近年、家族葬や密葬の増加に伴い増えてきているのが「偲ぶ会」です。
「偲ぶ会」とは、故人と関わりある人を招いて、故人を偲びお別れを告げるために催す会のこと。「お別れ会」や「感謝の会」と呼ばれることもあります。
お通夜や葬儀のように突然ではなく、あらかじめ準備をしてから行うケースがほとんどです。余裕をもって故人とのお別れをすることができます。
こういったプロセスを経ることは、大切な人を失くした方にとってのグリーフケアにもなるでしょう。
偲ぶ会を行う意味や実際の流れ、基本的なマナーや実際に行う時のポイントなど詳しく解説します。
もくじ
偲ぶ会の意味や形式、実際の流れを解説
これまで「偲ぶ会」は、著名人や企業の重鎮の方が亡くなった時などに営まれるのが一般的でした。
しかし最近では、一般の方が亡くなった場合でも、偲ぶ会を営むケースがあります。
偲ぶ会の意味や形式、実際の流れなど、偲ぶ会を開催するために必要な知識について解説します。
偲ぶ会は故人とお別れをするために催す会
「偲ぶ会」は「お別れ会」とも呼ばれ、通夜や葬儀とは別に故人に別れを告げるために催される会のことです。
故人の足跡をたどったり、故人との思い出を語り合ったりするもので、通夜振る舞いや精進落としのような会席に近いものになります。
近年では小規模に行う家族葬を選ぶ方が増えており、葬儀は近親者のみで行うことも珍しくはありません。
通夜や葬儀は急なことで、参加できないこともあります。後日きちんと日程を組んで偲ぶ会を行うことで、参加できなかった方にも故人に別れを告げる機会もっていただけます。
またお別れ会・偲ぶ会の特徴は、葬儀とは違い、準備に時間のゆとりがあることです。「故人を偲ぶ」ことを重視し、より「その人らしい」お別れができます。
通夜・告別式が宗教的な意味合いで行われるのに対し、「偲ぶ会」は、無宗教葬とも言われ、宗派にとらわれず故人との想い出を懐かしむ心のお葬式のようなものと言えるでしょう。
意味合いとしては「お別れの会」に近く、同じものと捉えても良いです。
一方で、四十九日までに開催するお別れの会に対し、偲ぶ会は四十九日以降でも開催できるものとして区別するという考え方もあります。
偲ぶ会では、献花などで故人とのお別れをすることが多いですが、故人が生前好きだった音楽や趣味をモチーフにした空間を創りだすなど、決められた形式ありません。
偲ぶ会の会場にはセレモニーホールのほか、ホテルなどが使用されることが多いです。
偲ぶ会だけを行う場合
偲ぶ会だけを行うときは、ホテルで開催されることが多いです。葬儀と比較すると食事会や談笑の場であるという認識があり、比較的明るい雰囲気で行われます。
ホテルは設備が整っていること、宿泊できるため遠方からでも参加しやすいのが利点です。
ただし、スタッフが葬祭に精通しているわけではない点には注意しましょう。
偲ぶ会を開催する時期としては、家族葬や密葬のあと四十九日や一周忌に合わせて、参列者の集まりやすい土日に、交通の便のよいところで行われることが多く、いつ行うかにも決まりはありません。
生前に「感謝の会」として行ったり、三回忌や同窓会などのタイミングでお別れ会も兼ねて行ったりと、「偲びたいと思ったときにみんなで集まって偲べる」ことも特徴といえます。
お別れ会・偲ぶ会は、会費制のパーティー形式で行われることが多いです。
会費制にすることで主催者の負担を減らして開催することができることと、会場や料理を立食のビュッフェ形式にすることで、当日になって想像以上の人が参加したりmキャンセルが多かったりした場合でも柔軟に対応できたりすることが会費制のメリットとなります。
葬儀と同日に行う場合
葬儀と同日に行う場合は、セレモニーホールや集会場などが利用され、葬儀としての側面が強くなります。
宗教色はあまりなく、無宗教の形式で行われることが多いです。
セレモニー形式のお別れ会は、一般的な葬儀・告別式に近い形で行われます。
会場正面に生花祭壇などを飾り、故人の経歴紹介や発起人挨拶、参列者の弔辞などを行った後に、参列者一人ひとりが献花を行っていく流れとなるケースが多く、会社などの法人主催で行われる「社葬」や「団体葬」も、お別れ会のスタイルの一つです。
社葬といえば、かつては大企業の経営者などが亡くなったときに行われる数百名が参列する大規模なものが主流でした。近年では法人のお別れ会として形式ばらず、故人の生き様や仕事で得た哲学などを伝え、継承したいというニーズが広がっています。
そのため、中小企業の創業者や、会社に貢献をした社員を企業主催で自由なスタイルで偲ぶ100名程度のお別れ会が増えているのです。
近年では、通夜と葬儀は親族だけで執り行うことが増え、友人や知人とのお別れは日を改めて行うといったケースも増えています。
故人の写真や思い出の品を持ち寄り、参加者全員でその人の人生を振り返って、思い出を共有しながら、故人を偲びます。
偲ぶ会を実施するときの実際の流れ
偲ぶ会は形式にとらわれることなく、遺影写真やたくさんの写真を会場に飾ったり、故人の経歴を紹介するコーナーを設けたりと様々です。
「偲ぶ会」では葬儀やお通夜と違い、ゆっくりと準備します。偲ぶ会を実施するときの一般的な流れとしては、次のような流れです。
- 偲ぶ会ができる業者(葬儀社や専門会社)に相談
- 家族だけでの家族葬(密葬・火葬)を済ませる
- 参加者の規模によってお別れ会の会場・日程を決める
- 偲ぶ会当日の進行内容を決める
- 事前準備~当日進行
- 精算、アフターフォロー
偲ぶ会当日の流れ、式次第
当日の式次第は、基本的には自由ですが、ひとつの例を挙げてご紹介します。
1.開会の辞
簡単な挨拶を喪主や代表の方が行うことが多いです。この時、葬儀の様子など話すと改めて亡き故人に想いを近づけることが出来るでしょう。
2.故人の経歴紹介
故人の経歴を紹介します。故人の足跡を辿りながら、自分との繋がりがどこなのか、どんな人と交わってきたのかを知る事が出来ると、より故人の人生が見えてくるものです。
3.黙祷
宗教色が強くない「偲ぶ会」なので、合掌などよりも黙祷が適しています。
4.会食
「偲ぶ会」の場合、だいたい会食を行うのがメインです。故人と親しい人たちとの数々のスライドショーを流したり、故人が好きだった音楽を流したりすると、故人が身近に感じられ、話に花が咲くでしょう。
5.閉会の辞
挨拶を行い、会を閉じます。
偲ぶ会の基本的なマナーを解説
親族や友人など、故人を偲ぶために是非とも集まりたいと思う人が「偲ぶ会」を企画します。
案内状には、日時や場所のほかに、会費なのか香典なのか、服装の指定が書かれていることが多いです。
偲ぶ会の参加する際の基本的なマナーを解説します。それに則って参列すれば、基本的にはマナー違反にはなりません。
偲ぶ会は平服で参列する
偲ぶ会だけを行う場合、平服でよいとされることが多いです。
パーティーのような形式を取るため、喪服でないほうがよい場合があります。
ホテルなどでは、読経や焼香が許可されていないため、「喪」である意識は低いですが、あまりに奇抜な服装やラフすぎる服装は避けましょう。
案内には「平服でお越しください」と書いてあることが多いですが、平服とは、「礼服ではなくてもいい」ということを意味します。
男性ならばスーツ、女性なら色味の落ち着いたワンピースなどが好まれますので、そのような服装を選択するとよいでしょう。
シャツは白、ネクタイは紺か黒、小さなドットやストライプなどの柄が付いていてもOKです。
露出は避け、お化粧やアクセサリーも控えめにしましょう。
葬儀と同日に行う場合、葬儀では喪服を着ることになっているため、偲ぶ会も喪服で行うことになります。特に厳しいマナーなどはなく、着崩したり上着を脱いだりしても問題ありません。
偲ぶ会の会場となるホテルやレストランによっては「黒ネクタイはNG」などの制限があることもあります。そういった注意事項がある場合は、必ず従うようにしてください。
会費制の場合は香典は不要
お別れ会や偲ぶ会は会費制の場合が多いため、指定されている会費を持参すれば香典は必要ありません。
会費制でない場合、案内状に「香典辞退」等の記載がないときは香典を持参します。その場合の金額は1~2万円が相場です。
飲食が伴うお別れ会・偲ぶ会の場合は、香典に飲食代の1万円を加えた金額が一般的とされています。
香典は不祝儀袋や無地の白い封筒に入れ、「御香典」「御香料」「御花料」などと記したものを渡せば問題ありません。
偲ぶ会を開催する際のポイントを解説
それでは、実際に偲ぶ会を開催する場合、どのようなポイントに気をつけたら良いのでしょうか。
偲ぶ会を開催する際のポイントについて解説します。
偲ぶ会の費用・会費の相場
偲ぶ会やお別れ会を開く場合、一般的には主催者側が費用の大半を負担することが多いです。
しかし、友人などが主催してお別れ会を開く場合には、それぞれ会費を持ち寄って開催するケースもあります。
会費制の場合、一人あたり8,000円から15,000円の範囲で行われることが多いようです。
これは、会場費用と飲食代、返礼品等、実際にかかる費用の頭割りに近い金額となります。
偲ぶ会、お別れ会にかかる費用で一番大きいものは会場費用です。
レストランなどで開催する場合は料理代の中に会場費用が含まれていることもありますので、お通夜や葬儀に出たときのお香典の額とほぼ同じか、少し多いぐらいの金額が会費となります。
「日比谷花壇」が執り行う会費制の偲ぶ会は、参加者1万円で発起人の負担なしに出来るプランもあり、オプション追加も可能です。
偲ぶ会の開催時期は自由
偲ぶ会を行う時期に決まりはなく、いつでも開催可能です。
四十九日の前後、葬儀から約1~2カ月後に行うケースが多いですが、一周忌やお亡くなりになってから5年、10年という節目や、同窓会と兼ねたタイミングで行うこともあります。
事前に日程を決めて時間的余裕がありますので、故人と親しかった方の多くが参加でき、思い思いに故人との最後のお別れをできるのが偲ぶ会の特徴です。
遺族と参列者の事情を考慮した上で、日程や開催地を決定すると良いでしょう。
開催場所は下調べをして決めること
偲ぶ会を開催する場所は、葬儀や告別式とは異なり、さまざまな選択肢があります。
故人のイメージや参列者の規模に合わせ、明るくて華やかな会場で行われるケースも多いです。
会場の例としては、ホテル、レストラン、セレモニーホールがあげられます。
ホテルといえば結婚式のイメージが強いと思われますが、偲ぶ会を開催できるホテルも少なくありません。
食事形式や演出方法も充実しているので、参列者をもてなすことを考えれば最適といえます。
しかし、実際には偲ぶ会の開催に不慣れだったり、様々な制約がある会場も多いため、会場の決定には十分な下調べが必要です。
偲ぶ会の開催を検討する場合は、葬儀社に相談するのが一般的で、最近では、偲ぶ会の企画から進行まで手助けしてくれるサービスもでてきました。
決まった形式のない偲ぶ会だからこそ、依頼する会社によって大きな違いがあるため、複数の葬儀社や偲ぶ会を扱っているサービスに問い合わせ、比較検討してみると良いでしょう。
まとめ|偲ぶ会は故人とのお別れの時間
お通夜や葬儀とは別に故人に別れを告げるために催される会である、偲ぶ会について、解説しました。
偲ぶ会は、お通夜や葬儀と異なり、あらかじめ、予定を立てて、余裕を持ってお別れの準備をすることができます。
また、偲ぶ会では、故人の足跡をたどって故人の思い出を語り合うことで、近しい人を失った悲しみや喪失感を癒す効果も期待できるのもメリットです。
親しい方を亡くされたけれども、ゆっくりお別れできなかったという思いのある方は、偲ぶ会の開催を検討されてみるとよいのではないでしょうか。