
「喪に服す」とは、身内が亡くなった際に親族が故人を悼み、慎ましく過ごすことを指す言葉です。服喪(ふくも)、服忌(ぷっき)とも呼ばれています。
慎ましく過ごすといっても、どのように過ごすのかピンとこない方もいるでしょう。また身内といっても、誰が亡くなった場合、どれくらいの期間喪に服すのが適切なのでしょうか。
昔は死は穢れという考え方があり、昭和22年まで「服忌令」という法律で喪に服す期間などもかなり細かく決まっていました。現代では廃止され、喪に服す期間やきまり事も緩やかになり、個々の考えや思いが尊重されています。
喪に服すの意味や期間やかつての喪に関する法律、避けるべき行動など詳しく説明します。
もくじ
「喪に服す」の意味や期間を詳しく解説
「喪に服す」という言葉は、服喪(ふくも)、服忌(ぷっき)とも呼ばれ、日本だけではなく、海外や仏教以外の宗教でもみられる共通の概念です。
近親者が亡くなった際、親族が身を慎んで、故人の供養に当たることを指します。
具体的に喪中とはどのようなことなのか。その由来や考え方、喪中と混同されがちの忌中との違い、喪に服する範囲について解説します。
喪に服すとは故人を偲ぶ期間
身内に不幸があったとき、喪に服します。宗教的な面だけではなく、古くから暮らしの中で息づいてきたしきたりのひとつです。
かつては、その期間は家に引きこもって晴れがましい場には出ず、音楽やお酒などの遊興を避け、結婚はしないとされていました。故人を偲び供養することに専念したのです。
現在でも、喪中の概念は大切にされています。会社や学校にも一定期間休むことができる忌引き休暇があることが多いです。
喪中と忌中の違いは期間
喪中の他に忌中という言葉があります。喪中と混同されることがありますが、違う意味で使われるので注意しましょう。
喪中と忌中の最も大きな違いは、期間です。配偶者や父母が故人の場合、喪中の期間は1年以上ですが、忌中の期間は49日間。
忌中は、四十九日の法要を終えて仏教的には魂が旅立つまでの期間を指します。四十九日の法要をもって供養は一定の区切りをむかえるということです。
喪中は忌明け後も続き、故人を偲び冥福を祈る期間となります。
大切な身内を亡くした遺族としても、四十九日の区切りで気持ちを切り替えられるわけではありません。その死を受け入れて悲しみを癒す意味でも長い喪中が必要です。
喪中の期間
現在ではこの期間は喪中にしなくてはいけないといった定めがあるわけではありません。しかし、一般的に多くの人が喪中としている期間はあります。
喪中となる範囲は、故人と続柄で変わり、古くは法律で定められていました。現在の喪中期間と「服忌令」、忌引き休暇について解説します。
江戸時代に定められた「服忌令」
昔は政府により喪中の期間が定められていました。
江戸時代には5代将軍徳川綱吉による服忌令という法令があり、明治以降には新たに明治政府により法律として以下のように喪中の期間が決められたのです。
- 父母や夫は13ヶ月
- 養父母や父方の祖父母、夫の父母は150日
- 妻や子ども、兄弟姉妹、母方の祖父母、伯父父母、曾祖父母は90日
家長制度が順守され男尊女卑であった当時の風潮が反映され、喪中期間が夫と妻で不平等であることが特徴的です。
服忌令は昭和22年に撤廃され、現在では法律の定めはなく、妻と夫の喪中期間は同じ12~13カ月が一般的になっています。
海外では、かつての日本の法律と同じように、男女不平等な喪中期間が残っている地域もあるようです。
現代の喪中期間は故人との続柄によって異なる
一般的に喪中の期間は以下のように、亡くなった方との続柄で決まります。同じ日本であっても、地域の慣習や個人の考えにより異りますが、参考にしてみてください。
- 配偶者や父母は12~13ヶ月
- 子供は3~12カ月
- 兄弟姉妹や祖父母は3~6ヶ月
一般的に喪中となるのは2親等までです。3親等以降であっても、例えば一緒に暮らしていた場合など関わりが深い場合は喪に服する期間を設けています。
また、現在は喪中の範囲に特別な定めはありません。故人と血のつながりもなく、結婚していない場合でも、関わりの深さによって自主的に喪に服すこともあります。
忌引き休暇の期間
身近な方がなくなった際、多くの会社や学校ではゆっくりと通夜や葬儀など供養に専念できるように忌引き休暇を設けています。
一般的な会社では忌引き休暇は福利厚生の一環です。その期間は故人との関係によって決まります。例えば、配偶者は10日間程度、父母は7日間程度、兄弟姉妹や祖父母は3日間程度などです。
その期間が有給休暇となるか、無給となるかは会社の定めによるので、就業規則を確認しておきましょう。
格好についても、一般的に忌引きの定めがあり、その期間は欠席扱いになりません。自分の両親の場合は7日間、祖父母や兄弟の場合は3日間、叔父や叔母(伯父、伯母)の場合は1日程度です。
喪に服す期間さけるべきことを解説

喪中には一般的に避けたほうがよい場所や行為があるので、知っておきましょう。結婚式やお正月やレジャーなど喪中ではどうすべきなのかを解説いたします。
結婚式などのお祝い事
古くは喪中に結婚式を挙げることは厳禁でした。現在では、喪中であっても忌明けであれば問題なく行うことが多いようです。
忌中であっても、結婚式の準備には時間がかかり直前のキャンセル料は満額の場合もあります。両家で話し合って検討し、亡くなった方へ供養の気持ちを込めて行うこともあるでしょう。
結婚式に招待された方が喪中になった場合は、先方にその旨を伝え欠席するケースも多いです。しかし、気にしないで出席してほしいという先方の意向があった場合、出席してもよいでしょう。
正月のお祝いや年賀状
親せきが集まって正月のお祝いをするといったことは避け、静かに過ごすのがマナーです。正月飾りも控え、おせちを用意しても彩りなどを地味にして華美にならないように工夫します。
お年玉もお祝いにあたりますが、子どもたちが楽しみにしているものなので、お小遣いや文具代という形式で贈ると良いでしょう。
年賀状は送らずに前もって喪中はがきを送るのがマナーです。時期が間に合わずに年賀状をもらった場合は、年賀状という形では返さずに寒中見舞いとして返し、喪中である旨を伝えましょう。
初詣や神社でのお祝い事
神社の場合は、忌中期間のみ参拝を慎みます。それは神様のいる場所に死の穢れを持ち込まないためです。忌中期間が終われば、喪中期間であっても初詣することは問題ありません。
もしも、忌中期間に外せないお祝い事がある場合は、神社のほうにその旨を伝えて相談してください。前もって心身の穢れを祓う修祓(しゅばつ)を行ってくれます。
旅行やレジャーや飲み会など
古くは喪中に遊興は禁じられており旅行やレジャーや飲み会などはできませんでした。しかし、1年間まったく無しというのは現実的には難しいです。
個々の考え方によりますが、四十九日までは実際に遺族にとって忙しい期間で遊ぶ気持ちにもなれない方も多いでしょう。忌中は、ゆっくり自宅で過ごし、自分の心身を労わるのもよいのではないでしょうか。
その後の期間については、故人への哀悼の意を示しつつも、自身ん気持ちを尊重し行動することが大切です。
喪中期間は故人と自身のことを考え大切に過ごす
かつての喪中は上からの定めにより決められていたり、慣習が根強かったりと、喪中に控えるべきことが大く決まっていました。しかし、現代では個々の気持ちが大切するという風潮い変化してきています。
一般的に共通の認識はありますが、死をどのように感じ、どう思うかはその人次第なので、自分なりに喪に服し、大切な人の死を悼みましょう。
また、死は穢れとも言われていましたが、「気枯れ(けがれ)」ともいいます。故人の供養と共に肉体的にも精神的にも自分自身が回復するように過ごすことも忘れないようにしてください。