・当日の進行スケジュール |
お通夜
家族葬でお通夜を執り行う際は、参列者を誰にするかを事前に決めておきましょう。
お通夜の参列者は故人との関係性や遺族の希望を考慮して決定します。親族や親しい友人に限定するのか、職場の同僚まで呼ぶのかなど、範囲を明確にしておくことで、準備がスムーズに進みます。
なお、家族葬の場合は親族等の身内とごく親しい友人までの範囲に限定するケースが多いです。
また、祭壇の準備など供養の準備をしておくとよりスムーズに葬儀を執り行えます。とくに故人の遺影は、喪主が写真を用意しなければならないので、事前にある程度候補を決めておくことをおすすめします。
お花などの祭壇の飾りも故人の好みや遺族の希望を反映させることができるため、故人らしさを表現する工夫をしてみるのもよいでしょう。
葬儀・告別式
葬儀・告別式を滞りなく行うためには、事前の準備をしっかり行うことが大切です。
まずは式次第を決めます。式次第とは葬儀・告別式の流れのことです。基本的には葬儀社にお任せして問題ありませんが、弔辞を読む人や献花の順番などを事前に決めておくと、当日スムーズに進行できます。
また、家族葬ではより自由な形式で葬儀を進行できるので、故人や遺族の希望に沿った独自の式次第を考えるのもよいでしょう。
もちろん、参列者へ葬儀・告別式の案内をしておくことも忘れないようにしましょう。日時や場所、服装などの情報を事前に参列者へ伝えてください。
家族葬の場合は参列者が限られているため、返信が確認できるまで連絡を取ってください。また、家族葬であることを明記し、他の人への告知を控えてもらうよう依頼することも忘れないようにしましょう。
火葬
葬儀・告別式が終わったら、火葬場へ移動して火葬式を行います。
霊柩車へは代表2名までが同乗できます。同乗できない参列者は、自家用車や公共交通機関などを利用して火葬場まで向かいましょう。
火葬には自治体が発行する火葬許可証が必要です。火葬許可証は通常、葬儀社が発行を代行することが多いですが、事前に必要書類を確認し、漏れがないようにしましょう。
収骨
火葬後は収骨(拾骨、お骨上げ)を行います。
2人1組になってひとつの遺骨を一緒に骨壺へ収めます。その場の全員がお骨上げを行ったら、喪主が残りの遺骨を骨壺へ収めて終了です。
骨壺を納める木箱に埋葬許可証が同梱されるため、納骨の日まで触らずに安置しておくことをおすすめします。
精進落とし
精進落としとは、葬儀や法要が終わった後に行われる会食のことです。
もともとは四十九日の忌明けに、それまでの精進料理から通常の食事に戻すための儀式でした。現代では、葬儀や法要が無事に終わったことを報告し、参列者への感謝を示す場となっています。
精進落としを行う場合は、参列者の人数や好みを考慮して、適切な量と内容の食事を手配しましょう。家族葬の場合、外食や仕出しを利用するなど、より簡素化した形で行うこともできます。
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人数別に見る家族葬の費用相場
家族葬の費用は参列人数によって変わってきます。人数別の費用相場についてご紹介します。
5人で行う家族葬の費用相場
5人程度の家族葬は、最も小規模な形式となります。5人程度で家族葬を行う場合の費用相場は、およそ30〜60万円程度です。
5人程度の家族葬の特徴は、最も親しい家族のみで行うため、費用を最小限に抑えられるところです。プライベートで親密な雰囲気の中で葬儀を行えるのも、大きな特徴と言えるでしょう。
10人で行う家族葬の費用相場
10人程度の家族葬は、最も一般的な家族葬の規模です。費用相場はおよそ50〜100万円程度です。
近親者や親しい友人まで参列するため、必要最低限の儀式や設備が整えられます。規模は大きすぎないため、親密な雰囲気を保ちつつ、一定の形式を整えた葬儀を行えるのが特徴です。
20人で行う家族葬の費用相場
20人程度の家族葬は、やや大きめの家族葬と言えるでしょう。費用相場はおよそ100万円前後です。
親戚や友人なども含めて参列するため、一般的な葬儀に近い設備や儀式が必要になります。費用は一般葬よりは抑えられますが、小規模な家族葬よりも高くなる傾向があります。
30人で行う家族葬の費用相場
30人程度の家族葬は、家族葬としては大規模な葬儀になります。費用相場はおよそ90〜205万円程度です。
人数が多いため、一般葬とほぼ同等の設備や儀式が必要になります。費用面でも一般葬に近くなるため、費用を抑えたい場合には向いていません。
家族葬の良さを保ちながら、社会的な体裁も整えたいケースにおすすめです。
家族葬にかかる費用の内訳
家族葬の費用は大きく分けて3つに分類されます。それぞれの内訳についてご紹介します。
葬儀一式費用
葬儀一式費用は、葬儀を行うために必要な基本的な費用です。主な内訳をご紹介します。
葬儀斎場の使用料
葬儀を行う会場の使用料で、相場はおよそ10〜30万円程度です。家族葬の場合は小規模な会場を選ぶことができるため、一般葬と比べて費用を抑えられる可能性があります。
葬儀斎場使用料に含まれるもの |
・式場の使用料 ・控室の使用料 ・基本的な設備(椅子、テーブルなど)の使用料 |
祭壇、棺代
祭壇や棺の費用相場はおよそ20〜50万円程度です。家族葬では簡素な祭壇を選ぶことで、費用を抑えることができます。棺も同様に、シンプルなものを選ぶことで費用を抑えられます。
祭壇、棺代に含まれるもの |
・祭壇の設営費 ・祭壇の装飾品(花、ろうそくなど) ・棺の材料費と加工費 |
ご遺体の運搬料
自宅や病院から葬儀会場、火葬場への運搬費用で、相場はおよそ5〜10万円程度です。距離や時間帯によって料金が変動する場合があります。
運搬料に含まれるもの |
・霊柩車の使用料 ・運転手の人件費 ・遺体の搬送作業費 |
火葬場使用料
火葬場の使用料は地域によって異なりますが、相場はおよそ5〜15万円程度です。公営の火葬場を利用する場合は比較的安価ですが、民営の場合はやや高めになる傾向があります。
火葬場使用料に含まれるもの |
・火葬炉の使用料 ・待合室の使用料 ・収骨室の使用料 |
葬儀スタッフの人件費
葬儀の進行を補助するスタッフの人件費相場はおよそ5〜20万円程度です。家族葬の場合、必要最小限のスタッフで対応するため、費用を抑えられます。
人件費に含まれるもの |
・司会者の人件費 ・受付スタッフの人件費 ・案内スタッフの人件費 |
飲食接待費用
飲食接待費用は、参列者へのおもてなしに関する費用です。主な内訳をご紹介します。
項目 | 費用相場 | 特徴 |
通夜ぶるまい | 1人あたり3,000〜5,000円程度 | 通夜の際の食事代 |
精進落とし | 1人あたり3,000〜10,000円程度 | 葬儀後の会食代 |
香典返し | 1人あたり1,000〜3,000円程度 | 参列者へのお返しの品 |
10人程度の家族葬の場合、飲食接待費用の合計は10〜20万円程度になります。
お布施
お布施は、葬儀を執り行う導師や、副導師と呼ばれる僧侶への謝礼です。お坊さんを呼ぶといくらかかるかは、宗派や地域、葬儀の規模によって異なりますが、一般的に家族葬の場合は10〜20万円程度が相場となっています。
お布施の内訳 | |
導師へのお布施 | 50,000〜100,000円 |
副導師へのお布施 | 1人あたり30,000〜50,000円 |
塔婆料 | 5,000〜10,000円 |
経本代 | 3,000〜5,000円 |
家族葬の場合、導師1人のみで執り行うことも可能です。僧侶の人数が少なくなるほど、お布施の総額を抑えることができます。
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家族葬にかかる費用を安く抑える方法
家族葬の費用は工夫次第で相場よりも安く抑えられます。家族葬にかかる費用を安く抑える方法について解説します。
複数の葬儀社から見積もりを取る
葬儀社によって料金体系や提供するサービスが異なるため、複数の葬儀社から見積もりを取ることで、より適切な価格で必要なサービスを受けられる可能性があります。
見積もりを比較する際は、単に価格だけでなく、サービスの内容や質も考慮しましょう。
見積もり比較のポイント |
・基本プランの内容と価格 ・オプションサービスの種類と価格 ・追加料金の有無 ・キャンセル料の条件 ・支払い方法の柔軟性 |
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飲食接待を行わない
通夜ぶるまいや精進落としなどの飲食接待を省略することで、大幅に費用を抑えることができます。
たとえば、参列者の理解を得たうえで、お茶やお菓子程度の簡単な接待にとどめるという選択肢もあります。
飲食接待を省略する際の代替案 |
・軽食(おにぎり、サンドイッチなど)を提供 ・お茶とお菓子のみでの接待 ・会食を別日程で小規模に行う ・参列者各自で食事を摂ってもらう |
補助金や扶助制度を使う
自治体によっては、葬儀費用の補助金や扶助制度を設けている場合があります。例えば、生活保護受給者や低所得者向けの葬祭扶助制度などがあります。
補助金や制度の利用を考えている場合は、事前に自治体に問い合わせて、利用可能なものがないか確認しておくとよいでしょう。
主な補助金・扶助制度の一例 |
・生活保護受給者向けの葬祭扶助 ・市区町村独自の葬儀費用補助制度 ・国民健康保険や後期高齢者医療制度の葬祭費支給など |
葬儀の生前予約をする
葬儀の生前予約をすることで、費用を抑えられる場合があります。事前に支払いを済ませておくことで、将来の値上がりを回避できます。
また、分割払いを利用できるケースもあるため、葬儀費用の負担を軽減できるでしょう。
家族葬の費用面に関する注意点
家族葬を行う際の、費用面に関する注意点をいくつかご紹介します。
葬儀費用を香典で賄うのは避ける
家族葬は参列者が少ないため、香典の総額も少なくなります。そのため、葬儀費用を香典で賄おうとすると、不足が生じる可能性が高くなるでしょう。
そもそも、香典は故人への弔意を表すものであり、葬儀費用の補填を目的としたものではないため、香典には頼らずに費用を準備しておくことが望ましいです。
葬儀社のプラン内容をしっかり確認する
葬儀社から提示されたプラン内容は、細かく確認してください。
不明な点があれば、必ず葬儀社に質問し、納得した上で契約を交わすようにしましょう。後々のトラブルを避けるためにも、契約内容を書面で残しておくことが大切です。
確認すべきポイント |
・基本料金に含まれるサービスの範囲 ・オプションサービスの内容と料金(追加料金が発生する可能性のある項目など) ・キャンセル料や変更手数料の有無 ・支払い方法や期限 ・祭壇や棺の仕様と価格 ・式場使用料の詳細(時間制限や延長料金など) ・人件費の内訳(スタッフの人数や役割) ・飲食費の詳細(メニューや単価) ・返礼品の種類と単価 |
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葬儀費用を誰が払うのかを把握しておく
誰が葬儀費用を支払うのか、予め把握しておくことは重要です。
喪主が支払うイメージを持ちやすいですが、実際にはさまざまなパターンで支払われています。
誰が支払うか | メリット | デメリット |
故人の預金や保険金から | 遺族の経済的負担が少ない | 相続財産が減少する |
相続人が均等に負担 | 公平性が保たれる | 相続人の経済状況によっては負担が大きい場合がある |
主たる相続人が負担(喪主など) | 決定や支払いが迅速に行える | 特定の相続人に負担が集中する |
生前に故人が準備していた資金から | 遺族の負担が最小限に抑えられる | 故人が準備していない場合は適用できない |
事前に葬儀費用の支払い者を決めておくことで、葬儀後のトラブルを防ぐことができます。
なお、葬儀費用の支払いが困難な場合は、葬儀社と相談して分割払いなどの対応を検討することもおすすめです。
まとめ
家族葬は、一般的な葬儀と比べて費用を抑えられる点が大きな特徴です。しかし、参列人数や希望する内容によって費用は大きく変動します。
数十万円程度で収まる場合もありますが、一般葬と変わらないくらい葬儀費用がかかる場合もあるため、予算に合った内容と規模を選択しましょう。