兄弟姉妹の遺産相続の割合は?子供がいない場合や揉めるケースを解説

投稿:2024-07-31
兄弟姉妹の遺産相続の割合は?子供がいない場合や揉めるケースを解説

遺産相続には故人との続柄によって順位が定められています。上位の人が優先されるため、自分よりも上位の人が存命の場合は遺産を相続することはできません。

故人の兄弟姉妹は遺産を相続する資格はあるものの、順位が低いため相続できないケースが多いです。

では兄弟姉妹が故人の遺産を相続するにはどのような条件が必要なのでしょうか?兄弟姉妹の遺産相続の割合や、遺産相続で揉めるケースについて解説します。

遺産相続の基礎知識

よく聞く遺産相続とはどのような意味なのか、誰が相続できるのか、遺産相続の基礎を解説します。

遺産相続とは

遺産相続とは、故人が所有していた遺産を相続人へ引き渡す手続きのことを指します。

遺産は預貯金や株式、不動産など金銭的にプラスとなる財産だけでなく、借金や損害賠償などの負債も含まれます。

プラスになる財産・動産(現金、預貯金、有価証券、家財、自動車、船舶、貴金属、貸付金、売掛金、骨董品、コレクション性の高いものなど)
・不動産(土地、建物、借地権、借家権など)
マイナスになる財産・負債(借入金、後払い未納分、リース料、家賃未納分、税金・保険料の未納分、損害賠償責務、買掛金など)
・未払費用(水道光熱費、医療費など)
遺産相続対象にならない財産・一身専属的な権利義務(国家資格、生活保護、親権、扶養義務など)
・葬儀費用(香典や弔慰金を含む)
・生命保険金(契約時に定められた受取人が相続する)
・遺族年金(定められた受取人が相続する)
・死亡退職金(受取人の指定がない場合は遺産相続対象となる)
・墓地や仏壇など

このような遺産を受け継ぐ人を「相続人」と言い、法的に遺産を引き渡す手続きを遺産相続と言います。

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遺産相続人の範囲と順位

遺産相続人は、原則として遺言書の内容が優先されます。遺言書では民法で定められている法定相続人の対象から外れる人も、相続人として指定できます。
例えば故人の友人や、近隣住民、お世話になった人などです。

遺言書による指定がない場合は、民法に従い法定相続人が遺産を受け取ります。なお、法定相続人は、故人との続柄によって順位が決められています。

常に相続人となる人配偶者(妻、夫)
第一順位直系卑属(子ども、孫)もしくはその代襲相続人
第二順位直系尊属(両親、祖父母)
第三順位兄弟姉妹もしくはその代襲相続人

例えば第一順位の相続人がすでに亡くなっている場合は、第二順位の人が相続人になります。上位の人が1人でも存命している場合、後順位の人は相続人になることができません。
なお、養子縁組としての子がいる場合は、血の繋がりの有無に関わらず実子と同じ扱いになるため第一順位となります。

また、代襲相続人とは、相続権を持っている人物がすでに亡くなっている場合、地位を引き継いで相続権を持つことができる人のことです。
代襲相続人となる人は、法定相続人となる故人の直系卑属です。例えば第三順位の兄弟姉妹が亡くなっている場合、兄弟姉妹の子(故人の甥姪)が代襲相続人となります。

兄弟姉妹が遺産相続できる条件

兄弟姉妹が遺産相続できる条件

第三順位である故人の兄弟姉妹が遺産相続するために必要な条件を解説します。

故人に配偶者と子がいない

故人が独身もしくは離婚をして独り身であり、元配偶者との子も先に亡くなっている場合は、兄弟姉妹が遺産相続できます。

なお、配偶者がいる場合でも兄弟姉妹が遺産相続できるケースもありますが、その場合は配偶者と遺産を分割する必要があります。

故人に両親や祖父母がいない

第二順位となる故人の両親や祖父母がすでに亡くなっている場合は、第三順位である兄弟姉妹が相続人となります。

なお兄弟姉妹よりも上位の人が存命の場合は、遺産を相続できません。

法定相続人が全員相続を放棄した

上位の法定相続人が存命であっても、全員が相続を放棄した場合は、第三順位である兄弟姉妹が相続人となります。
この場合は、兄弟姉妹だけで遺産を分割することができます。

遺言書で兄弟姉妹を相続人として指定している

遺言書によって兄弟姉妹が相続人として指定されている場合は、遺言書の内容が優先されるため遺産を相続できます。

ただし、遺留分を侵害することはできません。そのため、遺産総額から遺留分を引いた分を兄弟姉妹が相続することになります。

●相続人ごとの遺留分
配偶者のみ1/2
配偶者と子配偶者1/4
1/4
配偶者と直系尊属配偶者1/3
直系尊属1/6
両親のみ1/3

なお、兄弟姉妹には遺留分が認められていません。

兄弟姉妹の遺産相続の割合

兄弟姉妹が遺産を相続できた場合の割合について解説します。

配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合

法定相続人の相関関係解説図(配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合)

配偶者は常に法定相続人となりますが、故人と配偶者との間に第一順位となる子どもと直系尊属がいない場合は、兄弟姉妹も遺産を相続できます。
この場合、配偶者と兄弟姉妹は法定相続分を目安に遺産を分けます。

法定相続人の相続割合解説図(配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合)

例えば遺産総額が6,000万円の場合、配偶者の法定相続分4,500万円、兄弟姉妹は1,500万円になります。兄弟姉妹が複数人いる場合は、さらにそこから人数で割って相続します。

なお、法定相続分は目安であり法律で定められた分配ではないため、状況に応じて変動することもあります。

兄弟姉妹のみが相続人の場合

法定相続人の相関関係解説図(兄弟姉妹のみが相続人の場合)

兄弟姉妹のみが相続人となった場合は、遺産を100%相続できます。兄弟姉妹が複数いる場合は、人数で割って分配します。

法定相続人の相続割合解説図(兄弟姉妹のみが相続人の場合)

なお、法律によって必ず均等に分配するよう定められているわけではないため、状況に応じて割合が変わることもあります。

兄弟姉妹の遺産相続でよくあるトラブル

兄弟姉妹の遺産相続でよくあるトラブル

兄弟姉妹の遺産相続ではトラブルが起きることがよくあります。もちろん、兄弟姉妹の遺産相続で起きるトラブルは、その他の続柄での遺産相続でも起きやすいトラブルです。

兄弟姉妹の遺産相続でよくあるトラブルについてご紹介します。

遺産分割の割合で揉める

民法では法定相続分が定められています。基本的には法定相続分に則って遺産を分配しますが、あくまでも目安として定められている割合であるため、法定相続分通りに分ける必要はありません。
それゆえに、兄弟姉妹間で意見がまとまらずに対立してしまい、トラブルへと発展するケースも少なくありません。

  • 長男もしくは長女として後を継ぐ意思が強い
  • 長い間、故人の介護をしてきた兄弟が、負担に見合った分の遺産を要求
  • 生前贈与をしていたことで、兄弟姉妹間で不公平な割合となっている
  • 音信不通だったり存在を知らなかった兄弟姉妹が現れる

その他にもさまざまな理由で、兄弟姉妹での遺産分割の割合で揉めるケースがよくあります。

特定の遺産にこだわりがある

故人が生前に大切にしていた財産がある場合、形見として相続したいと思う兄弟姉妹も少なくありません。

特定の遺産にこだわりがあると、遺産分割の割合が偏るなど、不公平な結果となりトラブルに発展することも。
特に骨董品やトレーディングカード、レトロゲーム、無線、楽器、自動車などコレクション性や価値の高いものの場合は、トラブルのもととなりやすいので注意が必要です。

兄弟姉妹から相続放棄を求められる

長く故人と連絡を取っていなかったり、顔を合わせていなかったりしたことを理由に、兄弟姉妹から遺産相続を放棄するように求められる場合があります。

同じ兄弟姉妹である以上は遺産を均等に相続する資格はあるものの、少しでも多く相続するために理由をつけて相続放棄を求めるケースはよくあります。

遺言書の有効性について意見が割れる

例えば兄弟姉妹が複数いるのに、遺言書には「遺産を全て長男へ贈与する」と記載されていた場合、遺留分を除いた差額を全て長男が相続することになります。
しかし、この内容では名前の挙がらなかった長男以外の兄弟姉妹から不満が出ることは少なくありません。そこで兄弟姉妹から遺言書の有効性について指摘が出て、意見が割れてしまうことも。

実際のところ、遺言書の内容が優先されるとはいえ、問題があり無効になるケースもあります。

遺言書が無効になるケース

  • 日付が記載されていない
  • 日付が特定できない内容
  • 遺言者の署名や捺印がない
  • 訂正の方法が間違っている(法律に則って訂正する必要がある)
  • 内容が不明確である(誰にどの財産を相続されるか正確に記載されていない)
  • 複数の遺言者と共同で書いている
  • 誰かに書かされた可能性がある(生前に言っていたことと全く違う内容、重度の認知症で判断能力が欠如しているなど)

兄弟姉妹から問題を指摘され、遺言書の有効性について意見が割れることでトラブルへと発展します。

不動産の分割方法が決まらない

不動産は預貯金などの動産のように均等に分割することが難しい財産です。

例えば財産が自宅しかない場合、複数人で分割することはできません。各々が自宅を取得したいと主張することで、意見が割れてトラブルへと発展します。

また、不動産が複数ある場合でも、それぞれで価値が異なるため、誰が最も価値の高い不動産を相続するか争いが起きます。

このように不動産の分割方法が決まらず、トラブルへと発展することはよくあるケースです。

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兄弟姉妹が遺産を勝手に使い込んでいた

生前贈与によって財産が勝手に使い込まれていたことが発覚した場合、残りの財産の分配について意見が対立するケースがあります。

例えば留学費用や旅費、自宅の頭金、リフォーム代など、さまざまな場面で大きな金額が必要となり、兄弟姉妹が勝手に使い込んでしまうというケースは少なくありません。

兄弟姉妹の遺産相続を円滑に進めるためのポイント

兄弟姉妹の遺産相続を円滑に進めるためのポイント

兄弟姉妹の遺産相続では意見が対立しやすく、なかなか話し合いが進まないこともあるでしょう。
できるだけトラブルに発展しないよう、円滑に兄弟姉妹の遺産相続を進めるポイントをまとめてご紹介します。

早めに話し合いを始める

遺産相続についての話し合いは後回しにするほどずるずると長引きます。長引くと財産の価値が変動し、さらに話し合いが複雑になってしまうことも。

まずは遺産を全て整理し、早い段階から話し合いを始めましょう。

話し合いを始めるときは、相続人全員に故人の財産を徹底的に洗い出すよう協力を促し、まずは均等に分割する案から進めるとよいでしょう。

感情的にならず、冷静に話し合う

感情的になると話し合いは進みません。
それぞれ強い思いや伝えたいことはあるでしょう。しかし遺産相続はお金の問題であるからこそ、感情的にならずに常に冷静に話し合うことが大切です。
同じ時間を過ごし血の繋がりのある兄弟姉妹でも、感情的になることで関係が悪化してしまうこともよくあります。

将来的にもよい関係を続けたいと思っているのであれば、冷静にひとつひとつの問題に対して少しずつ話し合っていきましょう。

それぞれの事情や思いを尊重する

例えば家計が非常に苦しい状況だったり、長く介護や手伝いをしていたりなど、遺産を多く相続したい事情はそれぞれあるでしょう。

感情的に事情や思いをぶつけるのではなく、各々どのような問題を抱えているか、ひとりひとりの事情や思いを尊重するような話し合いを行いましょう。

双方にとって納得できる解決を目指す

例えば「価値の高い不動産を譲る代わりに、有価証券や預貯金をもらう」「不動産を全て売却して均等に分割する」など、納得できる解決を目指すように心がけましょう。

やはり不公平であることが、話し合いが進まずにトラブルへ発展する大きな原因となります。

均等な分割ができなくても、各々の事情を考慮して少し上乗せをする、余裕があるから減らす、困ったときは助けることを約束するなど、納得できる解決を目指しましょう。

弁護士や司法書士などの専門家に相談する

弁護士や司法書士など、遺産相続に関する問題を解決する専門家に相談することで、よりよい結果につなげることができるケースも多いです。
専門家ならば何件も遺産相続によるトラブルを解決してきているため、自分たちでは気付けない部分からアプローチしてもらえることも。

どうしても兄弟姉妹だけでは話し合いがまとまらない場合は、ぜひ弁護士や司法書士などの専門家に相談してみましょう。

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兄弟姉妹の遺産相続に関するよくある質問

兄弟姉妹の遺産相続に関するよくある質問

兄弟姉妹の遺産相続に関してよくある質問をご紹介します。

遺産相続で長男は優遇される?

長男が跡継ぎになるなど、長男という立場が家族間で優先されることはよくあります。

実際に遺言書の存在や慣習による長男優遇の事例はありますが、遺産相続において民法上では長男を優遇する規定はありません。

そのため、兄弟姉妹間で遺産を相続する場合は、立場に関係なく人数で均等に分割することが一般的です。

兄弟姉妹で遺留分を請求できる?

特定の人物に対し全財産を相続させると遺言書に記載があったとしても、遺留分を侵害することはできません。

ただし故人の兄弟姉妹の場合は、例え相続する資格を持っていたとしても遺留分を請求することはできません。
故人の兄弟姉妹は、子や両親と比較すると生活関係が密接ではなく、お互いに自立した関係であることが多いためです。

そのため、法定相続人が配偶者と兄弟姉妹のみで、遺言書に配偶者に全財産を相続させると記載があった場合、兄弟姉妹は遺産を相続することができなくなります。

まとめ

兄弟姉妹が遺産を相続できるケースや相続の割合について解説しました。故人の兄弟姉妹は相続順位が低いものの、状況によっては遺産をしっかり相続することができます。

しかし、兄弟姉妹が複数いる場合、分割方法でトラブルに発展してしまうケースは少なくありません。故人が遺した大切な財産が、兄弟姉妹の関係を悪化させる原因となってしまうのは、故人にとっても悲しいことでしょう。

各々で遺産を多く相続したい事情があるのであれば、感情的にならず冷静に問題を提示し、それぞれの事情や思いを尊重した話し合いを進めましょう。お互いに寄り添うことで、事情を考慮した納得のできる結果へとつなげることができます。

それでもなかなか話し合いが進まない場合は、弁護士や司法書士などの専門家を挟んで、法律的な観点などからアプローチしてみるのもよいでしょう。

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著者:葬儀のデスク編集部
葬儀のデスク編集部
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