葬儀社の間で、葬儀費用の価格競争が激しくなりつつある現在。葬儀の格安プランが登場するなど従来よりも葬儀費用が安価になり、平均相場は右肩下がりが続いています。
しかしどんなに安いプランでも数十万円ほど用意しなくてはならないので、決して経済的負担が軽いわけではありません。
中にはどうしてもお葬式のお金が用意できないケースもあるでしょう。
しかし葬儀費用が出せなくても、故人を弔う方法はあります。
急な訃報で用意がなく、葬儀費用がどうしても出せないときに行うべき対処法をまとめて解説します。
もくじ
葬儀費用が高額になる理由と平均相場を解説
近年、格安で葬儀ができるプランが多々登場しており、今後も葬儀費用の価格競争が激化するのではないかと言われています。
しかし格安プランであってもお葬式には数十万円ほど費用がかかります。葬儀費用としては格安になったとしても、決して安い金額とは言えません。
そもそもなぜ、葬儀費用は高額になるのでしょうか?
葬儀費用が高額に鳴る理由と平均相場を解説します。
葬儀費用の平均相場は100万円以上
2017年に実施された日本消費者協会の第11回「葬儀についてのアンケート調査」によると、葬儀費用の全国平均は195.7万円ほどでした。
そのうち、飲食接待費や寺院費用を引いた葬儀一式にかかる費用は121.4万円ほどです。
葬儀費用が下がっていることを考えると、実際にはもっと費用を抑えられているケースが多いかと思いますが、決して安くはありません。
葬儀費用の内訳と高額になる理由
安くても数十万円、高ければ200~300万円ほどにまで膨らむことがある葬儀費用。
葬儀費用が高額になる理由は、式場を利用する料金以外に人件費や飲食代、お布施などさまざまな費用が加算されるからです。
項目 | 内訳 |
---|---|
葬儀一式にかかる費用 | 祭壇、式場利用料、人件費、霊柩車レンタル代、葬儀用具、脳幹用品、棺桶、位牌、遺影写真、保冷剤など |
飲食接待費 | 通夜振る舞い、香典返し、精進落としなど |
寺院費用 | お布施(読経、戒名料)、お車代、お食事代など |
葬儀は数時間程度の儀式であり、式場の装飾もほかの冠婚葬祭行事と比較するとシンプルな印象がありますが、実はさまさまな道具や準備が必要なので、どんなに安く見積もっても数十万円以上かかってしまいます。
ただし位牌は作らない、一日葬や直葬にする、自分たちである程度用意をするなど、工夫次第で費用を抑えることは可能です。
葬儀費用が出せないときに行うべきこととは
葬儀費用は葬儀社が提示するプラン以外に、香典返しやお食事代などが加算されます。飲食接待費は参列者の人数によって変動するので、実際の葬儀費用がわかるのは葬儀が全て終わってからです。
そのため、終わってから思った以上に費用が膨らんでしまったということも十分ありえます。
予算を遥かに超えてしまった場合や、経済的に厳しいために葬儀費用が用意できない場合に行うべき対策を解説します。
葬儀費用の一部が支給される給付制度を利用する
葬儀費用の一部を国や保険から支給してもらえる給付制度があります。
葬儀費用をカバーできるほどの金額ではありませんが、少しでも経済的負担を減らすことができるので、葬儀の際に活用するとよいでしょう。
生活保護法に基づく「葬祭扶助制度」
主に生活保護受給者に対して、葬儀費用が支給される「葬祭扶助制度」があります。
葬祭扶助は生活保護法第18条で定められている法律で、ご遺体の検案から運搬、火葬、埋葬までの費用を支給してもらえます。
(葬祭扶助)第十八条 葬祭扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 検案
生活保護法第18条
二 死体の運搬
三 火葬又は埋葬
四 納骨その他葬祭のために必要なもの
なお葬祭扶助で支給されるのは火葬・埋葬のために必要な最低限の費用のみであり、一般的な葬儀の儀式にかかる費用は支給してもらえません。
自治体によって限度額は異なりますが、だいたい20万円前後を限度額として設定しているケースが多いです。
葬祭扶助の対象となるのは、喪主が生活保護受給者か、故人が身寄りのない生活保護受給者であり、なおかつ遺留品で葬儀費用を満たすことができない場合のみ。
単純に生活が厳しいという理由だけでは支給されません。
事後請求は認められないので、葬儀前に自治体への連絡・葬祭扶助申請と葬儀社への相談を必ず行いましょう。
申請先は自治体の役所もしくは福祉事務所です。
申請後は葬儀社が自治体に葬儀費用を請求するので、限度額以内に費用が収まれば自己負担する必要はありません。
健康保険や自治体から給付される「埋葬料・葬祭費」
健康保険から葬儀費用の補助として「埋葬料」や「葬祭費」を受け取ることができます。
■国民健康保険
被保険者が死亡した場合、喪主に対して自治体から「葬祭費」として一定金額が支払われる。
申請に必要なものや窓口は自治体によって異なるので、必ず知事帯のホームページ内の葬祭費の案内を確認してください。
■社会保険もしくは各共済組合
被保険者・加入者が死亡した場合、喪主に対して「埋葬料」もしくは「埋葬費」が給付される。
社会保険の場合は全国健康保険協会(協会けんぽ)か健康保険組合に申請を行います。加入先によって所属が違うので、必ず確認をしてから申請しましょう。
給付される金額は自治体や健康保険の加入先によって異なりますが、50,000円前後になるケースが多いです。
また社会保険の場合、申請に条件が設けられていたり、50,000円以上給付されたりするケースがあるので、故人の加入先か勤務先で詳細を確認することをおすすめします。
葬儀費用を分割払いする
どんなに費用を抑えても、1度に数十万円以上を支払うことが難しいケースは珍しくありません。
何が起こるかわからない世の中なので、今現在は葬儀費用が出せるほど経済的に余裕があっても、いざそのときになると葬儀費用を出す余裕がない状況になっている可能性は誰にでもあります。
しかし葬儀費用は分割払いをすることが可能なので、経済的に余裕がない場合は、1度に支払えるほどの多額の現金を用意する必要はありません。
葬儀社による「葬儀ローン」
信販会社と提携している葬儀社であれば、葬儀費用を分割払いできる「葬儀ローン(セレモニークレジット)」を組むことができます。
金利は8~18%ほどと一般的なローンよりも少し高めですが、与信審査が数時間から半日程度とスピードが速く、比較的審査が通りやすい傾向があります。
申し込みは葬儀社から可能なので、最初から一括払いが無理だとわかっている場合は、葬儀の打ち合わせと並行して申し込みを行いましょう。
多目的ローン・フリーローンによる分割払い
ローンを利用するのであれば、銀行や信用金庫などの多目的ローン・フリーローンを利用する手段もあります。
また、クレジットカード払いができるのであれば、カード側で用意している分割払いを利用するのも手段のひとつとして検討するとよいでしょう。
なお金利や返済回数などは、金額や各ローンによって異なるので、申込み前に比較することをおすすめします。
ただし葬儀ローンと違って与信審査には1週間前後かかるので、新たにローンを組む場合はなるべく早めに申し込みましょう。
保険金や預貯金を利用する
故人が生命保険に加入している場合、死亡保険金で葬儀費用を支払うことができます。死亡保険金は比較的早く支払ってもらえるので、なるべく早めに問い合わせておきましょう。
なお預貯金は遺産分割協議が終わらないと、現金を引き出すことができない場合があるので、まずは金額と引き出すための条件を確認してください。
葬儀費用をなるべく安く抑えて経済的負担を軽減する方法
お葬式のお金がない場合、給付制度やローンと組み合わせて、葬儀費用をなるべく安く抑えるように工夫することをおすすめします。
ただし費用を抑える分、儀式の内容などに制限が出てしまうので、故人や遺族の意志とよくすり合わせながら抑えられるところは抑えるように調整するとよいでしょう。
お葬式のお金がないときに活用できる、葬儀費用を安く抑える方法を解説します。
互助会制度を利用する
互助会とは、積立金を冠婚葬祭にかかる費用の一部に充てることができるサービスのことです。
さらに互助会が用意したプランを利用すれば、会員限定の割引価格で葬儀を行うこともできます。
本人もしくは両親が会員である場合互助会制度を利用できますが、積立貯金ではないので掛けた分をそのまま現金で受け取ることはできません。
サービス内容や葬儀プランなどは組織ごとに異なるうえに、実際はあまり安くならないこともあるので、必ず互助会以外のプランとも比較しながら利用を検討してください。
一日葬や直葬など儀式を省略する
一般葬と呼ばれる形式の葬儀は、お通夜を行ってから翌日に告別式と火葬を行います。
2日間に渡って儀式を行う一般葬は費用が高くなる傾向がありますが、お通夜を省いた1日葬や火葬のみを行う直葬などのシンプルな葬儀なら費用をぐっと抑えることができます。
また身内のみで行う小規模な家族葬なら、一般葬と同じように2日間行っても飲食接待費や式場利用料などを削減できます。
葬儀社による格安プランを利用する
葬儀社の中には数十万円から葬儀ができる格安プランを用意していることがあります。
格安プランを利用することで、最低限の費用負担で葬儀を執り行えます。
ただし格安プランは直葬や一日葬などのシンプルな葬儀で、なおかつ備品などの質や数は必要最低限しか用意されないので注意しましょう。
自治体による「区民葬」「市民葬」を行う
「区民葬」「市民葬」とは、各自治体提携している葬儀社もしくは自治体主催で、協定した料金で葬儀が行えるプランのことです。
喪主か故人の所在地がある自治体で利用できます。
費用は自治体によって異なりますが、だいたい20~50万円ほどで葬儀ができるようになります。
なお、プランや追加オプションなども自治体によって異なるうえに、定着していない地域もあるので、まずは各自治体のホームページから詳細を確認しましょう。
お金が用意できなくても葬儀を執り行う方法はある
葬儀費用は決して安い金額ではありません。格安プランであっても多額の現金を用意する必要があります。
葬儀は結婚式などのように予め日取りがわかっていて準備ができる行事ではないので、いざというときお金が用意できないことは誰にでも起こりえることです。
しかしほかの冠婚葬祭行事とは違って、絶対に避けることはできません。お金が用意できなくて必ず弔わなければいけません。
だからこそ、お金が用意できなくても葬儀が行えるように、給付制度やローンなどさまざまな救済処置が用意されています。さらに葬儀費用自体も抑えることができるので、一括で支払えるほどのお金を用意できなくても問題ありません。
お金が用意できなくても、葬儀を執り行う方法はいくらでもあるので、まずは正直に葬儀社に費用に関する相談を持ちかけ、どうするべきかきちんと計画を立てることから始めましょう。