逆さごとは縁起が悪い?逆さごとの意味や儀式を詳しく解説

投稿:2021-12-13
逆さごとは縁起が悪い?逆さごとの意味や儀式を詳しく解説

逆さごととは、「あの世とこの世」、死者の世界と私たちが生きている現世を区別するために行う儀式です。

「着物を左右逆に着る」
「北に頭を向けて寝る」

これらは縁起が悪いと言われ、日常生活では避けられています。この考えも逆さごとからきているものです。

そのほかにも、あの世はこの世と逆の理で動いているとされているため、逆さごとを行うという考えもあります。故人があの世で迷わずに過ごせるようにという、心遣いでもあるのです。

逆さごとの由来や実際の儀式などを詳しく解説します。

逆さごとの意味と実際の儀式を解説

日本の葬儀文化で今も守られている「逆さごと」。亡くなった方に着せる死装束や、寝かせる布団や枕の位置など様々なことを、通常とは真逆にすることを指します。仏教だけではなく、神道の葬儀でもみられる風習です。

逆さごとが意味することは、どのようなことなのか。由来や意味を解説します。

仏教だけでなく神道にも逆さごとがある

「逆さごと」はいつ、どのようにできた風習なのでしょうか。実は、はっきりとしたものはありません。

北枕に関しては、お釈迦様の亡くなった際の「涅槃(ねはん)」が由来になったともいわれています。お釈迦様は入滅される際、頭を北に向けて横たわりました。お釈迦様の入滅とは悟りを開いたということなので、仏教的には北枕は不吉といえません。

また神道でも北枕にするため、仏教伝来以前にもそうした風習があった可能性もがあるでしょう。その他神道にも、逆さ屏風、逆さ水の風習があります。

逆さごとはあの世とこの世を区別するためのもの

何故わざわざ「逆さ」にするのでしょうか。様々な理由が挙げられていますが、ひとつは日常と非日常、あの世とこの世を区別するためといわれています。

区別をする理由としては、死の穢れから生きている人が逃れるためという魔除け的な意味と、同じような不幸を繰り返さないためという説です。

あの世の理に合わせたという考えもある

逆さごとは生きている人のためではなく、亡くなった方のために行うものという説もあります。

死後の世界、あの世ではこの世と全てが逆のため、亡くなったばかりの方は慣れるのに苦労します。そのため、故人が困らないように全てを逆にしておくという説です。

浄土真宗では逆さごとはしない

亡くなった方は全てがすぐに成仏すると考えられている浄土真宗では、逆さごとは行いません。あの世に旅立って裁きを受けるという概念がないからです。そのため、枕元に置く守り刀も浄土真宗の場合は用意をしません。

逆さごととして実際に行う儀式

実際に行う儀式

葬儀の風習全般に逆さごとに基づいた風習があります。以下の10つの逆さごとを解説しますので、参考にしてください。

1. 死装束(経帷子)を左右逆に着せる〜着物の場合襟は左前

仏教での一般的な死装束は経帷子(きょうたびら)で、巡礼者や修行僧の着物です。亡くなった方は成仏するために、浄土へ旅立つと考えられているからといわれています。

最近では経帷子にこだわらず、故人が生前愛用した洋服を着せることもありますが、着物の場合は衿の合わせを左前にするのが一般的です。

実は昔は身分の高い方の着方は、左前でした。そのため、神仏に近い存在となった亡くなった方に敬意を表して左前にするのが始まりとも言われています。

2. 物を逆にかぶせる「逆さ着物」

死装束を故人に着せた後で、故人が気に入っていた着物を上からかけるという風習があります。そのとき、着物の衿を足もとに、裾を首元にかけるのが逆さ着物です。

その他にも、足袋を左右逆に履かせることもあります。

3. 湯灌の際の「逆さ水」〜水にお湯を注いでぬるま湯にする

湯灌の際に故人の身体をぬるま湯でぬぐいます。その際、お湯に水を注ぐのではなく、水にお湯を注いで温度調整をすることが逆さ水です。

4. 川下に向かって水をすくう「逆さ柄」

昔は湯灌で使用する水をすくう際にも逆さごとがありました。川上ではなく、川下に向かって水をすくうのですが、それは逆さ柄と呼ばれています。

5. 屏風を逆さに立てる「逆さ屏風」

亡くなった方の枕元に逆さにした屏風を立てます。これは逆さ屏風と呼ばれるものです。

6. 頭を北側にする「北枕」

北枕は北が頭になるように寝かせることですが、これはお釈迦様が入滅されたとき、その方向で寝ていたのが元になっているともいわれています。北枕が難しい場合は、西方向に頭をむけてもかまいません。

7. 死装束の紐を縦に結ぶ「縦結び」

死装束の紐を結ぶ際、本来の蝶結びではなく、縦結びにします。

8. 布団を上下逆さまにかける「逆さ布団」

逆さ着物と似ていますが、布団の上下を逆にかけることを逆さ布団といいます。

9. 夜間の葬儀〜昔は夜にお葬式を執り行っていた

現代では一般的には日本ではお葬式は昼間に行われますが、昔はみんな仕事をすませてから夜に行われていました。

仕事の都合もあるでしょうが、あの世とこの世は昼夜も逆転しているから、故人が昼にあの世に逝けるようにあえて夜に行ったという説もあるようです。

10. 洗濯物を北向きに干す

洗濯物についても、わざと北向きに干すという風習もあります。

まとめ|逆さごとは非日常(葬儀)を区別する日本独自の考え方

逆さごとは縁起が悪い、不吉というイメージもあります。例えば、うっかり左前で着物を着てしまった場合、「それは死人と同じだよ」と言われてしまうこともありますよね。

しかし、左前は貴人を真似た風習であるともいわれており、不吉という間違ったイメージが強くなりすぎてしまっている面もあります。

逆さことは禍を避けるためだけではなく、亡くなった方の成仏を手助けするための風習であり、そうした思いやりの心を葬儀では大切にしたいものです。

死装束自体が必ずしも古来の習わしに基づいたものを使わなくなってきたこともあり、少しずつ変わっていくかもしれません。

しかし、日本土着の概念のため、それを気にされる方は今もとても多いです。故人の供養に関することなので、家族や親族など、身近な方たちと相談しながら決めていくことをおすすめします。

著者:葬儀のデスク編集部
葬儀のデスク編集部
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