遺骨ダイヤモンドとは、その名の通り「故人の遺骨」から作られる人工ダイヤモンドのことです。遺骨だけでなく、遺灰や髪の毛からも作ることができます。
近年増えてきた「手元供養」のひとつとして、注目を集めている遺骨ダイヤモンド。欧米では「メモリアルダイヤモンド」、国内では最近「ダイヤモンド葬」と呼ばれはじめており、故人を身近に感じられるところがグリーフケア にもなると、国籍こだわらず多くの支持を集めています。
遺骨ダイヤモンドの作られ方や金額、依頼方法など詳しく解説します。
もくじ
遺骨ダイヤモンドの作り方を解説
お骨ダイヤモンドは、故人の遺骨から作られます。造成方法は大きく2つです。
▼HPHT法(高圧高温法)
地球のマントル/2,000℃・6万気圧に模したチェンバー内での造成
▼CVD法(化学蒸着法)
真空装置内で炭素が含まれる気体を用いて造成
ここで取り上げている遺骨ダイヤモンド業者3社は、HPHT法を用いています。
故人の遺骨から人工的に作る遺骨ダイヤモンド
合成ダイヤモンド(Synthetic diamond)は、天然ダイヤと同等の成分と硬度を持ちます。地球深くのマントル内での結晶化、人工的に炭素を高温圧縮して結晶化させるかの違いだけです。
HPHT法の場合は、何億年もかけずに1ctであれば1ヶ月ほどで造ることができます。遺骨ダイヤモンドは遺骨もしくは遺灰から炭素を抽出して造り出された、合成ダイヤモンドです。
HPHT法の合成ダイヤの唯一の見分け方は、原石の形。天然ダイヤは正三角形を持つ八面体、合成は面を有する立方体(八面oe六面)で、丸みを帯びる物もあります。しかし、カットを施し研磨されれば見分けはつきません。
GIA(米国 宝石鑑定学会)・IGI(国際宝石学院)による鑑別書もしくは鑑定書をつける会社もあります。
遺骨ダイヤモンドは未研磨、出来上がったままの状態で受け取ることができます。価格は通常よりも20%程安いです。
遺骨ダイヤモンドはどうやって作られるのか
遺骨ダイヤモンドがどのようにして造成されていくのか簡単に紹介します。
- 遺骨・遺灰、もしくは毛髪から炭素のみを抽出
- 高温下にて炭素を炭素粒子(グラファイト)に変換
※グラファイト粒子が細かいほど上質なダイヤモンドになる - 5万気圧以上・1,300℃以上で高圧高温圧縮
- 原石に任意のカットを施すもしくはそのままで納品
何億年もの年月を経て地球が生み出した宝石を、たった半年程の期間で人工的に作りだします。
必要な遺骨(遺灰・毛髪)の量
必要な量は業者によって幅があり、遺骨・遺灰ともに70g~400g、必要量に達しない場合は遺髪もしくは家族の毛髪で補います。
毛髪のみでも可能で、その場合は3g~10gが必要です。毛髪以外にも故人所縁の品(可燃物)も可能な所もあります。遺骨70gで1ct約6個分です。
また、遺骨1柱を用いて造る事も可能です。
できるまでわからない「透明」「ブルー」「イエロー」
高圧高温圧縮された炭素は窒素の含有量が多く、やや黄色味を帯びています。(天然・合成ダイヤモンド共通)
遺骨ダイヤモンドは、この窒素を取り除くことでカラーレスに近づけていますが、自然の状態ではブルーがかることもイエローになる事もあるので出来上がってみなければわかりません。
しかし、業者によってはさらに加工を施し、透明・ブルー・イエローに加えてレッドやグリーンイエローといったカラーが指定できるようになりました。カラーものは透明よりも1~3ヶ月ほど製造期間が短いのが特徴です。
自然に任せて手元に届く楽しみを選ぶか、カラーを指定するか、家族としっかり話し合っておきましょう。
故人を身近に感じることができる手元供養のひとつ
昨今では遺骨を分骨して、専用のアクセサリーや骨壷に納めて手元供養を行う人も増えてきました。
遺骨ダイヤモンドもその中の一つで、海外では「Memorial Diamond」と呼ばれており2000年初頭にいくつかの専門会社が設立されています。
欧米の人は男性でも結婚指輪とは別に、ファミリーリング、ステイトメントリング、カレッジリングなどの指輪を身につける人もおり、特にファミリーリングは先祖代々受け継がれてきた指輪であり、結婚指輪以外では最もポピュラーな指輪です。
受け継がれてきた指輪、もしくは新たに作ったファミリーリングに遺骨ダイヤモンドをセットする人が多く、肌身離さず常に故人を身近に感じられるメモリアルダイヤモンドはグリーフケア としても認知されています。
ペット供養にも使われる
もちろん、愛するペットの遺骨でもダイヤモンドは作れます。ただし、必要な遺骨量は人間と変わりはないので、足りない分はペットの遺毛もしくは飼い主の髪を用います。
まだペットが健在である場合は、日頃からブラッシングの際に出た毛を保存しておくといいでしょう。
カラー選びには、ペットの瞳の色や毛並みに合わせる人もいます。
遺骨ダイヤモンドの依頼方法や金額
遺骨ダイヤモンドの造成を依頼するには、インターネットの公式サイトから電話とメールを用いてまずは資料請求から始めます。毎月説明会を行なっている会社もあるので参加するのも良いでしょう。
金額は遺骨ダイヤモンドの会社3社、透明・ラウンドブリリアントカット・0.2ctで比較しました。
アルゴダンザ :0.2ct/480,000万円
ライフジェム :0.2~0.29ct/475,000円(通常522.000円)
ロンテ :0.25ct/390,000円
※ロンテ社のカットは10種類。注文の際に必ず指定。
代理店を通じて海外へ依頼するのが一般的
遺骨ダイヤモンドを作る施設を持つ会社は日本にはありませんので、国内代理店を通して注文します。
中には現地施設ツアーを行なっている会社もあり、海外旅行を兼ねて訪れてみるのもおすすめです。※アルゴダンザ・スイス本社
アクセサリーに加工することができる
業者では、出来上がった遺骨ダイヤモンドを用いて、指輪・ネックレスなどアクセサリー加工のオーダーメイドを請け負っています。
加工料・例)丸型6本爪スタッドプラチナリング→87,000円
施無畏印(釈迦如来の印相)モチーフのプラチナペンダント→132,000円
もちろん、専門のジュエリー加工業者にダイヤモンドルースを持ち込んで依頼する事も可能です。その際はかならず合成ダイヤモンドである事を伝えましょう。
ただし、遺骨ダイヤモンドの再研磨・再カットは遺骨ダイヤモンド業者へ依頼します。
<※18金は世界標準ではないので注意>
遺骨ダイヤモンド制作業者によっては、ジュエリー加工の際に用いる金属の純度が日本仕様とは異なるところもあります。たとえば日本で金のアクセサリーというと18金ですが、欧米では14金などが主流です。またプラチナよりもホワイトゴールド、中には銀に金メッキ加工を施したものを「金製品」とする事もあります。トラブルを避けるためにも、金属素材に関しては事前にしっかり確認しておきましょう。
金額はダイヤモンドの大きさによって大幅に変動
合成ダイヤモンドも天然ダイヤモンドと同じく、特にラウンドブリリアンカットの場合はカットロスが最大50%近くと大きい為、例えば1ctをカットするにはその倍以上の原石が必要です。
原石を十分な大きさまで成長させる必要があるため、カラット数が大きくなれば価格も上がります。
また、カラット数が小さくてもカット技術があれば美しく輝かせる事ができます。ダイヤモンドの価格はカット技術代も大きく反映されています。
遺骨ダイヤモンドにする際のメリット・デメリット
まず不安になるのは以下の2点ではないでしょうか。
- 「遺骨を海外に送ることが不安」
- 「間違って他人の遺骨で造られていないか」
まず「1」は、各社ともに専用の配送を持つので紛失する恐れはありません。
「2」は、実は遺骨を高圧高温処理した後はDNAが残らない為、故人を特定する鑑定はできません。そこで各社とも混同や取り違えが起こらないよう、遺骨1柱ごとにID管理を行っています。さらに出来上がったダイヤモンドにID番号を刻印しているので安心です。
メリットは3つ
遺骨をダイヤモンドするメリットとして下記3つがあります。
- 肌身につける事ができる
- 代々子孫に受け継がせることができる
- 手元供養の中では最もスペースを必要としない
デメリットは4つ
一方、デメリットとしては以下4つが挙げられます。
- 価格が天然ダイヤの7~8倍
- クォリティの指定ができない(遺骨ダイヤモンドは一般的に、カラーIクラス、クラリティはSI・VSクラスが中心。稀にVVS)
- 窓口は日本だが、ダイヤモンド造成は海外
- 最終的にはどう供養していくのかを考える必要がある
天然・合成それぞれの中でも高価ですが、その中には遺骨を納める1柱専用の特殊金属のボトル代・海外輸送往復代などのサービスとアフターケア、そして高品質の遺骨ダイヤモンド造成に必要な高圧高温機器のコスト、炭素抽出や窒素除去など慎重さと繊細さが必要な作業工程の費用が含まれます。
しかし「世界で一つだけの特別なダイヤモンド」、一概に高価とは言えないでしょう。
遺骨から造成されるので通常の合成物とは違い、100%不純物なしはあり得ません。しかしSI&Iクラスでもラウウンドブリリアントカットであれば十分美しく輝きます。また、出来上がったダイヤモンドは色・形が故人ごとに異なることから敢えてカットは施さず、原石が持つ個性に故人を偲ばれる人もいます。
実際にダイヤモンドを造るのはアメリカやスイスにある会社です。国内に万全な窓口はあっても、いざという時にリアルタイムかつスムーズな遣り取りが難しいのが唯一のデメリットかもしれません。
また、大切な故人の遺骨から作られたダイヤモンド。処分したり、売ったりするわけにもいきません。親から子へ受け継ぐこともできますが、世代を重ねる毎に難しくなっていくでしょう。
最終的にはどう供養するのかを考えておく必要があります。
まとめ 故人との繋がりを感じることのできる遺骨ダイヤモンド
ダイヤモンドには「永遠の絆・変わらぬ愛」の意味があります。
愛する人が永遠の存在となって肌身で感じられる、故人との繋がりを最も強く感じられるのが遺骨ダイヤモンドです。