血縁関係はないが、一緒にお墓に入る友人のことを「墓友」といいます。新しい終活の形のひとつです。
少子高齢化社会が加速したことによって生まれた墓の承継者不足や、未婚率の上昇により一人で終活しなければいけない人が増加したなどの背景から墓友は非常に注目されています。しかし、家族や友人に墓友に対して理解をしっかりと得ておく必要があるなどトラブルになりやすいポイントもあるため注意しておかなければなりません。
墓友について、注目されている理由や背景、注意しておかなければならない点などを詳しく解説します。
もくじ
終活で注目されている「墓友」とは
家族のあり方の変化と未婚率の上昇で、これまでの先祖崇拝型のお墓とは別に、樹木葬などと組み合わせたコンパニオン(仲間)型の新しい形態のお墓が注目を集め、お墓に一緒に入る赤の他人「墓友」の言葉も定着しつつあります。
墓友とは血縁関係はないが一緒にお墓に入る人の事
墓友は血縁関係のない者同士が同じお墓に入りますが、従来の合葬・合祀墓との違いは、何の縁もゆかりもない人ではないという事です。
友人知人だったり、ネットや地域のサークルで知り合った仲間、終活で知り合った人など、生前に交流を持っている間柄の人と一緒のお墓に入ります。
墓友が終活で注目されている背景とその理由
墓友が注目され始めた背景としては、大きく下記2つの要因があげられます。
- 少子高齢化と女性の生涯出産率の低下
- 結婚適齢期年齢層および50歳時の未婚率の上昇
少子高齢化社会が加速したことによって生まれたお墓の承継者不足
1990年以降から、少子高齢化と核家族化が止まりません。合計特殊出生率を見ると、第一次ベビーブーム(1949年)では4.1、第二次ベビーブーム(1973年)以降2.1をキープ、そして1975年に2.0を初めて下回りました。
令和元年での35~39 歳の世代の場合は 1.43で前年の1.36より増えてはいるものの、女性が生涯に出産する子供の数は1人です。お墓の承継者以前に「家を継ぐ」との概念自体を存続させることすら難しい状況だと言えます。
未婚率の上昇により一人で終活をしなければいけなくなった
昔と比較すると、未婚率がかなり上昇しました。
<30歳~34歳の未婚率>
1985年:男性が四人に一人、女性は十人に一人
2015年:男性は二人に一人、女性は三人に一人
その後、女性も未婚率は少なからず上がってはいるものの、男性の上昇率とくらべれば2005年以降全年代においてほぼ横ばいです。
また、婚姻件数は1972年に最高ピークを迎え、2018年には1972年時の半分まで減っており、逆に50歳時未婚率が右肩上がりで、特に男性の未婚率が年々高まっています。
その結果、必然的におひとりさまの終活が増えることになりました。
「墓友」の原点は女性の立場向上の動きから
「終活」の言葉が生まれる遥か以前、「女の碑」と呼ばれる合祀墓が1979年に京都の常寂光寺に建てられました。
女性一人では生き辛かった時代・第二次世界大戦で婚約者や恋人を失い、戦後独り身の人生を送った多くの女性たちの共同墓として市川房枝女史の揮毫が刻まれた石碑の下に多くの女性が眠っています。
同じ境遇という共通点で結ばれた見知らぬ者同士が支え合って管理維持する合祀墓であり、「墓友」の原型ともいえるでしょう。
そして檀家でなくても誰もが入れる永代供養つきの個人墓が1985年に比叡山延暦寺の霊園に設けられると、女性でも単身でお墓が持てるという風潮へと変わっていきました。
それまでは女性が個人でお墓を持つ概念はなく、お墓は長男が承継するのが当然であり、単身女性は承継者の許可を得てお墓に入るか、寺院の合葬墓に入れてもらうしかなかったのです。
その後独身女性にとって、家族代わりとなるコミュニティであるNPO団体SSS(スリーエス)ネットワークが設立され、2000年には「女性のための共同墓」が建立されました。
公式サイトやSNS、メールなどで情報交換を行い、会員が集まって行われる合同供養祭などの直接交流の場で、墓友づくりができるようになっています。
「墓友」は社会の中における女性の立場の向上とともに生まれた葬送方法だと言えるでしょう。
墓友と一緒にお墓に入ることによって得られるメリット
墓友と一緒にお墓に入ることは、生前も死後も孤独ではなく、知っている人と一緒であるという安心感が最大のメリットです。
個人では判断しにくいお墓の問題でも、一緒に考える墓友がいれば解決できます。費用面もシェアしあう事で負担が軽減されるでしょう。
夫婦間でさえ同じ墓に入りたくないと考える人が多い中、お墓をシェアしあえる友ができる事は何よりのメリットかもしれません。
自分の死後もお参りしてくれる人ができる
墓友は一種の相互扶助だと言えます。
もしも天涯孤独で旅立ったとしても残された墓友や友人たち、また、同じく鬼籍に入った墓友の家族などがお花や線香を手向けに訪れてくれることでしょう。
交友関係が広がることで孤独を避けることができる
墓友を持つためには、最終的には外に出て人とコミュニケーションを取らなければなりません。人は年齢が上がるにつれて、新たに友人を得られる機会が減っていきます。
墓友を探す活動は、同時に新たな友人をつくるということでもあり、特に高齢者の社会での孤立を防ぐ事にも繋がるのです。
終活について客観的にも向かい合うことができる
墓友と共同とは言え、お墓を持つことに違いはありません。お墓=自分の死であります。
お墓を持つということは、葬儀など具体的に自身の最期を見据えるという事です。
終活という人生整理に、自ずと客観的に向き合っているとも言えるでしょう。
墓友を作るときに注意するべきポイント
あらかじめ霊園が決められている終活サービスならともかく、そうでない場合はまずは霊園選びが重要です。
どれだけ気が合っても、選ぶ先が一致しなければお墓の持ちようがありません。中でも次の3つはしっかりクリアする必要があります。
- お墓のタイプ
- お墓の場所
- 家族・親戚の理解を得る
墓友と入るお墓は承継不要の永代供養が一般的
血縁関係の無い者同士が同じお墓に入るので、一般的な永代供養付きの合葬墓と変わりはありません。合葬墓の形は大きく2つにわかれます。
- 樹木葬などの自然葬
- 墓石もしくは石碑を永久に残す(永久供養墓)
双方とも最終的には遺骨は合祀されますが、墓標をどうするのか決める必要があります。同時に、納骨は個別か初めから合祀にするのかも意見を一致させなければなりません。
そして永代供養の多くは三十三回忌の弔い上げまでと設定されていますが、最近では十七回忌で弔い上げとするところもあります。もちろん期限の延長は可能で、5年もしくは10年刻みなどがありますので、あらかじめ墓友たちと供養の形も決めておきましょう。
お墓参りがしやすい地域にお墓を立てる
どの人にも共通して言えるのが、「お墓は近場にあるに越したことはない」ということ。老若男女、一人でも多くの人が訪れることができる立地が望まいです。
家族など、近しい人に墓友について理解を得ておく
「墓友」といえども合葬墓に他なりません。たとえ遺骨を合祀されなくとも、一旦納骨されれば取り出して改葬することすらできないからです。
一般的な合祀墓でさえ受け入れがたいのに、血縁関係のない赤の他人と入るためのお墓を「新たに建立」することに不快感を覚える家族・親戚もいます。
自分の死後も家族が気持ちよくお参りできるように、家族の本音を受けとめつつ、理解が得られるようにしっかりと話し合っておくことは大切です。そして安心させるためにも、一緒にお墓に入る人たちがどんな人なのかは話しておくと良いでしょう。
墓友とは費用面や管理面などを明確にしておく必要がある
お墓の生前購入には、お墓に入る時まで管理費がかかるケースがあります。お墓購入時に一括して払うことが殆どですが、中には生存期間は支払わなくてはならないところもあるので、費用割りで揉めないためにも購入前に管理費の形態は必ず把握しておきましょう。
まとめ|墓友は現代における新しい終活の形のひとつ
お墓を「シェア」する墓友は、おひとりさま時代を象徴する葬送の形式であるともいえるでしょう。
しかし死後も見据えた人間関係づくりを必要とする墓友を持つということは、孤独になることのない新しい終活のかたちの一つでもあるのです。