冥銭(めいせん)とは、お棺に入れる副葬品のひとつです。
故人が無事あの世へ旅立てるようにと、三途の川の渡し賃として納められます。かつて日本では実際の貨幣、六文銭を入れるのが一般的でした。現代は、貨幣の代わりに紙の冥銭が使用しますが、今なお残っている葬儀の風習です。
冥銭が納められるようになった由来や実際に納められていた金額など詳しく解説します。
もくじ
副葬品として冥銭を納めるようになった理由や実際の金額を解説
お葬式で、故人が眠っているお棺にお金を模したものが入れられることがあります。このお金は冥銭と呼ばれていまが、なぜお棺にお金が入れられるようになったのでしょうか?
冥銭を納めるようになった理由や金額を解説します。
冥銭とは棺に納める副葬品のひとつ
冥銭とは、お棺に入れられる副葬品のひとつです。一般的に、副葬品は出棺前、故人が眠っている周りに入れられます。現代のお葬式では、お花や手紙、また故人の好きなものや愛用品などが納められることが多いです。
冥銭はお花などとは違い、故人に持たせる「頭陀袋(ずだぶくろ)」という簡素な布製のカバンに入れられます。頭陀袋とは僧侶が修行の際に仏具などを入れるカバンのことです。お葬式では、冥銭を入れた頭陀袋は故人の首に下げられます。
冥銭を納めるようになった理由は三途の川の渡し賃
仏教の考え方では、故人は亡くなったあと49日かけてあの世を目指すと言われています。あの世に到達する前には、現世との間にある三途の川を渡らなければなりません。
貨幣経済が発達すると、あの世に行くためには三途の川の渡し賃が必要だと考えられるようになりました。
もし、無賃で三途の川を渡ろうとしたらどうなるのでしょうか?冥銭を持たない故人は、衣類を剥ぎ取られてしまうと言われています。
あの世は欲も煩悩もない、お金の必要のない世界です。けれども、そこへ到達するための最後の交通費として、冥銭が必要だと考えられています。この考えから、冥銭を副葬品として棺に納めるようになりました。
海外ではあの世でもお金が必要だと考えられている
実は、海外でも日本と同じように冥銭を使う文化があります。日本と同じ仏教を信仰する中国や台湾、ベトナム、韓国などでは、紙幣を模した紙製の冥銭を法事のときに燃やすことで、あの世にいるご先祖様に冥銭を届けます。
これらの国で使用される冥銭は、大袈裟な金額が印字してあったり、大量の札束を燃やしたりすることが一般的です。日本とは異なり、あの世もお金が必要な世界が続いていると考えられている証拠と言えるでしょう。「ご先祖様がお金に困らないように」という願いから、なるべく大きな金額の冥銭を届けようとしているのです。
冥銭の金額(六文銭)は現在の通貨で約200円
三途の川を渡るのに必要なお金のことを「六文銭(ろくもんせん)」といいます。実際かつての日本では、一文銭6枚を冥銭として頭陀袋に入れ故人に持たせていました。
六文銭は「六道銭(ろくどうせん)」という仏教の言葉が由来です。仏教では、人が亡くなると、6つの世界のいずれかに生まれ変わると言われています。「天道(てんどう)」「人間道(にんげんどう)」「修羅道(しゅらどう)」「畜生道(ちくしょうどう)」「餓鬼道(がきどう)」「地獄道(じごくどう)」の6つの世界です。この世界にちなんで、一文銭を6枚入れるようになりました。
実際に六文銭とは、現在の通貨価値ではいくらに換算されるのでしょうか?
江戸時代における一文は、現在の通貨に換算すると約33円。六文銭は約200円の価値です。
現代は紙製の冥銭を納めている
かつては実際に現世で使われている一文銭を6枚を一入れて、故人を送り出していました。現代は、実際の貨幣ではなく。六文銭を印刷した紙製の冥銭を納めます。これには、下記3の理由があります。
- 「文」という貨幣単位がなくなったこと
- 貨幣を故意に破壊することは違法行為になったこと
- 火葬する際、金属を入れることが禁じられていること
冥銭の形は変わりましたが、故人が無事あの世へといけるよう気持ちを込め、冥銭を頭陀袋に入れて故人に持たせる風習が残りました。
まとめ|副葬品の冥銭は三途の川を渡るための渡し賃
冥銭は副葬品のひとつとして頭陀袋に入れられ、故人の棺に納められます。冥銭は三途の川の渡し賃として、故人が最後に使用するお金です。故人が無事あの世へ行けるようにという願いが込められています。
かつては、本物の一文銭を6枚入れていましたが、現代では六文銭を印刷した紙製の冥銭を納めるようになりました。
海外でも冥銭を入れる風習がありますが、日本とは違いご先祖様があの世で使うお金を届けるためのものです。
冥銭は故人が困らずにあの世へ旅立てるようにという、ご遺族の思いやりの気持ちから生まれました。現代でも形を変えて、受け継がれている習慣なのです。